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第1811堀:グラス港町はやる気に満ちています

グラス港町はやる気に満ちています



Side:ラッツ



海軍のリハを終えて私たちはグラス港町の役場へと赴いています。


「いや~、意外と海軍もばっちりでしたね~」

「そうね。ドレッサが上手く頑張っているようで何よりだわ」


意外とドレッサは軍人として、貴族としてもそこら辺のことはしっかりしているようで、問題ない内容でした。

あれで文句をいう人は海の波に酔った人ぐらいでしょう。


「そうだな。ドレッサも軍のトップっていう自覚が出ているようで何よりだ。ヴィリアもヒイロもしっかりやっているしな」


うんうん、ロシュールから連れてきたスラム暮らしの子たちがあんなに立派な姿になっていると思うと、感動しますよね~。

ほかのヴィリアと同じ年の子たちも、今では頑張って勉強した甲斐があったのか、庁舎はもちろん、商会などで採用されて頭角を現していますし、教育がどれだけ大事なのかっていうのがわかります。

私たちの子供たちもあの学校で色々才能を伸ばしてほしいですね~。


と、そんなことを話していて役場の前までたどり着くと、こちらも軍港と同じように、出迎えの職員たちが勢ぞろいしています。

シスアとソーナも前に出ていて私たちを出迎えてくれます。


「ようこそお待ちしておりました」

「グラス港町は皆さまのご来訪を心より歓迎いたします」


うんうん、2人が代表という感じですね。


「と、頑張ってみたものの役場ってあまり見せるものがないんですよね~」

「あはは、そうですね」


最初の大歓迎はどこに行ったのか苦笑いする2人。

まあ、確かに役場はお役所で町の人の為の仕事をする場ですからね~。

何を見せるっていうのは私も悩むところです。


「そもそも、結構人がくるしな。全員を役場に入れるってことは難しいか」

「はい。なので、一応ホールでのあいさつとかを考えてはいたのですが……」

「グラス港町を見に来て、ホールに箱詰めは違う気がしまして~」


ああ、それは違いますね~。

役場が備えているホールはあくまでの役場での、つまり町でのイベントを行うためのモノです。

確かに今回は町でのイベントというモノではありますが、町のそのものを見てもらうのが目的ですからね~。

ホールに案内して説明ばかりというのは、趣旨が違いますね~。


「一応休憩所ということで開放はしますし、案内の職員は常駐させますが、それぐらいが良いかと思いまして」

「そうなんですよ~。あくまでもパンフレットを配って自由に動いてもらおうかな~と」


なるほど、その方が私も無難だと思いますね~。

お兄さんやセラリアはどう思うかですが~……。


「それでいいんじゃないか?」

「そうね。さんざんホテルで説明の類はされているでしょうし、休憩場所と案内の職員がいるってわかればどうにでもなるでしょう。護衛も一緒に付くんだし。ウィードに戻るルートも説明しているんだし。役場側のゲートは稼働しているのよね?」

「はい。稼働しています。ウィード直通、グラス港町の門や海岸、ホテル全部問題ありません」

「そこまで使うかな~って心配はあるんですけどね~」


そう、シスアとソーナが言うように、このグラス港町はウィードというか、ダンジョンで作った町であることを示すようにゲート、まあ、転移トラップを応用した移動手段が存在しています。

道中を楽しめるように工夫はしていますが、足腰が悪い人はもちろん、移動に時間をかけられないという人の為ですね。

けが人病人が出た時などはすごく便利でしょう。

2人はどこまで役に立つか疑問のようですが、おそらくはそれがあることで混雑が緩和できるほどには便利になるかと。


「そこは実際利用し始めてからじゃないとわからないが、ウィードから働きに来る人も出てくるだろうしな。仕事関係の人たちは時間を短縮できることに関しては歓迎するはずだ」

「そうね。街並みを見て仕事場に向かうっていうのは悪いわけじゃないけれど、時間を短縮できるのであれば効率的ではあるからね」


効率というのは馬鹿にできませんからね。

というか通勤距離の短縮っていうのは、かなりの利点です。

このゲートのおかげでウィードでは広範囲にある職場に毎日気軽に通えるようになっているのですから。

グラス港町も同じようになってほしいものです。


「それで、グラス港町の予定というか、町の構造や今後の計画に関しての質問などには?」

「はい。そちらについては聞かれれば答えるように指導してあります。町の構造についても休憩所として開放しているホールの壇上に模型を用意していますので、そちらをご覧いただけるようにしています」

