2021年末スペシャル 最終日の午前中
2021年末スペシャル 最終日の午前中
Side:ユキ
「ふぅ~」
今俺は熱いお茶を口にしながら寛いでいる。
この場にいる皆も同じようなもんだ。
「はぁ~。気がつけばもう今年最後の日ですよね~」
「だな。今年も色々あった」
「そうですねぇ~」
そう、このデーブルを囲んでいるのは、タイキ君、タイゾウさんにソウタさん。
そして……。
「年末なんて働ていればそんなもんよ。ところで、なんか女性率低すぎない?」
などと言い出したのがシーサイフォ王国の転生者であるメノウだ。
「いや、これは『日本人メンバーの集い』だしな。基本男ばかりだし、今後は無理に来なくてもいいぞ」
そもそもメノウのカテゴリーは転移者ではなく転生者だから厳密に日本人かと問われると疑問符がつく。
だが、声をかけないのも何だから一応誘ったら来たわけだ。
「別に無理はしてないわよ。単に不思議なだけ。『日本人の』ってはずなのに男ばかりで女性は私だけって何かおかしくないかしら?って思ったのよ」
「あー、そっちな。まあ、そりゃきっと女性の場合はえてしてすぐに天に召されるからだろうさ」
「……そうか。そっちが原因か」
メノウは今更気がついたようでアチャーって感じでこめかみを押さえていた。
そんな様子を見たタイキ君が苦笑いしながら……。
「ま、まあ、女性だから弱いってわけでもないと思いますよ。虱潰しに探したわけじゃないので、俺たちが知らないところで有名になっている人や、そもそもひっそりと暮らしている人なんてのも今もこの世界のどこかにいる可能性もありますよ」
「だな。まあ、この世界が厳しいのは女性にだけでなく男性でも同じだ。勇者として戦いに駆り出されたり、盗賊や魔物に襲われてすぐに対処できるなんてのは早々いないだろう」
「タイゾウさんの言う通りですね。残念なことではありますが、男女問わずよほど特殊な状況下でもない限り、言葉は通じない、化け物がいる、盗賊もいる。そんな状況で生き残れる日本人がそう多いとは思えませんね」
勇者枠ってことではタイキ君だけじゃなくルーメルの勇者たちがいるから、まだ外にいもいる可能性はゼロじゃない。
だが、タイゾウさん、ソウタさんが言うように普通の日本人がこの世界に放り出されて生き残れるかというと、男女問わず厳しいとしか言いようがない。
「ごめんなさい。なんか変な方向の話になったわね。うっかり深く考えずに疑問を口にして申し訳なかったわ」
「いや、気にするな。そもそもこれといった話題があったわけじゃないしな。単に年越し前に集まってお茶飲んでただけだし」
「ですねー。あ、そういえば大掃除とかやりました?」
「一応、私の私室、研究室は綺麗にしたな」
「はい。私も家の掃除は終わらせましたよ。いやー、今やゾンビですけど相変わらずこういうことはいつも通りしちゃうんですよねー。私にとっては日本での『大掃除』なんて随分昔のことなんですけど、やっぱりついついやっちゃいます」
「ソウタさんのいうこと分かるわー。私も私室の掃除は自分でしちゃうのよね。これって転生したのにかわらないの。あれよね。習慣って体というよりも心に沁みついているんじゃないかって思うわ」
確かに、メノウの言うようにやらないと気が済まないっていうのはそれだけ心が違和感を感じているってことだろうからな。
この世界にも掃除っていう概念はあれど年末に今年の穢れを落とそうなんて風習というか考え方はそもそも存在しないようだ。
だからこういうことは、日本人であるという何かの要素が体を動かしているということだろう。
その手のものは『体が覚えている』といういい方をされることがあるが、それだと転生者であるメノウはそもそも体が違うからな。
やはり魂、心にというのが正しいのかもしれない。
体というのは魂、心の器なのだろうという説があるよな。
体はハードでソフトは魂や心に当たるのだ。
まあその場合、魂や心はどこに宿っているのかという疑問はあるけどなー。
と、そういう話はいいとして……。
「そういえば、俺はいいとして、みんなは自宅でとか家族と一緒じゃなくていいんですか?」
そう、一応年末ってことで集まってはいるが、そもそもこの4人にだって自分の家庭がある。
それがこの年の瀬のあわただしい中、なぜ俺の旅館に集まってのんびりお茶を飲んでいるのだろうか?
