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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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2192/2210

第1875堀:地道に働く冒険者たち

地道に働く冒険者たち



Side:ニーナ



「グギャ!?」


そんな叫び声をあげ、最後のゴブリンは倒れ伏す。

擬態、つまり死んだふりをしていないかと警戒して……。


ドスッ。


ナイフを投げて腕を地面に縫い付ける。


「いや、やりすぎだろ」


私の行為にキシュアがそう言ってくるが……。


「ゴブリンは侮れない。スティーブたちが良い見本」

「いや、アレはゴブリンの形をした別の何かだからな? というか、さっさとナイフを取らないと血の匂いが付くぞ」

「おっと」


そう指摘され、さっさとナイフを抜いて血を振り払うが少し遅かったようだ。

ゴブリンの血がナイフについている。

これは臭いというか、腐食にもつながる。

まあ、ナールジアさんがつくったものがそんなことになるとは思えないけど、それでも臭いが当分ついて回るのは勘弁なので、すぐに……。


「スィーア洗い流して」

「私は洗浄用水扱いですか?」

「水の魔術が得意でしょ?」

「それとこれとは……」

「あの、私がお水だしますよ」


スィーアがお水を出し渋っていると、代わりにヴィリアが申し出てくれる。


「ああ、ありがとう。融通の利かないスィーアとは大違い」

「私がやりますよ!」


ヴィリアが動く前にスィーアが即座に水の魔術を私に向けて放出する。

ちょっと量が多く、威力も高いけど、それをかわしつつ、ナイフだけをその水に浸ける。


「ちっ」

「それはこっちのセリフ。出すならさっさと出せばいいのに」


私は綺麗になったナイフを確認して、水を振り払ったあと鞘に戻す。


「お前らもその漫才飽きないよな」

「仲が良いことかと」


キシュアとヴィリアは私たちの愛らしい掛け合いでほっこりしているようだ。


「漫才じゃないわよ。ほんと、なんでこんな性格になったのか……」

「ふふん。スィーアのおかげ」

「やめてください。と、そこはいいとして、これでゴブリン討伐は4回目ですね」


流石に漫才はここら辺で終わり、スィーアは周りに倒れ伏すゴブリンたちを見る。

スティーブたちのように馬鹿みたいに狡猾で強くはなく、ギリギリ徒党を組んで、多少の連携と罠ぐらいしかできない正真正銘のゴブリン。

まあ、数がいれば相応に面倒ではあるが、それだけ。

私たち相手では、傷一つ入れられないレベル差がある。


「ギアダナ王都周辺の仕事を受けていますが、魔物の程度はたかが知れていますわ」

「そりゃな~。王都近辺に強力な魔物がいたらそれはそれで問題だろう?」

「キシュアの言う通り。スィーアは頭が悪い」

「そういう意味ではないです。この仕事が終わればそろそろ次がくるでしょう」


その言葉に全員が真顔になる。

それは言うまでもなく……。


