第1330堀:祝いの席で
祝いの席で
Side:ユキ
「「「かんぱーい!!」」」
そんな声とともに、みんな各々好きな食事を始めている。
俺たちは本日ようやく留学生制度の開始を各部署へ宣言した。
つまり、今まで準備していたことがようやく成ったのだ。
それは俺たちが今まで頑張っていた努力が報われたということ。
しかも大陸間交流同盟が成ったときのレベルでの難事だったから、喜びも一段違う。
各国と連絡を取って調整をして、警備などはもちろん、事細かなことに気を配っていた。
これからも油断することはないが、この計画をここまでもって来たことを祝うのに誰も否定することはない。
もちろん、俺たち上層部も同じだ。
「ぷっはー! いや、妾たちも混ざってよかったのか?」
「飲みながら言うことではないですが、そこは少し気になりますね」
「何言ってるんだ。主君がいいと言っているんだ。楽しまないと失礼だろ。なあ?」
そうコーラルに振られ俺は返答する。
「ああ。みんなの協力あってこそだからな。まあ、意外と多くの外交官が参加してくるとは思わなかったけどな」
とそういって周りを見ると、外務省を通じて各国の外交官が出席して食事を楽しんでいる。
いきなりの連絡で参加はしないだろうと思っていたが意外と参加してきたのだ。
別で祝いの席は設けるとは言ったんだけどな。
「それは当然ですとも。ウィード内のお祝いではありますが、同時に大陸間交流同盟の成果でもあります。なのでできうる限りこちらの席には参加いたしますよ」
そういって現れたのはズラブルの大皇望ショーウだ。
お皿には色々好きな料理が盛られている。
「俺としては構わないが、ユーピアとか怒らないか?」
「円滑な外交のためなので問題ありません。陛下には適当にカレーでも送っておけばいいですから」
何ともあれな発言だ。
まあ、本人たちにとっては軽いじゃれ合いなんだろうな。
そんなことを考えていると、今度は逆にショーウから質問をされる。
「しかしよかったのですが? 奥様たちだけでの内内お祝いをしてもよかったのでは?」
「あ、それは妾も思ったぞ。ここはまずは身内でやるべきではないか? 一番骨を折ったのはおぬしらじゃろう?」
「そっちは後日やる。まずは対外的に祝いをしないと働いている人たちがお祝いをやり辛いしな」
「ああ、確かに。上がお祝いをしていないのに、自分たちだけというのは居心地が悪いですからな」
「うん。みんな騒いでこそだな」
「確かに一理ありますね」
「上に立つものの義務か。やっぱり面倒じゃな」
面倒なのはミヤビ女王に同意だ。
とはいえ、そこらへんもちゃんとしないといけないのは事実。
こうして大々的にお祝いをすることで、留学生制度が始まったと周りに宣伝することにもなるからな。
まあ、嫁さんたちとお祝いと言っても……。
「身内お祝いってなると、家で食べてのんびり寝る方ぐらいがいいんだよな」
お祝いのために準備するのも意外と疲れるのだ。
もちろんキルエやサーサリが頑張ってくれるのだろうが、そこら辺の労も労いたいし、そこまでって感じなるだろう。
俺たちもどこかに食事に出るって判断がいいかな?
それで家族に負担をかけない方法だよなと思っていると。
「確かに、身内の祝い事はそういう風に済ませるのが一番じゃな。外交を交えるとこういう風になるしのう」
「そういうので統治者は大変ですな」
「自由に食べれないのは面倒だな」
ドラゴンたちはそういうが、ガウルもコーラルも一応立場あるドラゴンなはずなんだが、まあもともとの気質もあるんだろうな。
いや、それよりもドラゴンにモノ申せる人物がいなかったってところだろう。
そんなことを考えていると、不意にミヤビ女王が思い出したような顔になり……。
「そういえば、こんな祝いの席であれじゃが、妾に聞いていた希少種族、精霊の件はどうするのじゃ? 宝石族やハーピーについては布告は聞いたが精霊族に関してはノータッチじゃったが?」
ああ、そういえば希少種族の話はミヤビ女王たちともしていた。
先日リリアーナには希少種族の宝石族やハーピーについての情報は提出してもらって各国に布告は済ませたが、精霊に関してはいまだにノータッチの状況だ。
とはいえ、そこまで問題視はしていない理由は……。
「どこにでもいる精霊を注意しろっていうのは難しいしな。姿を自由に消したりできるようだから、今回はまあ文面だけにしている。詳細な姿もないも同然だしな」
「ま、そういわれるとそうじゃな」
そう、精霊は属性について姿かたちは変わるし、何より元からめったに見られるものではない。
そういう存在に注意しろというのはとても難しい。
言えることは、そういう種族がいるというだけだ。
唯一気になることといえば……。
