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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
新大陸 学府編

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第276堀:この舞台は2人のために

この舞台は2人のために



side:ユキ




「加減なんかを期待するな。そう言った」


今、エオイドの目の前には、エリスの時とは比べモノにならない大きさのファイアーストームが迫っていた。


『おおーっと!! 本当に、ポープリ選手加減無しだ!! 特大のファイアーストーム!! これは逃げ場がないレベルだ!! しかし、エリスとの時にこれをしなかったのはなぜでしょう?』

『おそらく、私とのときは相殺されると思ったのでしょう。だから、視界をちょっとふさぐ程度で近接を挑んできましたが、それも迎撃しましたけどね』


おーい、この場でポープリを弄ってやるなよ。

ほら、本人、少しプルプル震えてる。


『なるほど。ということは、この大規模なファイアーストームはエオイド選手にはどうしようもできないという判断というわけですか』

『ですね。しかし、ユキさんとタイキさんの手ほどきを受けたのですから、これをどうにかできるという期待もあるかもしれません』


ま、そりゃそうだろう。

観客は唖然と立ち上る巨大な炎の嵐を見つめているが、これがどうにかできなければ一発で終わりだ。

盛り上がりにもかけるし、ポープリもやりすぎって非難されるだろう。

しかし、これをどうにかできれば、エオイドの評判はうなぎのぼりだ。

誰も、アマンダにつりあっていないなどとは言わないだろう。


『さあ!! いきなり未曽有の大ピンチ!! この局面をどう乗り切るのか!!』


……しかし、タイキ君はいざ知らず、俺はこういう状況をどうにかする方法は教えていない。

いや、頭が柔らかければどうにかできると思うが、エオイドの訓練期間は一週間あるかないか。

それで、どうにかできる頭があるなら、すでに学府で上位にいると思うんだよなー。

つまり、だ。

タイキ君がなにか無限の剣○でいい武器を教えていなければ、ここでエオイドは一発場外負けか、こんがり焼けましたーとなるわけだ。


「……ポープリは容赦ないわね」

「ま、エリスにコテンパンにされたからな。そこらへんが原因でこの状況になったんだろうな」

「で、ユキの中は見せてもらったけど、タイキからの手段がちゃんとあるんでしょう?」


……しらん。


「……ユキ、エオイドの意気込みから見ると。こんがり焼けてしまうわよ。手段がないのなら」


まあ、そうだろうな。


「アマンダ、きっと再起不能になるわよ」


ラビリスに言われて、隣に座るアマンダに視線をこっそり向ける。

そこには、口を押さえて、顔を真っ青にしているアマンダがいる。

エオイドにとっての勝利の女神の機能は失われていた。

……いやー、当然か。


「さぁ、これがどうにもできないのなら舞台から降りろ。別に恥じるべきことじゃない」


ポープリはそう言ってちゃんと逃げてよいというが……。


「俺は、……引きません!!」


あー、主人公だねー。

俺は逃げるね。

勝ち目のない勝負はしない。

ま、挑んで負けても痛くもかゆくもないなら、逃げる。

だけどこれ、勝負を挑むと絶対痛いからな。


「ユキはそれでいいと思うわ。ユキが傷つけば、私たちが相手を無茶苦茶にするわ」


嫁さんたちは、俺が傷ついても理性を保つ訓練をしてほしいのだが。


「無理ね。却下よ。ま、そこは不可能ということで、エオイドはどうするつもりかしら?」


あー、不可能なのね。

と、ラビリスの言う通り、まずはエオイドの方が大事だな。

視線を舞台に向けると、エオイドはやはり引く気がないみたいだ。

さて、最悪、俺かタイキ君でばれないように横やりを入れなければいけないか……。



総じて物語と現実は違うというが、その通りだ。

物語とは読者を楽しませるために、都合のいい部分を切り取り、面白い場面を意図的に作りだす。

まあ、ここ最近の日本では、日常だったり、一人の生活を覗くといった物語も、楽しみの一種としてとらえられているが。

おっと、話がずれたな。

だから、現実は物語とは違う。

実際、かっこいい話だけではない。

つまらない、端折ってしまう、そんな物語として不要な日々もすべて存在している。

だけど、だからこそ、こういう諺が存在している。



