第203掘:王者としてのハーレムとは
王者としてのハーレムとは
side:ジェシカ
「さあ、起きてください」
「んー、もうちょっとまってくれ」
朝、初めて私はユキの寝顔を見て、起こすということをしている。
というか、一緒に裸で寝ている。
……うん、昨日の夜はすごかったです。
初めて女になれたといいますか、喜びを知ったというか……とにかく色々嬉しかったです。
「……まったく、こんな顔を見るのは初めてですよ」
私は横で眠るユキの顔を見る。
そこには、穏やかに寝る、年相応の可愛らしい寝顔だ。
普段、ユキは私が起きている頃には朝御飯の準備をしていて、部屋にいたとしても、既に起きている。
そう、寝顔自体を見たことが無い。
「……むむ。あー、そういうことですか」
無性にユキが愛おしくなってきた。
これが、無条件の愛というものですか。
押し倒して、昨日の続きをしたくなってきました。
ですが、今日も今日とて、ベータンの街に行って仕事が山ほどあります。
仕方がないので、ユキの頭を撫でて我慢することにします。
「おー、ジェシカ、ありがとうな」
ようやく目が覚めたといいますか、まだ寝ててほしかったといいますか。
「いえ、おはようございます」
「ん、おはよう」
挨拶をして、少し見つめ合います。
「これからよろしく。嫁さん」
「はい、よろしくお願いします。旦那さま」
うん。いい旦那さまを得られました。
ああ、無性にユキが世界で一番の旦那だと、夫だと叫びたくなります。
むー、私も他の奥さまたちと同じように、ユキ至上主義になる素質でもあるのでしょうか?
「とりあえず、服着てしまおう。朝から襲ってしまいそうだ」
「……そうですね」
ぜひ襲ってくださいと言いたくなりました。
……次は随分あとですから、誰かと混ざるか、日中やるしかないですね。
く、ハーレムを持つに相応しい人ではありますが、もう少し色に溺れるべきですね。
私たちが欲求不満になりそうです。
何処かの、奴隷を買い漁って、ただ欲求を満たすためだけに、女性を代わる代わる物のように扱う愚か者を見習えとはいいませんが。
一週間の内一日ぐらいは、奥さんの私たちとずっとしてるべきだと思います。
というか、私たちがユキ不足すぎるんですよ!!
「おやおや、ジェシカではないですか。どうでしたか、初夜は?」
ユキは私を置いてさっさと朝食の準備に行ってしまい、仕方がないので、ユキが使った枕の残り香を楽しんで、外に出たのですが、ラッツと出会い、まあ、予想通りに昨日のことを聞かれました。
「ええ、とりあえず、したりないです」
「そうでしょうとも。お兄さんと寝るのが夜だけなんて短すぎますよね」
「はい。寧ろ一日中、私たち全員を相手にする日をつくるべきです」
「おおっ、それは名案ですね。奥さん会合で提案してみますか」
「奥さん会合ですか?」
「そういえばジェシカは知りませんでしたね。お兄さんの妻、奥さんだけの会合です。ここで、どんなエッチをしたとか、何回したとかを伝えて情報の共有して、不公平が無いようにするんですよ。ま、個人個人で大切にしたいこととかはありますからね。発表は自由ですけど、エッチの幅が広がって楽しいですから」
「……非常に興味深いですね。たとえばどういうエッチですか?」
私がラッツに話を聞こうとすると、横から別の人物から声がかかる。
「ユキの寝顔を見ながら胸でしてあげるのよ」
「おおっ、ラビリスならではですね。私もサイズ的にできますが」
ラッツが言ったとおり、今の発言はサキュバス族のラビリスだ。
彼女は年の割にはかなり大人びていて、胸は特に私に匹敵する大きさを誇っている。
「……寝顔を見ながらですか」
「ええ、寝ているときのユキって無防備で可愛いから、やればやる程反応があって楽しいのよ」
「ああ、わかります。起きているときより素直というか、敏感と言いましょうか」
「ラッツの言う通りだと思うわ。寝ているときのユキは気持ちいいことに素直だから」
