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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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1645/2211

第1400堀:冒険者独自の情報源

冒険者独自の情報源



Side:フィオラ



クルッポークルッポー……。


そんな鳥の鳴き声が聞こえて、時計が鳴っていることに気が付く。

仕掛け時計というやつで、ユキ様の執務室にはこれを備え付けて時刻を知らせることにしている。

顔を上げて時刻を確認すると……。


「12時ですね」


いつの間にかお昼の時間だ。

私は作業中の仕事をパッととめて、すぐに片付ける。

ちょっと片付け始める時間が遅かった。

これでは片付ける時間でお昼休みに食い込んでしまう。

オレリアたちを待たせてしまうなーと思って一言言おうと

視線を向けると、オレリアたちも同じように今時刻を知ったのか慌てて片付けている。


とはいえ、慌てているのは片付けに対してで、仕事が終わらないことに関して慌てているようには見えない。

そんなことを考えているうちに彼女たちは片付け終えて席を立つ。


「フィオラ様お待たせしました。進捗の報告よろしいでしょうか?」

「はい。どうぞ」


私はオレリアたちの報告を受ける。

彼女たちの仕事がうまく進んでいるか管理するのも私の仕事。

もちろんユキ様の仕事でもあるが、それは私から報告を受けた後だ。

今まではユキ様が私の分はもちろん、彼女たちの進捗管理もしていたんだから、どれだけ多忙だったかと思う。

最近はようやく仕事に慣れてきて、ユキ様の手を煩わせることはなくなってきたという所。

おっと、そこはいいとしてオレリアたちの仕事はというと……。


「私、ホービス、ヤユイともに本日分の仕事は終わって、明日の分の仕事に手を付けていました。詳しくは此方です」


そう言って手渡された書類を確認する。

予定分は終わり、明日の分を10件程度3人とも終わらせているようだ。


「慣れてきたようですね」

「はい。ようやく」

「ど~にかなりました~」

「で、できました」


最初は午前中のみが通常業務ということで心配でしたが関係各所も今回の事態に納得してくれ、こちらの仕事の仕方も上手く行っているようですね。

そう思っていると執務室のドアがひらいて……。


「失礼します。あれ? ユキ様は会議ですか?」


プロフがやって来たようです。

真っ先に確認するのは上司であり敬愛するユキ様のことのようです。

その忠誠心は見事とは思いつつ、依存しているなぁと思いつつも、それは私も変わらないか。


「はい。ユキ様は現在スウルスに送る予定の同盟軍の編成についての打ち合わせ中だそうです」

「ああ、送るかわからない軍隊のですか。とはいえ、話さないわけにもいかないですね」


プロフはどこかつまらなそうな顔つきになりますが、やらないわけにはいかないという感じになります。

まあ、気持ちは分かります。

ユキ様がわざわざ出向いて出すか出さないかわからない軍の編成の会議に参加しているんですからね。

正直、ウィードの部隊だけで事足りるというか、他は足手まといとはっきりわかるのですが同盟の建前、それは口にできないというジレンマ。


「と、今は仕事の時間ではありませんでしたね。それでもうお昼にはいけますか?」


プロフは仕事の頭を切り替えて私たちを見てくる。


「はい。もう終わらせました」

「明日の分もやれたわ~」

「な、慣れてきました」

「それは何よりです。では、行きましょう」


ということで、私たちはいつものようにお昼を食べに外にでます。

途中でいつものようにニーナと合流して、今日は最初に行ったオーヴィクがオーナーのお店に行きました。


「あ、いらっしゃーい」


するとラーリィは今日もこちらで働いているようでウェイトレス姿で出迎えてくれた。


「今日もお世話になります」


私がそういうとほかのみんなも軽く頭を下げます。

ラーリィはそんな私たちに苦笑いしながらも普通に対応し。


「あはは、そこまでかしこまらなくても。さ、5名様ご案内です」


そう言って空いている席に座って注文をして待っている間にちょっとした雑談を始めます。


「そういえば、今日の午後の予定はリュシでしたよね?」


つい、仕事の話をしてしまうのですが、そこは仕方がないこと。

リュシというのは闇ギルドが関わっているとされるロシュールとガルツの国境沿いにある村で、非道なことが行われ、無残な姿になっていたのを、ユキ様ご用達の商人が物資の販売中に運よく助けた女性だ。