事実は小説より奇なり



現実で起こる出来事は、物語の中よりも不思議で面白いものだ。

そんな意味を込めた言葉。

そして、それはよく考えれば当然だ。

物語とは、想像とは、今まで得た経験や知識を組み合わせて、発展させて、作り上げていくものだ。

しかし、現実はその経験と知識とは別に、自分たちが知りえない、まだ解明していない何かが常に介在している。

だからこそ、何が起きても不思議ではない。

むしろ、何が起こっても当然だ。


だが、俺はそれを見て、驚かざるを得なかった。



『おおーっと!! な、なんと、エオイド選手、ポープリ選手の巨大なファイアーストームを斬った!! 斬ってしまった!!』

『なるほど。タイキ選手に師事していたとは聞きましたが、これでは魔術は無意味だということですね。魔術を切り裂く魔術。それを習得していたとは』


目の前でファイアーストームを縦に切り裂き、魔力を霧散させ、維持を不可能にする。

まさに、タイキ君がやった海○斬である。

いや、教えてないから。

あの技、さっきソニアさんの属性知ってから思いついただけだから!!

まてよ、俺が観客席に行った間に教えたのか?

そう思って視線をタイキ君にむけると、向こうもこっちを見ている。

お互いの視線が疑問に満ちていた。


教えたのか?


だが、即座にお互いに首を振る。

なんだと、お互いに教えていない。

ならば、出る答えは1つ。


「どういう答えかしら? それでエオイドは戦えるのかしら? アマンダに教えてもらえる?」

「ど、ど、どういうことですか!? あれ!! エ、エオイドがタイキさんみたいなことを!?」


あ、2人のこと忘れてたわ。

とりあえず、アマンダを落ち着かせよう。

ラビリスがわざわざアマンダの意識をこっちに引っ張ってくれたんだ。

ちゃんと説明をしよう。

過分に盛って、ポープリといい勝負ができると思わせよう。

まずは、ちゃんと声援がないとエオイドも力が出ないだろうしな。


「あれは、見取り稽古だ」

「見取り稽古?」

「なんですかそれ?」

「ああ、難しい意味で言い過ぎたかな。見るということを、稽古と言ったんだ」

「見る?」


アマンダが不思議そうに首をかしげる。

あ、ちなみにエオイドとポープリは、お互いに隙を窺っている。

流石に、エオイドの見取りでの見様見真似では出力の調整ができていないくて、かなり体力と魔力を消耗している。

ポープリも他の手で対応してくると思っていたみたいで、まさか、タイキ君と同じ技で迎撃されて、うかつに動けないと思ったみたいだろう。


「ほら、先生の魔術を見るということを言われることがあるだろう?」

「あ、はい」

「それは、お手本を見せて、こういう風にしなさいとわかりやすくしているんだ」

「はい。それはわかります」

「なら、今までの俺たちの試合だってそうだ。エオイドにとっては学ぶべきお手本だったということだ。覚えろとか、なにも言われてないけど、自分の力になにかできないかと、考えた。アマンダだって炎の魔術を見てて、これ使えるかも? と思うようなのがあっただろう?」

「ありました」

「それを、俺やタイキ君は見取り稽古っていうんだ。まあ、主に剣などの言葉では伝えにくい技術を伝えるための教え方なんだけどな。で、さっきアマンダも理解した通り、見るということも立派に学ぶことなんだ。意識しないとただ見てるだけ。それを言われなくてもエオイドはやってのけたから、それだけアマンダを守れる男になりたかったってことだろう」


俺がそういうと、アマンダは恥ずかしそうに顔を伏せる。

しかし、見ただけでやってみようっていうのは……。


『なるほど、愛ゆえの結果だということですね。中継のデリーユ、ラビリスありがとうございます』


そんな声が聞こえて、とっさに自分の正面にあるモニターを見ると、俺とラビリス、アマンダが映っていた。

勝手に解説役にされていたのか。


『流石ユキさんですね。あの一瞬で、技を使ったいきさつまで推察できるとは。しかし、それを考えると、この短時間でタイキ選手の動きをつぶさに観察し、技を見様見真似で同じように再現してしまうというのはとんでもないことでしょう』


そう、エリスの言う通り、すさまじい。

どこの主人公属性だよ。って主人公か、俺とタイキくんの認識じゃ。

ま、真似る条件はそろっているんだよな。

全ては魔力操作の延長だ。

大○斬、海○斬、空○斬。

全て、斬る物体に合わせて、魔力の質を変化させて、斬りやすい状況を作り上げる。


さて、ここで問題があるが、斬るという現象は一体何なのか?

