第1910堀:船をどう使おうか?
船をどう使おうか?
Side:ジェシカ
「ああ、もう来ていたのですね」
私はユキから呼び出しを受けて、ウィードの軍部会議室へと顔を出しています。
ですが、私が一番最初ではなかったようで……。
「私もつい1分程前に来たんですよ」
そう返事を返すのはフィオラ。
彼女はウィードの軍部ではなく、最前線ともいうべき新大陸南部の砦での指揮を執っている。
「そうですか。しかし、あとスタシアもですよね? 軍部を集めてというと重要な話なのは分かりますが、指揮官を空けて大丈夫なのですか?」
「南砦については、トーリがいるので問題ないかと」
ふむ。
トーリですか。
まあ、彼女は相応に指揮を執れますからね。
普段は警察として動いているので、忘れがちですが、有事の際には将軍としても動けるタイプなので、確かに問題はないでしょう。
「そうなると、スタシアの方が心配ですね。あそこは北の町との交渉もあるようですし」
「ええ。下手に離れられないはずですが……」
「ああ、そこは問題ないですよ」
噂をすればというやつで、スタシアが部屋に入ってきています。
「代わりに誰を?」
「エノラです。彼女は北の町の亜人たちからも非常に評判は良いですから。それに、エージルも今は南部調査から戻っていてサポートについていますので大丈夫でしょう」
「なるほど。でも、エージルですか」
「今回の話は新兵器の説明とありましたが、いいのでしょうか?」
フィオラの言う通り、今回の集まりはウィードで新しく取扱い予定の兵器の説明だと聞いています。
そこで、エージルがいないというのはいささか不思議ですね。
「それに関しては、エージルは今回研究者としての立場が強いので、説明は後日とのことです。というか、兵器の開発側だということなので、ここにはいないと」
「なるほど」
確かに、エージルは将よりも研究者としての側面が強いですからね。
私たちと一緒に説明を受けるよりも説明をする側なのは間違いありません。
と、そんなことを話していると、会議室の扉が開いてユキとそのお付きのプロフたちと一緒に、ナールジアさんまで入ってきます。
「みんな揃っているな。遅れて悪い」
「いえ、時間はまだ来ていませんよ」
「はい。時間通りです」
「雑談をしていましたし、特に問題もありません」
ユキの言葉に私たちはそう返す。
事実待ったとは思っていませんし。
しかし……。
「なんというか、リーアがそうやってユキの横でお手伝いしているのは久しぶりですね」
「でしょ~? でもちゃんと役に立っているよ」
「ええ、見ればわかります」
当初の覚え拙いあわあわした動きはすでにありません。
今では立派なユキを支える側付きですね。
元々、勇者としてのスペックを使った護衛だったのですが、今までの経験から将としても動けますし、多少の政治的やり取りもできるようになっています。
「立派になりましたね」
「なんか、お母さんみたいなこというじゃない。デリーユも同じ感じだし」
「それはそうでしょう。リーアは元々村娘ですよ? それが今ではユキの秘書はもちろん、護衛に指揮、果ては政治判断や経営などもできるようになっているのですから」
下手をすると、私よりも秀でている技能もあるでしょう。
それだけ成長しているということです。
「わかります~。リーアちゃんは最初は剣ですら持つのを怖がっていましたからね~。ガンソードなんて使えるのか心配でしたし~」
私の言葉に資料を抱えているナールジアさんがテーブルに荷物を置きながらそう答えます。
彼女は私よりもリーアとは付き合いが長いですからね。
いえ、彼女がウィードにやってきたときから知っているのです。
「まってくださいよ。ナールジアさんの武器なんて誰だって持つのは怖いですよ。しかも素人ですし」
「「「それはそう」」」
全員で頷いてしまう。
だって、爆発しますからね?
と、そんな風に雑談していると、ユキが準備を終えたようで。
「さて、そろそろ本題に入らせてもらおうか」
そう言って視線を集めます。
プロフたちの手伝いで準備はささっと終わったようで、手元に資料もあります。
「ジェシカたちには新兵器の説明としか伝えていなかったが、詳しくは、軍艦の生産だ」
「「「軍艦?」」」
スタシア、フィオラも疑問だったのか、声が重なります。
「いま運用している空母二隻や駆逐艦やイージスでは足りないので?」
むしろ私としては今でも運用する人員が足りていないという認識だったのですが。
「そこらへんの説明というか、認識をすり合わせる目的もあるんだよ」
ということで、なぜ軍艦を生産することを決定したのかを説明し始めるユキ。
まあ、いたって理由は簡単でした。
「今更ながら、確かに整備はもちろん、修理に関して頭から抜けていましたね」
「そして、喪失した場合の次を考えていませんでした」
「それだけ、あの軍艦が落ちるとは思えませんでしたからね」
フィオラの言葉通り、あの鉄の船が簡単に沈むとは思っていませんでした。
アレを沈めるのは私たちですら困難です。
特に外からの攻撃では、私たちが持ちうるナールジア装備でも難しいでしょう。
何せ、軍艦すべてに魔力障壁の展開ができるようになっていますからね。
並みの攻撃ではびくともしません。
それもあって、あの軍艦が沈むことは無いと。
とはいえ、別に船が無くなるのは戦闘だけではないのです。
嵐、事故そういったことで、船が無くなるというのは知識で知っています。
何より、海には物凄く巨大な魔物がいるというのは、こちらの味方になってくれたシードラゴンからも証言が取れています。
正直、私の理解の外にあるようなレベルですが、そういうモノがいるのであれば、戦力はいくらあっても良いでしょうし、整備はもちろん、生産する場所は必要だという話は分かります。
「まあ、それだけ信頼してもらってありがたい話だけどな」
「しかし、今の話で不思議に思ったのですが、この軍艦生産の話であれば、まずは海軍に話を通すべきでは?」
スタシアの言う通り、この軍艦の生産説明は私たちよりも、ウィード海軍を率いるドレッサたちを優先するべきではというのは、当然の話です。
「ああ、そっちは先に話を通している。そして、すでに軍艦開発場所の選定に入っている」
「そういうことですか。すでにドレッサたちは納得して動いているのですね。私たちには説明と」
「まあ、ウィードの将軍を集めるのはリスクが高いからな」
確かに、別に忙しいというわけではありませんが、各地で指揮を執っている以上、その場を離れていれば、対応に遅れが出てくるのは当然です。
それは避けるのは当然。
「それで説明を続けるが、海軍で無いジェシカたちになぜと思うかもしれないが、別に船に乗らないってわけでもないしな。使い方によっては地上でも使える」
「「「はい?」」」
言っていることが分からなかった。
船ですよ?
