第1909堀:色々ぶっ飛ぶ計画には大事な2人
色々ぶっ飛ぶ計画には大事な2人
Side:ラッツ
お兄さんが来たので、お話を聞けば……。
「……軍艦、戦艦ですか」
「やっぱり反対か?」
「いえ、お話を聞く限り、造船所は必要だと理解しています。ねえ、エリス?」
「……ええ。それはもちろん」
一緒に話を聞いているエリスも私と同じ、あまり顔色は良くない。
まあ、当然ですよね。
そして、その理由もお兄さんは分かっています。
何せ……。
「まあ、気持ちはわかる。鋼材とかその他材料費はDPで補うことはできるが、それでもDPを使うからな。人件費に関しては此方が出すし、資金も放出することになるからな」
その通り。
やるよっていわれて、はいどーぞですむような規模ではないんですよね。
文字通り莫大な予算と物資が必要です。
この新大陸との交渉でクソ忙しい時期に。
いえ、必要ですよ?
艦隊をこれからも運用するなら絶対に。
今まで局所で運用していて、海中整備だけで何とかしていたんですから。
もちろん、お兄さんのアイテムボックスに入れて、その中でのオート整備もある程度はしてたようですが、それだけで運用するのは無理があるのは百も承知。
だから、お兄さんの提案は私たちが視線をそらしていたことに関して、ようやく目を向けたって感じですね。
「動かす、金額、物資量が多くてちょっと二の足を踏みましたけど。必要なことです」
「ええ。私も驚きましたが、必要です。とはいえ、私たちで決裁は出来ません。それはわかっていますよね?」
そう、私たちが協力するっていえばそれで許可が下りるわけではないのです。
いえ、私たちに話が持ってこられる時点で上には話を通していることが多いので、私たちの許可が下りればそれで問題なしということもありますが……。
「わかってる。今回は規模が物凄いからな。先にエリスとラッツの承認があれば後押しになると思ったからな」
「やっぱりですか。まあ、気持ちはわかります」
「そうね。ざっとの概算だけでも国庫やDPの貯蓄の20分の1は軽く吹っ飛ぶ額です。というか、施設とかその手の概算を出すための資料に関しては?」
「いま、ナールジアさんが書き出しているところで、変なのは省いてほしいっていうのもある」
「「ああ」」
なるほど、私たちに話を先に通したのはそこですね。
ナールジアさんは鍛冶や冶金の腕はウィードで一番と言っていいのですが、妙な武具……いえ、最高の武具を作らせると金や物資に糸目を付けないですからね~。
まあ、単独、人一人にかかる資材なんてたかが知れていますし、ナールジアさんがほぼ単独で作るのでそこまで問題はなかったのですが、船、軍艦ともなると資材はもちろん、鍛冶師はもちろん、雑務などを熟す人、そして出入りする業者などが出てくるのは間違いありません。
その人たちの人件費とかを考えると、ナールジアさんは馬鹿みたいな試算をしかねません。
普通ならそういうことはしないんですけどね~。
「お話は分かりました。ナールジアさんの趣味を通さないようにしておきます」
「ですね~。とはいえ、必要かどうか判断がつきにくいモノに関しては連絡しますよ~」
「ああ、それは当然だな。いつでも連絡してきてくれ。あと、船の構造説明に関してはヤユイが俺たちの中では詳しいから、気になることはヤユイでもいいぞ」
「え?」
いきなり言われたヤユイは驚いているが、今の話は間違いではない。
船を操作することは超一流だが、それに合わせて船の構造などの勉強もしっかりしている。
ドレッサやヒイロと同じく船の修理についてはもちろん、航海の方法も頭に叩き込んでいる。
「ああ、確かに。ヤユイであれば船には詳しいですね」
「何かあったときは頼みますよ~」
「あ、はい。その時は全力でお手伝いさせていただきます」
それでいったん休憩として、お茶を飲み。
「しかし、ユキさんは今までその手の現代兵器を生産するというのを避けているかと思っていました」
エリスはそう切り出す。
確かに、お兄さんは今までは現代兵器、銃とかに関しては、整備方法や道具、そして本体に関してはすべてDPからの生産でした。
つまり、ウィードで自前で作るようなことはありませんでした。
いえ、まあ、厳密には作れないというのが正しいのですが。
あんな精密さを求める武器とか、作れないんですよね~。
出来て火縄銃でしょう。
だからこそ、メノウさんがいるシーサイフォでは魔術銃にとってかわられているんですよね~。
誰でも魔術を放てる簡易武器として考えると便利なんですよね。
威力も単発の鉛玉よりも魔術の方が色々ありますからね。
と、そこはいいとして、お兄さんの考えはというと……。
「今回はどちらかというと、兵器というより、乗り物の生産だからな。戦艦に載せる兵器に関しても、ナールジアさん特製がメインだし、現代兵器ってわけじゃない」
「あ、そうなんですね」
てっきり大砲とかを載せるモノかと。
「では、今使っている空母や駆逐艦ほどには性能は無いということでしょうか?」
「まあ、最初はそうだろうな。とはいえ、これから改良を重ねていくだろうし、この世界に合わせた船というのがあるしな。確かに地球の軍艦は性能は高いだろうが、魔物にまで万全ってわけじゃないしな。実際魔力のバリアを張るようなシステムをすでに取り付けているし」
