第286堀:空の旅
空の旅
Side:デリーユ
いやー、空の旅というのもあながち悪くはない。
現在、妾ことデリーユは心の底からそう思っていた。
確かに吹き付ける風はとても寒い。
防寒具が無くてはとても辛いだろう。
しかし、寒さなどなんのその。
目の前に広がる世界は、とてもすごかった。
どこまでも続く空と大地。
その狭間を妾たちはワイちゃんに乗って空を駆け往く。
「いつまでやってるんだよ。風邪ひくぞ、デリーユ」
妾が空の旅を謳歌している中、そんな風に声をかけてきたのは、妾の夫、ユキである。
振り返るとユキは、のんびり炬燵をほかの嫁たちと囲んでみかんを食べている。
このワイちゃんこと、ワイバーンの移動方法、及び妾たちの運搬方法だが、デカい籠を首から下げて、更に持たせているのだ。
無論、ユキやナールジア、フィーリアのアイディア、合作であり、炬燵を出している範囲はエンチャントにより完全無風区画となっている。
妾の場所は観光区画で、風をわざと浴びたり、気温も外に応じて変化している。
サイズに関しては6人が余裕で横になれるほどの大きさがあり、4m四方の正方形だ。
ワイちゃんのサイズは5m、翼を広げると10mというところ。
デカいというのはこれで理解できると思う。
見た目はただの大きい檻に、小さい檻を入れているような形なのだが、檻ごとに多重障壁を備え、それが二重。
分かると思うが、この前の聖剣使いたちからの奇襲を受けたとしても、この籠の中にはダメージが通せないだろう。
勿論、落下ダメージもなく、魔力スキル無効に対しても、えあばっく?なるものを参考にして、一度きりの放出だが、乗員を守ることができる。とユキたちは言っていた。
ならば、残るはワイバーンのワイちゃんを叩き落とすことを狙うべきだが、このワイちゃんはスティーブ自らが鍛え上げ、並のワイバーンどころか、上位の火竜ですら完封できる。
更に、ワイちゃん自体にもエンチャント装備を纏わせているので、更に底上げがなされている。
正直な話、ワイちゃんが全力で飛ばせば、アグウスト国王都まで1日どころか半日で着く。
では、なぜ3日もかけていくのか?
それは、ワイちゃんのスペックを明かさないためである。
下手にこの性能がばれれば、後ろ盾を無視して、どうにかして竜騎士アマンダを奪おうと画策する輩が出てくる可能性がある。
ということで、それをカモフラージュするため、戦闘能力は高いが、飛行距離は短く、休憩がいる、などと誤情報を撒いているのだ。
あと、万が一、妾たちに喧嘩を売ってくる阿呆がいても、ワイちゃんの戦力を誤認してくれるのはありがたいのだ。
……竜騎士アマンダ本人もワイちゃんの本当のスペックを知らないがな。
「聞こえてるかー?」
振り返っただけで、返事をしない妾を見て声が聞こえなかったと思い、再び声をかけてくるユキ。
おっと、返事を忘れておった。
「聞こえておるぞー。心配はいらぬ。この程度で風邪など……」
妾がそう答えようとすると、それにかぶせるようにユキが告げる。
「万が一、風邪をひいたら、最低一週間は子供たちと接触禁止だからな」
「なに!?」
何じゃその、子持ちの母親に対しての処刑宣告は!?
