第253堀:主人公の使い道
なぜ主人公とここまで関わるのか?
読めばわかるよ!!
主人公の使い道
Side:ユキ
一大空中戦はポープリが最後には地力の違いで、力尽きて終わった。
しかし、結果は負けたとはいえ、内容は悪くなかった。
そう、内容は。
ポープリ本人や、あの一方的な戦いを見ていた人たちは絶望しか浮かばないかもしれないが、クロちゃんの身内である俺たちにとっては、勉強になる内容だったわけだ。
「はー、学長って凄いね。あそこまで地力差があったら、逃げるよ僕」
「たぶん、学長は学府を、皆を守るために、最後まで残ったんだと思うよ?」
「……トーリの言う通りだと思う。力の差が分からず戦うほど、中身は幼くない」
ケモミミ3人はそんなことを話している。
そうだな。あの学長との出会いの印象は最悪だが、やはり根はいい人なんだろう。
絶対に勝てそうもない相手に立ちはだかったんだから。
ま、俺なら適当なところに誘導して、そのあと撤退の一手だけどな。
一対一で勝てそうにないなら、多数で囲んで、勝てる状況を整えるしかない。
こういう時は、戦闘情報をいかに持ち帰るかが、一番大事だ。
相手の動き、手札を明らかにし、どれだけ格上だろうが動きを封じれば勝てる。
でも、俺の考えていることはそれではなかった。
「リーア、あの戦いどう思った?」
ケモミミ3人の意見は出ているので、リーアに話を聞いてみる。
あ、因みに、俺たち以外は学長を連れて学府に帰っている。
現在、俺たちは泊まっている宿屋で集まって話しているのだ。
学府への状況説明班と、学長の戦闘分析情報班で別れている。
タイキ君はエオイド君訓練中。
と、質問をしたリーアは可愛らしく首を捻って少し悩んでいたが、思いついたのか、口を開く。
「そう……ですね。あの時の戦いを見て思ったのは、学長は異常に長く踏ん張ったところが不思議に思いました」
「んー? それって学長が頑張ったからじゃないの?」
リーアの問いに、リエルが不思議そうに答える。
まあ、必死に頑張ったからあそこまで持った。と、考えるのが普通だよな。
「なるほど。頑張ったのは間違いないけど、リエル、本質は違うよ」
「どういうこと?」
「……空中戦の経験が全く違ったんだと思う。クロは、空中でも地面と変わらない動きしかしてなかった」
「あ、なるほど。そういわれればそうだ」
そう、学長とクロちゃんの戦闘が、力差が歴然としていたのに、決着が長引いたのは経験の差が大きかったせいだ。
空中戦。
これは、本来翼のない人には無縁のことだ。
無論、地面で生きる獣たちも同様。
しかし、俺たち地球の人たちにとっては、空中戦は戦争において一番大事なものになっている。
翼の役割を持つ、飛行機、戦闘機が出てきて、地球の戦争は大艦巨砲主義から、空戦の時代へ移り変わった。
それを知らしめたのは、第二次世界大戦。
地球上の有史以来、最大規模の、ほとんどの国家を巻き込んだ戦争。
真っ二つに世界をわけ、血で血を洗い、史上最悪の兵器が登場した、二度目の世界大戦。
当時の動員兵数は色々な記録があるが、凡そ億単位。
そして、民間人を含めた死者が凡そ5000万人以上。
この第二次世界大戦のことは、ウィードに戦車やらを導入するときに説明した。
無論、セラリアは絶句し、ルルアは失われた命の数に唖然とし、デリーユは黙って話をきいて、シェーラは涙を流していた。
ま、そりゃそうだろう。
ウィードがある大陸の大きな国の人口数を考えれば、大陸全人口を全て兵士にして漸く揃えられる数だろうし、その兵士を養うための食べ物や物資を考えると、それ以上の人がいる。
そして、その内5000万人が死亡。
と、そこはいい。
その戦いの中で、大艦巨砲主義は、航空戦力によって薙ぎ払われた。
つまり、制空権の確保が何よりも重要だということだ。
動きが丸見えだし、下から上への攻撃手段はとても乏しい。
今回の件もそんな空中戦での性能の差が分かる内容だった。
クロちゃんはずば抜けた自身の性能のおかげで被弾しても事なきを得たが、今後も同じとは限らない。
というか、相手が魔術を攻撃手段にしてたから助かったのだ。
現代のジェット戦闘機が相手では、クロちゃんはなすすべもなく死んでいただろう。
音速から放たれる超スピードの攻撃は、熱量、質量ともに、並の魔力障壁では止められないし、戦車をぶち抜く対戦車ミサイルもある。
その類は、いくら装甲が厚くても意味がない。
パンツァーファウスト、RPGが有名だが、モンロー・ノイマン効果によるメタルジェットに硬さというものは意味がなくなる。
魔術は万能だぜひゃっほい!! ってイメージがあるが実は違う。
いや、万能で間違いはないのだが、攻撃力を防御力が上回ることはできないと、今までの研究で俺は判断している。
それは、なぜか?
