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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第1938堀:大事な視察

大事な視察



Side:ヤユイ



「ふぅ……」


ユキ様が各所に連絡を終えて、一息を入れています。

私はそれを傍で見ながら、今はグラス港町の書類仕事をしています。

グラスリゾートホテル、およびグラス港町の完成パーティー以来、私の仕事は基本的にグラス港町関連のことが大半です。

何せ漁港とかそういう管理というか、船の責任者になぜか名前を連ねていまして、シスア様、ソーナ様というグラス港町の領主代行のお二人との折衝もやっているからです。

まあ、オレリアやホービスもできるのですが、船の運転指導以降は私がメインでやることが多くなりました。


そんなことを考えていると、ホービスがユキ様にお茶を出します。


「お疲れ様です~。各所はどうでしたか~?」

「ああ、ありがとうホービス。いや、みんなびっくりしてたな。中身はまだとはいえ、外装、装甲がもう半分もできているとか」

「あはは……それは当然の反応かと」


オレリアも空笑いしながらそう答える。

うん、私も話を聞いたときは驚いたし、呆れるしかないよね。


「とはいえ、別に不自然なことではなかったですよね? 元々、軍艦用に用意していた装甲だったようですし」

「まあな。今まで軍艦を作ろうという構想はあったし、漁船の開発、小型の丈夫な船の開発、生産は進めていたからな。ナールジアさんたちはそこからの研究を持ってきて陸上戦艦に適用しただけってことだ」


プロフさんやユキ様の言う通り、驚きはあったものの、背景を聞けば別に不思議な話ではないんですよね。

元々軍艦の前に漁船や冒険者用の船を作るということはしていました。

魔物が多い海での活動なので木製というのは心もとないということで、装甲の開発も行っていましたので、そこから利用していれば別に驚く速度……ではある気がします。

何せ陸上戦艦も軍艦に負けず劣らずの巨体ですし。普通の漁船の最低10倍は大きいですから。

その大きさをすでに半分も用意して組み立てているとか、驚きですよね。


「驚きはともかく、開発遅れよりも早い方がこちらとしてはありがたい。予算がかさむしな」

「確かに、ユキ様の仰る通りかと。ナールジア様たちの優秀さに感謝ですね」


うん、二人の言う通り、遅れるよりは遥かにマシだ。

何せ、新大陸の南部北部のトラブルに間に合うのだから。

開発が間に合わなければ、援軍を出すにしても、どこかに土地を確保し迎撃拠点を築かなくてはいけない。

それは、接収される土地の権利者たちにとっては容認しがたいことでしょう。

かといって、今現在存在する町を利用するにしても、そこの有力者たちとの折衝が必要になるし、それはそれでかなり面倒。

だからこそ、移動要塞ともいうべき陸上戦艦があると便利なんですよね。

と、そんなことを考えていると、不意にオレリアが口を開きます。


「しかし、陸上戦艦があると便利というのはわかりますが、南部の荒野はともかく、北部に出せば混乱を招きませんか?」

「混乱しないわけはないだろうな。何せ向こうから見れば、初めての陸上戦艦。戦艦だということにも気が付かないだろうな。移動要塞っていうのも認知できるかも怪しい。まあ、だからこそ便利だ。こちらの力を示すのにちょうどいい」

「力ですか。ユキ様からすると過激な気がしますけど~……」


ホービスの言うように、いつものユキ様からすると過激ではあるけど、今回に限っては。


「ホービスの言う通り、俺はあまりそういう手は好まないがな。向こうは死ぬか生きるかの瀬戸際だ。こと戦い、戦争においては現場での実力がモノをいう。もちろん政治力とかがいらないとは言わないが、まずは現場の支持があることが大事だからな。そしてそれを無視できなくすれば、ウィードも無視できなくなる。下手に平和な所では打てない手ではあるが、今回に限っては効果的ってやつだ」


ユキ様は必要とあれば戦力を動かすことはためらわない。

それは今までも、オーエの北部に迫る連合軍を壊滅させたことからもわかります。

まあ、壊滅と言っても死体で平地を埋めるようなことはしなかったですけど。


「北部には我々の伝手というと、ヴィリア様たちしかいませんからね。そこから信用を得てウィードをとなると、面倒なのは間違いありません。わからない相手には色々対応が変わってきますからね。そういう手間を考えると、強大な戦力を送り込むというのは間違っていません。それに陸上戦艦は文字通り移動しますから、各国の領土を奪うものでも、居座るモノでもありません」


プロフさんは冷静に陸上戦艦の投入におけるメリットを言う。

確かに、陸上戦艦だと誰かの領土を恒常的に脅かすことは無い。

まあ、陸上戦艦がいる間だけは警戒するだろうけど、そこに根を下ろすわけじゃないしね。

魔物の討伐という名目があるのだから、歓迎されると私は思う。


「流石に国とか偉い人との交渉をヴィリアたちだけに任せるわけにもいかないからな。陸上戦艦を出す以上はウィードとして交渉しないといけない。下手にヴィリアたちだけで対応すると陸上戦艦を自分の影響下にしようと思う連中は必ず出てくるだろうしな」

