第1918堀:敵の本部はどこ?
敵の本部はどこ?
Side:リーア
エナが用意してくれた地図にはギアダナと中央にでかでかと書き込まれている。
それとシアナ男爵たち協力者になってくれている小国。
そして、調べ上げたであろう国々が次々と表示されていくけど……。
「ちょっと、見にくいね」
『申し訳ございません。整理までは追いついておらず』
「あ、ごめん。責めるつもりはなかったんだよ」
『ええ。わかっております。ですが、今回はこれで勘弁してください』
「うん。大丈夫だよ。でも気になることがあるんだけど」
『お聞きしても?』
別に隠すことでもないので、素直に地図を見ながら口を開く。
「状況的に西側が怪しいっていうのは私もわかるけど、森を挟んだ東側の国はどうなっているの? そっちの情報はあまりないみたいだけど?」
そう、西側が怪しいというのはわかったけど、それにしても森を挟んだ東側はおそらく大国であろう、国の名前がいくつかあるだけで寂しい状態だ。
『残念ながらそちらまでは手が回っていません。ギアダナ王国へ出入りしている商人から情報は集めていますし、ギアダナ王や宰相からも情報をいただいていますが、森向こうとはあまり交流がないようなのです』
「へぇ、やっぱり森が問題か?」
『はい。確かにドドーナ大司教が森に潜んでいた強力な魔物は退治したのですが、完全に駆除したわけではないのです。なにより、西側はとつきます。森の東側の駆除に関してはいまだによくわかっていません。なにせ森と呼んでいますが、規模についてはランサー魔術学院の大森林をしのぐ大きさでありますから』
そりゃ、完全討伐とか無理だね。
「それで、よく森の安全が確保できたよね。そういうのってよく奥から新しい魔物が来て混乱しそうなもんだけど」
『はい。新しい縄張りが出来そうなものですが、その兆候はなくドドーナ大司教が倒してから、大人しいような状況です。事実、ゴブリンからオーク程度なので、ギアダナ王国は冒険者を始めるのに良い土地と言われています』
「確かに、ギアダナの特徴はヴィリア様たちから話がありましたね。余り戦果を挙げられないと」
「あったな」
うん、聞いた。
だからこそ、北部のイオア王国へ向かうって話になったんだよね。
「なんか、ドドーナ大司教が魔物の縄張りを奪ったって感じだよね」
「そうだな。そういう見方もできる。というか、そこのボスみたいな魔物を倒した結果魔物がいなくなった。あるいは少なくなったという話はいくつか聞いたことあるな」
「はい。私もミリー様から聞いたことがあります。まあ、範囲に関してはこのギアダナが擁している森よりは遥かに小さいのですが、その一帯のボスを倒すと大人しくなるというのは聞きます」
私の言葉にユキさんもプロフも今まで色々あった経験から間違っていないだろうと頷く。
魔物も基本自分の生活圏をもっているし、群れをつくることも多々ある。
そして、自分より強い相手には近づかないというのも当然だよね。
なにせ命がかかっているもんね。
人も同じく生活圏を広げるために魔物を退治して、強い魔物、地域一帯のボスを倒して安全を確保することはよくある話。
まあ、その前に死者とか被害が山ほど出ているからこそ退治って話になるんだけど。
『なるほど。ドドーナ大司教を恐れてというのはあるかもしれません。そうなると、ドドーナ大司教の移動は不味いということでしょうか?』
「ボスの気配っていうのは、魔物たちはわかっているようだしな。ありえるかもぐらいだな」
「ですね~。ここはミリーに詳しく話を聞いていた方がいいかも」
「そうだな。冒険者ギルドの方がそういう話は知っているだろう。そして、森の東側の状況が不透明っていうのも気になるな」
『はい。今後調査を続けていきたいと思っています。あと、ギアダナ王やダエダ宰相たちからの情報もございます。お聞きになりますか?』
「頼む」
そうか、そういう情報は商人からじゃなくても国からもあるよね。
『ギアダナ王国としての見解は遠交近攻の理念ですね。森は天然の要塞となっており、迂回してギアダナを攻めるよりも東側へと広げる判断をしているようだという話です』
「ああ、近い様で遠いって話か」
『はい。その通りです。それに森を迂回するとなると、距離も相当なものになりますし、国もそれなりに挟みますので、現実的ではないかと』
あ~、確かにそうか。
地図の上では、森を越えればすぐみたいに見えるけど、森には少なくない魔物もいるし、道は無い。
だから迂回するしかないけれど、それをすると移動時間は物凄くかかるし、それは物資も物凄く使う。
それに、その国の拡大を止めたい国は邪魔をしてくるよね。
遠征の距離が長ければ長いほど邪魔される確率は高くなるし、それなら、もっと攻めやすいところを狙うのは当然か。
「だよな。と、ほかの国というか、地勢の説明をお願いできるか?」
『はい。今のお話でギアダナ王国より森を挟んだ東側のご説明は終わりましたので、残りはギアダナ王国より西の国の説明となります』
エナがそういうと、次は西側に荒い手書きの名前が現れる。
その数は本当に多くてぱっと見て数えられない。
「多いな。これは大国だけか?」
『大国という定義があいまいなため、聞き及んだ国をすべて書き出しています。とはいえ、流言などの政略もあるので、正確なところはわかりません。ギアダナ王国の管理下以外の小国については、争いが起こっているという話も聞きますので』
「今現在で勢力図が書き換わっている可能性があるわけか」
『はい。その状況の中で正確な情報を集めるのはまだ時間をいただきたいです』
「それは当然だから、気にするな。とはいえ、やっぱり大陸が大きいだけあるな」
ユキさんの言う通りだと思う。
こんなに広い大陸を全部調べるのにどれだけ時間がかかるか。
エナとか、霧華たち率いる諜報部は苦労しているんだろうな~ってわかる。
何せ横幅だけでも、私たちがいるロガリやイフ大陸の二倍以上はあろうかってところだし、上下に関しては下手すれば10倍ぐらいはあるし、まあ中央部っていうと精々3倍程度で北部はそれから上の4倍ぐらい?
