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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第1273堀:まずは腹ごしらえ

まずは腹ごしらえ



Side:ユーピア



本日の昼休み。

ウィードに食事をしに来ておったら、ユキ殿がふらりと現れ、どうしたのか問うたところワシと話したいとのことじゃった。

わざわざ食事の時間を狙って顔を見せるというは……。


「全く、ユキ殿も忙しいことじゃな」

「本当にな。一ヶ月ほどのんびりしたかったんだけどなー」

「ユキ殿が一ヶ月休むか……。どれだけの国が悲鳴を上げることやら」


本当に冗談ではない。

目の前の男が一ヶ月も休もうことなら、各国は大騒ぎになるじゃろう。

それだけこの男は各国に大きな影響力がある。

ワシとてその悲鳴を上げる国の1つじゃがな。


「だよなー。ま、せめて美味しいモノでも食べてゆっくりしようと思っているんだが、ユーピア皇帝も一緒にどうですか?」

「なるほど。美味しいモノをたべるのは賛成じゃし、それだけでも多少なりと気はまぎれる。じゃが、アスリンたちを伴のうておらんところを見ると『仕事の話』じゃな」


普段ならワシの友であるアスリンたちが一緒におるのじゃが、今日はそれがない。

つまり遊びは無しということじゃ。


「呼んでもいいけど?」

「よい。話に集中できなくなりそうじゃ」

「はい。それがいいかと。アスリン殿たちもお忙しいのですから、たかが陛下の機嫌取りのためだけに呼び寄せる必要はございません」


ショーウめは斯様なことを告げおった。

ったく、一言多い奴め。

とはいえ、アスリンたちが忙しいのは事実。

ああ見えて魔物軍の統括や、武器の製造など色々なことを担っておるからな。


「では、まず一番最初に……」


ほう、料理店に行く前にから何ぞ話すほどのことなのか?

それだけの緊急性のある重要案件かとショーウ共々何を聞かされようが動揺しないようにと気構えておったら……。


「何食べる?」

「「は?」」


いや、当然の質問なんじゃが、ワシが思うとった国家のトップ同士が話す内容とはあまりに違いすぎて逆に動揺してしまったわ。


「何か希望ある?」

「あ、うむ。何ぞあるかショーウ?」

「は、はあ。いきなり言われると、パッと思い浮かびませんね……。ユキ様何かおすすめのお店などは?」

「じゃ、実験堂にしよう」

「じっけんどう?」

「そう。俺の行きつけ」

「その名称から察するに『料理の実験』ということでしょうか?」

「ショーウ正解。元々このウィードで食べられている食べ物は基本的に実験堂で作られて、気に入った人がレシピを買い上げて、自分のお店でオリジナルに仕上げて出すってことが多い」

「ほう! つまり、その『実験堂』なる処がウィードの食の発祥ということか?」

「そうともいえる。ただまあ、味が整っているかと言えば、微妙なところだな。何せ『実験』だからな」


ほうほう。

確かに言ぅとることは分かる。

あくまで様々な試作の料理を考案するのが役目のようじゃから、個々の料理人がその料理を追求した物と比べれば味が劣るのは当然じゃ。

とはいえ、ユキ殿がおすすめしてくれるのじゃから、そもそも断る理由なぞ無い。


「よし。では参ろうか!」


はて、如何なる未知の料理があるのか楽しみじゃな!


