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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
新大陸 学府編

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第266堀:夢(挑む)か夢(諦める)

ふいー、もう夏も終わりだぜ?

みんな海にいってリア充したか?

それはいいとして、物語を忘れるなよ?

3話開けたが、一週間ぐらいだ。

忘れるとは思わないが、忘れてたら読み直すべし。

では本編へ。

夢(挑む)か夢(諦める)




Side:タイキ



「いやー、今日も暑いねー」


俺は魔術学府で、今日ものんびり授業を受けて、昼休みを過ごしている。

しかし、異世界に呼び出されて、便利屋の代名詞、勇者をやらされて気が付けば勇者王。

どこの、シンメトリカルなドッキングアニメですか?

まあ、それで忙しく国の立て直しをしている最中、俺と同じように、役割は違うが、この異世界にきたユキさんから、呼び出しを受けて、学府の生徒としてここへ来て現在に至る。

こんな明後日の方向の学校、学府だが、それでも俺にとっては懐かしい場所らしい。


「俺も、こんな風に通ってたっけ……」


俺は窓から、食堂へショートカットできる中庭から走る学生たちを見ている。

後ろから、先生が出てきて「土は払って食堂いけよ」と言っている。

俺たちの学校は土足禁止だからなー。

ああやって、中庭を走ったら怒られたっけ?

でも、やめられないとまらない。

そうしないと、食堂の席が埋まるからな。決して美味くないのに、不思議だったよな。

友達とワイワイやって、食堂でやっすい素うどん買ったり、パン買ったりして食事をしたもんだ。

ユキさんについて来た学府だが、毎日がなんというか、色々思い出す。

こんな先生いたなーとか、朝はだるいけど一生懸命起きたり、テスト前は落ち着かなくなったり、体育の授業だけはやる気満々だったり……。


「……やっぱり残っているもんだな」


こっちの世界に来てはや4年近く、毎日に追われて振り返る暇がなかったのか、それとも無意識に忘れようとしていたのか……。

俺も、向こうにいれば花の大学生だよな。

いやー、勉強あまり好きじゃなかったから、働いてるか?

でも、高卒ではなー。流石にないから、地方でもいいから大学に通ってるか?


「……あの、タイキさま」

「ん?」


俺はそんな声をかけられて振り向くと、弁当を持って隣に座っている、俺の奥さんのアイリがいた。

その顔はなぜか、少し困ったような、悲しそうな顔をしている。

弁当を持っているのだから、いつものように一緒に弁当を食べようと思ったのだろうが、あの表情をしているのはよくわからない。

学府に来てから、体は偽物とはいえ、夫婦2人きりでのんびりやれるのだ。

ユキさんたちとの仕事もあるけど、こうやって、夫婦の時間はちゃんととってくれる。

俺が王様の所はそうもいかないからなー。

ああ、めんどくさい。

と、違う違う、いつもは笑顔で一緒に弁当を食べるアイリがなんでこんな表情をしているかだ。


「どうした? 何かあったかアイリ?」

「……いえ、一緒にお弁当を食べようかと思いまして」


いや、その表情はなにか隠しているだろう。

うーん、慣れない学府生活で疲れたか?

あ、もしかして、新手のいじめか!?

うん、学長倒したりと俺たちの一団は目立っている。

いらぬちょっかいを出すバカがいてもおかしくない。

一応、その手のお約束から守るために単独行動は避けるようにしてるのだが、トイレとかちょっと目を離した隙にってのはあり得る。

ユキさんの奥さんたちならそのまま吹き飛ばすのだろうが、アイリは武闘派じゃないからな。

戦闘経験もほぼない、宿屋の娘だったし、変な男に言い寄られてたり!?

くそ、日本の学校より酷いいじめなのかもしれない!!

ユキさんはNTTだが、俺はNTRとか洒落にならん!!