これを知っているかいないかで、イメージが大事な魔術に大きい影響がでてくる。

そもそも斬るとは、斬る刃物の圧力と摩擦、そして斬る物体自体の引っ張る力が関係している。

ウォータージェットという無形の切断機械も地球には存在するが、あれは刃物というより、削り取るという性能なので今回は省く。

まず、斬るには種類が3つほど存在している。

押し切る、引き切る、突くの三つである。


最初に押し切る。これは包丁の刃という非常に小さい接地面を斬りたい物質に押し当てることにより、一点に集中し、物質を押し込み、斬られている物質がもつ……、誤解を覚悟で言えば、元の形状に戻るための力、引っ張る応力を利用して切れるのだと思ってくれ。

柔らかいボールや自分の肌を指で押し込むとわかると思うが、へこむが押し戻す力が働くはずだ。

これが、指よりも小さい接地面で押し込むと、例えば針だが、一点にかかる負担が高く、一定の範囲にかかる物質の強度を超えた圧力がかかるので、文字通り押し切るという現象が起こる。


次に引き切る。これはよく料理で、お肉を切るときは、押して切るのではなく、押して引いて切れと言われることがあると思う。

これは、押し切るの条件にさらに、物質の結合という現象を利用して、楽にお肉を切る。

引くという動作を追加したものである。

物質というのは、他の物体に引っ付くという特性を持っている。

水に指を突っ込むとわかりやすいかもしれないが、むろん指に水滴が付く。

これは、ある意味引くという動作で、指に吸着した水の一部を引きちぎってきたということだ。

包丁の刃を押し当て、まあ、分子レベルでいうと刃物もギザギザなので、そういう意味でも、物質と結びつき、引くと刃を押し当てられた物体が引きずられ切れるのだ。

ちなみに、日本刀はこの引き切るという性質を最大限に利用した武器である。


最後に、突く。これは上記で説明した通り、分類的には押し切るという動作になるが、刃よりもさらに一点に圧力をかけることになるので、上記の2つよりも物質を分断しやすい。

ちなみに、この場合の分断というのは目に見えて物体を裂くという意味ではなく、傷をつけるということを意味する。


ま、この上記を念頭において、使われる魔術に対して、どの魔力の斬撃が有効かということになる。

先ほどの海○斬は押し切るという斬撃になる。

つまり、自然現象を利用している無形の魔術の場合は、すでに魔力が無くても現象が継続するので、現象そのものを分断する必要がある。

ポープリの使ったファイアーストームだが、これは炎と竜巻を混ぜたもので、炎は酸素、竜巻は本来の自然現象とは違うが、風を円のように循環させて竜巻にして、その制御を魔力という燃料と魔術の術式で行っているというわけだ。

この場合、炎をどうこうするのは放っておこう。炎は竜巻と一緒に発生しているから、竜巻を止めればいいのだ。

さて、止めなければいけない竜巻だが、一体どうすれば止まるのか?