「まあ、ここ10回近くの仕事を3日で終わらせているしな。偵察というか監視の連中もいることだし、そろそろ動きがあってもおかしくはないよな」

「最初は受付の方が怪しんでいましたしね」

「それはそう。こんなか弱そうな美少女たちが沢山の魔物の素材とか、魔石を持って来たんだから」


普通に考えれば、ヴィリアやキシュアは幼女……までは言わないけれど、まだ幼さが残る女の子がこんなに戦えるわけがないと思うのは当然の反応だ。

私も2人を知っているからこそ納得しているが、知らなければ怪しむ。

何せ、倒せるとは思えないし。

で、それを感じて、いや、ドドーナ大司教やダエダ宰相の伝手で説明はしてもらっている。

受付の女性も怪しんだ後は上からある程度説明されて、こちらの専属になっている。

そして、キシュアの言うように見張りもいる。

これで昇進させないってわけがない。


「ギルド長も言っていましたが、そろそろ冒険者としてのランクを上げると言っていましたから、何かしら別の仕事がくるはずです」

「当然だな。常に薬草取りとか、ゴブリン退治ばかりに私たちを使っているのは色々無駄だし」

「それに、ドドーナさんやダエダさんの推薦もありますから」


うん、使えるというのは、ここ3日でよくわかったはず。

クリアストリーム教会の暗躍もあるだろうし、情報は向こうだってほしいはずだ。

スィーアの言う通り、そろそろ私たちに何か仕事を任せてくるはずだ。


「こっちを嵌める可能性もゼロではありません」


でも、スィーアの言葉には棘がある。


「そこはな~。冒険者ギルドで話を聞いた限り、クリアストリーム教会の魔物退治に関しては、冒険者ギルドでも喜んでいるのは多いしな」


キシュアもその言葉に同意しつつ、この3日で調べたことを言う。

確かに、冒険者ギルドでは意外とクリアストリーム教会のことは評価が高い。

元々、亜人と関わりがないからか、強力な魔物はクリアストリーム教会の兵たちが、ほかの弱いというと変だけど、魔物退治は冒険者という感じで住み分けが出来ているらしい。

というか、下手をすると冒険者の上位職、ゲームみたいな感じだけれど、優秀な冒険者がクリアストリーム教会の騎士になるという感じになっているわけか?


まあ、もちろん、その事実に反発している冒険者たちもいる。

冒険者が下位みたいにみられるって。


そういうのは人が集まれば必ずできるものだしね。

ロガリ大陸だって、一般の人のお手伝い仕事をする冒険者を小銭稼ぎだっていうのはある。

ウィードでは最近は表立って言わなくなっている。

なにせ、その一般人のお手伝いが目的の冒険者が増えたから。

それを馬鹿にすればウィードでの施設利用が出来なくなるぐらいには、数がいる。


「スィーアさんとしては、冒険者ギルドの方がクリアストリーム教会と繋がっていると? いえ、繋がってはいるでしょうけど……」

「言いたいことはわかります。あえて私たちを排除しようとは今は思わないでしょうけど、裏でドドーナ大司教にダエダ宰相がいると知れば、わからなくなります」


まあ、裏にその二人がいるとなると、クリアストリーム教会をよく思っていない、あるいはよからぬことをたくらんでいるって思われて当然だから、そこから私たちに何かをしけてくる可能性はゼロじゃない。