「大丈夫か!? いじめか? 新手のいじめか? 大丈夫だぞ、変な相手の言うことなんか聞かなくていいからな!! アイリはちゃんと守るから、隠さずに言ってくれ!!」

「い、いえ、そんなことはありません。大丈夫です」

「本当か? 変なバカ貴族に言い寄られてないか?」

「はい。……ふう。タイキ様を不安させるとは、妻失格ですね」

「そんなことはないから。なら、なんで困ったような顔を?」


俺がそう聞くと、アイリは少し目を伏せて悩むが、すぐに決着がついたのか、顔を上げて口を開く。


「……タイキ様が学府を見る顔が、私には少しいたたまれなくなりました。……最近嬉しそうに、学生時代の話をしてくれて、タイキ様にとって、向こうの世界がどれだけ心に残って、どれだけ大事なものだったのかというのが分かりました。変な先生やご学友、家族と過ごす日々。そんな、タイキ様にとっての普通を私たちは奪ってしまった」


ああ、そういうことか。

別にアイリのせいでもないだろうに、原因はあの馬鹿王族どもだ。

勇者なんて便利屋を呼んでどうにかしてもらおうなんて、甘ったれたことを考える奴が悪い。

今にも泣きそうに、こちらを見つめるアイリをそっと抱きしめる。


「気にするな。って言うのは無理だろう。別に恨み言もないともいわない。だけどさ、アイリや皆に会えたことは悪いことだとは思っていない。幸い、ユキさんとか、同郷の人間もそれなりにいるみたいだし、何とか協力して戻る方法も考えるさ」

「……そ、それは、この世界から出ていくと?」


アイリはホロホロと涙を流し始めた。

ああ、不味い。

そんなつもりで言ったつもりはないが、彼女にとっては戻るということは、一方通行なのだ。

ま、ユキさんがいなければ、俺もあんな考えにならなかったが……。

とりあえず、俺がユキさんにされたようにするか。

中指を親指で押さえて、アイリのおでこに狙いを定め……。


ぴしっ。


「あいた!?」


アイリは突然の俺の行動に、目を白黒させて、額に両手をあてる。

因みに俺がユキさんにでこピン食らったときは、20mほど吹き飛んだ。

勇者でスペックかなり引上げされてるはずなんだが、マジであの人規格外だわ。

ユキさん本人もマジで驚いてたからな。

さて、勘違いをしているアイリに話さないとな。


「誰が片道切符で故郷に帰るか。大事な奥さんや仲間がいるのに」

「で、でも、それでは帰れません」

「ま、それが普通の反応だな」


そう、ユキさんが言ったのはごく平凡。

誰でも思いつくけど、誰もが不可能と思ったこと。


「この世界と俺の故郷を行き来できるようにすればいい」

「え?」


アイリは俺の言葉に更に目を見開いて、驚きをあらわにして、口を開く。


「で、でも、そんなことは不可能と……」

「今のままじゃな。でも、将来的には可能かもしれない」

「え、え?」


そう、今は無理なだけ。

そして、アイリの驚きも当然。

できないことが当然なのだから、俺の言葉は不可思議な夢物語でしかない。

でも、俺たち人はその夢物語を可能にしてきたのだ。

いや、生き物すべて、夢物語の形だと、ユキさんは言っていた。


いいや。

俺も、アイリも、世界の全てが知っているはずだ。

俺たちは、夢を目指して生きている。

夢というのが、人や動物、昆虫、植物、微生物などなど多種多様なだけで、誰だって、夢物語を目指している。

微生物は新しい環境に耐えられる体作りを、植物はよりよい繁殖の仕方を、昆虫はより自分が環境に適した体をめざし、動物はより早く広く効率よく動くために、人は人では到達不可能とされる領域を目指す。

