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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第1903堀:向こう側の思惑について

向こう側の思惑について



Side:ユキ



「すぴ~……」


そんな感じで寝息を立てているのはキナと子供たちだ。

冒険者ギルドでの仕事がある程度区切りがついたということで、今日はミリーたちを労うための旅館にある俺の趣味店舗を開けた。

まあ、意外と開けては料理を作っていて、子供たちには人気なんだが……。


「こうなるので、あまり開けないんですよね」

「そうね。医者としてはあまり推奨はできないわ」


ルルアが苦笑いしながら、エノラは憮然としながら、お酒一杯、お腹一杯になって寝ているキナと子供たちを見てそういう。

気持ちはわかる。

キナはともかく、子供たちはちゃんと規則正しい生活をしてほしいし、飯をたらふく食べて遊んでそのまま寝るとか、どこのダメな大人だと言いたい。


とはいえ、これは子供たちにとっては俺たちの友人がくる時のご褒美タイムのようなものだ。

この家には流石に学校の友達は呼べないからな。

こうしてお客さんがくるのは嬉しいし、こうして特別とまではいわないが、俺が手料理をふるまうので、子供たちにとっては特別な時間なわけだ。


だから限界までここにいてこうなるわけだ。

そして……。


「お任せください」

「ですよ~」


寝てしまった子供たちを対応するのは、我が屋のメイドたちと、そのお手伝いのスライムたちだ。

なんで、スライムかというと、その柔軟性と変形が子供たちのサポートに一番適しているからだ。

スラきちさんの部下であり、相応の能力もあるので護衛としての意味もある。

学校に行っているときも小型で一緒にいるので、下手をしなくても俺たちよりも子供たちと接している時間は多い。


「むにゃ、おとうさま」

「ぱぱ~」


そんな寝言をいいながら運ばれる子供たちを見てほっこりしてしまう。

とはいえ、そのままついていくわけにもいかない。

一応ミリーの冒険者ギルドの問題が一通り落ち着いたからという名目ではあるが……。


「ほら、起きなさいキナ」


ミリーが遠慮なく、寝ているキナの頭をぺちんとたたく。

本来なら寝かせてあげたいのだが……。


「むぅ。もうちょっと子供たちをいさせてもよかったのに」

「残念。もう眠る時間よ。それにここからは大人の時間なのはわかるでしょ?」

「はぁ、やっぱりか。ま、ただ飯を食えるんだしいいか。で、ロックさんは?」

「俺は起きているぞ。子供たちはお前が相手をしていたしな」

「顔が怖いからね~。距離を置かれてるもんね」

「え? そうなのか?」


ロックはキナの言葉に驚いたような顔をしている。

いや、普通にショックだったって話だな。


「こら、別にロックさんは怖がられていないわよ。キナの方が友だちに近いっていうか、幼いからでしょ」

「あはは、まあ、男の人だしね~。そこらへんは仕方ないよ」

「びっくりしたじゃないか。これでもギルドでは男の子たちとは上手くやっているんだからな」

「だね。初心者講習や訓練場によく顔を出して、指導しているもんね」

「おう。そこはギルド長らしいことをしないとな」


なるほどな。

ロックはロックで子供たちとちゃんと交流があるんだな。

俺の子供たちと接する姿から苦手ではないとは思っていたが、ちゃんとそこらへんは自分から接点をもっているのか。

普段の仕事が忙しいのに感心する。


「ロックもキナも今回は本当にお疲れ様だったな。ほれ」


俺はそういって、お冷を渡す。