「今のところはこちらを暗殺しようとかいうのはないだろ? な、ニーナ?」

「うん。流石にそういうのは無い。まあ、小物冒険者たちが私たちの活躍を気に入らないっていうのはあるけれど」


ここ最近というか、有名になるために活動しているから、その分同じ冒険者からは素直に賞賛もされれば、私たちの実力を怪しんでいる連中もいる。

これもよくあることだ。

足の引っ張り合いに巻き込まれるつもりはないが、面倒なのは間違いない。

まあ、一番の理由は……。


「それにまだ活動を始めて3日目。幾ら実力があるとは言っても実績はゴブリンとかの弱小魔物を狩っているだけだし、評価のしようがないし、排除する意味もほぼない」

「だよな。今ならクリアストリーム教会側に取り込める可能性もあるわけだしな。ドドーナ大司教の推薦もあるんだし、そういう意味でも注目だ」

「それはわかっています。でもいつその判断が覆るかわからないというお話です」

「油断はしないようにということですね。これから戻ればさらに冒険者として評価されますし、その手の動きがあるかもと」

「ええ。ヴィリアさんの言う通りです。ということで気を引き締めて帰りますよ」


そんなスィーアのお説教を受けて、私たちはギアダナ王都の冒険者ギルドへと戻る。



「今日もお早いお帰りですね」


そんなことを言って冒険者ギルドに入ってすぐに声をかけてきたのは、最初から私たちの受付をしてくれた受付嬢。

最初は怪しまれたが、色々あって専属みたいな扱いになっている。

こっちとしても面倒がなくて楽だからいいけど。


「近所の討伐ですから。走って行けばそこまで時間はかかりません」

「あはは、普通は到着してから魔物を探すのも苦労するんですよ?」

「そこはドドーナ大司教様のご指導によるものです」


スィーアは息を吸って吐くように嘘を付く。

そして違和感がない。

流石はエナーリアの聖女。


「何か疑問でもありますか、ニーナ?」

「何にも」

「じゃあ、早く討伐証明の素材だしてください」

「はいはい」


ということで、いつものようにカウンターにゴロゴロと魔石と討伐証明であるゴブリンの左耳を出す。

こういう討伐証明はどこでも変わらないようだ。

一応冒険者カードにも討伐が証明されてはいるけど、そういうのをごまかすところもあるようだ。

そういう面倒だけど抜け道を探して、不正に冒険者としての格を上げようとする輩がいるのよね。

自滅への第一歩としか言えないんだけど。

そんなことを考えている間に、受付嬢は討伐証明を確認したようで……。


「はい。ゴブリンの討伐確認いたしました。こちら、依頼達成報酬と、素材の報酬となります。まあ、ゴブリンなので魔石ぐらいなんですけど」


そう言いながら出されたお金は文字通り少ない端金というやつだ。

まあ、私たちにとってはお金は支援金が山ほどあるし、困ることは無いのだが。


「十分です。生活できるぐらいには稼げていますので」


スィーアはそう無難に答える。

普通ならゴブリンを50匹討伐すれば安宿なら3泊ぐらいはご飯付きで出来るからね。

まあ、贅沢かというと遠いけど。


「それで、次の依頼をと行きたいのですが、ギルド長よりお呼び出しがかかっています。今、お時間はあるでしょうか?」


うん、スィーアの予想通りだったってわけか。

断る理由もないので、そのまま頷いてギルドの3階へと向かう。

案内された場所は、私たちが初日に紹介状を見せて呼ばれたギルド長の執務室だ。


「失礼します。スィーアさんたちをお連れしました」

「ありがとう。業務に戻ってくれ」

「はい」


そういって受付嬢はすぐに出て行ってしまい、私たちとギルド長だけになる。

とはいえ、相変わらず机の上には書類が積まれている。

やっぱり大陸は違えど、上に立つ人は書類仕事から逃れられないようだ。

……私も帰ったら報告書とかやらないとな~。

と、そんな風に意識を飛ばしていると、ギルド長がこっちに視線を向けて。


「さ、君たちも予想はついていると思うが、昇格の話だ」

「たった3日しか経ってないが、昇格できるのか?」

「普通にできる。町の仕事をするだけならともかく、ゴブリン退治も出来る冒険者はずっと低ランクにしている意味はないからな」


確かに、流石にお手伝いレベルのこととゴブリンなどの魔物退治が出来る人を同ランクにしておくのは人材の無駄遣いだ。

ロガリでもそういう制度はある。


「なら、ランクはえ~と最低のEからDってところか?」


この新大陸では冒険者のランクは数字ではなく単語であらわされている。

なんでアルファベットなのかっていうと、そこは私たちがそう翻訳しているだけ。

本当はここの新大陸の単語であらわされているけど、それがアルファベットに変換されているようだ。

で、そこはいいとして、私たちはこれでDランクに……。


「いや、君たちはCランクになってもらう」


なんかランクを一個飛ばした。

なんで?



着実に実績を上げて冒険者として活動しているようです。

まあ、予定通り早い昇格という、ある種の成り上がりですが、目的は別ですからね。


北部の魔物状況やクリアストリーム教会の動きなどが分かればいいのですが。


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― 新着の感想 ―
死んだふりは種族問わずちょっとでも知能が高ければやるので意外と侮れなかったりする。スティーブ達は………死ぬくらいまではいかなくとも負けたふりして奇襲とかやるんだろうなぁと思う。というかユキとアスリン以…
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