第1912堀:まとめて作る場所がある方がいい
まとめて作る場所がある方がいい
Side:アスリン
「へぇ~、ナールジアお姉ちゃん陸上戦艦作るんだ~」
私はお兄ちゃんたちからもらった造船所の計画書を見てそう言うと、一緒に執務をしていたフィーリアちゃんが目をキラキラさせてこちらを向く。
「そうなのです! ビッ○トレーなのです! 陸地での船の運用と考えると一番まともなのです」
「それなら、強襲揚陸艦ペガ○ス型の方がよくない? 空飛ぶんだし」
不思議に思ったんだよね。
空を飛ぶ戦艦の方が便利なのにって。
「そこまでの開発期間が無いのです。将来的には作りたいのですが、今は無理なのです」
「そっか~。空は私たちが飛べているのにね~」
思ったよりも、大きい物を空に浮かばせるっていうのは難しいんだ。
そういえば、私たちも武器や鎧以外の重量物はあまり持ったことはないかな?
「大きなものを安定して飛ばせる技術はまだないのです。なので、多少空を浮くホバークラフト要素を含む陸上戦艦を作るのですよ。ああ、あと海上用の軍艦」
「あはは、メインはそっちなのに、フィーリアちゃんもナールジアお姉ちゃんもそっちが目的だよね~」
元々は軍艦の整備や補充のための造船所なのに、新兵器開発場所としか見てないよね~。
「当然なのです。人が使うタイプなら今割り当てされている場所で作れるのですが、船とかの大型のモノになると、場所を確保できていなかったのです。それに資材を使う許可もなのです」
「まあ、量も量だしね」
簡単に船を作るっていってもそれを作るための材料は膨大にいるし、場所も取る。
そういう意味でもお兄ちゃんは今まで造船所みたいな場所は作って無かったんだよね。
「それにようやく自前の港が出来たのも理由なのです」
「グラス港町が出来たからね~」
「そうなのです。今までは、シーサイフォの港や譲渡されたとはいえオーレリア港には地元民がいたのです。そこを大改装というのは、色々な意味で難しいのです」
「作れないことはないだろうけど、調べに来る人は多いよね~」
「確実にくるのです。それに地元の人も信用はできないのです。その分グラス港町は一から作った場所ですし、ある程度統制はきくのです」
うん、そういう情報を守るためにも簡単に作るわけにはいかなかったんだよね~。
オーレリア港とかは、ユーピアちゃんたちが興味津々だろうし。
でも……。
「作る軍艦はいずれ外に出すんだよね? ああ、外っていうのはユーピアちゃんたちに売るって話だよ」
「ああ、それはそうなのです。今までの造船技術だと近海の航海がやっとなのです。だから、鉄で作った軍艦を基準に提供する予定はあるのです。まあ、第一は空母たちの代替戦力なのですが」
「空母や駆逐艦とかの代わりか~。できるの?」
「装甲とかについては上を行けるのです。地球の技術は魔力障壁などはありませんから、物理的なダメージに弱いのです。それを補えるので、確実に上と言えるのです。とはいえ、エンジンや兵器については全然追い付いていないのです」
「だよね~」
お兄ちゃんが空母や駆逐艦を運用しているのは、その防御力よりも、その走破性と戦闘能力によるところが大きい。
「とはいえ、そこまで武器については兄様は焦っていないのです。そこはいずれという所です。重視しているのは装甲の方なのです」
「そうなの? エンジンも武器も重要だと思うけど?」
「幸い、そこの二つはいざとなればDPで補充が効くのです。装甲も同じと言えるのですが、修理となるとどうしても時間がかかるのです」
「あ~、あの大きさだから?」
「そうなのです。エンジンも相応に大きいですが、魔物とかの力を使うのはもちろん、作業機械があるのでそこまで問題にならないのですが、装甲だけは別なのです。その場ですぐにとも行かないのです。応急処置が精一杯なのです」
「それはそうだよね~」
破損した場合、応急処置は可能でも修理というのはちょっと難しい。
「だからこその整備ができる場所の確保が重要なのです。船が沈まない限りはエンジンや武器の修理、換装は内部でできますが、装甲の完全修理は無理なのです」
「海の中だからね~。でも、魔物たちの協力で一応試行錯誤はしてなかったっけ?」
「してはいるのですが、やはり水中での作業となると不安が出てくるのです。確認が不十分なのです」
「そうだよね~」
どうしても魔物が修理や確認をしているから不確かってわけじゃないけど、職人からの意見がない。
まあ、今まで浸水とかのトラブルは報告されていないから問題は無いと思うけれど。
「それに塗装だっていつかは剥げるのです。フジツボもついているのをしょっちゅう取っているのですから、船体のダメージも蓄積しているのです」
「ああ、確かに塗装するなら陸に上げないといけないよね」
「そうなのです。スクリューなどの摩耗する部品の交換なども必要なのです。というか、軍艦が魔術の保護を受けているとはいえそういう摩耗品をほとんど交換することなくすでに数年運用しているのです。一応耐久年数は問題ないですが、フィーリアやナールジア姉様からいえば、信じられない耐久度なのです。しかもそれは向こう、地球でも同じなのです。もちろん軍艦に合わせた特別製なのは理解しているのですが」
モノづくりなら一番って言えるフィーリアちゃんやナールジアお姉ちゃんがそう言い切るほどのモノってすごいと心から思う。
「ということで、そういうモノの劣化度なども調べて整備することが、フィーリアたちの新型戦艦の開発にもつながるのです。もちろん、現在稼働している軍艦の寿命を延ばすことにもなるのです」
