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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第1476堀:精霊とお話

精霊とお話



Side:ユキ



『ほう。話には聞いたことがあるが、これがダンジョンマスターか』

「聞いたことがあるのか?」

『ああ、そこのミヤビ、トウヤ、そしてリテアからな』

「リテアっていうと……聖女リテアか?」

『聖女かどうかはしらんが、トラという生き物を連れていた女性だ』


間違いない。

トラを連れているなら聖女リテアだろう。

あのピンク女神リリーシュと農耕頑張るファイデの娘で間違いない。


「ねえ、水の精霊さん。居心地悪いとかはないの?」

「お水が遠いのですよ?」


俺が環境の質問をする前にアスリンとフィーリアがしてくれる。


『問題ない。場所は湖面の下だしな。水もそちらにあるから平気だ』


そして問題ないと返す水の精霊。

話から分かると思うが、ここは湖面の下のダンジョンだ。

安全に話をするために自分のフィールドを用意したというわけだ。

もちろん、ちゃんと水の精霊に許可も取った。

流石に外で、夜風にあたりながら話をするのは風情はあるが、防諜の関係上好ましくないからな。

ついでに俺たちに合わせてテーブルについてもらっている。


「テーブルやソファーに違和感はないか?」

『ない。というか、良いモノ悪いモノの判断が出来ん。私を招待したのはお前が初めてだ』

「そりゃ、光栄だ。でも、リテアやトウヤ、ミヤビとかはずっと立って話してたのか?」

『ああ。皆旅の途中であったし、居を構えようというわけでもなかったからな。テントぐらいは経験がある』


確かに言われるとその通りだな。

皆、旅の途中で出会っただけだし、ここまで環境を整える意味もないか。


「あとは、こっちはお茶とか飲むんだが、そっちはどうする?」

『私を維持するために必要か不要かというと、不要だ。だが、嗜むのは好きだ。リテアやトウヤから教えてもらったからな』

「なるほど。じゃあ、頼む」


俺がそう言うとオレリアたちは頭を下げてすぐに準備に取り掛かるが……。


「で、なんでミヤビ女王の名前がなかったんだ?」

『こいつは配慮というものがなかったのでな。楽しみを分かち合おうというのがなかったのだ』

「失礼な。元々あるだけのものじゃろうに。食事の必要のないモノにこちらの食事を分けようと思う方がおかしいのじゃ」


あー、言わんとすることは分かる。

食べ物を必要としない相手なんだから、自分の食う分を削ってまで分け与えるか?って話になるわな。

何より、日本よりも生きにくい世界だ。

食べ物を得ることだって大変だ。

スーパーやコンビニでお金を出せば買える世界じゃないからな。

自分が第一で何も悪くない。


『確かに、必要ないというのにくれたあの二人が特殊だな。最初は理解に苦しんだ。だが、アレが楽しいということを知る切っ掛けだったわけだ』


そんな話を聞いている間にオレリアたちは準備を終えて俺たちにお茶とお菓子を持ってくる。


「口にあうかわからないけど、俺たちが美味しいと思っている物だ」

『ありがたくいただく』


水の精霊は器用にカップを持って口らしきところで紅茶を飲む。


『ふむ。香りが付いたお湯か。うん、いいな体に香りが広がる。そしてこれがお菓子というやつか?』


続いてお菓子として用意したクッキーを食べる。


『ほう。以前食べた乾パンよりも甘いしやわらかい。くちどけがいい。こういうのもあるんだな』


どうやら気に入ってもらえたようで、二つ三つと口にしては紅茶を飲むというのを繰り返す。


「お前が紅茶とお菓子の良さが分かるとはな。人の口にするものの意味が分からぬと言っておったくせに」

『それは最初だ。娯楽として楽しむということをリテアやトウヤから学んだ。いや、リテアがくれたのは干し肉だったしな。トウヤが上品だったな』

「ふん。初代聖女と我が夫の差じゃな。料理の腕が段違いなのじゃ」

『逆のような気もするが、まあいい。それで、ユキだったか? 何か話があるのではないか?』

「あるが、お茶とお菓子を食べながら聞いてくれ。おかわりは?」

『もらおう』


ということで、ようやく本題に入る。


「簡単に言いますと。水の精霊。あなたが存在するかどうかを確認しに来ました」

『私の確認? ここにこうしているが?』

「ええ。話には聞いていましたが実際にいて良かった。それで、あなたが存在するのを確認した理由だが……」


ここからが面倒になるが、言わないわけにもいかない。

奴隷売買などの金稼ぎとか、魔力確保のために水の精霊が襲われる可能性や既に来ていないかということだ。


『ふむ。外は騒がしいようだな』

「何を言っておる。お前にとっては外は総じて騒がしいものじゃろう。とはいえ、妾も最近はうるさいとは思うがな」


まあ、イベント目白押しだからな。

俺も平和な日があと100年は続いてほしい。

嫁さんたちと仲良く過ごすだけの時間があってもいいと思うんだ。

とはいえ、事件を解決しないと騒ぎは収まらない。

俺たちが動くしかないわけだ。

受け身も方法と言えば方法だが、それは面倒だしな。


『しかし、私を捕らえるか……。できるのか?』

「いや、妾たちがそれを聞きたい。まて、ユキ殿ならできるか?」

「うーん。水の精霊っていうのがどういう存在なのかこちらもつかめてないんだが、おそらく泉の水を全部ダンジョンに引き込んでしまえば捕まえた……って言えるんじゃないか?」