「おう」

「ありがとね~」


そういって二人ともいったん酒気を飛ばすために冷えた水で喉を潤す。


「ミリーはどうする?」

「私はまだまだ酔っていませんよ」


うん、酔っぱらいの常套句だが、まあ信じておこう。


「じゃあ、そのまま話をさせてもらう。冒険者ギルドの方はウーサノ、アーエに関してはとりあえず落ち着いたってことでいいんだな?」

「はい。後始末もちゃんとしました。予定通りというか、スアナの町で行われていた大氾濫を想定していた移民の募集は止まりました」

「止めたのか?」

「ええ、なにせ兵士を派遣するための魔物がいなくなりましたから」

「普通に移民をしてもよいじゃろうに」


デリーユはそうつぶやき、エリスやラッツたちも頷く。


「開拓が出来ればそれはそれでいいことじゃないのかしら?」

「ですよね~? 十分評価することだと思いますけれど?」


俺も同じ意見だ。

移民自体は悪いことではない。

森の領有を希望するのであれば、必須と言ってもいいだろう。

確かに大氾濫もどきが起これば兵士をやって制圧を早めることは出来るが、そこに人の生活というと違うかもしれないが、生産性のない拠点なんて浪費するだけでうまみはない。

統治を上手く行かせるためにも、そういう生産拠点があることには越したことはないと思うが……。


「そこらへんはまだわかっていない。まあ、ある程度予測はできるが」

「それは聞いていいのか?」

「別に予想だしかまわない。簡単に言えば、多数の貴族が噛んでいるんだよ。スアナの町の領主が主体ではあるが、支援しているのはほかにいるってわけだ。だから、前提となる魔物の襲撃が無くなるのであれば……」

「支援はしないってことになるわけか。……なるほどな。ただの移民だけであれば、普通に開拓をした領主の成果だしな」


簡単な話だったわけだ。

いや、物事のトラブルというか今回はそういうモノか。

ただその手順が迂遠すぎて混乱しているというだけ。


「そういうことだ。このまま支援しても派兵は無くなる。つまりスアナの領主だけが独り占めって話だ。今までの手伝いの意味がなくなるってわけでもないが、国境になっていた森を確保したという名誉は無くなるわけだ。それに準備のために資金も提供していたみたいだしな」

「資金?」

「ユキさん。スアナの町が別に好景気ってわけでもないのに湧いていたって話を覚えていますか?」

「ああ、あったな。それ、周辺というか仲間内の資金提供だったわけか」


頑張って領主が自力で集めた……というのは間違いないんだろうが、支援を募ったわけか。


「でだ、その移民を集める、村をつくるための資金も止まったわけだ。何せ大本が失敗したわけだしな」

「だからこれ以上は動けない。いや、お金は出せないか」

「元々博打に近いものだしな。今回の魔物を集めていた村の失火と言われている件についても、邪魔が入ったでも、本当に失敗したでも、結果としては無駄になったことには間違いはない。だから、それで手を引いたって感じだな」

「表向きには開拓移民計画に問題があって凍結となっていますね。よくあることですし」


まあ、魔物や盗賊が横行する世界だし、資金が集まらなくて計画が無くなるというのは別に珍しいことではない。

今回のこともそれで終わりということか。


「そういえば、大陸間交流同盟から交渉していた森の調査に関してはどうなった?」

「ん? あっちに関してはグラス港町の完成パーティーの時に協力をお願いできるかって話で止まっているわね。なにせ、裏は知れたし新大陸のことは既にこちらの手の内。もうあそこで召喚事件はまず起こらないし、深入りする理由がないわね。それよりも、貴方が提示した派兵の件で大忙しよ」