「ああ、なるほど。そっちにもっていったのね」


ふむふむ、そういう趣向もあるのであればホールもそれなりに人が集まりそうですね。

町の完成予想図というのをミニチュアで作っているっていうのは興味を引くでしょう。

こういうスケールモデルは実際に作る前に作ることで、その工程はもちろん完成図がわかるので、私たちとしてもイメージしやすいんですよね~。

これを機会に、各国にもこういう模型技術が広がればいいんですけどね~。

ちなみに……。


「お兄さん」

「ん?」

「ちゃんとその手の模型は用意していますよ~。ちゃんと買ってもらえるように」


そういって、私はアイテムボックスから商品化した模型の箱。

つまりお兄さんが言う所の……。


「プラモデルか」

「はい。とはいえ、プラスチックではなく、木工職人たちや大工たちと協力して木で作っていますけど」

「十分だろう。というか、職人や大工の良い副業になるんじゃないか?」

「ですね~。とはいえ、今では模型の専門で食べている方もいますよ~」

「ええ、それだけ精巧ですし、利用価値があります」


この模型に関してはエリスもちゃんと納得して予算を組んでいます。

ちゃんと売り上げが出ていますし、建築に関しても一度スケールモデルの見本を作ることでエリスにとっても予算の削減にもつながるんですよね。

作ってやり直しっていうのが少ないわけです。

と、話がそれましたね。


「すみません。お話の続きをどうぞ」

「はい。町の完成図などを見てもらいつつ、パンフと合わせてお店の紹介もしますので、そこから目的の場所を見つけてお出かけできるかと」

「そうだな。わかりやすいしな。あとは商店街のお店が8割開店するって話を聞いているが、貴族の話はしているんだよな?」

「はい~。もちろんしていますよ~。それを承知で当日は開店するそうです~。もちろん、トラブルは極力なくしたいので、警備は増やす予定ではありますが~」

「ああ、ソーナの考える通りでいいと思う。シスアも同じだよな?」

「はい。私も同意見です。なにせお互い初めてのことです。認識の違いで起こるトラブルというのも多々あるでしょう」


そうなんですよね~。

貴族としての常識と一般人との常識って違いますから。

こちらとしては、一般の店に行くなら一般の常識に合わせてほしいもんですが、お互いの暮らしを知らないから、理解する方が難しんですよね~。


「お兄さん、そこに関しては、一応ホテルやウィードに入国した時点で説明して、護衛や側付きの方々も理解していますので、何とかはなると思います」

「ですね。事実今までウィードではその手のトラブルはなかったわけではありませんが、多くはありません」

「なるほど、ウィードでは実績があったな。ならそこまで心配することはないか。ノウハウはウィードに沿っているんだよな?」

「はい。ウィードの方からも警察や兵も借りていますし、指導もしてもらっています」


うんうん。

あくまでもグラス港町はウィードの領地ですからね。

統治に関してはシスアやソーナに任せてはいますが、ウィードをまねてはいけないとは言っていませんし、協力は惜しまないですから、そういう意味では治安維持などはウィードと変わらないのです。

ダンジョンでの監視もしていますからね。


「なら、心配はいらないか。トーリやリーアも知っているだろうし、あとは、漁港と冒険者ギルドか。そういえば、冒険者ギルドは一応稼働はしているんだよな?」

「はい。キナギルド長とは毎日顔を合わせて報告を聞いています」

「そこまでか?」

「冒険者たちにはグラス港町の周りの魔物の排除を頼んでいますからね~。海岸沿いも含めてです。町中の海岸や海は軍が対処していますけど~、ほかは冒険者に任せて魔物の情報収集も任せていますので~、その情報は欲しいわけです~」

「貴族さまがこられるということで、こちらから頼んでいることもありますので、しっかりとやっています」


シスアとソーナが詳しく冒険者ギルドとの連携について教えてくれます。

そういえば、そういうことを頼んでいましたね~。

今、ミリーやグランドマスターたちは行方不明者が出ている村が所属しているウーサノ王国の町について調べているところで、すっかり忘れていましたよ~。


「そういえばそうだった。行方不明事件からそっちにかかりきりですっかり忘れてた。でも、キナもしっかりやっているんだな」


お兄さんも忘れていたようで、そう言葉を漏らしていると。


「そうだよ。ちゃんと私にも感謝してよね~。というか、あの件のおかげでミリーもロックさんも大変で、実質ウィードの方も私が手伝っているんだから。当時とは逆だよ逆」


噂のキナがやってきたようですね。


「お~、おつかれさん。まあ、あの状況じゃ仕方ないよな」

「まあね。向こうは大ごとだし、今も継続中。とはいえ、こっちも楽ってわけじゃないんだけどね~」

「でも、安定しているんだろう?」

「そりゃ、ちゃんと厳選した冒険者しか入れていないからね。特にパーティーがあるときにトラブルを起こしてもらっちゃ困るし」

「ん? キナ。それって冒険者を当日も入れるように聞こえるんだけど?」


質問したのはお兄さんではなくエリス。

私も同じ疑問を持ちましたよ。


「当初は冒険者たちにはウィードに行ってもらうって話だったんだけど、シスア、ソーナと協議して周りの魔物の警戒をしてもらうってことになったのよ」

「警戒ですか?」

「一応、ダンジョンのシステムで周囲数キロは警邏状態にしているけど、突発的に魔物が湧くとか移動してくるってことがあるというか、ウィードの上じゃ普通にあったでしょ?」

「ああ、あるな」


あります。

ウィードの上部は別に監視はしていますが、管理は人が住んでいるところ以外はしていません。

そして、場所に関してはリリアーナが治めるラストを囲うように存在している山脈と森林の近くなので、魔物がやってくるのはよくあります。

その場合は兵士も動員しますが、冒険者にも手伝ってもらいますので……。


「なるほど、向こうと同じというわけですね」

「そういうこと。それにこっちは魔物のレベルも高いし、妙な動きでもして、貴族に被害が出たらそれこそでしょ? こっちとしても支部を出しているんだし、廃れるのは絶対阻止したいし」

「なんだ、意外とギルド長は気に入っているのか」

「大変だけど、やりがいはあるからね」


そんな感じで、グラス港町の冒険者ギルドの情報も聞きつつ、ヤユイからも漁港の話を聞いて準備は整っていくのでした。



グラス港町はパーティー準備は万端。

あとは、行方不明事件と連動していることをどうするかってやつですね。

グランドマスターたちはどう動くのか。

そして、ユキはどういう風に対応していくのか。


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