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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第1399堀:調査も簡単には行かない

調査も簡単には行かない



Side:ユキ



グランドマスターから事前に聞いていた調査同行の人員について、ミリーから具体的な話を聞いてその書類を受け取る。


「実際に行くのはミリー、キナ、モーブとオーヴィクパーティー、そしてドソウ国からの出向のケイトか」

「はい。これ以上は人数が多すぎますし、情報保護の観点からよくないと」

「ま、多ければいいってわけじゃないしな。しかしロックが来ると思ってたんだがな」


ロックはウィード冒険者ギルドのギルド長だ。

仕事はできるいいおっさんでやっぱりというか冒険者からのギルド長なので現場主義だ。

だからロックが来ると思っていたんだが……。


「ロックさんはキナに経験を積ませると言っていました。まあ、他にもグランドマスターが中心に冒険者ギルドが管理するダンジョン関連の調査を行っていますし、そっちの対応もあるかと」

「ああ、そういうことか」


今回の大氾濫でロガリ大陸に存在して把握されているダンジョンの調査が一斉に始まっている。

当然のことだ。

いつわが身かわからないからな。

普通は事前に情報がないと動けないだろうが、実際に大氾濫がスウルスで起こった。

そして人為的な可能性が高い。

つまりダンジョンマスターが生まれた、あるいは動いたということになる。

普通、調査にはお金がかかるから小出しで調べるものだが、今回は事態が事態ということでリテア本部から臨時予算が各部署に配られて一気に調べているというわけだ。

その情報共有などの連絡事項がウィード冒険者ギルドにも集まるわけだ。

それを考えるとキナは逃がされたか?

いや、現場を知るにはいいことか?

ともかく、ほかの会社の人材育成に口を出すのは野暮でしかない。


「じゃ、後の問題はこのケイトか」

「はい。といっても本人はウィードに来たことがあるようです。その時には街を歩いているゴブリンやオーク、その他の魔物とは会っているようです」

「正式に訪問して、ドソウ国としての関係をってことか?」

「おそらくは。もちろん大氾濫に関しての知識も一通りはあるようです」

「それはないとだめだろうしな。で、ケイトにはどこまで情報公開するつもりなんだ?」


ドソウ王国は魔物を使役して、その方法や育成方法、そして魔物を輸出することで成り立っている国だ。

もちろん、他にも産業はあるが、一番大きいのはその魔物産業。

魔物に関する産業はコスト、つまり経費が色々かかるからきついんだが、それを成り立たせている国というのだからその手腕は見るべきところはあるだろう。

だから仲良くしたほうがいいというグランドマスターの意見は分かるが、全部を知らせてもいいわけではない。

特に魔物関連の情報に関しては、シードラゴンのシーちゃんとか、災害レベルだし、同じくスティーブの嫁さんであるアルフィンのグラウンド・ゼロも同じく災害レベルだ。

俺たちはあいつら本人を信用して、指定保護もしているから大丈夫だと判断しているが、そういうのは相手にとっては実績のないこと。

つまり危険と判断して難癖をつけてくる可能性も大いにある。


「いえ、流石にそこまでは。それを言えば、ドラゴン、竜人族のガウルさんやコーラルも同じになります」

「いや、コーラルはともかく、ガウルは公式に紹介しているしな」

「ああ、そうでした。ですが、ガウルさんたちも平穏に暮らしているのは間違いないです。そこを圧せばいいとは思うのですが、流石にコーラルやシードラゴン、グラウンド・ゼロについては情報だけでウィードにいると伝えるのはなしだと思っています」

「それがいいだろうな」


いくら何でも情報過多だ。

ドソウ王国が混乱して何を言ってくるかもわからん。

今の状況で更なる混乱を招くのは避けたい。


「そうなると、冒険者ギルドと一緒にやっている魔物研究あたりか?」

「はい。それが適切かと。案内と説明ですが……ワズフィやハヴィアをお願いしたいんですが。流石にアスリンはちょっと」

「確かにな。アスリンは手加減を知らないってわけじゃないが、友だちを隠すっていうのは苦手だろう」

「はい。それにアスリンの才能は私が知りうる限りでも飛びぬけています。下手に見せるとドソウ王国が引き抜きをかけてくるかと」

「アスリンは断るだろうが、面倒だな」

「はい」


さっきも言ったがトラブルは避けたい。

特にアスリンとかは俺の嫁さんでもある。

引き抜きをかけてくるとか面倒だ。

アスリンなら言い方を変えて説得されかねないからな。

訪問してくれとか。

いつかはいいが、それは今じゃない。

ちなみに、アスリンの才能が認められるのは嬉しいことだ。

正直アスリンは最近はないが、当初ほかの人に比べて何もできないことに悩んでいたからな。

あとでちゃんと機会を見つけてケイトとかいう人に才能を改めて見てもらうというのもありだろう。


「話は分かった。ワズフィとハヴィアにケイトの案内は任せるけど、そこは後だ。本題は西の町の調査だな」

「はい。冒険者ギルドからはその人員が来ることになっていますけど、ほかの調査隊としては誰が来ることになっているんですか?」

「下手に人を増やしても動きが鈍くなるから意味がないってことで、同盟からの派遣は現地メンバーと使者たちに任せるってさ。まあ、専門家がいるようなものだしな。そこにミリーたち冒険者組が加わればいいだろう。あとは、スウルス側は多分だがあのハスニア王女が来るだろう。これから同盟に参加するってことで送っていたんだしな」

