落とし穴外伝:2026年 年始スペシャル4
落とし穴外伝:2026年 年始スペシャル4
Side:ユキ
「うわ~、これなにかしら?」
「こっちもなんだろう?」
「これは面白いね~。これ美味しい」
「こっちも美味しいよ~」
そんな声があちこち響いていて、それでいて不快だという感じはしない。
今回のプレゼント交換のお題と予算を決めたのは間違っていなかったようだ。
子供たちは軒並み喜んでいる。
「思ったよりもうまくいったわね」
「だな。まあ、お正月ということもあって、置物とかそういうモノが多かったから子供受けもよかったみたいだ。俺はこの手ぬぐいというか、絵かな」
俺の手元にやってきたのは縁起物とされるものが書かれている布。
これは飾るものか、それとも軽いお土産程度の手ぬぐいなのかはわからない。
「どうかしら? まあ、あの市場で売っているのだから、詐欺ってわけではないのでしょうけど」
セラリアもよくわからないようで首をかしげながら俺が持っている絵を見ている。
おそらくイノシシだとは思うが、それが書かれている。
「まあ、値段も制限しているし、そこまで高い物でもないしな。量産品ってところだろう。飾ってもよし、使ってもよしってな」
こういうモノは意外と扱いが難しいよな。
プレゼントで縁起物。
飾るか使うか、どちらも正しく、微妙ってところだ。
「ま、これが貰い物のだいご味でもあるがな」
「そうね。私もこの木彫りの人形はどうしようかって思うもの」
セラリアの手にあるのは、ソウタさんが選んだ木彫りの人形だ。
一年間の無病息災を願って彫られたものらしい。
「別に人形遊びをするわけじゃないし、部屋の棚にでも飾っておけばいいだろう? もう空きがないか?」
俺みたいに何に使うかわからないっていうよりは、用途がはっきりしているからセラリアの方が迷わないだろう。
「それもそうか。別に執務室に飾るわけでもないのだし、自室の棚の飾りならいいわね。ソウタさんから贈り物だから身構えていたわよ」
「ああ、そうか。ソウタさんは一応ハイデンカミシロ公爵家の一人だしな。元とはいえ」
何せソウタさんは死人なので、現在の正式な立場は表向きカミシロ公爵家の遠縁の爺さんという扱いだ。
そうでもないと、ウィードに来れなかったしな。
とはいえ、裏を知っていれば、いや、ある程度察せられるなら、現カミシロ公爵が気を遣っているのだからその立場を想像できるだろう。
その人物からもらったものを粗末にというのは誰も扱えないよな。
いや、俺は別にって感じなんだが。
セラリアもソウタさんのことは知っているが、そういう立場も理解しているため、女王でもあるから粗雑に扱えないと思ったのだろう。
「そういうこと。とはいえ、今回は私を目的としたプレゼントでもないのよね」
「そうそう。プレゼント交換で、狙った相手がいるわけでもない。身内のやり取りだし、別に粗雑に扱っても笑って流すさ」
何せ値段にあった耐久性だ。
別にそこまで安くはないが、それでも高級とは言い切れない。
なので……。
「あっ、こ、壊れちゃった。ご、ごめんなさいリエル様!?」
「ん~? いいよいいよ。元々丈夫な作りじゃないし。ほら、ヤユイかして、こういうのは……ほらっなおった」
「いや、リエル。それ無理に押し込んだだけだよ。えーっと、エージル」
「はいはい。接着剤」
とまあ、セラリアとは違う置物の人形の一部がポロっともげてしまうというのはよくあるのだ。
そして、壊れたのなら直せばいい。それだけのことだ。
「なんというか、その通りなんだけど、縁起ものなのよね?」
「罰当たりに思えるが、壊して放置の方が罰当たりだと思うぞ?」
「確かに」
「そもそも、この手の縁起物を一つ壊してたたるような神様は器が知れているだろう? いや、ある意味力があるんだと思うこともできるが……」
「そんな器のちっさいのがいたら今頃被害甚大ね」
「だろ?」
前提としてありえないのだ。
そんなやっすい縁起物一つ壊すだけで影響を及ぼす神様とか、誰が崇めるか。
いや、日本なら崇めそうだが、どこに地雷があるかわからない神様の関係物を作ろうという発想にならないだろう。
「あ、それで思い出したんだけど。間違って変な掘り出し物とかないわよね?」
「あ~、そっちな。それに関しては……」
俺が言葉を言う前に、鈴のなったような声が入り込んでくる。
「問題ありません。今回のプレゼントにはそのような呪物はありません」
そう言い切るのは我らが鈴彦姫。
神楽鈴の付喪神であり、天照大御神を知る最古の神の一人である。
現在のその天照大御神ことルナの命令により、ウィードに移転させられた日本の村の管理をしている。
元々は廃村だったのが綺麗な妖怪と人が住む場所になっている。
うん、言っててなんだが、魔境だよな?
