第1929堀:当時の動きを改めてみる
当時の動きを改めてみる
Side:コメット
今日は、新大陸の会議があったはずなんだけど、私たちが呼び出されているのはなんでだろう?
というか、連日アスリンたちやドレッサたち、ニーナたちが集めてくる魔物や環境情報はもちろん、今エージル達が出張っているので、代わりにブルーホールや大山脈の観測とか色々やっていて、個人的には大忙しなんだけどね~。
「とはいいつつ、ヒーロースーツに関しては喜んで参加していたよな?」
「お、口に出ていた?」
いつの間にかユキがやってきている。
「顔を見ればわかる。まあ、趣味と仕事は違うってところだろうが」
「そうだよ。興味深いことは疲れ知らずだけど、ルーチン化していることをこなすのは疲れてくるのさ。大事なデータではあるけどね」
変化が見られないことは、興味深くはあるけれど、情熱は引いて、醒めてくるんだよね~。
開発とかは常に頭をフル回転しているから楽しめるんだけど。
まあ、データが揃って何かひらめければ別なんだけど、そのひらめきは訪れていない。
「で、私をというか……」
「僕たちを集めた理由はなんだい?」
「そうだね~、教えてほしいな」
気が付けば、エージル、ハヴィアも集まっている。
「まあ、メンバーを見ればわかると思うが……」
「あれだね。新大陸に行っている調査メンバーだね。まあ、アスリンとフィーリアがいないのが不思議だけど」
「ああ、あのお二人は先ほどの会議に参加されていましたし、調査隊のデータに関しては私も預かっているのでそれではないかな? 元々、お二人はウィードで待機して魔物を調べる側だったし」
なるほど、確かにアスリンとフィーリアはさっきの会議に参加していたはず。
疲労もあるだろうし、そのあとの話し合いで今も仕事をしているはずだ。
そこでこの場に来るわけがないか。
「というか、それを考えるとユキも向こう側の人と今後の予定を話し合わなくていいのかい?」
「ギアダナ王たちとはもう話は済んでいるしな。結局のところ現状維持というか、作戦を継続するって話なだけだ。大した変化はなかったからな。まあ、良かった点はオーエの生産能力が復活しつつあるぐらいだ」
「それは良かった。まあ、南の国々との交易も再開しているし、食うには問題ないだろうが、外部に頼りっきりはね」
ユキの答えにエージルが真っ先に安心する。
まあ軍を率いて町などを防衛していた身だし、そういう食料危機に関しては色々思う所があったんだろうね。
という私も、生産できるありがたみはわかるけどね~。
ホワイトフォレストにホットストーンを利用した農作地を作ろうとは思わなかったし。
食料を確保するってそれだけ大変な事なんだよね。
「それで、私たちを集めたとなるとユキさんとしては、魔物関連のことを聞きたいのかな?」
「そうだな。それも含まれる」
「なんかもったいぶる言い方するじゃないか」
ユキは意外と単刀直入に物事を言うことが多い。
遠回りだとわかりにくいからって。
簡潔に短く理解できるのならそれの方がいいっていうのは同意だね。
それが、今はこんな感じだから珍しいんだよね。
「もったいぶるというか、いまだにはっきりしないからな。北部の情報は聞いているか?」
「情報っていうと、ヒーロースーツを着たヴィリアが魔物相手に大暴れしたって話?」
「あれはリアルタイムで見てたじゃないか」
「うんうん。ヒーロースーツの出来は良かったよね~。って、その話?」
「ヒーロースーツの試験評価の話じゃないな。それでデータは集めているだろ? 魔物の方も」
「ああ、そっちね」
いいたいことがわかってきた。
とはいえ……。
「わかっているとは思うけど、それを聞いたところで答えが出るわけではないと思うよ?」
「わかってる。とはいえ、情報の断片を集めることで真実に近づくことも多々ある。無駄じゃない。情報の更新はしたいし、コメットたちと顔を突き合わせることで色々わかることもあるだろう。と思っている」
「あはは、希望的観測だねぇ。とはいえ、こういう研究なんて、予測と観測の繰り返しだからね。そして結果にたどり着くと」
ま、エージルの言う通り。
私たち研究者は予想をして、結果を見て、何が違うのかを考えて、不明な所を埋めて行って理想の結果を求める。
とはいえ、発想なんて、一人でひらめくこともあれば、どこかに出かけた時もあるし、こうして会議をしていてひらめくこともある。
とはいえ、そのひらめきにたどり着くためには、今までの蓄積が大事だ。
その一番といっていい事柄が、データ。
何せ目的達成のために観測しているデータなんだから回答に対するヒントが隠れている。
こまめに会議をしたからと言って答えが出るわけでもないけど、ユキとしては聞いてみたいんだろうね。
新しく北部の情報が少し出たという時点で。
「ま、北の魔物に関してはデータはもちろん集めたさ。とはいえ、ヴィリアが戦ったあの一戦だけ。当初予定していた旅の行程はすっ飛ばして、町の情報収集と被害者救済を優先したからね」
「それは、仕方がないところだな」
まあね。
ヴィリアたちは亜人たちが捕まっている可能性を考えて、強行軍どころか空を飛んで時間を短縮することを選んだ。
その結果、北部の道行で得られたであろう、データはほぼないに等しい。
特に魔物とかスルーだしね。
「コメットさんの言う通りだよ。北部に入っての戦闘データはあのヴィリアの一戦だけ。まあ、それだけでも色々見るべきところはあるとは思うけど。……説明いる?」