これも、適当に上げただけで、個人個人で多種多様な進化という夢を見ている。


「なあ、アイリ。飛行機ってわかるか?」

「あ、はい。人が魔術を使わずに空を飛ぶ道具でしたよね? タイキ様の世界にそのような乗りものがあると聞きました」


未だに困惑しているアイリに、俺は前に話した飛行機のことを思い出させる。

数多の人々が、人が空を飛ぶなど夢想と言って、笑いものにした、ある兄弟の夢の結晶。

不可能を可能に、夢を夢の物語で終わらせずに、実現した伝説。


「うん。そうだよ。でもね、俺の世界でも、最初は人が自由に空を飛べるなんて思っていなかったんだ」

「え?」

「グライダーっていう、空をすべり降りる物や、気球なんてのはあったのに、機械が空を飛ぶなんて科学的に不可能って言われたんだ」

「そうなんですか?」

「そもそも、鳥とか空を飛ぶ生き物がいるんだから、それを真似たら飛べるはずだろう?」

「そ、それはそうですが、そんなことは可能なのでしょうか?」

「いや、飛行機は既に俺の世界じゃ当たり前だから、機械に合わせた、空を飛ぶという構造、システムができてるんだけどね」

「あ、そうでした」

「だから、俺は思うんだ。俺たちを一方的に呼び出すものがあるなら、帰る方法もきっとある。なら、お互い行き来できても不思議じゃないだろ?」

「……言われてみれば、普通のことですね。なんで、片道だと思っていたのでしょうか?」


アイリは可愛く小首を傾げて悩んでいる。

俺も同じように、いや、もっと現実が理解できて、ユキさんに喰ってかかった。

相手を引き寄せるのと、相手を寸分たがわず、同じ場所に戻す方法が同レベルの技術で可能なわけがない。

ましてや、この世界は同じ星なのかも不明なのに、膨張し続けている宇宙で、周回軌道に乗っていて、自転して、常に座標が変わっている惑星にどうやって、照準を合わせていいのか見当すらつかない。

だから、俺はユキさんに言った。


『非現実的なこと言わないでください。そんなこと不可能ですよ!!』


俺はユキさんと会って、郷愁の念が高まったのか、世界の行き来を示されて、逆にその不可能さを考えて、安易に甘い言葉を吐くユキさんに、八つ当たりをした。

そして、でこピンでふっとばされて、こういわれた。


『タイキ君。俺たちはいつだって、非現実的な不可能を可能にしてきたんだ』

『なにをっ!!』


俺は言い返そうと思ったが、ユキさんの次の言葉で呆然とした。


『人は空を飛んだ。宇宙へ行った。海の底へ、極小の世界へ、そしてこの魔術が存在している世界へ。なあ、どこに不可能がある?』


そう、俺たち人は、いつだって不可能を可能にしてきたじゃないか、ただ難しいだけとはちょっとレベルが違う気がするが、最初からあきらめるのは間違っている。


『為せば成る 為さねば成らぬ。って言葉知ってるか?』


聞き覚えはある。

日本の昔の人の言葉のはずだ。

しかし誰が言ったかと言われると首を傾げる。


『元は、武田信玄の言葉なんだが、上杉鷹山って人のほうが有名だな、江戸時代中期の山形県、出羽のって、詳しいことはいいか。その人の言葉でな、まさに文字通りだ。やればできる。やらなければできない。単純な言葉だ』


それはわかる。

だってユキさんの言った通り、文字通りなのだから、何も始めないのに、何かが成功するわけもない。

だが、それで終わりではなかった。


『この言葉だけだと、少年よ大志を抱け。とか、一念岩をも通すとかと同じような物なんだが、これに続きがあるのは知ってるか?』


俺はそれを知らなかったので、首を振るった。


『武田信玄はこう言った。為せば成る 為さねば成らぬ 成る業を 成りぬと捨つる 人のはかなき。そしてこれを上杉鷹山はより分かりやすく言った。為せば成る 為さねば成らぬ 何事も 成らぬは人の為さぬなりけり。ってな。意味わかるか?』

『成功しないのは、人が諦めるからですか?』

『ま、大体そんなとこだな。厳密にいうと色々違うが、結局、成功した人は最後まであきらめなかった。失敗した人は途中でやめてしまった。当然の話だよな』


ユキさんの言う通り、まさに当然の話だ。


『ま、タイキ君が思う通り、今までとは桁が違う難易度だろう。でもさ、あきらめたらそれで終わりだ。だけど、いきなり結果を出せという話でもない。そして、万が一帰れるとしても、嫁さんや仲間たちと永遠にお別れってのは寂しいだろ? 天寿を全うしたわけじゃないのにさ』

『……はい』


俺は、帰れる手段が見つかったとしても、すぐに帰るとは言えないと思った。

ここでできたものが多すぎる。


『なら、俺たちがするのは行き来を可能にすることだろう? それなら皆ハッピーだ』

『……欲張りですね』


俺はそれが大それた夢だと思っていた。

そんな都合のいいことがあるわけない。

今までだって、腐った国を立て直すために、部下を犠牲にしてきた。

ユキさんも、それはわかっているはずなのに、なんでそんなことが言えるのだろうと思った。

でも、そんな欲張りという皮肉もユキさんには通じなかった。

簡単に、いい笑顔で切り返してきた。


『欲張って何が悪い。夢を目指して掴み取る。それは誰でもやってることだ。現状に負けて、妥協して、ハードルを下げるってのも重要だろう。だけどな、この不可能は妥協するとこじゃない。ま、こういうのには反対者も沢山いるけどな。だからこそ、燃えるだろ?』