「なるほど。性能が高いことと、こちらで使えるかというのは違うわけですね~」
「そういうことだ。ルナがくれた軍艦は衛星と連携を取るモノも結構あってな。レーダーを使っての迎撃と索敵も、物体だけだしな」
ふむふむ。
確かに今言われると改良の余地は多大にありそうですね。
とはいえ、その程度の不利を覆すほどの性能なのですが。
「前も、いや今もやっているが、この世界にあった技術の発展があるんだよ。魔力の有効活用とかな」
「なるほど。確かにその通りですね」
「ですね~。電力も使えることは使えますが、汎用性を考えると魔力が一番ですし」
何せ、発電機とか用意しなくていいですからね。
魔力をためて置ける魔石や加工魔石があれば、誰でも魔力をためられて、それを利用できるのですからね~。
まあ、条件で言えば発電機も物を用意するという点は同じなんですが、馴染み深さが違いますからね。
そこら辺も考えないといけません。
ですが……。
「魔力が便利だというのはわかりますが、そうなると電気の普及はやめるので?」
「いや、どっちもって感じだな。魔力に関しては、人によりけりというのがあるから。それを補うにはやっぱり電気の方がいい」
「確かに、才能に因らないですからね」
うん、電気のいいところはそこです。
人の才能の有無ではなく、使う発電機の性能だけですからね。
それは購入できるもの。
金銭はかかりますけど、それは魔力を使うことも同じです。
魔石を加工したものを使うのですから、そこでお金がかかります。
どちらがというと慣れとかの気持ちもあるでしょうが、汎用性は発電機の方が上ですよね~。
「まあ、そういうことで、別にこっちに地球の技術を入れるということは否定はしないが、それ一色っていうのは違うと思っているってわけだ」
「わかりました」
エリスも納得したようですね。
とはいえ、安定した成果というか、使用結果が出ている方が、ウィードの財政を詳しく知るエリスとしては、予測が立てやすい方がいいですよね。
まあ、それは私もですが。
「よし、あとはセラリアに説明しておかないとな。二つ返事で許可をするとは思えないが、変な兵器を言いくるめられて頷いてもらっても困るし。説得、いや説明に付き合ってくれ」
「「はい」」
断るわけがありませんとも。
お兄さんと一緒の仕事ですし、何より、下手をすると国庫が吹っ飛びますし、ナールジアさんの暴走の結果、物理的にウィードが吹っ飛ぶ可能性もありますよね。
それだけ、兵器というのは恐ろしい物なのです。
「で、私の所に来たのね。エリスやラッツも伴って」
さっそくセラリアの執務室にやってきて、先ほどのことを説明します。
「ああ。艦船の生産、整備をする場所は絶対に必要だからな。今までは無理に誤魔化してきた感じだ。そろそろな」
「確かにね。まあ、過剰すぎる戦力だし、丈夫だから問題ないと勝手に考えていたわ。今更使えなくなったとかになると、私たちの海上の戦力は激減するものね。それはシーサイフォやオーレリア港、グラス港町の存続にかかわるモノね」
「だな。今更使えなくなりました。終わりとはいかないからな。だから、ちゃんと船も生産する」
「一応、シーサイフォから供出された軍船があったでしょう? そこは参考にならないの?」
あ~、ありましたね。
メノウがグラス港町を作るにあたって支援ということで、軍船を3隻も回してきました。
普通なら正気を疑うレベルですけど、ウィードのことを知っているメノウにとっては安いと思っているでしょうね~。
まあ、シーサイフォでは何か文句を言われてそうですけど?
いえ、こちらも実力は見せていますし、空母も知っているから問題はありませんかね?
と、そこはいいとして、その軍船に関してですが……。
「そこはよくわからない」
「よくわからない?」
「参考にはおそらくなるが、俺は設計者じゃないからな。ナールジアさんを筆頭とした船大工が何を作るかは想像がつかない」
「「「ああ」」」
超納得です。
多分、参考にするって言葉も、本当に参考にしたのかっていうレベルのモノが出てきそうですもんね。
「こうして私に説明しに来た意味がよく分かったわ。ナールジアさんが申請したら気を付けておくわ」
「徹底的に資料を読み込んで、建造する船についての説明は聞いておけ。あと俺も呼んでくれ」
「ええ。その時は呼ぶわ」
勝手にごり押ししそうですからね。
兵器のことをわかる人が必要でしょう。
ナールジアさんはそういう必要性を説くときはやたらと弁がたちますし。
「まあ、元々軍艦を建造するなんて、ウィード全体で必要な会議だしな。ドレッサたち海軍組は絶対に会議に参加する必要はあるけどな」
「そうね。でも、ヴィリアについては北部に向けて移動中でしょう?」
「別に休みなしってわけじゃなし、時間を少しもらうだけだからな。とはいえ、連絡は入れておく必要はあるか」
「そうね。それに当然軍部のメンバーも出てもらわないと」
当然ですね。
軍の増強なんですから、ジェシカ、スタシア、フィオラは必須でしょう。
とまあ、こんな感じで軍港建設への準備を始めていくのでした。
ナールジアさんの信用はあるけど、別の意味で信用は無い。
いや、面白いよね~。
と、そこはいいとして、流石に軍部を全員呼んで話し合う必要性はあるので、集合にも大変そうだね。
そして、その大計画を動かすのには、エリスとラッツの協力が必要不可欠なんです。