まあ、魔力障壁が破れることがあるということを知っていれば簡単だと思う。
結局は魔力障壁も硬さを有する物体であるということ。
どこでも構築ができ、硬さもそれなりだが、超圧力により装甲がユゴニオ弾性限界を超えて流動質になってしまえば、爆風を防げなくなり、その一点だけは攻撃を防ぐ術が無くなる。
簡単に言えば、一定以上の質量と速度をもったものが当たると、当たった装甲は柔らかくなって、攻撃は抜けると思っていい。
と、この様に、我らが地球の人々が戦車という、分厚い鉄の箱をぶっ壊す為に開発した、科学の結晶ともいうべき兵器を、この中世ヨーロッパレベルの知識で防御しようとするのが間違いである。
実際、受けなければいいし、二重に障壁を張って、受け流す体制をとればいい。
まともに受けるのが間違いなのだ。
が、これは俺が意図的に、モンロー・ノイマン効果を利用する兵器にたいして張れる専用障壁であって、誰でも使えるものではない。
話がそれた。
つまりは、空戦の経験がなさ過ぎたから、クロちゃんは学長を相手に時間がかかったわけ。
これからは空戦の訓練を入れないと、いざというとき負けることになる。
一応高射砲とかは用意しているが数は多くないし、やっても地対空だからな。これからは空対空を練習しないといけない。
魔術で浮遊とか、リッチ系とかワイバーン系だよな。
戦闘機とか戦闘ヘリを使えればいいのだが、あまりそっち系は気がのらないんだよなー。
費用とか、訓練とか、鹵獲されたときとか、空の気流とか調べないといけないし。
「そうですね。クロちゃんは沢山被弾してましたし、力任せの戦い方をしてたんですね」
「だねー。クロの相手が僕たちだったら、攻撃を一発でももらえばノックダウンだもんね」
「それを考えると、学長の空中での動きは素晴らしかったと思います」
「……ユキはこれを言いたかった?」
カヤにそう言われて、空軍をどうやって作るかを頭の隅に追いやる。
「ああ。まあ、まずそうなら、相手を地面に引きずりおろせばいいんだけど」
「どういうことですか?」
「わざわざ相手の得意なフィールドで戦う必要はない。羽をもぎ取るとか、スキル、魔力の放出を無効化して地面に叩き落とせばいい」
「「「なるほど」」」
リッチ系も、ワイバーン系も、いやこの世界の空飛ぶ魔物は基本航空力学を無視している。
例えば、鳥は自身の体重を極限まで減らし、飛べる機能を保っている。
どれぐらい極限かというと、鳥の飛べる構造を人に適用するならば、体重を10分の1以下にして、自分の体積の2倍以上の羽を持たなければいけない。
まあ、これで分かると思うが、空飛ぶ魔物たちは物理的に飛べるわけがないのである。
では、なぜ飛んでいるのか?