『ほう。確かにそれなら捕まったと言えるな』

「そんな方法を取れるのはダンジョンマスターか大魔術師ぐらいじゃろう」

「ミヤビ女王も出来ないことはないよな?」

「まあ……泉ごと一帯を吹き飛ばすと脅すぐらいしか思いつかんが」

『野蛮だな。だが正しい方法だ。私は水。その根源を絶たぬ限り死なぬからな。それぐらいでないと脅しにはならんな』

「ああ、脅して捕まえるってことか」


消滅させる方法を言っているのかと思ったが、そういう変化球というか直球ストレートというか……。


「まあ、こうして無事ならいい。問題はそのトラブルを引き起こしている闇ギルドが接触してくる可能性があるって話だ」

『ふむ。私を捕らえて売るか。というか、私は滅多に人と話すことはないのだが』

「そういえば、そこも聞いておきたい。俺たちとは普通に会ったし、リテアと会ったという話も聞いたが、他には誰かに会ったことはあるのか?」

『いや、ない。たまに人が来てお供えものをするぐらいだ』

「それはリテア聖教の連中じゃろうな。祭壇の方に置くんじゃろ?」

『そうだ』

「祭壇ってあったか?」


草がボーボーで全然わからんかったが。


「反対側じゃったからな。今ならダンジョンのスキルで確認できるんじゃないかのう?」


そう言われて俺はモニターを立ち上げて確認してみる。

えーと、確かこちらから侵入してきたから、こっちか?


『ほう。便利なものだな。上から見たようなものだ。これがダンジョンマスターか』


水の精霊も図面に興味を持っているのか覗き込んでくる。

とりあえず、拡大をしつつ祭壇を見つける。


「これか?」

「うむ。これじゃな。……ん? 何かおいてあるな?」

『ああ、先日やってきてまた何かおいていったのだ』

「「「……」」」


その言葉を聞いてお互い目を合わせる。

あれだけの騒ぎがあったのだ。

リテア聖教がやってくるか?


「サマンサ。ウィードのルルアとリリーシュに連絡。スウルスのリテア聖教が参拝したのか。あとはスウルス本国が勝手に動いた可能性も考慮して、外交伝手に話を聞いてくれ。ああ、露骨にじゃなくて触り程度な」

「かしこまりましたわ」


サマンサは即座に踵を返して連絡を取りにいく。

一応即席ダンジョンはみんなと話し合って作っているので、ちゃんと仕事用の場所は決まっていて、いつでも仕事が出来るようになっている。

あはは、ブラックかとは思うが、ちゃんと個室が無ければ重要な話も出来ないからな。


「その供えられたものを改めて見てもいいか?」

『うむ。先ほどの話を聞けば、私に何かを仕掛けるためというのもあるだろう』


ということで、スティーブに指示を出して祭壇に供えられている物を回収してもらう。

ダンジョンスキルでの確認では特に危険物のようには見えなかったが……。

持ってくる前に、もっと詳しい話を聞いておこう。


「それで、お供え物があったのを知っていたみたいだが、すぐに取りに行かなかったのは? 呼びかけとかあったのか?」

『うむ。確か呼びかけはあったぞ。いつもより人数は多かったし、何か物々しいと思ったが、大氾濫とか戦争があったのなら納得だ』


あー、そういう解釈しちゃうのね。

いや、そうか、自分に被害が無ければそういう解釈しかできないか。


「普通は顔を合わせるのか?」

『いや、顔を合わせることはほぼない。何より呼びかける人は多くない。リテアやトウヤが珍しかったぐらいだ』

「まあ、そもそも精霊は力が絶大。そして、人の意に沿うなどというのはありえないと言われているからのう。呼び出すだけ被害があるとしか思われておらん」

「じゃあ、最近来たっていう連中には?」

『顔は合わせておらん。武器も構えておったからな。魔物退治にでも来たのかと思っておった。そういうのはあるからな』

「魔物と間違えられるのか?」

「精霊なぞ話が碌に通じず機嫌を損なえば攻撃される。魔物と変わらんよ。夫やリテアが珍しかったのじゃ」

『そうかもな。とはいえ、こちらから襲ったことはないがな』

「そのような成りで安心してとも言わぬのじゃから、警戒するか攻撃するに決まっておろう。傍から見ればスライムの上位種じゃからな」


あー、確かに水の塊だからスライムの上位種っていう感じは分かる。


『何を言っている。スライムの上位種というか、規格外ならそっちにおるではないか』


そう言って水の精霊が視線?を向ける先にはスラきちさんがいる。


「え? おれ?」

『そうだ』

「いや、スライムではあるけど、水の精霊から規格外って言われてもなー」


いや、お前は規格外で間違いないと全員が頷く。


「まあ、スラきちさんのことは今はいいとして、とにかくそういう連中がきたってことだよな?」

『ああ、来たな。だが、姿は現さなかったせいか、素直に帰っていったな』

「いるかどうかもわからんからのう。しかし、その連中が闇ギルドであれば……動いておったということじゃな」

「そうなるな」


さて、希少種族の売買に手を伸ばすためにか、それともダンジョンマスターが何かをたくらんだか?

意外なところで本当にリテア聖教が様子を見に人を派遣したか?

ともかく、分かったことは水の精霊は無事ってことだ。

それだけは、今回の訪問で良かったと安心できることだな。


意外と簡単にでてきて、普通に話は出来たりする。

知り合いを連れてくるのがこういうのは鉄板だね。

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