これは、本物の竜巻であれば、規模によるが、最大で核ミサイルを数十発をぶち込む必要があるといわれている。

しかし、ポープリの竜巻は魔術で過程をすっ飛ばし、ただ、バケツに入れている水に手を突っ込んで、かき回し、渦を発生させているのと同じである。

つまり、中に壊れない板を差し込んで回転を邪魔するか、回転させるエネルギー、魔力供給を止めるか、バケツその物をぶった切って、竜巻の発生条件をぶっ壊すか。


簡単に3種類に魔術を魔力操作で止める方法を示したが、これがタイキ君が3つに分けて使い分けた剣技だったりする。


まず魔力そのモノを押し込むのは、技術がいる引き切るというモノに分類される。

力技で物質、この場合は魔術に切れ込みを入れて、分断する。

大○斬。


次に、魔術の発動元、魔力供給を絶つ方法。

本質を見抜き、一点砕くことで魔術を突き崩す。

これは供給源が単独として、電池のような役割を果たしている魔術に有効。

空○斬。


最後に、これがエオイドが真似た技。押し切る。

無形の魔術というのは、自然現象を無理やり発動させているので、その無理やりの部分を壊してしまえば、勝手に霧散する。

不自然な状態で魔力で固定されているのを切り裂く。

海○斬。


この3つはどれも、魔力の流れや、術式を見て物理的に解呪するといっていいだろう。

だが、前提に魔術がどうして現象として発生しているかを、理解しなければまず切り裂くという発想は生まれない。

だから、エオイドは感覚的に、目の前で起こる不自然自然現象が何たるかを理解して、海○斬を出した。


「……長い説明だったけど、それならエオイドも結構才能はあるんじゃないかしら?」

「だな。今後は勉強重視がいいかもしれないな」


そんなことを考えているうちに、ポープリはさっさと手数に切り替えて、無数の炎の玉をエオイドにはなっているが……。


『ファイアーストームを斬られてから、手数に切り替えたポープリ選手。信じられないほどの連射ですが、その雨のような連撃を斬る、斬る、斬るーーー!!』

『すさまじい剣技に観客の皆は息をのんでいます。タイキ選手は動きすら見えませんでしたが、エオイド選手はその動きが見える分、凄さが良く伝わってきます。彼は属性魔術が使えないので、魔力操作のみで戦うため、必死に剣の腕を磨いてきたとのことです。これがタイキ選手の魔術を切り裂く魔術と見事にマッチしたのでしょう』


そう、よくよく考えれば、俺やタイキ君より、剣はもともと努力を重ねて、魔力操作に至っては生まれたときからの才能だ。

俺たちよりも緻密で、特殊な使い方ができても全くおかしくない。

きっかけを与えたら爆発したってやつだな。


「なるほど。そういうことね」

「す、すごい!! エオイド頑張れー!!」


うんうん、アマンダは声援を送り始めたし、その声はきっとエオイドに届いて、ブーストがかかっているだろう。

だが、問題は……。


「炎は無効と考えるべきだな。なら、これならどうだ!!」


ポープリはそう言って、ソエルと同じように、風の分身を生み出す。


『おおーっと!! ソエル選手の技を真似た? いや、数がさらに多い。その数7!! どれが本体かわからないぞ!!』

『エオイド選手は、この状況をどう打破するのでしょうか』


そう、エオイドがどれだけ、タイキ君の技を真似できるかだ。


「くそっ!!」


パンッ、パンッ!!


エオイドは見様見真似で空○斬を繰り出す。

そこまでできるか。

でも、それには穴があるんだ。

いや、エオイドは確かにすごい、でも……。


『何とかですが、分身5つ粉砕!! 見事にタイキ選手の技を模倣して、最後の1つを今きっ……』


ドスン。


そんな重低音が響いて、エオイドは舞台を転がる。


『後ろから、分身をおとりに、近接の風魔術を叩き込んだようです』

『なるほど。分身がやられることを前提に組み込んでいたのですね』


エオイドは必死に立ち上がろうとするが、流石に直撃したのがみぞおちだと、呼吸すらきついだろう。

しかし、そのエオイドに追撃をかけずポープリは佇んで口を開く。


「エオイド。確かにお前は、ユキ殿やタイキ殿に師事して、見取り稽古をして強くなった。信じられないほどだ。私が近接魔術を使ったことが事実だ。しかし、それでは届かない。しょせん、お前の技はタイキ殿の試合の真似事にすぎない」


そう、手の内が最初からばれているのだ。

ポープリは確かめるために、わざわざソエルと同じ魔術をぶつけたのだ。

そして、応用ができてるかを、今確かめた……。


「はっ、ずっ……」


まだ、エオイドは呼吸が戻らない。


「お前は教えてもらったはずだ。こんな真似事ではなく、お前の才能を使いこなす方法を。そのまま敗北すればお前は2人の指導を無駄にすることになる」


いえ、別に。

こういうのもありだとおもいますよ?