妾は風邪をひくとは思えんが、子供たちと一週間も接触禁止という可能性があるだけでも、回避せねばならん。
なので、即座に炬燵がある籠へ戻る。
中に入ると、風がやみ、ほんのり心地いい感じの気温に保たれていることがわかる。
炬燵は大きく、12人ほどが同時に入れる構造をしている。
しかし、ユキの横は当然空いていない。
ルルアとエリスががっちり両脇を固めていて、膝の上にはアスリンが座っておる。
仕方がないので、ユキの向かい、サマンサの横の炬燵に入ることにする。
じんわりと、足先から腰へ温まる感触にほっとする。
去年の冬に初めてお世話になったが、うむ、いいものだ。
今年も妾の部屋に設置しよう。
「はい。デリーユ師匠、お茶です」
「お、ありがとう。アマンダ」
「いえいえ、私も暇ですし」
「何なら、訓練でもするかの?」
「いえ、流石にそれは……。ワイちゃんのこともありますし」
「それもそうか。今日、休む前にはちゃんと訓練するぞ」
「はい」
うむ。
アマンダもエオイドと結ばれてから、訓練に身が入っているのだろう。
まだ一日二日と言ったところだが、目に見えてやる気が増している。
これが、成果につながれば万々歳なのじゃが。
「と、そうじゃ。なんで風邪をひくと子供たちと会えないのじゃ」
そうそう、そこが一番大事じゃ。
「いや、子供たちに風邪を移すつもりかよ。大きくなっているならともかく、まだ1歳にもなっていない子たちだぞ。苦しくても何がどう苦しいのか、というか、熱があるのかすら、俺たちの経験で判断するしかない。そんな危ない橋は渡れない」
「……その通りじゃな」
我が子たちが、妾が原因で苦しい思いなどすれば、自殺してしまいそうじゃ。
駄目な母親であった。ユーユ、ママを許しておくれ。
「あの、すみません。デリーユ師匠、子供って?」
この会話を聞いていたアマンダが興味を持ったのか聞いてくる。
「ん? ああ、アマンダには言ってなかったな。妾は子持ちじゃ。無論、ユキとの子供じゃな」
「ええっーーー!? こ、子供!? 産んだんですか!? あれ本当の話!?」
「なんじゃ、信じてなかったのか。可愛い愛娘じゃ。そこの、エリスとルルア、ラッツも確かに産んでおるぞ」
「ええっーーーー!? ほ、本当に!?」
今回の旅路は王都でのお偉いさんの交渉が色々ありそうなので、物品交渉役として、エナーリアで色々調べ物をしているラッツを引っ張り込んでいる。
ま、妾たちは新大陸の情勢なんぞより、子供たちの世話が優先なので、日に何度もドッペルを出たり入ったりの繰り返しだったりする。
「エ、エリス師匠も? ルルアさんとラッツさんもですか?」
「ええ、事実ですよ。もちろん、ユキさんとの子供です」
「はい。旦那様との愛の結晶ですね。あ、ユキ様が相手ですよ」
「なはは、右に同じですね。お兄さん以外あり得ませんからね」
3人もアマンダの質問に簡単に答える。
何も恥ずかしいことではないからのう。
寧ろ誇るべき話じゃ。
「あ、でもユキさんの話からすると、学府にお子さんたちを連れて来ているんですか?」
「あ、いや違うぞ、ダンジョ……」
「デリーユさん、このみかん美味しいですわよ」
妾がそう答えようとすると、サマンサが咄嗟に口へみかんを放り込んで塞ぎ、ユキが即座に答える。
「アマンダが聞いた通り、子供が多いからな、俺たちの拠点では、だんじょ、男女共々、夫である俺も子供の面倒を見ているんだ。まあ、乳母もいるけど、戻ってるときは自分たちでちゃんと面倒見ているんだ」
「なるほどー。いいですねそう言うの。ね、エオイド」
「そうだね。でも、僕は子供を置いて旅に出られそうにないよ」
「あー、私もできそうにないわ」
「ま、そこら辺の関係で、体調を崩したまま子供たちに会えば、子供たちに病気が移るかもしれない。そう言うのはなるべく防ぐために、風邪をひいたあとは、治ってもしばらく時間を空けて、完全に治っているのを確認してから、子供たちに会うようにしているんだ。ほら、ぶり返すとかあるだろう?」
「ああ、ありますね」
「なるほど。勉強になります」
目の前でそんな会話が繰り広げられている中で、口に放り込まれたみかんを咀嚼し、飲み込む。
「すまん。助かった」
妾も自分が要らぬことを口にしかけたとわかったので、特に慌てることもなく、すぐにフォローしてくれたサマンサにお礼を言う。
「いえ。でも、デリーユさんがああいうミスをするとは思いませんでしたわ」
「うむ。妾も不思議じゃ。おそらく、アマンダは妾の弟子じゃから、そこら辺が甘くなっておるのかもしれん」
「なるほど。まだ弟子を取ったことはありませんが、身内と思っている相手に隠し事は難しいですからね」
「そうかもしれんな」
そうコソコソ話をして、目配せで、皆に謝る。
皆、気にするなという視線を返してくれる。
うーむ、妾も子供を産んで多少気が抜けておったかのう?