「なるほどな」


グラス港町の完成パーティーでウーサノとアーエに森の調査協力を押してはいたが、それからは進んでいないか。

まあ、進める必要性もなくなったしな。

中身は領土拡大を狙いたい連中のたくらみだったし、召喚事件についてはオーエとのファーストコンタクトは取れたし、村との渡りもつけた。


「で、ユキさん。私たち冒険者ギルドはいいんだけどさ、そっちで見つけた新大陸の方はどうなの? グランドマスターは行ってみたいとか言ってたけどさ」


キナは水を飲んで目が覚めたのか、そう質問をしてくる。


「ミリーから聞いていると思うが、向こうは物凄くごたついているな。それで意見も欲しかったんだよ」

「ああ、この席でただ酒ってわけじゃないのはわかっていたさ。それで?」


ロックもただの飲み会ってわけではないと理解していたようで、すぐに真面目な顔になる。


「向こうにも冒険者ギルドがあるっていうのは聞いているよな?」

「ああ。ヴィリアたちが冒険者として向かったっていうのも知っている」

「それで、魔物が強力で多いところに向かわされたわけだが、北部に行くにつれて魔物が強力らしい」

「北部ね。まあ、情報が限定的過ぎて何にも言えないが、それはユキたちが集めた情報だろう? それに何か問題でもあったのか?」

「いや、それ自体は問題ないんだが、魔物が強力だとして、各地から冒険者を集めるか?」

「ん? 質問の意図がよくわからないな。そりゃ、魔物が強ければ倒せないと被害が広がるだけだから、冒険者を集めるだろう?」

「あ~、言い方が悪かったな。国はもちろん、クリアストリーム教会っていう魔物専門の組織があって、それでなお冒険者を集めるっていうと、どう思う?」

「ん? まて、冒険者が集まっている理由は?」


やっぱりロックはそこに気が付いたか。


「表向き魔物退治で有名とか未来有望な冒険者を集めているな」

「……なるほどな。違和感というのがわかった。不自然だな」

「え? 何が不自然なんです? 魔物が強力だから、強い冒険者が集まるのは自然な……」

「キナ。違うわ。集めるって話」

「ん? ああ! 集める! 自発的に集まるじゃないわけ?」


キナもミリーの指摘がようやくわかったようで俺に向かって確認するように顔を向ける。


「そう。クリアストリーム教会のドドーナ大司教、ギアダナ王や宰相のおすすめもあったが、イアナ王国に集めているというのは間違いないようだ」

「そりゃ……ただの稼ぎじゃなくて、大規模な作戦を考えている可能性があるな。まあ、魔物が強力で防衛とか周辺鎮圧のために集めている可能性もあるが。上からの話だろう?」


やっぱりそう思うよな。

意図的に国をまたいで活動している冒険者を集めているとなると、そういう作戦があってもおかしくはない。


「そういうことだ。いや、向こうもヴィリアたちの力がわかっているからというのもあるが……」

「いや、それはヴィリアたちの力を知っているからこそだろう。それこそ何か聞いていないのか?」

「聞いてないな。とはいえ、向こうは国内のことに集中しているからな。3カ国挟んでいるところの意図はよくわかっていないと思うが、聞いてみる」

「おう。下手をしなくても利用されている可能性はあるぞ」

「いや、それはお互い様だからな。こっちに確定していない情報を与えても仕方がないと思ったかもしれないし、クリアストリーム教会がいるからもたらされる情報に信憑性がないと思っているかもしれない」

「あ~、そういう可能性はありそうだな。とはいえ、一度は聞いておいた方がいいだろう」

「そうだな」


ギアダナ王国も俺たちを騙して得る物はほぼない。

そうなると下手な情報を渡して俺たちの信用を損ねるのが怖いってところだろう。

なにせ、クリアストリーム教会は国をまたいで色々やっている集団だ。

国も危ないから、情報統制には気をもんでいることだろうさ。


「と、一応飲み会だからな。面倒なことを話したな。飲みなおすか」

「ああ。とはいえ、相談ならいつでも受け付けるさ。ユキたちに倒れてもらっちゃ困るからな」

「そうだよ~」


とまあこんな感じで。飲みなおして夜は更けていくのであった。



ヴィリアたちをただイオア王国に向かわせたというのは楽観が過ぎますよね。

とはいえ、ヴィリアたちは変身ヒーローとしての活躍も求められていて……。

いや、その情報も自分たちで集める必要がある。

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