そして案内された実験堂はワシが知っている商業区の路地裏ともいうべきような場所に存在していた。

他所であれば斯様な路地裏なぞ犯罪の温床となりかねぬのじゃが、ウィードに限っては左様なことはない。

ウィードでは路地裏といえど、当然のように店舗が数多開いており、しかも興味を惹かれるものが多い。

ま、大通りの店は土地代が高いからのう。

そのために大通りの一本隣や、さらに何本か入った土地代の安い所にある店も多いのじゃ。

まあ、治安がいいからこそ成せる配置じゃな。

こういう商売の区画を作っておけば、市場でポンと売る者もいるじゃろうが、店舗を持ちたいと思うモノも手軽に店を構えることが可能じゃろう。


「改めて、治安の良さに驚きますね」

「うむ。ああして子供たちも普通に歩いておるからのう。と、あそこは駄菓子屋じゃな。アスリンたちといったことがある」


ちなみに駄菓子というはちょっとしたお菓子のことじゃとか。

なんと子供でも手軽に買える価格で販売しておるのじゃ。

元が取れるかといわれると首を傾げるような商売のようじゃが、なんとかトントンぐらいでやっているそうじゃ。

子供たちが買い物を覚えるためにもということで公的資金を回してもおると。

なるほどなと思ったわ。


「あそこです」


路地裏を観察しながら歩いていると、確かに実験堂という暖簾が出ているお店が構えておった。

路地の一番奥ともいうべき場所。

確かに建物は大きいが、パッと見ウィードのお店とは思えぬつくりじゃな。

などと考えつつ中に入る。


「いらっしゃい。あ、大将いらっしゃい」

「おう。お邪魔するよ。奥空いてるか?」

「ええ。空いてますよ。どうぞ。お嬢さん方もどうぞ」

「うむ」

「失礼します」


と応え、奥の座敷の方へと入っていった。


「はい。これがメニュー」

「ふむ」


と渡されたメニューを見たのじゃが……。


「名前だけでサッパリわかりませんね。多少想像がつくものもありますが……」


ショーウが言う通り、この店ではウィードでは普通の写真を用いたメニューは用意しておらぬようで、如何なる食べ物なのかいまいち想像し辛い。

いや、写真がついているメニューなぞウィードぐらいのモノなのじゃがな。


「うむ。こうなれば、ユキ殿にお任せしよう」

「了解。オムライス系は好きか?」

「オムライス? ああ、ライスを卵で包んだやつか。うむ。美味かったぞ」

「ええ。とはいえ、オムライス『系』というのはどういうことでしょうか?」

「ああ、オムライスにも色々あるんだよ。まあ、ウィードでもここぐらいでしかその色々な種類ってのは頼めないけどな」

「ほう。では、それを頼もうではないか」

「よし。じゃあ、ビーフシチューオムライスに、チキンクリームオムライス、カレーオムライス、定番のチキンオムライスをお願いします」

「かしこまりました」


そういうと店員はすぐに踵を返して奥へと消えていく。

それを確認してから……。


「ビーフシチューやカレーは食べたことがあるが、それがオムライスにか?」

「そこがオムライス『系』が一般化しない理由だな。ビーフシチューはビーフシチューで。カレーはカレーで食べればいいじゃない。というのがウィードの主流でな」

「はい。確かにそう思います。その二つの料理はそれだけ完成されているのですから」


うむ。ショーウの言う通り、その二つは『すでに完成された』料理である。

ワシもビーフシチューは好きだし、カレーに至ってはこの世の食べ物の中でも5本指に入るほど好きだと言える。


「まあ、そこが問題なんです。それをオムライスのソースとして使う。そうするとその二つの料理が好きな人たちはこういいます。『それは邪道だ』と」

「ふむ、その気持ちはよぅわかる。カレーにはライスかパン」

「なるほど。『常識が邪魔をする』というわけですか」

「ええ。あと、基本的にオムライスはどちらかというと子供向けのモノと思われがちです。なので……」

「あー、そういわれるとそうじゃな。苦味や辛みなどとは無縁な食べ物じゃな。子供たちもよく食べておる」

「はい。それでいてライスの中に色々な野菜などを入れればバランスよく食べられるので、いいものだと思います。なるほど。ですが確かに大人が食べるにはちょっと躊躇するかもしれませんね」


うむ、己が口にしてよう理解した。

ユキ殿が頼んだ料理はいずれも受け入れ辛いモノの様じゃな。

されど、ユキ殿が頼んだ料理。

どうしてもまずいなどとは思えぬ。


「多少違和感はぬぐえぬが、ユキ殿が頼んだ料理。食べてみるぞ。よいなショーウ」

「ええ。もちろんです。それによくよく考えればビーフシチューもオムライスも美味しいのです。その二つが合わされば無敵だとは思いませんか?」

「そのとおりじゃな。カレーとオムライスのコラボレーション。うむ。素晴らしい!」


ふむ、美味いモノと美味いモノがまじりあって無敵になる。

実にわかりやすい。

そんなことを考えている間に料理が届いた。

うむ。見た目は本当にオムライスにただビーフシチュー、カレーなどをかけているだけじゃな。


「とりあえず、お好きなのをどうぞ」

「では、ワシはもちろんカレーオムライスを」

「それではビーフシチューオムライスをいただきます」

「俺は待つよ。普通のオムライスは口に合わなかったら食べてくれ」


なるほどのう。

それでノーマルオムライスも頼んだわけか。

確かに口に合わないモノを無理に食べるなど、作った者や食材になった物たちへの冒涜であるな。

美味しく食べる。

それが礼である。

そして、食べる前の挨拶。


「「いただきます」」


ワシとショーウはそう手を合わせて食前の挨拶をすると、即座にスプーンを掴み。

まずはソースとして使われているカレーを掬い口に含む。

うむ。ちょっと辛めではある。

じゃが、このカレーも美味い。

流石ユキ殿がおすすめする店。

これはこれで濃厚じゃな。このままカレーとして食べてみたいと思う。

じゃが今はこのオムライスじゃ。

続いてフワッとかけられた卵にスプーンを落とし、その下のライスを含め、カレーを付けて食べる。


「「ふぉぉぉぉ!」」


ショーウもどうやら同時に食したようで、ワシ同様叫び声をあげておる。


美味い。


間違いなく美味い。

カレーとオムライスのコラボレーション。

卵に包まれしライスはバターで炒められ、しかもオニオンやキノコが入っており風味豊か。

それに先ほどの辛めのカレーが混じり合うことで物凄いマリアージュを生み出しとる。


美味いモノと美味いモノはやはり無敵である。


間違いない。

ワシは止まることを知らず、ただひたすらカレーオムライスを口に運んでいく。

止まらぬ。

止まらぬ!


止まらぬ!!



……ん? はて、ワシらは何故ここに来たんじゃったか?


いや、そんなことより、まずはほかのオムライスもしかと試さねば!



ズラブルの仕事って意外と中途半端なんですよね。

落ち着かないと調査もクソもないですから。


とはいえ、その前にご飯を食べましょう。


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