今日、家に帰ったらもう一度謝っておこう。
「あ、あの、デリーユ師匠。お子さんの映像とか写真もっていませんか?」
「ん?」
気が付けば、アマンダがこっちに身を乗り出して、期待の眼差しで見ていた。
「デリーユ、あなたは子供の写真持ってたわよね?」
「いやー、申し訳ない。私とエリスは子供たちの映像や写真は撮らずに出てきたもので」
「私の子供は見せたのですが、アマンダさんはデリーユさんの子供も見てみたいそうですよ」
ああ、エリスとラッツの娘は見せるわけにはいかんからな。
人でなく、亜人なのだから。
勿論、持っていないなんてのは嘘である。
全員、子供のたちの写真は当然として、ユキとのツーショットの写真をロケットのペンダントに入れて大事に持ち歩いている。
どうやら、ルルアはロケットの写真は見せずに、アイテムボックスから写真を取り出したようじゃな。
まあ、エリスとラッツのロケットには子供の映っている写真があるから、そちらを見てみようなどということがないようにするためだろう。
ということで、ルルアを見習うように、懐を探るように、アイテムボックスに手を入れ、写真を取り出す。
「ほれ。これが妾とユキの愛の結晶のユーユじゃ」
「うわー。可愛い。ユーユちゃんって言うんですね」
「うむ。女の子じゃ」
「ねえ、エオイド。やっぱり、最初の子供は女の子がいいと思うのよ」
「いや、そんなこと言われてもな……」
「妾としては、男の子がよかったのじゃがな」
「え、どうしてですか?」
「妾の戦闘スタイルは格闘じゃからな。体に傷がつきやすい。男なら傷は勲章じゃが、女だとな」
「あー、なるほど」
妾も不老になって回復力なども飛躍的に上がって、不老以後の傷痕はなくなっているが、不老になる前、修練で傷ついた痕は残っている。
顔とか、胸とかになかったのが幸いじゃな。
それでも、ユキに裸を見せる時は、勇気が要ったわ。
まあ、ユキはそんなのは気にしないで、寧ろそれを含めて愛してくれたが。
ユーユにこの格闘術を教えるかは、ユーユの姿勢しだいじゃな。
格闘術は、あえて女がとる手段でもなかろう。
セラリアの剣術、ラッツの槍術、エリスの弓術、ルルアの魔術、そっちの方が安全だと妾も思う。
「まあ、落ち着けアマンダさん。子供の前に、新居とか決めるのが先だろう?」
「あ、そうですね。エオイド、この任務が終わったらすぐに家を探すわよ」
「え!? そ、そんな余裕ないよ!?」
「うー、そう言えばそうよね。……じゃ、まずはお金を稼がないと。それまでは当分実家か。それだとイチャイチャできないじゃない」
「そんなこと言われても……」
なはは、一般人はこういうところで悩まなくてはいけないのう。
妾たちは、そこら辺甲斐性がある夫じゃからな。
ん? でも新居云々は確か、ポープリたちが支援するとか言ってなかったか?
「のう、エリス。新居云々や資金関連は何か援助するとか言ってなかったか?」
「ええ。ポープリ学長が支援する予定ですよ」
「本当ですか!!」
「はい。でもアマンダ。それはあくまで支援。ずっと頼りきりではいけませんよ。ちゃんとお金を稼いで、自分で家族を守って行けるようになるのは大事です」
「はい!! エオイドと頑張っていきます!!」
「そうね。夫婦なんだから、そこら辺は協力して、私たちみたいな夫婦を目指してね」
そんな、未来を嬉しく語る若者たちと話していると、気が付けば遠目に、村が見える。
「のう、クリーナ。あれが言っていた今日の中継地点の村かのう?」
妾は今回の案内役であるクリーナに聞く。
「ん。その通り。あれがラライ村。学府からアグウスト王都の旅路にある村。アマンダ、向こうには一応連絡は通っているけど、村人を怖がらせたくはない。遠目に下りて陸路で向かおう」
「わかったわ。ワイちゃん、あの道がある草原がある地点に降りられる?」
Side:ユキ
ギャース。
ワイちゃんはそう鳴いて、地面に向けて徐々に下降を始める。
最初の頃は一気に急降下をはじめて、クロちゃんたちにこっぴどく叱られてたっけ。
アスリン姫たちのことをもっと考えろと、実際急降下した方がいいこともあるが、乗客を乗せてるようなもんだしな。
「皆、降下地点付近を索敵しろ」
「「「はい」」」
俺がそう言うと、全員が武装を持って、降下地点の草原を監視し始める。
俺たちの世界では有名だが、離着陸、上陸中などといったときは一番油断しているときであって、そこを狙われて大被害を被ることがある。
