第1928堀:新大陸の最新情報まとめ
新大陸の最新情報まとめ
Side:スタシア
「……ということで、現状オーエ近辺は、当初の戦争状態よりは確実に落ち着いてきています。森から出てくる魔物も減少傾向ですね」
私はここ一ヶ月のオーエ近辺の報告を上げます。
主戦場というと違うのでしょうが、敵軍、ギアダナ王国を主力とした連合軍を撃退してから、中央部の戦い、まあメインは政争ですが、そちらに切り替わったようで、南部の国々への圧力は減っています。
おかげで……。
「……合わせて私からも報告。荒らされていた畑を元に戻すことが出来た。そして魔物対策もしているから、4か月後には収穫が見込める」
カヤが報告したように、魔物被害が落ち着いてきたので、オーエの防壁の外にある畑の復興に着手出来たのです。
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「「「お~」」」
その報告にオーエ王たちも含めてユキ様たちからも驚きの声が上がります。
何せ、散々に荒らされていましたからね。
それが復興できているとなると色々感慨深いモノがあるはずですし、なにより、オーエにとっては食糧生産力が復活するという意味でもあります。
「それと、食糧自給率を上げるために畑の拡大も行っている。それに関しては資料を確認してほしい。今のところ、畑を整えているだけでがほとんどで、収穫が見込めるのは復興した畑の1割程度」
『一割も拡大できたのか!』
オーエ王が興奮して声を上げる。
1割というと少ないと思うかもしれないですが、国民が食べていくための畑です。
その1割ともなれば相当広い畑が必要です。
それをさも当然とばかりに言うカヤがおかしいのです。
とはいえ……。
「そう。北の町の人たちには畑を耕す魔術を教えているから、簡単に拡大はできる。まあ、畑の手入れと収穫には人手が必要。そこは考えていてほしい」
『わかった。感謝するぞカヤ殿』
「気にしない。これも仕事の内。で、気になるのは南部荒野の動き」
そういってカヤは南部を取りまとめているトーリに視線が向く。
『こっちは変化無しかな。報告書にも書いているけど、魔物の数は減っているよ。南の町に到達する魔物はほとんど見ない。あるとしても1匹、2匹って感じで遭遇頻度も3日に1度あればいいぐらい。砦の方も同じぐらいの頻度です』
どうやら南部荒野は本当に魔物が枯渇しているような感じですね。
明らかに遭遇数が減っていますし、このままいけば魔物の増加問題も何とかなりそうですね。
まあ、希望的観測ではありますが……。
『とはいえ、南部荒野をすべて調べたわけではないので何とも言えないんですけどね。あと、選抜チームでの荒野というか、南端を目指しているアスリンたちですけど、どうやらあの渓谷は南端の森に繋がっていたようです。詳しくは本人たちから……』
そうトーリが言うとモニターはアスリンとフィーリアに切り替わり。
『報告します。荒野の渓谷を南下しつつ調査していた結果、あの渓谷は南端の森林に繋がっていました。現在は渓谷と森林の境にキャンプを設置して周辺調査を始めています』
『なお、魔物の遭遇に関しては渓谷ではなく、南端の森林に関しては、正確な調査が揃っていないので何とも言えないのですが、それでも魔物が生息しているのが確認できているのです』
フィーリアはそういうと、遭遇したのであろう魔物のデータを表示させます。
それは私たちも見慣れた魔物たちがいます。
ゴブリン、オーク、オーガという人型はもちろん、ウルフ、ジャイアントスネーク、リザードマンなどの森に棲んでいる個体なども。
これらは荒野では見ない魔物です。
そして、北上して、南の町を襲った魔物の大半がこの魔物たち。
つまり……。
『これは……つまり魔物たちは荒野からではなく、南端から来ていたということか?』
『まだ確定ではありません。ほかにも荒野の先には森があることが確認できています』
アスリンは淡々とそう説明する。
そうなのだ。
最大規模の森林があるのは南端なのだが、荒野の先に森があるのは南端だけではないのです。
『ふむ。確かに今は断言はできんが、候補地は絞れているということか』
『はい。おそらくとは付きますが、場所はある程度絞れています。とはいえ、場所は広大なので、一つを調べるのにも時間がかかります。あるいは、もう一度魔物が北上してくれれば、動きが以前よりもはっきりと把握できるのでわかりやすいとは思います』
ちなみに、アスリンの姿は成人とは言うには未熟ですが、いつもの幼い姿ではありません。
相手にギアダナの王や宰相がいるので当然ではあります。
あの幼い姿では驚かれますからね。
もちろん、成体の姿が幼く見える種族もいますが、ユキ様たちが既に人族としてあっていますからね。
わざわざ混乱させる必要もないでしょう。
『なるほどな。その原因の究明については、ユキ殿たちに引き続き任せても?』
「ええ、構いません。私たちも荒野の領土を認めてもらっていますし、自分たちの土地の安全を確保するために動くだけの話です」
『本来なら援軍の一つでも出すべきだが……。すまない』
「いえいえ。ああ、とはいえ、原因を見つけた際にはその討伐には同行してもらいたいのですが、よろしいでしょうか?」
『ああ、それはもちろん。私たちの荒野への進出が間違っていないという証明にもなるからな』
そういうことです。
オーエも一緒に魔物が北上してきた原因を確認して討伐すれば、南部の国々を安心させることができます。
そして、それは中央部にも伝わるでしょう。
何か狙いであるなら更なる動きがあるでしょう。
というか……。
「そういえば、クリアストリーム教会ですが、ギアダナ王国の教会を押さえたのはいいですが、その後の動きはありましたか?」
そうユキ様が質問をする。
ちなみに本日は北の町の方に出てきて視察をしているついでに、この報告会に参加しているという感じです。