うん、少なく見積もってもそれぐらいあるからとんでもないよね。
『それで、詳しい説明ですが、まずはこちら』
そういってエナは地図の中で一国名前を赤く強調させて表示する。
『こちらの中央部で最大のクリアストリーム教会が存在しているダイオ王国です』
その言葉に私やユキさんはもちろん、プロフやオレリアたちも目が鋭くなります。
「詳しく話を聞かせてもらえるか?」
『はい。このダイオ王国の概要ですが、国の大きさに関してはギアダナ王国が最大として、中央部で4番目の大きさを誇ります。とはいえ、自称ではあるのでそこまでという感じもしますが、他国もそこまで否定はしておりません。話を総合してもまあ、それぐらいだろうという私たちも判断しています』
「4番目~? すごく微妙じゃない?」
思わず私は口にしてしまう。
せめて1番とは言わなくても2番目とかでも言えばまだ景気はいいのかと思うけど、なんで4番目?
『おそらくですが、地政の問題かと。このダイオ王国はギアダナとは隣接はしていませんが、その隣接に同じ規模の大国が2つ存在しており、下手に大きく出ることは出来ないのかと』
「なるほど。下手に上だと言えば周りから攻められる心配があると?」
『はい。今のとこ大国同士のぶつかり合いは北部と南部の魔物の行動活発化を受けて起こってはいませんが、小国の小競り合いは先ほどお話したように起こっていますので、いつ大火になってもおかしくはありません。なので、その予防でもあるかと』
なるほど、すでに大戦争になる下地というか、小火は起こっているのか~。
だからこそ、大国は謙遜して4番目なんてことを言っていると。
「……それで、そこのクリアストリーム教会が大きい、最大というのはどこから判断した?」
ユキさんは少し考えるそぶりをした後、質問を続ける。
確かに、クリアストリーム教会が中央部最大だとは言っていたけど、何を持って判断したのか気になるよね。
『理由ですが、どの商人もギアダナ王やダエダ宰相たちもですが、クリアストリーム教会で一番施設が大きいと言われるとダイオ王国だと名前が上がりました』
「施設。つまり教会か?」
『はい。元々、クリア教会の大聖堂だった場所なのです。ドドーナ大司教はギアダナ王国の要請で森の討伐に赴き、そのままギアダナ王国に居ついたという感じですね。本拠地と言われているにしては、小さい教会だったので、聞いてそういう話が出てきました』
「ああ、ドドーナ大司教がいるから本拠地って言っているだけってことか?」
『そのようです』
なるほどね~。
確かに、質素なのは仕方がないにしても、教会の大きさは本拠地というのは小さかったもんね。
まあ、ドドーナ大司教からしたら、豪華な所よりもあそこの方がよさそうって感じはあるけど。
「なるほどな。規模が大きければその分、信者も集まるだろうし、そこが中央での最大と思うのは当然か」
『はい。そういう判断をいたしました。クリアストリーム教会に通う方たちも一度は訪れるべきという話はよく聞きます』
「有名なのか。それなら最大ってことは間違いないだろうが……。そこが露骨に亜人排斥を進めているのと繋がるか?」
あ、確かに。
クリアストリーム教会はあくまでも魔物退治と人の生活圏を広げるってことが目的だし、亜人を堂々と確保しているっていうのは、北部のクリアストリーム教会とは全く別の動きをしていることからも、公にできないはずだけど……。
『どうやら亜人排斥に関しては、民衆には広く知られていないのです』
「「「はぁ?」」」
堂々と亜人の場所を報告すれば賞金とか、村とか潰しているはずだけど?
『報告に賞金などは出していますが、北部の戦線に送るなど、どこか別の場所に輸送するといっているだけで、何に使っているのかは知らないのです。魔王がやってきて、亜人が手先だという話は、噂話程度なのですが、上はそれを押して亜人を追いやっているのです。つまり……』
「確実に上の政治的判断で亜人の追い出しと確保を進めているわけか。北部にばれれば問題だというのを把握して」
『その通りです。イオア王国へ向かっているヴィリア様たちに北部のクリアストリーム教会と接触してもらい、事実を伝えられればと思っています。そうなれば動くはずです』
なるほど~。
やっぱり、中央部の偉い人たちの思惑があるんだ。
まあ、なんか無茶な話だとは思うけど、それでもここまで来ているんだから、出来ないことはないと思っているんだろうね。
こういうのは一瞬で崩壊していくんだけど。
さて、ここからどうやって敵を崩していくのかな?
怪しい場所は見つかった。
だが、証拠はまだ。
これからどう詰めていくのか。