ちなみに俺は今日は基本夜までのんびりな日となっている。
ちゃんと年越しの時間帯には集まるが、女性陣や子供たちは思う存分に買い物や遊びに行っている。
今や大家族だからな。
そこらへんは各自の自由になっている。
「あー、俺は夜には戻りますよ。というか、なんか料理の準備があるからとかで半ば家から追い出された感じですかね?」
「ああ、そういえばアイリさんやソエルさんに日本の料理を教えてほしいといわれたので、いくつか教えたな。きっとそれを試しているんじゃないか?」
「そうでしょうね。私も聞かれましたよ。ユキ君もそうじゃないですか?」
「はい。というか、頼まれて詳しいレシピとか材料も渡したから、そこらへんが出てくるんじゃないか?」
タイキ君がそのことを知らなかったのが意外だ。
あれだろうな、アイリさんとかソエルがタイキ君のために頑張ってるってことだろう。
なんて話しているとメノウが半目になって……。
「タイキ君。ここで聞いたことはきれいさっぱり忘れなさい。そしてちゃんと驚いて喜んであげなさいよ。」
「あ、はい」
「そこの男ども。ちゃんと気を使いなさい」
「「「すみません」」」
確かに、タイキ君は知らなかったようだし、サプライズって感じだよな。
それをうっかりばらすのはだめだったか。
「はぁ~。で、今日の予定だっけ? 私はウィードで年越しね。のんびりさせてもらうわよ。何せ神社もあるみたいだし、久々にお参りとかもしたいわ」
あー、あの蛍がいる田舎の村の方な。
なんか鈴彦姫が色々改造して立派な神社ができている。
そしてカグラやソウタさんがちゃんと祀っているから問題はない。
来年はちゃんと祝詞とかを上げるようだ。
といっても、天照大御神とかいうやつは俺にとっては崇め奉るとかありえないんだが。
ゲームみたいに大神とかだったらましだったんだけどなー。
「何? どうしたの?」
「いや、神様っていうと俺にはあれでな」
「ああ。神様が知り合いって大変そうね」
「本当にな。夢が崩れる」
神様に幻想を抱いていたわけではないが、あそこまで人に丸投げだと幻滅もする。
「あ、それで思い出したが、セナルも神社と教会の手伝いをするってさ」
「は? セナルって、ズラブル地方で暴れまわった女神様よね?」
「暴れまわったというか、種をまいたというか。ま、それでも間違いはないか」
「それが何で当たり前な顔して神社とかにいるのよ?」
「そりゃ、天照大御神様に頼まれているからと自らのリハビリのためだったか」
「……神様がリハビリってイメージ崩れるわね」
「ま、あれはそういうもんだと思うしかないな。とりあえず、メノウはのんびりってわけだ」
「そうね。……うっかり妙な話を聞いてしまったけどすべて忘れて家でお茶でも啜ってるわ」
俺の返答に遠い目をするメノウ。
わかる、わかる。その気持ちよーくわかるぞ。
「メノウ君の判断でいいと思う。世の中色々あるが、年末年始ぐらいゆっくりしていいだろう」
タイゾウさんもうんうんと頷きながら同意する。
正月ぐらいっていうのは本当によく分かる。
「そうですね。っと、そういえば御餅食べます? 持ってきてますよ?」
「あ、いいですね。ユキさん、焼いていいですか?」
「いいな。晩御飯があるから食べ過ぎないよう注意しないとな。七輪だすか? それともストーブの上で焼くか?」
「ここは、ホントは七輪がいいですが……。子供さんも出入りするようですし、電子レンジがいいんじゃないですか?」
「そうね。電子レンジに賛成よ。お餅を食べたいだけだし。あ、私は砂糖醤油ね」
「私も砂糖醤油で」
「俺は……素焼きかな?」
「タイキ君は通ですね。では私は餡子を希望します」
「じゃ、黄粉も出しておきますか」
こうして、夜になる前にかなりのお餅を食べてしまったことは言うまでもない。
これが意外と食べてみると美味しいから止まらないんだよな。
しかも御餅って小さく見えて、あれ一個でご飯一杯分だから意外とおなかが膨れるんだ本当に。
あとで軽く運動して、おなか減らしておかないとな。
今年も一年お付き合いいただきありがとうございました。
皆様は今年一年いかがだったでしょうか?
雪だるまは久々にゲーム実況を7月に再開して、結構な数をこなしています。
よろしければ「youtube 雪だるまゲーム実況」で検索してみてください。
また、年越し更新は1月1日の0時となっておりますので、よろしくお願いいたします。
お餅には最近餡子をかけるのがいいかなーって思っています。