『ああ、そちらはな。ギアダナ王国内にあるクリアストリーム教会は押さえたが、他の教会は手付かずだな。文句は飛んできているが、ドドーナ大司教がでてきて、ギアダナ王国内のクリアストリーム教会で起こっていたことを告げて沈黙をしている。まあ、言い訳を考えている最中だろうな』
なるほど、まあ、即興で言い訳を思いつくのであれば、既にギアダナ王国を手中に収めていてもおかしくはありませんからね。
それだけギアダナ王国を邪魔だと思っていたということでしょう。
そして……。
「思った以上にドドーナ大司教の発言が強いですね。一応、別の宗派という扱いではないですか?」
『ああ、私もそう思ったのだが、やはりクリアストリーム教会の元だったということと、ドドーナ大司教の物理的な力があったのだろうな。そこがギアダナ王城に踏み込んで文句を言って来たクリアストリーム教会の要人を相手に怒鳴ったわけだ』
「あの人ならやりそうですね」
いえ、ユキ様。
あの非道を見れば、誰であっても同じ文句を言うと思います。
『それどころか、最終的に殴ったからな』
「はぁ? それは問題になるのでは?」
要人を殴ったとなれば確かに問題です。
普通であれば、その場で拘束されてもおかしくないのですが……。
『それがな、ペトラに連絡を取れと言い出したわけだ』
「ペトラというと、確かクリアストリーム教会の……」
『そう、クリアストリーム教会のトップである清司教だ。ドドーナ大司教の弟子のひとりだな。それで口を紡いだわけだ。こんなことをペトラが認めているのかと。連絡を取れと』
「それで黙ったと」
『まあ、連絡を取るから待ってくれと言ったわけだが、実質何も許可を取っていないという証明だな』
なんという杜撰な押し。
ドドーナ大司教のことを知らないわけでもないでしょうに。
「ドドーナ大司教を押さえておかないとか、そんなことあり得ますか?」
『私としても無いと思いたいが……』
『実際起こっていますからな』
事実の前に、苦笑いをするしかない私たち。
思った以上に、わけのわからないというか、考え無しの動き方ですね。
「……ふう。ちょっと考え方を変えましょう。つまり、中央のクリアストリーム教会はペトラ清司教を無視して動いても問題ないと考えているという意味もあるでしょう。つまり、北部は切っている。関係ないと」
『あ~、そうともとれるか?』
『確かに。とはいえ、独立しているとなると、ドドーナ大司教の言葉にひるむ理由もないですが……。まあ、強引に理由を考えるのであれば、北部と縁を切るために動いている最中という所でしょうか?』
なるほど、強引な考え方ではありますが、そういう可能性は否定できませんね。
というか、事実その通りでしょう。
クリアストリーム教会は北部と中央部で何かの問題、意見の違いがあり、独自に動いている最中と考えれば……まあ、わからなくもありません。
隠ぺいする方法が露骨すぎるのがよくわかりませんが。
『まあ、そこらへんはそちらで調査をして。私からの報告をさせてもらう』
と、みんなが少し考えている沈黙の中でニーナが口を開きます。
確かに、今は報告会ですからね。
「ああ、頼む。北部の様子とかは知りたいしな」
『了解。と言っても先日のウエサの町で魔物の襲撃が起きたこと以外は特に目立ったことはない。いまだに北部の国に入ってから、大きな騒動はない。一応、立ち寄った町々で情報を抜いているが、健全な経営とは言えないけど、火の車一歩手前で魔物対策をしている感じ。書類は見た?』
「見た。こちらでも解析をしたが、軍費やギルドへの依頼金とかをかなり割いているな。普通ならありえない割合と思うが、ギアダナ王はどう判断いたしましたか?」
『こちらも同じ意見だ。戦時のキツイ時と言っても不思議ではないぐらいの予算の回し方だな。町が良く持っていると思うぐらいだ』
『ですな。とはいえ、国の中枢からの支援金が届いているので、何とかやれているのでしょうな。ですが、その中央はどうやってお金を工面しているのかという話にもなってくるのですが、以前私たちが話した北部中央ファイアナ王国が色々取引をしているのだろうと想像は付きます』
ですね。
もう、このような採算では一国では持つような状態ではありません。
各国とスムーズにやり取りができるからこそ、何とか持っていると思ってよいでしょう。
つまり、北部中央ファイアナ王国は北部の心臓ともいえるのですが……。
『でも、そうなると、逆に北部中央ファイアナ王国は支出ばかりになるはずだし、どこかに負債が溜まるはず。最前線の国家が破綻していてもおかしくはないけど、今のところはそういう話は聞かない。不思議だから、その仕組みは調べるべきだと思う』
「確かにな。消耗するばかりだしな。どこかで資金や資源を調達して、循環する必要があるが……。最前線は基本消費するばかりだしな。魔物の素材で賄っているという話だが……」
『そこが不思議。幾ら賄えると言っても限度があるし、今回のようにウエサの町と言った敵と戦う場所ではない所もある。まあ、流れてくるときも今回のみたいにあるけど、それでも頻度は少ない』
「まあ、そこらへんは生産活動をしているとか……。これも調べるしかないな」
『ということで、今のところの結論としては、北部は亜人たちとも共闘して魔物を押しとどめている状態で、中央部の国々とことを構えている余裕はないように見える』
今のところ不明なことがおおいですね。
これらを解き明かしていくことで、新大陸で起こっていることがわかると良いのですが……。
当初の何もわけわからない状態よりは持ち直しましたが、舞台が広いので、どこもゆっくりと進んでいる感じですね。
とはいえ、南部のオーエを含む国々は落ち着いてきた模様。
中央部と北部の情報が集まれば、クリアストリーム教会の狙いが見えてくるかも?