『不可能を可能にする? ですか?』

『ああ。男なら一度は夢見ただろ。かめは○波。それができたんだ。きっと瞬間移動とかあるかもしれない』

『いや、気じゃなくて、魔術ですけどね』


そうか、魔術的なアプローチでなくてもいいのか、科学的や、どこかの世界みたいに気っていう技能もあるかもしれない。

あるいは、持てる技術すべてを混ぜてみてもいいかもしれない。


『というわけだ。やる前からあきらめるより、取り敢えずやってみよう』

『ははっ、まったくユキさんには敵いませんね』

『ま、俺も親友たちからの受け売りでな。あいつらはもっとすごかったぞ』


そして、俺たちはその場で、思いつく限り、世界を繋ぐ話に明け暮れた。

で、お互い家に戻るのが遅れて怒られた。


「す、すごいお話ですね。いえ、当然と言えば当然ですけど」


俺は気が付いたら、ユキさんとの話をアイリにしていたらしく、しきりに感心した様子で頷いている。


「まあ、そんな感じで、アイリを置いていくなんてことはない。行き来できるからな、ちゃんと俺の親に挨拶に連れていくよ。俺が通ってた学校の案内もな」

「はいっ。その時を楽しみに……、いえ、その時が来るよう私も力を貸します!!」


アイリがいい笑顔で返事をしてくれる。

うん、この笑顔だけでも、前向きになった意味はある。

というか、行き来できても、俺の生活はこっちがメインだろうがな。

だって、学校中退だし、向こうじゃ一般人より就職不利だし、親にアイリの紹介とかすれば誘拐とか言われて警察に突き出されそうだし……。

あれ? 俺、戻らない方がよくね?


「そういえば、ユキ様たちは、今日ウィードに戻っていらっしゃいますけど、なにかあったのでしょうか?」


アイリはそう言って、抜け殻、自立モードで学府にいるドッペルゲンガーのトーリたちを見ている。


「ああ、確か海ができたから、海開きしてるってさ」

「海?」

「そっか、アイリは海知らないものな。ユキさんは奥さんたちとの試験評価終わったら俺たちも案内するって言ってたし、その時を楽しみにしよう」

「なにか、ユキ様たちにお世話になりっぱなしですね」


アイリの言う通り、本当に世話になりっぱなしだと思う。

まあ、ユキさんが俺より年上だから、当然だと思っていたけど、それも違うしな。

あの人ができた人だからだ。


「そうだな。だから、ここらでちゃんとお仕事しよう」

「え? どういうことですか?」


立ち上がった俺をアイリは不思議そうに見つめる。


「残りの聖剣使いの1人が魔物の森で何かやってるらしい。アスリンちゃんのたーちゃんから連絡がきた」

「……どうかご武運を」

「おう。霧華さんたちもいるし、わざわざユキさんたちを呼び出す必要もない。一応連絡だけはしててくれ。レベルも俺で十分対応できる。あと……」

「あと?」

「夢の大きさが違うからな。夢へのハードル下げた相手に負ける理由がない」

「はい!! 信じています。勇者様!!」


奥さんの声援も貰って、これで負けたらユキさんにいじめられるし、自分自身も恥ずかしい。

さて、勇者として働きますか。

分かりやすい、絶望した元英雄たちに、夢をあきらめない強さってのを見せてやろう。




為せば成る 為さねば成らぬ 何事も 成らぬは人の為さぬなりけり




さあ、夢を実現しようじゃないか。




ということで、タイキ君とアイリ。

そして、ユキの馬鹿3人のお話でした。


でも、みんなも同じだぜ?

夢の大きい小さいにかかわらず、挑むことすらやめてしまってないか?

俺も、コツコツ趣味で書いてればこの状態だ。

何でもいいから、余裕があるならなにかやってみるといいかもな。


いつだって、人は、生き物は夢を目指すもんだろ?


しかーし、それに本気を出すのはめんどいので、俺はゲームしながらゆったり自分のペースでやるわ。

何事もほどほどに。


あ、活動報告に2巻の表紙載せてるから、気になる人はどぞー。

内容はルルアをかくまって、デリーユまでだ。


君は、本を買ってもいいし、買わなくてもいい。


 買う

 買わない


これも人生という冒険の選択肢だよな。


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