海で使うから船なのです。
「まあ、疑問はもっともだ。その説明の為にもナールジアさんに来てもらったわけだ」
「そうですよ~。説明はちゃんとしますから、まずは聞いてくださいね~」
ということで、私たちはナールジアさんからの生産する予定の船の話を聞くことにする。
「まず、コンセプトですね。何が目的なのか」
意外とはじめはまともな説明でした。
いきなり、海に移動して完成品を見せられるような暴挙は流石に無いようですね。
「まずは、海上戦力の充実。まあ、喪失した場合の補給ができるようにするためにです。とはいえ、今運用している空母や駆逐艦は地球の技術で出来ており、それを再現するのはかなり困難です」
その通りです。
再現が難しく、そしてその威力は異常の一言です。
だからこそ、私たちは運用しているのですが。
「なので、新造艦では、なるべく今運用している艦を再現するのはもちろん、新しい発想の艦を用意するつもりです」
新しい発想の艦ですか……。
「その具体例が先ほどユキさんが言った陸上でも使える陸上戦艦、あるいは水陸両用の戦艦ですね」
「「「……」」」
言葉の意味は分かりますが、何と言えばいいのかさっぱりわかりません。
それはユキも理解していたようで、眉間を揉みながら口を開きます。
「冗談じゃない。真面目に考えているぞ」
「ええ、その通りです。それで設計ですが、こちらです」
ナールジアさんがそういうと目の前のモニターに三面図が表示されます。
それは船というには……。
「なぜ箱型? 海では三角形のような形では?」
フィオラがそう質問する。
確かに、図面では台形のような形をしています。
川などは箱舟というタイプが便利なのですが、波がある海洋では、逆三角形のような形状で波の影響を最低限にしないと転覆するという話だったはずですが?
そう、当然の質問をしたはずなのですが……。
「その通りです! よく勉強をされていますね。フィオラ様。ですが、それは陸上に行くときには邪魔になるというのはお分かりになりますか?」
なんか、ナールジアさんのスイッチを入れましたね。
目が輝いています。
「それは支える場所がないということですよね?」
「その通りです。まあ、強度の問題もありますが。海、いえ水だからこそ、あの巨大な構造物が動いていられるのです」
確かに、あんな巨大な物が水に浮くとか普通は考えられませんからね。
しかも鉄でできているとか。
「ですが、それを解決する方法を思いついたのです」
「それは?」
まあ、それを思いつかなければ陸上戦艦などというモノは作れないですよね。
で、その方法というのは……。
「それは、魔力障壁がヒントでした。元々は我々が戦う際にダメージを防ぐあるいは和らげるための防具に近い物でした」
確かに、魔力障壁というのは本来はそこが大本です。
「それを現在使用している空母を中心とした船で大規模展開をできるようにしました。これはご存じですね?」
「ええ、それで船の砲撃ですら耐えられる強度になったと」
「フィオラさんの仰る通りです。そして、攻撃はもちろん、不意の事故、暗礁などや海上の障害物と接触しての事故、損傷を防ぐのが目的でした」
そうです。
魔力障壁を船を守るように展開できれば、かなり便利になるのではという話でした。
そして、魔力障壁の展開に関しては既に確立している技術なので、それを応用して艦を覆うことが可能となったと聞いています。
気が付けばできていたので、ウィードの技術者、研究者は頭おかしいと改めて思いましたね。
と、そこはいいとして、その話に今度はスタシアが反応します。
「つまり、その魔力障壁を利用したと? 例えば地面に向けて放つとか?」
「はい。正解です! これはスタシアさんは研究者の才能があるかもしれませんね!」
「あ、いえ。説明の続きを」
スタシアは危険を感じてすぐに続きを促します。
まあ、そうでもないと技術開発談議になりかねませんからね。
下手なことを言えば簡単に実現してしまいそうですし、ここは大人しくしていましょう。
とりあえず、ナールジアさんがうきうきで話しているということは、実現はできるというレベルなんでしょうね……。
まあ、アニメでは船とか乗り物はロボットになるし、陸上に出て行っても特に不思議じゃないよね?
ファンタジーだし問題ないよね。