「……つまり、寝ているユキに色々して好きな所を探っていると?」
「それもあるわね。私としては、寝ているユキが気持ちよくなってくれるのが嬉しいのもあるのだけれど」
……なるほど。
確かに、ユキは色々厄介な人物を相手にするため、鉄面皮ではないのですが、非常に何を考えているか分かりにくいです。
そのユキが自分のすることで、表情を変えるのは……うん、私も今度してみよう。
「うぉい。朝っぱらから変な話してるんじゃねーよ」
「朝御飯ですよー」
「なのです!!」
おや、どうやらユキたちは朝御飯の準備ができたみたいです。
「ユキさん変な話ではありませんよ」
「はい、シェーラ様の言う通りで御座います。ここは我が家で身内だけです。旦那さまの睦事を話しても問題ないかと」
「いやキルエ、マジで返されると返答に困るが……、方向性の問題でな。朝はこれから一日が始まるってことで」
「旦那さまの言い分も分かりますが、普通はここまで話しているのです。朝食のあと、お相手をするべきかと」
「……そこまで元気はない」
「「「元気にしますから大丈夫」」」
全員でそんな事をいうと、ユキはなぜかがっくり肩をおとす。
「……なんだろう。絶対なにか間違っている。それか、俺の常識の問題か?」
「恐らく両方かと。旦那さまはお立場がとても特別で特殊です。間違っていると言う発言に対しては、本来は襲う襲われるの位置が逆ですね。旦那さまが睦言に消極的すぎます。ガルツ王は正式に子供はシェーラさまを含め7人いますが、愛妾も含めますと30人ほどです。奥様の数は愛妾を含めお遊びを換算しても50人は下りません」
「多くない!?」
「いえ、この中で正式に正室、側室と認められるのは20人程度ですね。外交で女性を抱かなければいけないこともあるのです。で、お分かりと思いますが、世界の救いを求められている旦那さまがガルツ王以下の女性関係なのは可笑しいわけです」
キルエの言う事はもっともです。
王は外交で欲してもいない相手と結ばれることも多々あります。
一度相手をするだけでほったらかしという、只の事実作りさえ存在するのです。
それなのに、ユキは王より遥か頂きを目指さなければいけない身。
16人の奥さんとはいえ、殆どが有名無実。
本来であれば、私みたいな騎士からの妻はあり得ない。
遊びに分類されるのが普通だ。
ユキの横に立つのはそれなりに権力を備えたものでなければ意味がない。
力は十分ですが、護衛の域をでませんからね。
「ですが、旦那さまの求める方向性を考えまして、今の16人という数字で奥様方はなんとか納得しております」
「えー、16人って多くね? 十分じゃね!? セラリア、シェーラ、ルルア、デリーユ、リーア、エリス、ラッツ、ミリー、トーリ、リエル、カヤ、ラビリス、アスリン、フィーリア、キルエ、そしてジェシカ。十分でしょ!!」
「なんじゃ、遅いと思ったらこんな所で話しておったか」
キルエがユキに説明をしてる所にデリーユがやってきて、朝食を運ぶ手伝い……もとい、そのままさっさともっていってしまいます。
「ほれ、他の皆もまっておる。さっさといくぞ」
「……ああ」
「そうですね。旦那さま続きは朝食後に」
「えー」
とりあえず、朝食はいつもの通りわいわいしながら食べ終わったのですが、宣言通りキルエが皆の前でユキにハーレムとは何たるかを説き始めました。
「いいですか旦那さま。ハーレムという女性を囲う行為を悪など、マイナスのイメージが多いように思われます」
「そりゃな……」
「その認識こそ間違いなのです。いいですか……」
それを興味深く見る他の奥さんたち。
無論、正室のセラリア様も面白そうに見られています。
「ねえ、デリーユ。キルエどうしたの? 今更ユキにハーレムの何たるかを説き始めるなんて」
「ん? ああ、ユキがのう、妾たち16人で十分だとか抜かしておったからのう」
「あー、ユキはそこの所ずれてるわよね。一夫一妻っていうのは庶民では普通かもしれないけど……」
