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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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1607/2211

第1362堀:不透明な今

不透明な今



Side:ユキ



映像では魔物だったものの残骸が広がるだけ。

第三次攻撃まで生き残った幸運な魔物たちも完膚なきまでに、効力射によって粉砕された。

いや、実は数匹はサンプルとして確保はしているけどな。

それも含めて現在の状況は……。


『作戦終了。敵の残存を警戒して通常防衛体制に移行します』


という、砦のオペレーターから連絡がくる。

特に問題もなく、スウルス公国を襲っていた脅威は排除した。

援軍が来る可能性はゼロではないが、当面の脅威は確実に排除が終わったのは間違いない。

そして、その状況を見ていた各国は。


「ふむ。情報としては知っていたが、やはりすごいの一言だな」

「ああ、戦争のやり方がまるで違う。数を集めるだけじゃどうにもならんな」

「これがウィードが所有している兵器の力というわけですね。はぁ、敵でなくて味方でよかったと思います。おかげでスウルス公国は助かったのですから」


ロシュール王、ガルツ王の言葉はウィードを警戒していますよともとれる言葉だったが、アルシュテールの言葉で最後には全員頷き、その警戒は多少薄まったように思える。

あの火力だからな。

国として警戒をして当然だろう。

とはいえ、今まで築いてきたもののおかげでとりあえずで済んでいる。

これが、何の信用もなければ色々画策していただろうな。

そして戦争に次ぐ戦争という面倒事になったに違いない。


「では、今回の大氾濫は一応収束とみてよいか?」


そう質問してくるのはユーピアだ。

彼女にとっては初めての大氾濫なのでその判断がつかないのは当然だ。


「収束と判断するのは早い。時間経過の観察が必要だ。あと、どこから大氾濫が起きたのか起点を探す必要はある。ダンジョンから出てきているなら……」

「そこを潰さぬ限り終わりではないか。ま、当然じゃな。しかし、急場はしのいだと言っていいのじゃろう?」

「そうだな。緊急事態は何とかなった。ほかに軍が出てなければだが」


俺は含みを持たせて返事をすると、アルシュテールはぎょっとした顔をしてこちらに質問をしてくる。


「え? それはどういうことでしょうか?」

「北の町、西の町、そして王都に別動隊が向かっているって可能性はゼロじゃない。連絡を取っているわけじゃないんだろう?」

「そ、そんなことが……」


アルシュテールが青ざめていると、グランドマスターが笑いながら……。


「ユキ殿そこまで脅かさなくていいじゃろ。ワシがこの会議に参加する前に連絡を取ったときにはスウルス公国の北と西の町と王都の安全は確認できとる。何かあれば冒険者ギルドから連絡も来るようにしているから、問題はないと判断してよいじゃろう。大氾濫が起きたと連絡したあとは、各町は各地に偵察部隊をおくりだしたからのう」


そういって安心させる。

とはいえ、それを知っているのはグランドマスターの冒険者ギルドだけだ。

俺たちはスウルス公国との交流はなく情報をまんべんなく収集するのは不可能。

だから、安心させるようなことは言わず警戒をするようにとアルシュテールに言ったわけだ。


「そ、それはよかったです。しかし、ユキ殿の言うことも当然ですね。1万の軍勢がいきなり現れたとしかわかっていないのですから、ほかの場所に出現していてもおかしくはありません。リテアからも確認を取る必要はありますね。直ちに確認のための使者を送ります」


アルシュテールも俺の言いたいことは分かったようで、即座に対応策を打ち出すのはやはり一国のトップではあると実感する。

いや、これですべて解決しましたとか言われると逆に不安になるか。


「確かにな。あれほどの規模の軍が出現したのだ。それで終わりというのは虫が良すぎるよな」

「うむ。軍事行動というのは目的ありきじゃからな。案外スウルス公国の王都へ敵が交渉をかけているかもしれんな」

「「「……」」」


シーサイフォ女王エメラルドの言葉に全員が沈黙する。

あり得そうな話だ。と全員が思ったのだ。

そして、その空気はもちろん女王は読み取り……。


「アルシュテール殿、スウルス公国に使者はおらぬのか? あるいは外交官は?」

「いるにはいますが、今回の混乱で連絡が取れない状態です。普通に考えれば防衛体制を整えていると考えるべきでしょうが……」

「そういえば、スウルス公国に援軍を送るって返事を出した使者はどうなっているんだ?」

「ウィードほど移動力があるわけでもありません。早馬を利用してはいますが、まだ移動中でしょう。北の町の方には到着したと連絡はありましたが、それから王都ですしまだ時間はかかる距離です。到着さえすればスウルスにあるリテアの大使館から連絡が飛ぶはずですが……」

「それがないということは、まだ到着していないと見るべきか」

「はい」


スウルス公国が大陸間交流同盟に入っていないおかげで、連絡一つ取るのにも苦労しているってことか。

情報弱者が駄目だっていうのがよくわかる。

というか、情報弱者は俺たちもだけどな。

全方位満遍なく情報を集めるなんて無理な話ではあるが、軍を囮に王都襲撃なんてのは定番の強襲作戦だ。

トップを刈り取れば、判断を下せるものがいなくなる。


常套手段というか、まず警戒しないといけない方法だ。

そんな当たり前の作戦を俺も見落としていたんだよな。

ダンジョンから敵がやって来たと、大氾濫だってことに気を取られていた。

とはいえ、ここで呆然としているわけにはいかない。


「アルシュテール。砦からも王都の方に人をやるけどいいか?」

「あ、そうですね。ゲートもあるのですから車で向かう方が……微妙なところですが、使者が無事に到着しているかもわかりませんから、向かった方がいいでしょう。リテアからの使者を送りたいのですが、人を呼ぶのに時間が……」