「そう。なら良かったわ。子供たちがもらったものの中に変なのがあったらどうしたものかと思っていたし」
「確かにそれは見過ごせないよな」
こどもたちはそういうのに影響を受けやすいからな。
俺も口には出さないが、鈴彦姫に視線を向けると、すぐに頷いてくれて。
「はい。ご息女様たちが手にするものです。私が手を抜くことはありえません。どれも量産品であり、念もこもっているモノもありませんので問題ありません」
「そうか。疑うようなことをして悪かった」
「いえ、当然かと。それに、ウィードは天照大御神様の命を受けて動いていますし、その手のモノと縁があっても何も不思議ではありません。今のところ、そういうモノは日本由来のモノぐらいですが、気を付けておくべきかと」
だよな。
気を付けておくことは大事だ。
まあ、実際にはまだアロウリトの品物で祟り的なことは起こってはいないが、アロウリト産の幽霊は存在するのが確認されている。
ウィードの幽霊に加わっている記憶喪失の赤い服の浮遊霊、そしてランサー魔術学院のハヴィアと、そこまで多くはないが、こちらの幽霊は確認できている。
だから、呪いの品物があってもおかしくはない。
まあ、呪いとは別だが、ズラブルでは人形や髪飾りにホウプ、チャエヤという人の残滓が残っていた。
幽霊というか、記憶みたいなものだが、それを鈴彦姫の力でこちらに引き留めたってわけだな。
無論、優秀な人材でもある。
とまあ、そういう事例があるわけだ。
注意を払うことに間違いはない。
「ま、そういうのがないなら、扱いは自由ね。で、総評としては、私はこのプレゼントの選び方は悪くないと思うわよ?」
ああ、そういえば大本はプレゼントを悩むから、その解消法としてこれを始めたんだった。
「俺も悪くないな。まあ、選択式でいいだろう。別に全員に強制するつもりはないし」
「そうね。時と場合でいいわね」
そう、確かに便利ではあるが、これを当然とするのもプレゼントとしては違うからな。
相手によっては渡したいプレゼントというのがあるだろうし、その時はそれでいいと思う。
とはいえ、ほかのメンバーとの不公平感はでてくるから……。
まあ、その時に合わせてってやつだな。
本当に。
「お正月もこれで終わりか」
「そうだなぁ。なんか毎年あっという間だよな」
気が付けば年末を越えて正月3が日が終わっている。
いや、思い出せば色々やっているんだが、それでもあっという間って感じがする。
「明日から、仕事頑張るか」
「そうね~。明日から仕事よね~」
これに関しては俺だけでなく、セラリアも嫌な顔をしている。
まあ、明日からまた書類仕事だと思えば気も滅入るよな。
それに、別の仕事だって山ほどある。
日常が戻ってくるわけだ。
さあて、そうなると夜更しはほどほどにして休まないとな。
これにて今年の正月スペシャルは終わりです。
皆さまは既に日常に戻っているかと思いますが、改めて今年もよろしくお願いいたします。
雪だるまでした。