まあ、あの二次大戦の上陸作戦の油断を油断と言うべきかは疑問だが、あの雨あられの砲撃や支援爆撃を切り抜け、防衛に当たった守備隊が異常と言うべきか。
かの有名な上陸作戦は結果だけ見れば、成功しているが、詳しい内容を見ると成功しているとも言い難いととれる話もある。
血に濡れた、故郷の歴史ではあるが、それは俺たちの安全への知識へつながる。
そこだけは感謝しよう。
遠めに映る村には人が入口に群がって、こちらを見ている様子がわかる。
通達してなかったら、即座に逃げていただろうな。
そんなことを考えていると、もう地面が近い。
「着陸態勢。即座に展開するぞ」
「「「了解」」」
ズンッ。
そんな音を立てて、籠が地面に着く。
そして、即座に扉が開かれ、皆が出ていく。
これは、即座に乗り物から離れることによって、集中砲火による一網打尽を避けるためでもある。
ワイちゃんと籠の装甲を抜けるとは思えないが、念には念を入れるべきだろう。
「こちらラビット、クリア」
「フォレスト、クリア」
「ホワイト、クリア」
嫁さんたちからそんな声が上がる。
因みに、ラビット、フォレスト、ホワイトはコードネームである。
順にラッツ、エリス、デリーユで、由来は言わなくてもわかると思う。
誰が誰だとすぐわかるなら、コードネームの意味ないじゃんと思うかもしれないが、それは俺たちにとってだ。
敵にとっては、いきなり名前からコードネームで呼ばれると、誰が動くかわからないし、別働隊がいるなどと憶測も呼ぶ。
スティーブたちは数字なんだけど、嫁さんたちは可愛いコードネームの方がいいだろう。
あ、武装ですが、こういう時は全員、銃器装備です。
エオイドやアマンダは最初、この銃器に首を傾げていたが、魔術の杖って言ったら信じた。
うん、便利だね魔術って言葉。
勿論、嫁さんたちも銃器の練習はしているし、エリスやラッツに至ってはスティーブたちの特殊部隊でやっていける技能持ちだ。
ここに来ていない、トーリやリエル、カヤも獣人特有の感覚でかなり使いこなしている。
基本は、大陸の文明に合わせて剣や弓だが、こういう強襲されると危ない所や、いざという時は銃器をアイテムボックスから取り出して、使うようにしている。
最後には「魔術です」キリッ。で通るからな。
セラリアはどこかのガン&ソードのスタイリッシュが好きらしいが、あれは実戦向きでないのでやめてほしい。
で、この銃に一番適性があったのが誰かと言うと、エリスだ。
森の人とも呼ばれ、森で狩りを行い、弓をメインとして使っていた彼女は、スナイパーライフルによる狙撃を得意としている。
ビューティフォーとか、白い狙撃手を思わせる腕である。
エナーリア襲撃では、終始、弓と矢で立ち回っていたが、あの時、銃器を持っていれば、視界に入るすべての敵は瞬く間に倒れていただろうと思われる。
無論、弾丸などは人を想定しているもので、この世界の魔物には効果が低い。
そこは、魔術による威力向上とか炸裂向上で、一発の弾薬がグレネード並の火力ぐらいまで簡単に引き上げられる。
「こちらブルー。村から一騎走ってきています」
ルルアからそんな声が届き、全員がそちらを注視する。
そこには、村には似つかわしくない、立派な鎧を着た男が、これまた立派な馬に乗ってこちらに来ているのが見える。
「クリーナ、あれって……」
「ん。アグウストの兵士。身なりからして、近衛だと思う」
「そうか。武装を通常へ。おそらく迎えか何かだろう。一応、警戒は解くな」
「「「了解」」」
即座に、剣や槍、杖などと言った武装に切り替える嫁さんたち。
そして、そこまで時間がかかることなく、その騎士らしき男が近くまで来て、馬から降りる。
「こちらに敵意はありません!! 勅命により、皆さま方の案内を任された、アグウスト近衛副隊長のビクセンと申します!! 確認いたしますが、ランサー魔術学府からの竜騎士アマンダ様御一行でお間違いないでしょうか!!」
イケメンとは違うが、立派な体躯に、それに伴うはっきりとした声。
30を少し過ぎたぐらいの顔つきで、ナイスミドルと言った感じだ。
しかし、その後に沈黙が流れる。
「……アマンダ。あなたが呼ばれたのだから、あなたが返事しないと」
「ふぇ!? あ、は、はい!! その通りです!!」
アマンダの護衛を兼ねて近くにいたエリスがそう諭すと、慌てて返事をする。
その様子を見ていたビクセンさんは不思議そうに、こちらに視線を向けてくる。