それは、ミラクル魔術や素敵スキルのおかげということ。
だからそれを無効化すれば、敵は飛べなくなって落下する。
質量的に、落ちただけで死にそうだけどな。
で、魔術とスキルを封じられた、羽を折られた魔物は戦車砲や銃撃でかたづけられるというわけだ。
「さて、今回の戦闘の反省はいいとして、ニーナ、聖剣使いが学長の戦いを観察していた。それはどう思う?」
そう、あの時のクロちゃん戦は俺たちだけではなく、聖剣使いが覗いていた。
俺たちを追いかけて偶然見たのか、それとも意図的に仕組んだのか……。
「今のままじゃなんとも言えないよ。でも、霧華からの情報待ちがいいとおもうよ。ま、僕的には学長も長生きしてるみたいだし、関係があっても不思議じゃないけどねー」
「だね。こういう捜査は地道にやって、相手の逃げ場をなくしてから踏み込むべきです」
リエルとトーリの言う通り、今のままで白黒判定はやっぱり難しいか。
今後変な動きをすれば、そこから問い詰めていくしかないな。
というか、ここの学長が聖剣使いと関係があるかもしれないとか、良い情報源だよな。
先に丸め込んでおいて正解だなこりゃ。
「と、そういえば、ワイバーンと遭って、なんでクロちゃんが本来の姿を現す羽目になったんだ?」
そうそう、発端を聞いていなかった。
クロちゃんが大きくならなくても、トーリたちがいればどうにでもなっただろう。
「あー、それがですね……」
「サマンサと、アマンダが頑張ってるから、僕たちが出にくかったんだ」
「……私たちは守りに徹して、いざというときに手伝おうと思った。エリスも彼女たちの力量を把握するいい機会って言ってたし」
「なるほどな」
確かに、サマンサお嬢さんや、アマンダさんの実力は見ていないからわからない。
サマンサお嬢さんには一度無詠唱の魔術を展開されたが、それだけだ。
実戦になれば、またスタイルが変わって、評価も変わってくるだろう。
「で、私たちは様子見だったんですが、軽い戦闘の時に小石が飛んできて、アスリンに当たってしまいまして」
「それで、クロちゃんが躍り出たと」
「はい。それで、瞬く間に制圧して、アスリンにワイバーンの処罰を迫ったってわけです。その後は学長が飛んできて、戦ってという感じです」
あのバカ犬。
それで、ワイバーンを後ろに従えた姿を見られて、敵と勘違いされたわけか。
「結局、ワイバーンはなんで一緒に学府に帰ったんだ?」
様子見してた理由はわかった。
しかし、ワイバーンを連れ帰ったのがよくわからん。
どう考えても騒動にしかならんだろう。
「ワイバーンを連れ帰った理由は、アスリンがアマンダにワイバーンを譲ったんです」
「は?」
意味が分からん。
なにがどうして、そうなった。
「実は、クロと学長が戦っている間に、アスリンちゃんがワイバーンと話をして、いつものように、お友達になったんですが、それをそのまま連れ帰ると、目撃者が多数いるので、大問題になりかねなくて……」
ああ、トーリの言いたいことはわかった。
「アスリンがワイバーンをテイムなんぞしたら、周りは大騒ぎになる。そこで、丁度いいテイマーのアマンダさんがいたから、その面倒を押し付けたと」
「はい。アスリンもエリスから事情を聞いて納得しましたし、一緒にワイバーンと話をしたアマンダにワイちゃんを譲るのは特に嫌がりませんでした。アマンダのことは好いていたみたいですし」
「仲、良さそうだったしな」
出かける前に、クロちゃんを見せて嬉しそうにしていたアスリンを思い出す。
「クロと学長が戦っている間に、アマンダはすぐにワイバーンに騎乗できるほどテイマーの才能を見せてましたし、それで皆を連れて離脱したわけです」
「なるほど」
そうなると、アスリンがテイムしたなんて信じないし、面倒事を背負う理由もない。
丁度いいアマンダさんに押し付けたわけか、ナイスだなエリス。
「そういえば、ユキさん。なんでタイキさんがエオイドの訓練に付き合ってるの? 僕、あの人苦手なんだよねー」
