第1883堀:お世話と襲撃の結果
お世話と襲撃の結果
Side:ラビリス
「ふむ。オレリアたちが優秀になって、私たちが手を出す隙がなくなってきたと」
「それは由々しき事態ですね」
まず、会議で集まって話されたのはオレリアたちが優秀になりすぎて、私たちがあまりユキに構えなくなったということ。
「えーと、ほかに優先するべき話があるんじゃないか?」
「「「ない」」」
ユキの言葉を速攻で否定する私たち。
まあ、本当に優先するべきことがあればそっちを優先するけど、今はその時じゃないし、最近は輪をかけて忙しい。
その中で、私たちの癒しともいえるユキとの触れ合いが減るというのは、私たちのモチベーションにもかかわる。
「あきらめなさい。私も同じ意見だし。とはいえ、オレリアたちが悪いって話じゃないからね。そこはわかってね」
「あ、はい。大丈夫です」
「難しいですよね~。ユキ様と一緒にいると癒されますし~」
「わかります。安心するんですよね」
3人の言葉にうんうんと頷く私たち。
わかっているわね。
それだけ3人が優秀になっている証拠でしょう。
ユキは私たちにとっての癒しでもあるの。
「私もそれはすごく同意できますが、あまりこのような会議の場でお茶やお世話を奥様たちにまかせるわけには……」
「ま、そこはそうよね。あくまで今回の会議はユキが主導なんだし。それで私たちにお世話をされるっていうのは準備不足って感じよね」
何のための主催者って感じではあるわよね。
それは確かにわかるわ。
「ですが、別にここは身内だけですし、そこはどうにでもなるのでは?」
うん、エリスの言う通り。
確かに他者、というか、身内以外のモノがいるならあれだけど、今日は身内だけの会議だし、そこらへんは別に文句も出ないわよ。
「そうですね。では身内のだけ時は事前に話してお世話をきめるとかでどうでしょうか?」
「そうね。わたしもシェーラに賛成」
シェーラとドレッサもエリスに続くように提案して賛成をしている。
「ドレッサもか」
「それは当然よ。ユキのこと嫌いじゃないし、接する時間は欲しいと思っているのよ。とはいえ、基本オレリアたちがやっているし、家でも基本的に自分のことは自分でやるでしょ?」
そうなのよね。
ドレッサの言う通り、ユキってば家でなら私たちに甘えてくれるだらしない姿を見せると思いきや、普通に自分でできることはする。
「ドレッサさんの言う通りですわね。ユキ様は基本自分でなんでもやってしまわれますから」
「そう、妻が甲斐甲斐しく世話をすることができない。ユキはもっと堕落するべき。というかむしろ私たちの世話を焼くことが多い」
サマンサやクリーナの言葉に全員が頷く。
そうなのよねぇ。
ユキって基本私たちを大事にしてくれるから、色々とお世話をやいてくれるのよね。
まあ、初めてウィードというか地球の文化に触れて、何をどうしていいかわからない私たちに一から丁寧に教えてくれたのよね。
そこの流れもあるでしょうけど、ユキって基本的にお世話好きなんだと思うのよね。
「そりゃな。ウィードというか地球のことを知らないんだから、教えてやって見せるしかないしな。それにわざわざセラリアたちに頼まなくても、そこのポットを押すだけでお湯出るし」
そういって、ユキは部屋の隅においてあるポットへ歩いて白湯を入れる。
「普通はそういうのも使用人とかに任せるの」
セラリアがそういうと私たちはうんうんと頷く。
「そうです。ユキ様、勝手に動かれてはこまります」
「私たちがお世話しますから~」
「はい。任せてください」
そうよね。
ユキの側付きでもあるオレリアたちからすれば仕事を奪われるようなものだし。
「いや、頼むときは頼むから。で、いい加減会議の本題にはいらないか?」
「話を露骨にそらしてきたわね。まあ、いいわ。今度からは私たちだけの会議の時は大人しくしていること。いいわね?」
「まあ……それぐらいはかまわないけど。それで、ウィードに残っているみんなに集まってもらったのは、ギアダナ王国王都にあるクリアストリーム教会を押さえた話だ」
そういうと即座にプロフがモニターを起動させて、映像が映る。
そこには、教会と思しき人たちが空を飛んでいる瞬間だった。
「「「ん?」」」
その映像を見て疑問の声を上げる私たち。
そして、その内容を知っているであろうメンバーが目をつぶってこめかみを揉んでいる。
「あ~、色々疑問があると思うが、捕まっていた亜人を解放するために、クリア教会のドドーナ大司教とギアダナ王、ダエダ宰相が訪問を装って入ったときの映像だ」
「訪問っていうかどう見ても強襲に見えるけど?」
「ですね。ドドーナ大司教というのはよくできた方とヴィリアたちからも聞いていましたが?」
うん、シェーラの言う通り、ヴィリアたちからの報告では実力差があるのにもかかわらず、的確に指導もできる稀有な人材だっていってたけど、どう見ても物理アタッカーよね。
セラリアとかジェシカ寄りの。
「なんか視線を感じるわね」
「はて、なぜでしょうか?」
セラリアとジェシカは首をかしげいるが、自覚があるからこそでしょうね。
「それに関しては、悪事をやっているなら問答よりも、証拠を押さえた方が捕まっている人たちも素早く救出できるからというのが本人の談だ。まあ、やり口に関しては詳しい打ち合わせはしていないし、確かに救助が遅れていれば助からなかっただろう人たちもまたいるから、間違ってはいない。で、そこはともかく、次だ」