「なるほど」
整備をするって意味でも、新しい軍艦を作るって意味でも造船所は必要ってわけか~。
「そういえば、造船所をつくるにあたって鍛冶職人さんたちは足りているの? 希望とかは?」
大事なことを忘れていた。
船を作ろうっていっても、作ってくれる人たちがいなければ意味がないもんね。
「あ~、そこなのですが、漁船の制作もまるっと造船所でやるべきじゃないかという話が出ているのです。あっちもあっちで現場で動かす環境があるのはありがたいらしいのです。まあ、理屈はよくわかるのです」
「そっか。今までの漁船を作っていた人たちはウィードのダンジョンの海で浮かべていたんだっけ?」
「そうなのです。それでも動かすことでも意外と大変なのです。フィーリアたちクラスのアイテムボックス持ちがなければ持ち運べないですから」
「確かに、お船は大きくて重いもんね~」
規格外のアイテムボックスのスキル持ちじゃないと船は簡単に運べない。
一応お兄ちゃんは物理的に船を移動して運搬するルートは作っているけど、いまだに一度も利用したことはないんだよね~。
「そういう意味でも、グラス港町の価値は高いのです。と、話はずれたのですが、それで漁船制作組もグラスの造船所に移籍しつつ、そのまま軍艦の作成に協力という形にするのです」
「やっぱり、軍艦の作成は別の人が指揮を執る感じ?」
「そこは仕方がないのです。命令系統は統一していた方がいいとは思うのですが、軍艦と漁船は仕組みが違うのです。なので製造責任者を統一していると、設計思想がごっちゃになるのです。別にしておいた方がいいのです」
「だよね~。お魚獲る船と戦うお船は違うもんね」
「そうなのです。まあ、軍艦でも魚は獲ることは出来るのですが、効率は悪いのです。特に空母とかになると」
「水面から遠いからね~」
何せ空母の水面から飛行甲板までの高さでも最低15メートルはあるからね。
対して漁船はせいぜい1メートルから2メートル。
どっちが魚を取るのに便利かなんてわかりきっているよね。
「それに効率よく魚たちを保管する場所もないのです」
「そうだよね。漁船ってそのまま冷蔵庫とか生け簀があるんだっけ?」
「そうなのです。なので、形が似ているぐらいしか共通点がないのです」
「ほぼ別物か~。それなら責任者にはフィーリアちゃんとナールジアお姉ちゃんを置いて、別で管理ってことか」
「それがいいのです。下手にそこの管理をほかの人に任せると混乱するのです。幸い、軍艦、漁船の設計はどちらもナールジア姉様にザーギスが関わっているから、責任者としても最適なのです」
「そういえば、ザーギスさんもやっていたっけ?」
すっかり忘れてたよ。
一応ザーギスさんもウィードの為に色々開発してくれているんだよね。
魔力維持装置とかを作ってナールジアさんたち魔力を主に生きている人たちの安定させているし、フィオラお姉ちゃんの所の水不足を解決したのもエージルお姉ちゃんと共同で作った水が出る魔道具だからね。
最近では、魔力で電力を生み出せる魔力発電機を作って学校訪問の際に便利に使ったよね。
それを考えるとお兄ちゃんの為に色々作ってくれてる。
そういう意味では、ある意味お兄ちゃん専属って感じなんだけど。
なんか存在感が薄いんだよね~。
「まあ、ザーギスは最近細かい仕事が多いので、あまり表には出ていないのですが、魔力発電機とか作っていますし、そのおかげで軍艦や漁船に積める装備の質がかなり上がるのです。蝋燭とかも持ち込まなくていいのですから、貢献度はかなり大きいのです」
「ああ、そういう意味だとかなり便利だね~」
蝋燭なんて火災の原因にもなるし、まあ、いざという時に持っていくぐらいはするだろうけど、電気による明かりっていうのはそれだけ価値があるもんね。
ピカピカだし。
「ということで、未だ海上の船ですら上手く作れるか微妙なところで、空中戦艦は無理があるってことなのですよ」
「すごく納得。というか、陸上戦艦も難しいんじゃない?」
今だと軍艦もかなり難しそうって感じなんだけど、それで陸上戦艦もいけるのかな?
「アスリンの言う通り、簡単なことではないのですが、一応模型の方は作れているのです」
「あ、模型は出来たんだ」
「そうなのです。ですが、空中戦艦の方は安定しないのです。魔力による浮遊で空中に安定させるというのは難しいのです。ドローンのようにプロペラで滞空出来ないのです」
「そういう所は難しいんだね~。でも、陸上戦艦も浮いているのは同じなのに、なんでそっちは安定しているの?」
そこがとても不思議に思った。
「地面があるからなのです」
「どういうこと?」
「陸上戦艦は最悪地面に設置することで、バランスを取れるのです。魔力障壁を利用して無傷で。そこから立て直しとなるのですが、空中戦艦はそういうバランスを立て直す場所は遥か下の海面や地面になるのです。そんなことをしていたら墜落になるのです。中身がぐちゃぐちゃ」
「あ~、なるほど」
バランスを崩した時の立て直しが上手く行かないんだ。
陸上戦艦はそのまま地面をバランスが崩れた時の基準にしているけど、空中にはそれがないか。
「難しいね~」
「難しいのです。色々考えてはいるので、今後に期待なのです」
でも、フィーリアちゃんの顔に曇りは無いし、ある程度目途は付いているんだろうな~っていうのはわかる。
近いうちにお空のお家ができるかもね。
造船所で色々作るっていうのはいいですけど、キャパを超えたら別で造船所を作る必要があるんですよね。
地球でもそうでしたし。
さて、陸上戦艦に空中戦艦はいつできるのか。