「見せてみろ。真似事ではなく、お前だけに考えてくれた技を。戦う術を」


なにその、伝説の技を見せてみろと言わんばかりの流れは。

そんなもの、何一つ教えてませんよ。

あるとすれば、エオイドの魔力武器ぐらいですが……。

エオイドが海○斬に走ったのは、魔力の盾じゃ前面しか防御できないから、海○斬を使わざるを得なかったわけで、どこかの騎士王みたいに、約束された光の聖剣みたいな模倣もできませんし、無理なんですよ?

しかし、俺の思いとは裏腹に、エオイドは立ち上がり魔力操作による刀剣武具を生成する。

この武具生成は魔力なので、魔力感知が高くないと無色透明で相手には全く見えない透明の刃なのだ。


「?」


ポープリも、エオイドの手に存在している魔力武器を感知することができずに、剣を鞘に戻した行動に首をかしげる。

しかし、エオイドはその不思議がる動作を隙とみて、飛び出す。


「なにを? ……!?」


ポープリはそう呟いて、エオイドの動きを見てとっさに離れる。

が、それは一歩遅く、ポープリの腕に血が滴っていた。


「……まさか、魔力で剣を作り上げたのか?」


しかし、エオイドはしゃべらない。

まず、俺たちの教えその一、相手に情報を与えるな。

その教えを守り、そのまま攻めていく。


「しかし、その動きは片手剣。ならば……!!」


流石に年を重ねているだけあって、すぐにエオイドの構えから持っているはずの不可視の武器の種類を判断し、ストーンシューターで牽制する。

うかつに近づけないのなら、手数で攻めて……。

エオイドは飛来する石を剣で打ちはらう。

……? 打ち払う? ああっ、エオイドは大○斬ができないのか。

確かに、押し切るっていうのはそれなりに知識がいる。

硬くて切れないと思えば、イメージがダイレクトに影響する魔力武具化では切れない。

そして、その隙を先ほどのように狙って、ポープリが接近し、懐へ……。


ドンッ!!


「きゃん!?」


ポープリは攻撃することなく、はじかれる。

ダメージ自体は少なかったのか、すぐに体勢を整えるが、明らかに動揺が見て取れる。


「さっきのは、シールドバッシュ!? ま、まさか……」


そう、誰が片手剣だと肯定したか。

エオイドは武器しか魔力で作れないとは言っていない。


『え、えーと、ポープリ選手が不可思議な無手のエオイド選手から手傷を負わされ、攻撃をはじかれていますが……』

『おそらく、ですが。あの構えからみて、魔力そのモノを武具と化しているのでしょう。片手剣と盾。見えているならそれなりにやりようはあるでしょうが……。不可視だとこれほど厄介とは』


いや、お2人さんは見えているでしょう。

ま、実況としてはそういうしかないよな。


「厄介だね。流石、ユキ殿、タイキ殿から伝授されたといっていいだろう。しかし、それじゃこっちに攻撃はできない。違うかい?」


そうポープリに言われて、エオイドが片手剣をポープリに突き出す。

無論、片手剣であれば、届くわけがない距離。

だが……。


「ごふっ……」


ポープリはその場で腹部を押さえてうずくまる。


『おおーっと、どうした!? いきなりポープリ選手うずくまった!!』

『先ほどの突くような動作。……おそらく、片手剣から槍などといった武器に切り替えたのだと思います』

『なるほど。魔力で武具を作れるのなら、片手剣だけしかないというのは不自然ですね。ということは、油断したところに腹部へ一発もらったのですね。これはつらい!! しかし、エオイド選手、ポープリ選手に追撃はかけません』

『お互い、手の内を完全にさらしていない状態ですから、経験が浅いエオイド選手はうかつに行けばやられると思ったのでしょう。というか、わざとでしょうね。あれが本当に槍であればすでに串刺しで勝敗は決まっていました。おそらく、遠距離は殺しかねないのでしょう』


エリスのいうとおり、エオイドの武具はまじめに武具で、殺傷を目的としている。

エオイドが超達人で、ポープリを圧倒できるなら、さっきので決まったが、流石にそこまでの技量はない。

だから、先ほどは槍の柄を腹部に当てたのだ。


「くうっ。まったく、あの人たちに師事した数日でこれか、はぁ、恐ろしいね」


そういって立ち上がるポープリだが、目がマジになっていた。

それを見てエオイドがとっさに盾を構えるが……。


ズドンッ!!