「頼む」
ハヴィアも大したことは無いと伝えるが、ユキはそれでも話してくれという。
そういわれると、私たちは特に否もない。
情報整理のために話すことは多々あるからね。
「ま、僕の旦那様のお願いだ。話すだけならいくらでもやってあげよう」
「助かるエージル」
「だけど、コメットもハヴィアも言ったし、あの北部の戦闘データはユキたちも保有しているだろう?」
「まあな。とはいえ、生体データというか、魔物の組織サンプルはそちらに渡しただろ?」
「そこまでわかっていることもないんだけどね……。では、説明を始めよう」
そういって、エージルは会議室のモニターに先日のヴィリアの戦闘シーンや地形などの情報が映し出される。
「まず、状況を改めて報告させてもらう。戦闘場所はウエアの町の街道、3キロ地点だ。辺りは草原。魔物たちはオークを中心として130、オーガが20、そしてゴブリンが30、ウルフが20ほどだった」
「ん? ゴブリンやウルフもいたのか?」
「映像解析とヴィリアの話の結果だね。よく見れば映っているよ。ほら」
そう言ってモニターにはドローンから空撮された映像が映る。
そこには後方にゴブリンがウルフに騎乗した、所謂ゴブリンライダーというのが存在しているのが確認できる。
「後方に騎兵を付けた?」
「遊撃のつもりだったんだろうね。でも、その前に冒険者ギルドからの精鋭が突っ込んできたし、数も少なかったから機能しなかったんだね。ああ、違うか。騎兵が出る前に主力が瓦解したんだよ。ナイトマンのおかげだね。今から戦闘の経過を見よう」
次は、上空のドローンからの映像がタイムラインと共に表示される。
こうして俯瞰して見られると、どういう動きかわかりやすいよね。
「まず、冒険者ギルドから派遣されたあのギルドでの最高戦力3人が到着し、ギルド長の娘がまず突撃」
「してたなぁ」
自信満々だったからね。
まあ、それと町を守るという決意もあっただろう。
敵の群れと実力差が分からないようなレベルじゃないし。
それでも、彼女はあの群れに切り込んでいった。
その勇気というか、その熱意は評価するべきかもね。
ユキとしては、ああいったタイプは苦手だろうけどね。
命令無視で飛び出すタイプは。
「これに驚いた魔物の群れは進軍を停止。いきなり切りこまれたことによって、後方にいたゴブリンライダーたちは身動きを取れず。というか、まあ、雑魚の排除を待つって感じだったんだろうね。ここからしばらく動きがみられない」
そうなんだよね。
この後方にいた騎兵ゴブリンライダーたちは、あのギルド長の娘が単身突撃したあとは基本的に待機しているんだよね。
いや、それも当然ではあるんだけどね。
「まあ、単独の敵相手に騎兵で突撃とか、意味ないしな」
「だね。もうオークで囲んでオーガもいる。そこで騎兵を突撃なんて味方を混乱させるだけってわかっていたんだろうね?」
「やっぱり組織立っているか」
「それに関しては、僕たちは全員意見が一致している。あの魔物の群れは統制が取れているって。つまり、指揮官がいたわけだ。とはいえ……」
その後の経過で戦況が一辺する。
ギルド長の娘が突撃し、2人の冒険者たちが外側からチクチクしていたところで、ヴィリアことナイトマンが登場。
「ナイトマンが到着したことにより、戦況は一気に動くことになる」
ドローンの上空俯瞰映像にヴィリアの到着が分かりやすく表示される。
立ち位置は援護している2人の冒険者たちの近くだ。
そこから、多少前口上というか、後退を促してからの……。
「ナイトマンの弓攻撃により、敵の半数近くが戦闘不能になる。この戦闘不能には死亡も含まれるけど、この攻撃で後方に待機していたゴブリンライダーの騎兵がほぼ全滅。足を止めていたことが災いしたね。機動力はあっても、防御力は無かったようだね。ちなみに、オークも弓矢の攻撃を受けたけれど、比較的マシなようだ」
「まあ、オークの耐久性はゴブリンやウルフよりは上だろうしな」
確かにその通りだ。
レベルもゴブリンライダーたちはオークより低いし耐久性は劣っているのはまちがいない。
まあ、ウィードにいるゴブリンとかは比較対象にならないけどね。
「そこはいいとして、あの弓は何だよ。上空に撃ったと思ったら拡散して下に降り注ぐとか」
「いや、そのまんまだよ? 広域に敵がいる場合に殲滅するための道具」
「うん。銃とかを持ち出すわけにもいかない時とか、射線が遮られているときに便利だろうって」
「あ、いやまあそうだけど。一般の弓とは逸脱していると思うんだが? というか、臼砲の射撃に近いよな?」
「うん。迫撃砲と精密射撃を合わせたようなものを目指したからね。ちゃんと味方とかの識別もできるように」
「それ? 弓か?」
「ちゃんと形状は弓さ。そこらへんは配慮しているよ。正直に言えば、もっと撃てるんだけど、あの場でそれはね?」
うん、あの弓で一撃で敵が一掃できたんだ。
それを連続で撃てるとなると、よからぬ輩が寄ってくるのは間違いない。
「そうか。まあ、俺が聞きたいことは魔物とかそっちだし、続きを聞こう」
そうだったね。
ユキは魔物の情報をって話だしね。
弓はやはり手加減したモノだったようです。
そこはいいとして、ドローンでの情報は意外と面白いように敵の動きを捕らえていました。
あからさまに、組織立っていましたね。
コメットたちはその敵を見て何を見出すのか。