「いや、庶民でもこの大陸では一夫多妻、多夫一妻も珍しくないぞ。妾が旅して廻った村や街では普通におる」
「ふーん、ならユキの故郷のせいね」
「ま、妾たちに常識をかなぐり捨てさせたのじゃ、これぐらいは捨ててもらわんとな」
「そうよね。十分全員には愛はあげてるし、十分合格なんだけど」
「そこも問題ではあるんじゃがな。ユキの立場は今やそこらの王族よる遥かに上じゃ。都合上、愛もクソもない行為を求められる。しかしその時、ユキは顔をしかめるぞ?」
「しかめるどころか絶対拒否するわね。リアリストではあるんだけど、個人には甘いんだから」
「じゃな。なまじ頭もいいから、抱かなくてもいい解決方法をポンと出しおる」
「しかも、今後問題にならないように精密に調整をした解決方法をね」
「性質が悪いわ。本来ならユキはそのような雑事に頭を使うべきではない」
セラリア様とデリーユの話はもっともだ。
世界を救う方法を模索しなければいけないユキが、一個人、一国の政治問題解決に尽力して時間と思考を割くのは、どう考えても有り得ない。
「本人曰く、それも必要な事と抜かしおるしな」
「ユキの悪い癖よね。そんな事すれば、捧げものにされた女性個人より面倒なことを抱えるはめになるのに」
「じゃな。抱いて事実だけ作れば資金や物資の供給だけ済ませて、あとは向こうに舵取り任せればよいのじゃ」
「今で、ロシュール、ガルツ、リテア、魔族領、勇者タイキが治める国、新大陸のジルバと、殆ど舵取りを任せてるのに、私たち妻は忙しくて手塞がりだしね」
「そこも問題じゃな。本来ハーレムと言うのは相手を侍らせることが重要であって、仕事をさせるわけではないのじゃ」
「しかも侍らせて意味のあるのは、私、ルルア、シェーラ、デリーユぐらいだもんね」
「妾は外してくれ。王女は殆ど意味のない肩書きじゃしのう」
「それなら、3人。そして新大陸では獣人のシェーラの意味はほぼ無し」
「実質の2人。さらにその2人も妊娠で待機と」
「全然ハーレム足りないわよね」
「足りておらんな。ユキや妾たちは全員正室と思っておるが、他所から見れば、今上げた3人以外は愛妾じゃ。たった3人ハーレムは流石にのう……」
2人の言う通り、確かに今もハーレムではあるが、王者としてのハーレムの意味合いは弱すぎる。
今上げたとおり、セラリア様、ルルア様、シェーラ様以外は権力は無きに等しい。
ユキが望む、個人戦力や細かいところでの対応力は確かにあるが、それは権力を持つ相手と交渉するにはジルバでやったように圧倒的な力を見せつけるか、あえて立場で下というスタンスを取らなければいけない。
この大陸で、ユキは既に名の通った国の姫を妻に迎えているので交渉事に差しさわりはないが、新大陸では只の傭兵。
「というか、新大陸では私たちが侍っても護衛以上の意味はないわよね」
「向こうでこちらの権力をかざしても意味不明じゃろうしな」
「なんとか、新大陸で有数の国のお姫様でも娶ってくれないかしら」
「無理難題じゃな。ユキ本人があれじゃしのう」
そうやって、2人はハーレムは何たるかを説明されているユキを向く。
「……とのことで、旦那さまはまだまだ、娶って貰わなければいけません!!」
「いーやーだー!! これ以上キルエや他の嫁さんの時間を減らすなんて、旦那さまとして認められん!!」
「……そ、そのようなことをいいましても……」
あ、キルエ、今の返しで顔が赤くなった。
「ずるいわね」
「ずるいのう。あんな殺し文句いわれたら、余所の女になんぞ触れてもほしくない」
ですね。
本当にそう思います。
しかし、ユキの負担を減らすためにも、新大陸で有力な美しい姫が必要なのも事実。
そして、私だけが新大陸の情勢に詳しい。
「私が、色々探って、奥さん会合で相談するべきですね」
実際、護衛はリーアと私の2人で足りていないのです。
お姫様護衛がいても問題ないでしょう。
……一番有力なのはジルバのお転婆姫ですが……。
ん? 何か大事なことを忘れているような?