巨大な岩がエオイドにすでにぶつかっていた。


『巨大なストーンシューターが直撃!! 直撃しました!! 全く詠唱を聞かなかったことから、無詠唱です!! 凄まじい威力!! これは、エオイド選手無事か!!』

『はい、エオイド選手の安否が気遣われます。しかし、なぜエオイド選手はタイキ選手の技を使わなかったのでしょうか?』


いや、使えないんだよ。

大○斬だけ、エオイドにとっては理屈がわからなかったのだ。

魔力のあり方をみて断つのではなく、物質の構造を理解して斬るのは知識が追いついていなかった。


「エ、エオイドーー!! いやぁぁぁぁぁーーー!?」

「落ち着いて、アマンダ。エオイドは無事よ。ね、ユキ」


あ、忘れてた。

こっちのフォローしないとな。

パッとみれば、死亡シーンだよな。


「ああ、生きてるぞ。たぶん盾持った方は折れてるだろうが」


そ、エオイドは武具を装備するという前提がいるからダイレクトにダメージが体に届く。

盾を装備していても、あの巨大な岩を受ければいくら何でも腕にダメージが来る。


「ほ、本当ですか? エオイドー!! 返事をしてーー!!」


アマンダは俺の話を聞いてすぐさま、舞台の煙の中へ声をかける。

そして、少し間をおいて、声が返ってくる。


「……いつつ。ぶ、無事だよ」


煙が晴れて、その中から出てきたのは、左腕を右腕でかばうエオイドの姿だった。

うん、あらぬ方向に曲がってるな。

流石にあの質量は、エオイド特注のエンチャント盾でも防ぎぎれないよな。

完全に魔術ではなく、質量という純粋なエネルギーだからな。

エオイドは見てても痛そうな腕をして、ララ副学長の所まで歩いて……。


「参りました。降参です」


その宣言を受けて、ララは嬉しそうに微笑んで。


「エオイド選手の降参を確認しました。この勝負、ポープリ・ランサー選手の勝利です!!」



わぁぁぁぁぁーーーーー!!



「よく、頑張りましたね」

「うむ。最後はすまなかったな。さて、あとは……わかるな?」


歓声が響く中、ポープリ学長にそういわれて、エオイドはアマンダを見る。

そして……。


「アマンダ!! 俺とつきあっ……あでっ!?」


即座に、ポープリとララに頭をはたかれる。


「この期に及んでそれはないです」

「うん。流石にそれはないわ。もう一回」


悶絶している。

ま、腕折れてるのに、あの衝撃はいたいよな。叫び声を上げない、エオイドすげーよ。

それで、涙目をしつつも、エオイドは再び声を上げる。


「アマンダ!! 結婚してくれ!! 俺はお前が大好きだ!!」

「うん!!」


そういって、アマンダは拍手喝采の中、エオイドに飛びつく。

あ、死んだわ。

腕に当たってるし。



『なんとーーー!! この場で結婚宣言!! プロポーズがきたーーーー!! 観客全員祝いの声を上げています!! エオイド選手よくやった!!』

『心より祝福します。2人の未来に幸あらんことを。これにて、第一回決闘祭り、最終試合を終了します!!』



ひゅーひゅー!! わーわー!! 



そんな祝う声が街中に拡散したのは言うまでもない。

作戦は大成功だろう。



しかし……。



「ねえユキさん。砂糖生産工場ってどこでしたっけ? 俺、いま、トン単位で生成できる気がしますよ」

「奇遇だな。俺もだ。幸せすぎる知り合いがいるとこっちがむせるな」






さて、これにてエオイドとアマンダの話は一息。

あとはクリーナの故郷へ!!

そのまえに、落とし穴をやろうと思う。


あと、この回でユキが考えている魔力の概念を多少説明しました。

こういう基礎のもと、いろいろやっていると思ってください。


あと、まだ連休中なので、執筆が遅れる可能性あり。

そこら辺はご了承ください。


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