俺は軽く頭を下げると、向こうもこちらの意図が分かったみたいですぐに頷き返してくれる。
「アマンダ様、其方に近寄っても大丈夫でしょうか?」
「はい!! 大丈夫れす!!」
カミカミだな。
ま、アマンダにとっては偉い人とこんな風に話すのは初めてだろうからな。
とりあえず、許可を貰ったビクセンさんはワイちゃんに視線をやりつつ、アマンダへと近づいていく。
怖いよな。
いつ、ぱくっといかれるかわかんねーし。
「改めまして、初めまして。ビクセンと申します。アグウストの近衛副隊長をしております」
「ひゃい。わ、私はアマンダと言いましゅ!!」
「すみません。アマンダは庶子の生まれでして、このようなことは慣れていないのです。多少不作法があるかもしれませんが、ご容赦いただけるとありがたいです」
横にいるエリスがフォローをする。
同じく横にいるエオイドはアマンダと一緒にカチンコチンである。
「やはりそうでしたか。アマンダ様、大丈夫です。竜を従える偉業を成し遂げ、傲慢にならず、こうやって私にも礼を尽くして話してくれるのです。これを不敬や常識知らずと断じる輩はいないでしょう。そのような輩がいれば私が排除いたします」
「あ、ありがとうございます」
「いえ。当然のことです。そして、こちらの方々は護衛で来ると言われた傭兵団の方々ですかな?」
アマンダとの挨拶を終えたビクセンさんはこちらに振り向く。
「あ、はい。傭兵団でもありますが、ジルバ、エナーリア、ローデイの代表でもありますので、あの、あまり雑な扱いは……」
「存じております。初めまして、貴殿が噂のユキ殿でしょうか」
噂か、まあエナーリアでの大事は情報収集してりゃ手に入るよな。
「ええ。私が傭兵団をまとめているユキです。で、噂とは?」
「エナーリアでの襲撃事件の際、見目麗しい傭兵たちを指揮し、見事人々を救ったと聞き及んでおります」
……見目麗しい?
ああ、嫁さんたちのことか。
「たまたま、居合わせただけですよ」
「いえ、居合わせただけで、敵の戦力もわからないのに、人々を救おうとは思わないはずです」
確かにその通りだ。
普通に戦力不明なら、自陣を固めて流れを見極めるのが普通。
……怪しまれているのか?
「我々傭兵団も人々あってですからね。食料然り、武器然り、寝床しかり、ついでにその時はジルバの姫の護衛もしていましたから、当然ですね」
「私はあなたの当然を尊敬いたします。騎士として、1人のこの地に生きるものとして」
裏があることは考慮しなければいけないが、ビクセンさん自体は真面目な騎士なようだ。
「と、失礼いたしました。長話をこのようなところでするべきではないですね。村の村長とは話を通して、泊まる場所を確保しております。案内いたしますのでこちらにどうぞ。アマンダ様の竜は申し訳ありませんが、村の入り口に置いていただければと思います」
「はい。わかりました」
そう言って、俺たちは、村へと歩みを進める。
「ジェシカ、クリーナ、サマンサ、あのビクセンって人のことは聞いたことあるか?」
俺がそう聞くと、クリーナは首を横に振り、ジェシカとサマンサが頷き口を開く。
「私と同じように、魔剣使いであるアグウストのスーラ将軍の側近だったはずです」
「私もそう聞き及んでおりますわ。でも、クリーナさんが知らないのは無理もありませんわね。あの方の名が広がったのは凡そ7、8年前、クリーナさんはその頃は既に本の虫でしたわよね」
「……ん。否定できないのが悔しい」
「あー、2人とも、クリーナちゃんをいじめちゃだめですよ」
「リーア姉さん、2人がいじめる」
そう言いながらひしっと抱き合う、リーアとクリーナ。
この2人は最初の出会いから姉妹みたいになっているんだよな。
と、それはいいとして。
「そんな有名な人が、近衛の副隊長で俺たちの迎えね……。何事もないといいけど」
「警戒しておいて損はないでしょう」
「だな」
「ですわね。大物がこんな案内役ですから」
ジェシカ、サマンサとそんな話をしながら、目の前を歩くビクセンさんを見つめる俺であった。
因みに、ビクセンさんの横にいるアマンダは未だ硬さが抜けず、エリスがフォローに入っている。
……こっちも問題だな。
あとでビクセンさんと相談して、王都につく前に多少慣れておいた方がいいような気がしてきた。
飛行機乗ったことがある人挙手。
でも、俺は飛行機のると窓際にいけないことが多い。