「なるほど。あの研究班としてザーギスとかは送らないんですか?」

「エージルが行っているからな。ザーギスにはブルーホールとかダファイオ、ハイデン地方とズラブル地方の大山脈とかの計測をして貰っているから無理だな。ついでに魔力技術の開発の主任でもある」


ザーギスは出番ないから楽してるじゃん?と思うじゃないか。

こっちにエージルやコメットたちが出てくれば出てくるほど、ザーギスの負担は増えるというわけだ。

どこかのナールジアとかいう族長? ああ、あれは自由にやっているからだめ。

出来ないことはないが、不満があとから爆発する。

主に装備品やアクセサリーが、明後日の方向に。


「なるほど。そういえばそうでした。なんでかザーギスってイメージ薄いんですよね」

「あいつはどっちかというと研究室で引きこもりがちだからな」


基本的に外には出ない。

いや実験場には出るが、外部に出て物資や調査をするのは稀だ。

ダンゴムシ改たちの時は逃げ出していたというのが真実だったしな。


「確かに、研究室にいるばかりの認識が多いです。と、まだ出立日などは決まっていないんですよね?」

「まだだな。とりあえず、調査をしようにも二国に向かった使者次第ってことになる」


そう、敵を追い返したから次に調査ねって簡単には行かないのだ。

相手がまた殴り掛かってこないとも限らない。

一応同盟国は二国に攻める際には軍を出すと言ってはいたが、その準備もいる。

俺としては使者が上手く二国と話し合いを付けてくれればいいんだが……。


「……話し合いに応じますか?」


ミリーは疑問のようだ。

俺もそう思う。

イリナウ王国はともかくキナウフ王国は明確にこちらに対して宣戦を布告してきた。

戦う気満々だと受け取れるし、これから話し合いに応じるかどうかはちょっと怪しい。

だが、ちゃんと使者として向かったハスニア王女やリリーシュは無事に返した実績はあるから……。


「とりあえず伝えることだけでも成功してほしいな。使者が首だけで帰ってきたら、戦争まっしぐらだ」

「ですよね。でもそんなに壊滅した西の町やダンジョンがあると思しき地点を放置していていいんですか?」

「放置ってわけじゃない。ちゃんと周囲にはスティーブたちの監視を回しているし、上空からドローンや使い魔でのフォローもしているから、劣化はするが火事場泥棒とかの心配はない」

「とはいえ、ずっと調査を待つってわけにもいかないですよね?」

「まあな。とりあえずスウルスの方が待ってくれってことだ。使者が向かって無事に到着すればいったん調査には移れると思う。俺たちはその間に同盟軍が来る準備をしようってことだ」

「二国に使者が到着するですか……時間的には1週間って所ですか?」


それでも時間がかかりすぎる。とミリーの顔にはかいてある。

だから俺は安心させるために次の画像を映す。


「何も邪魔が無ければな。とはいえ、ミリーの言う通り時間が空きすぎるのもアレだし生存者のことも考えて、一応先行して部隊は大氾濫を殲滅をした後、スティーブの部隊を出している。こっそりだけどな」


そこには西の町で活動するゴブリンたちの映像が映っていた。


「生存者は?」

「残念ながらいない。というか遺体が残っていない。食われたのか、それともアンデッドの素材にでもされたのか」

「そうなると墓地の死者もですか?」

「そっちは放置だったな。腐乱かあるいは骨だったろうし、使えないと判断したのか……とりあえず死体の流用に関してはハイデンでのソウタさん、エノルさん、アージュの実例があるから警戒はしている」

「確かに生存していると偽って内部に入り込む可能性はありますね。まあ、目的は分かりませんが」

「そこは闇ギルドとかダンジョンマスターの情報を仕入れないと難しいな。あ、西の町にはダンジョンはなかった。その道中にもだ」


俺の言いたいことが分かったのがミリーは目を細めて……。


「つまり、最初の出現地点にもなかったということですね。規模から考えても足跡や痕跡などなくあの場に一万もいきなり出現するのはほぼ不可能。ということは……」

「相手は大氾濫の規模の魔物を放出した後ダンジョンを撤去したってことになるな。まあ、可能性としては大規模な転移魔術っていうのもあるだろうけど」

「後者の可能性は低いと思います。そんな大規模な魔術を所有しているのなら、どこにでも大軍を送り込むことが可能ですし、撤退も容易なはずです」


撤退が容易かどうかはまあわからんが、どこにでも大軍を送り込むのがダンジョンよりも遥かに簡単だというのは事実だ。

とはいえ、大軍を送り込んだからと言ってすぐに敵拠点は落とせても相手を納得はさせられないだろうな。

魅力的な輸送手段ではあるが、占領には実は向いていない。

まだ認知されていないし、誰もそんな方法での敗北は認めないだろう。

まあ、そんなことをミリーに言ってもしょうがない。


「とりあえず、冒険者ギルドからのケイトだっけか? 先に受け入れるなら連絡をくれ。準備はしないといけないしな」

「わかりました。ゲートを使用しての移動になるのでウィードに来るのはかなり早いと思います」

「しかし、リテアからスウルスに向かうっていうのにウィードに来るっていうことは露骨に調査っていうのはわかるな」

「ですね。本人は調査するメンバーとの友好を深めるためという建前はあるようですが」


何にもトラブルが起きないことを願うね。


すぐに解決に導けるのはドラマぐらいのもの。

通常は地道な作業の積み重ね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 死体も痕跡もない…突如街中に魔物…普通に考えたらあの展開だけど、ここはダンジョンが主体。さて、どうなるか! ザーギスはスティーブと似てるけど違う苦労人だね(笑)
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