まあ、何も知らない人物を送るわけにもいかないよな。

リテアの事情、大陸間交流同盟の事情も知っていて、現状を把握している人物を選出するだけでも時間がかかる。

うーん、そこは仕方ないことだから、スティーブたちに先行させてゲートを確保するか?

いざとなれば、そのまま乗り込んで対応が出来なくもない。

一番の問題は勝手に完結されることだからな。

そう考えていると……。


「は~い。困っているようだから、私がスウルスに行ってもいいわよ~」


頭がお花畑のような声と共にリリーシュが手を上げて立った。


「「「……」」」


この会議に参加している各国のトップはリリーシュの正体は知っている。

俺の立場を知っているのだから当然ともいえるが、あまりにも話が通じない……ではなくリテアというロガリ大陸最大の宗派を率いる女神様なので迂闊に話は出来ないのだ。

下手をすると国家間戦争になりかねないからな。

それはハイレンやセナルも同じ。

下手に加護とかを国民に与えられでもすれば、正当な女神の使者は自分だとか言い出す馬鹿が出てきて、各大陸で混乱が起こること間違いない。

なので、そういうのはウィードに預けて放置というのが暗黙の了解となっている。

その大混乱の原因が自らスウルス公国に行くといっているのだ。

さて、どうするべきかと思っていたんだが……。


「そういえば、リリーシュはスウルスで仕事していたことがあったんだったよな?」

「あるわよ~。ウィードに来る前の2回前って所かしら?」

「それって何年前だよ。神様基準の時間経過だと、向こうに知り合いもいないだろう? 知り合いが生きていたとしても、子供がご老人になってたとかいうレベルの時間経過だとリリーシュが危ないからな? 昨日の今日だから怪しい人物認定されるぞ」

「あら~。心配してくれるの~?」

「いや、普通にするだろう」

「当然です!」


俺はお前という爆弾の被害を考えて、アルシュテールはリリーシュを純粋に心配をして。

だが、リリーシュは気にすることもなく。


「大丈夫よ~。精々10年ぐらい前だから~。私は~、当時やり手の司祭ってことで色々各地めぐってたから」

「10年か……リリーシュが当時20代と周りが見てれば、30代に見えるか?」


見た目はどう見ても20代前半の美人なんだが、怪しまれないか?

というか、リーアの村で司祭やっていた時は10年以上前だからそれよりも以前ってことか。

リーアは容姿の変わらないこの女神を信じて疑わなかったのか?


「あら~、何か失礼な質問ね。女性はいつでも若いのよ~」

「いや、その気持ちは分かるが、相手を刺激しちゃ意味がないだろう。まあ、よくよく考えればエルフとか長命種もいるからその手の血が流れているっていえば大丈夫か?」

「そうね~。そういえば大丈夫よ~。あとは、任命書と親書をアルシュテールちゃんが用意してくれればいいけど?」


そう言ってリリーシュはアルシュテールを見つめる。

女神で爆弾だということに目をつぶれば、確かにこいつは外交関連も優秀であり、対人も問題ない。

実力も女神だからそれなりにあるから、そういうことも心配はしていない。

まあ、護衛はいるだろうが。

とはいえ、アルシュテールにとってはリテアが崇め奉る女神を戦場になっている国へ送りこむだろうか?

俺としても女神がDPになった場合とかのリスクもあるから心配ではあるが、それよりも心情的に納得するだろうかと思っていたのだが……。


「……リリーシュ様。スウルスへの使者お願いいたします」


深々と頭を下げてお願いするアルシュテール。

ちゃんと状況を把握したうえで、その判断をくだしたというのは分かる。

何せ両手は握りしめて、プルプルしているし。


「ええ。任せて頂戴」

「ですが、護衛は必ずつけてください。ユキ殿お願いできますか?」

「わかった。こっちで護衛は手配というか、砦にいる嫁さんたちを付けた方がいいだろうな。相手への圧力にもなる」


何せ大陸間交流同盟の各国が援軍をだしていたというアピールにもなるわけだ。

スウルス公国が脅されていたなら味方がこれだけいると安心できるだろうし、何もなければそれはそれでこれだけ動いてくれたという証にもなる。

危険はあるけどな。


「そうですね。それがいいでしょう。では早速書類を用意しますので少々お待ちください」


そう言ってアルシュテールは席を立つ。

おそらく一旦本国に戻ったんだろう。

説明をして、書類を書く。

ただ書類を書くだけでも勝手にはできないのが国としてつらいところだな。

そして、俺は……。


「こっちも事前の偵察は必須だな」


ということで手を打つのであった。



ここでリリーシュが立候補。

不安もあるが便利なことは間違いない。

胃を押さえつつもリリーシュがでるのであった。

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