「ちょっと気がかりなのは、ミヤビ女王があった精霊かな。魔族と会う際に風の精霊。そしてリテアに属している小国での聖女の泉で水の精霊。一度限りとはいえ、会っているという実績があるから捕獲される可能性が高い気がする」
「高いかのう?」
「まあ、いうほど高くはないけど、一応会えるなら話をしておいた方がいいとは思う。ミヤビ女王はその精霊の話はほかにしてはないんだろう?」
「うむ。聞かれるまで忘れてたぐらいじゃが……聖女の泉に関しては知名度があるからのう。うむ、そういうことも考えると一度行ってみるべきではあるか?」
「まあ、そうだな。あとでルルアを通してリテアと話をしてみる。話が通れば一緒に行ってくれるか?」
「うむ。構わんぞ。久しぶりにあうのも悪くないじゃろう」
そう協力の言葉を持ったと思ったら、食事をしていたショーウが話に加わってくる。
「良ければその精霊との面会、私もご一緒してよろしいでしょうか?」
ショーウとしても精霊という種族には惹かれるものがあるんだろう。
「俺としては構わないが、あんまり連れて行くと他所もってなりそうだな」
「なるな。精霊と会えるというのは名誉な事じゃからな。とはいえ、大人数で行くと逆に会えなくなりそうじゃが……」
確かにそうだよな。
まずは必要最低限で会いに行くべきか。
許可をもらってその後が安全だろう。
だが、その程度のことショーウがわからないとも思えない、つまり……。
「何か急いで会いたい理由があるのか?」
「そこまで急ぎというわけでもないのですが、ズラブル地方の環境はどちらかというとウィード、つまりロガリ大陸に近いのです。獣人たちはいますし、エルフも。そして魔物もいます。つまり精霊もいるだろうと考えています」
「ああ、なるほど。そちらにも精霊がいるかもしれないということから、まずは会える精霊と会って情報を集めたいということじゃな?」
「はい。その通りです。書類の情報によれば精霊の力はかなりあるとのこと。それを悪用する者もあらわれないとも限りません。できうる限り、その手の力を持つ精霊などは把握しておきたいですし、交流を持っておきたいと思うのです」
言っていることは国を運営するものとしては至極もっともなことだな。
その話を聞いたミヤビ女王はというと……。
「言っておることはもっともじゃな。そっちの地方にも精霊の話などはあるのかのう?」
「……眉唾ではありますがそういう噂を聞いたことはありますが、最近まで大規模な戦争が起こっていましたので、あまり情報は集まっていません」
「ふむ。ならばまずはそちらはそちらでズラブル地方に住まうエルフたちと交流をもって話を聞くとよかろう。エルフは精霊との親和性が高い。まあ、妖精族の方が上じゃが、あれは本当に気まぐれじゃしな。水の精霊とはショーウ殿の話は通しておこう。会えればの話じゃが。よいかのうユキ殿?」
「ああ、大丈夫。ショーウはそれでいいか?」
「ええ。ご配慮いただきありがとうございます。しかし、戦後の復興に種族の把握とやることはいっぱいですね。せめてここで美味しいものを食べておくとしましょう」
「うむ。それが良い」
そんなことを言って食事を再開する2人に今度はドラゴンたちが話しかけてくる。
「そういえばズラブル地方にドラゴンはいるのですかな?」
「ああ、それは私も気になった」
「ん? ええ、いるとは聞いたことがありますが、やはり文献だけですね。いえ、ワイバーン部隊が私たちの国にはいますしいないとは思えないですが……。そういえばあまり考えたことはなかったですね。災害レベルなのですが、なぜここまで話を聞かないのでしょう?」
ショーウは気になったのか、食べる手を止めて考え始める。
確かに、ロガリ大陸と環境が似通っているならドラゴンがいてもおかしくない。
何より大山脈の火口にはヒュドラの存在も確認できた。
あれも立派なドラゴンの一種だ。
認めないやつはいるが、下手すると普通のドラゴンよりも厄介な部類でもある。
「留学生制度も始まったことだし、そこら辺の調査を進めるのがいいかもしれないな」
「その通りですね。陛下に進言してみるとしましょう」
とまあ、こんな感じでミヤビ女王たちと話していると、ほかのぶらりとウィードを訪れていた王様とか外交官との話が始まり俺はその対応に追われるのであった。
ともかく、今は留学生制度が始まったことを喜ぶとしよう。
これが終わったあとは、まだまだやることがあるというのは、今日ぐらいは忘れていてもいいだろう。
留学生制度始動!
そして、残っている細々な仕事を潰していくことに。
とはいえ、ここで一息。
休憩を挟めればいいかなーと思っています。
ああ、雪だるまの休憩ではなくユキたちの休暇、落とし穴ね。