そうね。
今はドドーナ大司教が意外と豪快だったのはどうにもならないし、その結果を聞かないと。
「そして今も言ったが囚われていた亜人たちはギアダナ王たちが連れてきた騎士団はもちろん、ヴィリアたち、そしてエノラたち衛生兵が、ドドーナ大司教が暴れている間に確保。そして応急処置で治療を施し、移送を開始」
亜人たちの映像が流れるけれど、これは……。
正直に言ってみて面白いものではない。
子供たちに見せるのはためらうレベルだ。
そして、不意に側に付いているリュシに視線を向ける。
今回、なぜか新大陸南部の砦の医療班というか研究チームとしているはずのリュシがいるのか不思議だったが、これが理由かとも納得したと同時に、見せなくてもという思いも出てくる。
とはいえ、なんて声をかければと思っていると……。
「……リュシ、患者たちの現状は?」
沈黙するなかでルルアがそう口を開く。
そこには静かに、そして怒りをこらえつつ聞いているのがわかる声。
「はい。患者たちはエノラ様が率いる医療班のおかげで一命をとりとめています。ですが、すでに亡くなっている方々は遺体で連れ帰っている状態です。最後にいまだに詳しいことは把握できていませんが、一部会話をした患者は意識が混濁、あるいは虚ろで明晰ではないような者たちがいます」
当然ね。
あんな目に仲間があって、自分もなれば精神に変調しない方が運が良いといってもいいわ。
「そして、移送先については予定通り、南部の砦の病院に入院している状態です。怪我の治療はもちろん、精神状態がある程度こちらが把握、そして落ち着くまでは不用意な人との接触は避けるべきと。北の町では住民感情はもちろん、軍も下手をすれば暴発しかねないとのことで」
当然ね。
町の、オーエの住民ではないとはいえ、同じ亜人がボロボロになった姿をみて、敵対意識を持つなというのは無理な話だわ。
「現在の南部砦の病院の責任者は?」
「はい。エノラ様が院長で、私が補佐という扱いになっています。現在エノラ様は患者たちを付きっ切りで診ているところです」
なるほど、それでエノラじゃなくて、リュシが来たわけか。
当然と言えば当然ね。
「わかりました。この会議のあと、私も南砦病院への視察をしますから、連絡を入れててください」
「かしこまりました」
ま、ルルアなら当然ね。
エノラが応援を呼ばないところから問題はないんだろうけど、ルルアとしては放ってはおけないか。
「頼む。何か足らないことがあるかもしれないからな」
「はい。お任せください。あと確認したいのですが、北の町の治療に関してはどうなっているのでしょうか? ハイレン様はウィードに戻ったと聞いていましたが?」
ああ、あったわね。
私に相談してハイレンが暴走しないようにはどうすればいいかって。
私も悩んだわ。
結果……。
「ああ、亜人の扱いを聞けば、勝手に突撃しそうだったからな。安定してきたということで、ウィードの教会の手伝いに戻ってもらった。子供たちが呼んでいるのも間違いじゃないしな。リリーシュも北部に行っていることもあって、素直に向かってくれたよ」
そのユキの言葉に全員が頷く。
否定する理由がない。
確かにハイレンならなんだかんだで良い結果を引き当てるのでしょうけど、その結果を得るまでに私たちがサポートをどれだけすることになるか。
いえ、後始末ね。
それを含めて良い結果なのがね~。
「その判断で間違いないかと。ハイレン様ならそのままドドーナ大司教と意気投合して暴走しそうですし……」
ルルアの言葉で即座にその姿が思い浮かんでしまうわね。
ハイレンもどちらかというと、戦乱を生き抜いた武闘派だし。
「そうか。まあ、色々あると思うが、次の話だ。クリアストリーム教会を押さえたことでそこの資料は押収できた。もちろん、ギアダナ王国側に回しているが、ちゃんと記録は取っている」
そういって、今度は資料の映像を上げる。
「詳しくは解析中のモノはあるが、クリアストリーム教会は間違いなく、亜人を集め、なぜかハイデン地方で起こっていた、血からの魔力を魔石に集めていたことがわかっている。現物もそれなりにあって、確保したのが3つほどある」
「つまり、ダンジョンコアってこと?」
「いや、劣化の魔物を呼び出すだけのマジックギアでもない。本当に血につけて魔力をためる人工魔石のような扱いのモノだ」
「人工の魔石……。そういえば、私たちもそんなのを作っていたわよね? 確か家電の……」
セラリアがそう思いだしかけているところで、リエルが口を開く。
「バッテリーだよね。魔力を電力に変換するための」
「そう、それ。それと同じってこと?」
「魔力をためるっていう点については同じだが、電力に変えるわけじゃないからな。何に使うのかがよくわかっていない。資料からもクリアストリーム教会にとってギアダナ王国は支部でしかないからな。それを作る命令はあっても、理由はって感じだ。まあ、ギアダナ王国の方でも調べは進めるだろうが、まだまだ知らないことは多い、これからも何かわかれば連絡をするので、みんなよろしく頼む」
ということで、北部は事態が動き出しているって感じで、ヴィリアたちもイアナ王国へ向かうって言っているし、これからも目を離せないわね。
ユキは基本的に自分でできることはやるほうなので、お世話を焼きたいメンバーからは不満。
そして、教会襲撃から得たモノはハイレ教会で起こっていたこととほぼ同じ。
さて、何が裏でうごめいているのか。