side:エージル・トムソン エナーリア王都
「へぇー、僅か2週間でよくもこれだけ兵士があつまったもんだね」
「なに言ってるの。当初から、砦に20万の兵を集めたら奪還、及び侵攻を開始するって言ってたじゃない」
僕たちは今、眼下に集まる10万の兵を見て会話をしている。
王様との謁見は僕たち2人を主将として聖剣と聖剣使いの奪還、そのままジルバ領を攻め落せとありがたい命令をもらった。
「準備自体前からってことね。でも僕は予定ではこの戦について行くはずじゃなかったんだよな。全然敵の情報をもってないんだけど。砦、ベータンの街、スエイートの街だっけ? どちらを攻めるんだい? それとも同時にいくのかい?」
「そうだったわね。今回の作戦は一点突破よ。まずはベータンの街を領主と協力して落とします」
「ベータンって、たしかプリズムが世話になった人が領主だっけ?」
「ええ、周りからは引きこもりとか言われているけど、今回の密偵の連絡といい、トンデモない人ね。わざと降伏、恭順を示して、私たちに情報を流してくれたの。無論、私たちでも違いがないか探ったけどね」
「へぇー、それはすごいね。で、その情報は?」
「砦に魔剣使い2人、スエイートに魔剣使いが1人、ベータンに傭兵を主将に置いているらしいわ。兵数的には砦に2万、街が2500ほどらしいわ」
ん?
なにか今変なのが聞こえた様な?
「ごめん、プリズム、今ベータンに傭兵が主将で詰めているって……」
「ええ、そうよ」
「どういうこと?」
「私と領主の見解は、罠とみているわ。ベータンは比較的裕福だから、そこを占領したジルバ軍はそこに主戦力を置くと思うでしょう?」
「そうだね。あそこの収穫量とかは、一帯では一番だし」
「で、私たちは比較的攻略しやすいスエイートに向かうとして、そこで魔剣使いが出てきて迎撃されて手間取るとどうなるかしら?」
「それは、下手に軍を割いていたらスエイート方面が全滅しかねない、さらに全滅しなくても砦とベータンから挟まれる可能性があるね。なるほど、だから飾りと思われる傭兵が主将をつとめるベータンを一気におとして、優位に立とうってわけだ」
「ええ、兵数はこちらが圧倒しているけど、砦を一瞬で落とした話を聞くと、下手に分散するとやられかねないわ」
「まずは、足場を踏み固めるってわけかい?」
「ええ」
聞く限り、プリズムの作戦に問題はない。
僕も、戦略を考えるのは苦手だし、特に問題も無さそうだから任せよう。
研究が僕の本分だしね。
だから僕は、1人の兵士からあげられた報告をそのまま頭の隅に追いやった。
だって、あり得ないんだ。
遥か後方から光弾が飛んできて、門を破ったとか。
いったい、どんな魔術だよ?
と言うわけで、ハーレムの説明会でした。
ユキの場合は只女性を侍らせればOKではなのです。
この場合
セラリア、ルルア、シェーラが権力を持ったハーレム要員。
その他は愛妾でハーレムに入るか怪しいレベルになるわけです。
ま、戦闘能力は群を抜いていますので、腕っぷしに頼れば問題解決は容易いです。
が、それでは今後の展開に問題が生じるのも当然。
ユキもそれを分かってはいますが、元来日本人です。
無茶いうなよ。現在でも一杯一杯って感じです。
あ、後半のエナーリア軍勢。
少しは皆心配してね!!
敵が来るんだよ!!
ピンチなんだよ!!