「……正直あいつは嫌い。近寄ると辱められそう」
「ですね。アマンダさんやサマンサさんは寛大に許しているみたいですけど、私だとバッサリ殺しますよ?」
「……私も、ユキさん以外に、あんなことされたくないです」
……すげー評価だな、エオイド君。
いや、当然か。
あのラッキースケベを笑って許せるのは、エオイドに好意を持ってるやつだけだろうしな。
前も言ったと思うが、あれは普通に犯罪だしな。
嫁さんに手出したら、リーアみたいにバッサリはしないけど、それなりの罰を与える所存である。
「なんで訓練をっていうのは、俺たちの思い付きだな」
「思い付き?」
「俺たちが、あのエオイドを主人公って言ってるのは知ってるだろ?」
「うん、知ってる。けど、全然信じられない。僕たちにとって英雄で旦那さんはユキさんだけだもん」
リエルの言葉に全員が頷く。
「気持ちは嬉しいけど、それって、俺が学園で起こる問題を主人公の役割で解決しろってことなんだよな」
「「「あ」」」
俺の言葉で自分たちが言った問題に気が付いたようだ。
俺に全て押し付ける言葉なんだよな。
「……なるほど。ユキとタイキはエオイドを成長させて、面倒事をあのスケベに押し付ける」
うん、カヤ、間違ってないけど、もうちょっとオブラートに包んだ言い方をだね。
「それで、私たちは聖剣使いや、学長との話し合いや、情報収集に手をだせるわけですね」
トーリの言う通り、こっちは自由な時間が増えて、目的を達しやすくできるわけだ。
「ついでに、何かいい話があれば、その都度、エオイドたちの知り合いということで首を突っ込めるわけですね」
リーアもあくどいこと考えるようになったね。
いや、その通りなんだけどさ。
面倒事は任せて、こっちのほしいものがあれば参戦する。
そんないい立場を確保できたわけだ。
都合のいいことに、アマンダさんはワイバーンをテイムしたことで、エオイドたちの戦力は上がっている。
ワイちゃんは、アスリンにたのんで、こっそり連れ帰って訓練させておこう。
もう、アマンダさんはワイバーンをテイムしたことで、確実にトラブルフラグ立てたしな。
「今頃エリスが、学長や副学長から頼まれる面倒事の解決を、エオイドたちに任せるように言っているはずだ」
「「「うわー」」」
エリスは学長との交渉役だから、最初から、エオイドという主人公を便利屋として使う予定なのを話している。
学長としても、俺たちにこれ以上借りは作りたくないし、自分の手札で解決できるならそっちをとるだろう。
もう、いい感じに便利度があがったエオイドたちがいるから、エリスが提案すればすぐに話にのるだろう。
エオイド君の話を聞けば、トラブルは何度か退けたらしいし、サマンサお嬢さんやほかのクリーナだっけ?
まあ、フラグも立ててるみたいだし、エオイドを主人公とした話なら、俺たちは途中で出てくる修行パートの登場人物ってところだな。
「これで、学府での面倒事はほぼ回避できるし、あとはトーリの言った通りゆっくり焦らず、調べ物をしよう。学業はまあ、そこそこでな。悪すぎてもジルバとエナーリアの評価が悪くなるし、良すぎても、今後この学府に入学するであろう、本当に学びたい生徒にしては迷惑だろうしな。俺たちと比較されて」
あとは、のんびり目立たず、主人公という、フラグを良いものから悪いものまで集めまくる奴に任せればいいのだ。
死んでもらったりすると後味悪いから、それが無いように強化策は取らせてもらった。
毎週、次の展開を6日待つのは苦痛だった。
しかし、これからはリアルで見られるんだ。
ちゃんと、タイキ君とカメラ用意しておかないとな。
答えはでたな?
主人公とは便利屋の代名詞だ。
しかし、力量が低ければ仕事は回されない。
なら力量を上げればいい。
いやー、盾って便利だよね。
さて、空飛ぶ爬虫類とか、骸骨とかの対処方はここで説明したからな。
よく覚えておくように。