「そうです。ニーナ様はリュシというかあの村から救出した人たちについての情報は集められましたか?」

「問題ない。まあ、詳しい話は午後から。今は食事が最優先。というか仕事の話はパス」


プロフではなくニーナの方から仕事の話はやめろと釘を刺されてしまいました。

普段は私かプロフなんですけどね。


「でしたら、最近商業区にできたドーナツ屋さんですが知っていますか?」

「あ、知っているわ~」

「というか、オレリアが知っているのがびっくりです」


などと別の話をしているうちに注文の品が届いてラーリィが並べてくれていると……。


「あ、そうだ。私が、いや私たちがスウルスの壊滅した西の町に調査に行くって話は聞いてる?」


そう思い出したように聞いてきました。


「はい。伺っています。冒険者ギルドからも調査の人員が派遣されると。あとはモーブ殿たちもですよね?」

「そうそう。それで私もオーヴィクのパーティーだから行くことになったんだけど、何か情報ってある?」


そう言いつつ、ラーリィはそのまま空いている席に着きます。


「いいのですか?」

「ああ、お昼休みだから大丈夫よ」


いや、いまが一番稼ぎ時じゃないのでしょうか?と思いつつも本人がいいというならいいのでしょう。

とはいえ……。


「特に目ぼしい情報はないですね」

「無いって魔物とかもいないの?」

「詳しい話はまだ聞いていないのですか?」

「まだね。指定日の招集がかかっているだけだし」

「あー、特に秘匿命令が出ているわけではないのですが、私から言っていい物でしょうかと思うんですが、これはあくまで私の見解ということにしてください」

「ああ、了解。上の人、ユキたちがどう判断するかはわからないってことね」


そういうことだ。

今私が分かるのは現状からわかることだけ。

しかも私の判断でしかない。

ということで、西の町には魔物は残っていないはずということと、敵の出現地点の把握が主な目的になるだろうという話をする。


「なるほどねぇ。上手くダンジョンの入り口を隠している可能性もあるわけか……。って、そりゃ下手な判断はできないわね。というか、私たちだけで大丈夫なの?」

「一応編成としては既に監視をしているスティーブの部隊も動きますし、エージルたちも動きますから戦力としては申し分はないかと」

「なるほどね。ダンジョンの支援は受けられると。ナールジアさんの装備とかは……」

「そこらへんは私は関知していないですね。とはいえ、申請をするのは間違っていないかと」


爆発はしますが、性能は指折りだ。

生存率を高めるためだしユキ様が断るわけはないと思う。


「わかった、やってみる。あ、そうだ。私ばかり聞いてるのもアレだしフィオラたちから聞きたいことってある? あはは、情報量としてはそっちが圧倒的だけどね」

「そうですね~」


ラーリィに聞きたいことですか?

オレリアたちも考えているようで首をひねっていますが思いつかないようです。

そう思っていると、プロフはグラタンを食べる手を止めて……。


「では、あのギルドについては何かご存じですか?」


その言葉に私たちははっとプロフに視線を向ける。

いま闇ギルドのことはトップシークレットだ。

確かに冒険者ギルドの上層部は知っているだろうが、ラーリィが知っているとは限らない。

下手に拡散すれば闇ギルドが雲隠れしてしまう可能性もあるのだ。

それをと思っていると……。


「あ~、あの件ね。というかよくここで話そうと思ったわね」


どうやらその様子からラーリィは今回のスウルスの件に闇ギルドが絡んでいるのを知っている様子です。

まあ、一応ウィード専属という立場ではあるので聞いていてもおかしくはないのですが……。

そんな困惑を読み取ったのかプロフは。


「ああ、心配はいりません。ラーリィたちにはニーナ様と同様情報を集めてもらっているのです。あとこの場で話しても何も問題はありません。ただの雑談ですから」

「そうそう。耳を立てている相手はそれはそれで私としては面白い」


プロフの言葉にニーナ様も同意しています。

ああ、なるほど私たち自身を餌としているわけですか。

少し気を配れば妙な動きをしている人は分かりますし、何よりダンジョンの機能で私たちの周りどころかダンジョン内部の人の動きは完全に把握しているのです。

それを利用したわけですね。


「ついでに、今からリュシたちにも話を聞きに行く予定」

「それならなおのことってわけか。はむ」


ラーリィは自分のパスタを口に運んで飲み込んでから話し始める。


「冒険者ギルドからの情報はそっちから届くだろうし、フィオラと同じように私の意見で言わせてもらうわよ」

「ええ、構いません」

「ルーメルのフクロウさんとか、私たちが懇意にしている情報屋を通じて集めたんだけど、やっぱり動きは活発になっているわ。表ざたになっていない闇ギルドの仕業だと思われていることがこの3年ほどで100件以上」

「「「100!?」」」


あまりの数に声を上げるオレリアたちですが……。


「静かにしてよお客様」


フォークでちょいちょいと注意をするラーリィの指摘ですぐに両手を口に当てる。


「あのリュシの件で明るみになった国境沿いの事件があってからは、その手の似たような事件が無いか調べてみたら多いこと多いこと。まあ、大半は領土を増やしたい国境の貴族たちが頼んでいるって感じだけど。あ、もちろん小国同士よ? 大国の国境沿いの事件はリュシの件ともう2件ぐらい」


それでも2件もあったのですか。


「ま、細かいことはニーナに渡しているし、私から言えることは絶対にあのギルドは動いているわね。しかも組織的に。どこかで司令塔ができたと思うわ」

「……その確証は?」

「そういうのはないわ。さっきも言ったけど私見よ。でも、この3年でわかりやすい事件がふえているってことは存在を示したいってことよね。頭が崩れた当時は身を潜めていたんだから」


確かに、露骨に闇ギルドの仕業だとわかるようにしているということは存在を示すということ。

つまり、闇ギルドは力を取り戻していると世界に伝えている。


「目的は……調べないといけませんね」

「ええ。ということで、そっちは任せるわ。私は大氾濫の方に行くから」


ラーリィはそう言うと食べ終わったお皿を持って下がっていく。

さあ、私たちも気合を入れて調べないといけませんね。



情報は色々なところから集めるのがいい。

でも、信頼とかそこらへんは自分の経験とか相手の信頼度に代わってくる。

真実を探すって難しい。

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