「ですね」


うん、ヴィリア様たちはあくまでもただの冒険者として動いていますし、ウィードという国の後ろ盾がなければ、その戦力を自分たちのモノにしようと思う連中は必ず出てきます。

世の中そういうモノですから。


「さて、お茶は美味しくいただいたし、陸上戦艦の現物を見に行くか。みんな準備を整えて10分後に出発だ」

「「「はい」」」


私たちは休憩を終えて、出かける支度を整えます。

元々、関係各所に陸上戦艦の説明を終えれば、進捗を見るために出向く予定でした。

というか、これから毎日進捗の確認に行く予定です。

なぜなら……。


「膨大な予算と物資、人員をつぎ込んでいるんだから、遅れが生じていると問題だしな。あと、ナールジアさんたちのノリでミラクル兵器になっていたりしないかを確認するためだ」


ミラクルって言い方は随分優しいですね。

本当のことを言えば、広域殲滅兵器とかを作っていたりとかなんですが。


「あはは~、ありそうで怖いですよね~。私のガンソードとか最初は火力偏重でしたし」


リーア様は空笑いしながら、準備したガンソードに目をやります。

あの特殊剣はリーア様の為に用意されたもので、銃のようにも運用でき、火力に関しては当初大砲レベルだったそうです。

……近距離で。


「最初のガンソードは試し撃ちしてないと、近距離で撃って、とんでもないことになっていましたよ」

「だな。まあ、そのあと火力調整と魔術弾を飛ばせるようにしてもらったからよかったものの。あと、魔王が変態だったのが良かった」

「いえ、魔王はいませんでした。変態しかいませんでした」

「あ、はい」


なんかリーア様の迫力が増し、ユキ様がすぐに黙っちゃいました。

そういえば、魔王デキラのことに関しては私たちでも閲覧権限が足りない資料があったような?


「いい、ヤユイ。それ以上は踏み込まない。考えない。調べない。いい?」

「あ、はい」


リーア様にそういわれながら迫られてユキ様と同じように頷きます。

物凄い圧力を感じます。


「まあ、ということで、毎日見張るというと語弊があるが、新兵器であり、アニメの兵器を開発するというナールジアさんやフィーリアたちにとっては夢の時間になっているわけだ。流石にビーム兵器を開発して載せているとは思わないが……」

「「「……」」」


その言葉に私たちは思わず沈黙する。

ビーム兵器、光を火力に変えて文字通り光の速さで着弾する武器。

……そんなのできてないと思いたいけど。


「そういうのが出来ていたとしても、それを使わせないために視察するんだ。いいな?」

「「「はい」」」


流石にそんなトンデモ兵器を気軽に新大陸で使わせるわけにはいかないよね。

下手すると、荒野はともかく、北部とかオーエの森が焦土になりかねないし。


そんな感じで気を引き締めて、グラス港町に向かいます。

移動に関しては、こういう公務の時はゲートを使うので、そこまで時間はかかりません。

10分程度でグラス港町のゲート口に到着します。

まだ日は高いので、人の賑わいがあります。

いえ、メインストリートにゲート口は接しているので、思いっきり賑わっていますけど。


「グラス港町を発表してから、まだそう時間は経っていないんだが、にぎわっているな」

「ユキさん。逆じゃないですか? 発表したてだからまだ人が多いんじゃ?」

「ああ、その可能性もあるか。ヤユイ、そこらへんはどう思う?」


おっと、ここで私に話がくるとは思わなかった。

とはいえ、この話はシスア様やソーナ様から聞いていますので、そのまま伝えることにします。


「ユキ様はシスア様やソーナ様から報告を受けているのでご存じかと思いますが、発表当初よりは落ち着いてきています。ああ、一般開放した当初よりです」

「わかってるよ。貴族の時は制限があったからな」

「はい。ということで、一般開放したときは、外国からはもちろん、ウィード内の人たちも観光目的で殺到していました。ですが、最近はウィードからの観光は落ち着いて、安定しているところです」

「安定していてこれか~。すごいわね~」


私の説明にホービスが感心した声を上げる。

まあ、気持ちはわかる。

色々なお店が集まっているメインストリートとはいえ、平日の日中だ。

ウィードで生活している人々なら、基本的に特殊な仕事でもない限りは仕事中。

なのにもかかわらず、相応に人がいる。

下手をしなくてもウィードの商業地区に匹敵するレベル。

冒険者たちとかもいるのは間違いないけど、それでも道を歩くにはちょっと気を付けないといけないと思うぐらいに人がいる。


「とはいえ、まだまだグラス港町が出来たばかりというのもあるでしょう。いずれ落ち着くのでは?」

「プロフの言う通りだな。落ち着いてきたときに安定して観光客が来てくれればいいな。と、それで済めばいいが、今はあっちだな」


ユキ様はメインストリートから視線を外し、軍港の方へと視線を向けると、そこには大きな建物が見えます。

それは、軍の施設ではあるのですが、新しく出来たというのがわかるモノです。

それこそ……。


「さ、造船所に向かおう」


こうして私たちは未知の世界へと踏み出すのでした。



グラス港町はいまだに賑わいは衰えず。

今後どうなっていくかは、シスアやソーナの腕前ですね。


あろ、造船所が大爆発しなければいいけどね。



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