第1255堀:種族の居場所
種族の居場所
Side:ホービス
ユキ様についてきて~すごいお年寄り?のひとたちから珍しい種族について話を伺うことになったんですけどぉ~。
あまりにあまりに珍しすぎて、私たちにとっては初めて聞いたっていう種族がドンドン出てきました~。
オレリアやヤユイは聞いたことあるのかな~って目配せしたんだけど首を横に振るばかり。
宝石族なんているんだ~、おとぎ話にも聞いたことがなかった~。
というか、そのおとぎ話の存在だと思ってた妖精族はウィードに来て初めて見てビックリだったんですけどね~。
「宝石族や他の石に関する種族の特徴は?」
「一概には言えないが、大体は額、あるいは背中や胸などに、自身の石が存在している」
「自身の石?」
「うむ。その者がどの宝石の種族に属しているかというやつじゃ。例えばルビーの宝石族であれば、しばしば額に大粒のルビーが存在しておる。まあ、そういう露骨に見えるものはすっかり狩られてしまったともっぱらな噂じゃがな」
確かに、額に大粒の宝石を付けている種族とか見るからにお金そのもの。
狩られて仕方がないとおもうわ~。
とはいえ、その狩られる方はたまったものじゃないですけど~。
「なるほど、その宝石を狙ってというわけですか。で、今現在その存在を見かけないということは宝石を取られると……」
「うむ。察しの通り死んでしまうものがほとんどじゃ。中には取られても再生するものもいるとは聞いてはいるが、当然そんなこと保護した者で試そうとは思わん。そもそも宝石なぞ妾にとっては全くと言っていいほど価値がないからのう。しかも相手の命を奪ってまでというのはな」
「確かに。ですが、奴隷商人や宝石目当ての奴らはそうじゃないと」
「なにせ滅多にないほどの大粒の宝石じゃからな。お金にすればとんでもない額になる。たかが光る石に過ぎぬものなんぞに価値を見出すのは人の業かのう?」
「ま、分かりやすい財力の象徴ですからね」
ユキ様って相変わらず、スゴイことを平然と言ってのけますよね~。
大粒の宝石なんて目の前にあれば誰だって唾を飲み込んでもおかしくないのに、ユキ様にとっては路傍の石と変わりないという感じですねぇ。
とユキ様あるあるに新たな1ページが加えられたところで、グランドマスターが対策を提案しました。
「とりあえず、留学生たちにはそういう種族がいるが、奴隷などとして扱かったり危害を加えることは禁止だというのを伝えておけばよかろうて」
「確かにそうですね。それに住んでいる場所を聞く限り、そう簡単に行けるような場所でもないですし。ところで、精霊族というのは?」
「精霊族は、どこにでもおる。『精霊』とは純魔力が属性ごとの意思を持ったものじゃな。確かウィードの上にある森にもいるはずじゃが? エリスちゃんがあったといっておるぞ?」
「ああ、森の精霊。あったことありますね。って彼は属性何になるんですか?」
「おそらく自然じゃろう。ああ、違うな植物か」
「その言い方だと、風、土、水、火とかもありそうですね」
「うむ。おるぞ。とはいえ、そういう魔術の基礎となるような属性の精霊は大精霊といわれて、神と同格といわれておる」
へぇー、そんなのがいるんですねぇ~。
そういえば、魔術を使う時には精霊様がーとか言う時がありますし、昔は見たことないけどそんなものかなーってふんわり想像していましたけど、本当にそういうモノがいるとは思いませんでした。
だって、ウィードで科学を学ぶと精霊って言われるモノって単にそういう現象にすぎないのだというのが分かりましたから~。
精霊の有無なんかで魔術は影響受けないのだと。
というか、科学の申し子のような世界からきたユキ様はなぜ精霊の存在を疑わないのでしょうか?
むしろ科学を知るものとしては否定するべきじゃないのでしょうか~?
「ガウル殿やコーラルはその存在とは?」
「知っていますね。でも、会ったことはありませんが」
「私も会ったことはないな。そのような単純属性の精霊はかなりの力の持ち主じゃと聞いてことがある」
「ミヤビ女王は?」
「うむ。風と水の精霊なら夫と旅をしたときに会ったことがあるのう」
「どこでと聞いていいでしょうか?」
「風は確か、魔王討伐の時にとある谷を通っていた時じゃったか? 水の方は確か今のリテア聖国の庇護下の小国にある聖女が寄ったとされている『聖女の泉』でじゃな」
ん~? 聖女の泉? そんなのあったかなーと思っていると……。
「聞いたことがあります。リテア聖国をおつくりになった聖女リテア様が立ち寄った湖ですよね?」
「うむ、よう知っておるな。オレリア」
「あ、発言許可もなく失礼いたしました。私の生まれたところの近くだったもので」
「そうだな。そこは注意してくれ。だが、情報ありがとう。それでその精霊、会いに行って実際会えるものなのか?」
「どうじゃろうな。妾の時は旦那に会いに来てくれたというのが正しいからのう」
「ほう。となると勇者どのですかな?」
「うむ。妾の旦那は勇者トウヤただ一人じゃ」
そうはっきりと言い切るミヤビ女王はとても綺麗でした。
それだけトウヤ様を大事に思っているということですもんね~。
「じゃあ、普通の人に会える可能性はないと?」
「うーむ、絶対とは言わんが。妾はわざわざ会おうとも思っておらぬしな……」
「そこらへんは要検証って所ですね。まあ、精霊が捕まるなんてことはなさそうですが。ただ、怒らせた場合は思わぬ被害がありそうだ」
「うむ。それはあるじゃろうな。ま、精霊は基本的に実体化せぬ。乞われた際に気分がのればその片鱗を見せるというやつらじゃ。じゃが元々高純度の魔力の塊。それを攻撃へ転換すればかなりの威力になるじゃろう。あぁ、それで思い出した。妖精族は精霊族となる前の存在という話を聞いたことがあったような……」
「前ですか? 妖精族というと……」
「ナールジア長老たちじゃな。まあ、詳しい話は本人たちに聞くといい。あれも実体は有れどその体を構成するのは魔力がほとんどじゃ。そういう所が似てはおる」
「確かに」
そう言われるとそうですね~。
ナールジア様ってものすごい量のアイスをパクパク食べるんですが~、おなかが妊婦さんみたいに膨らんでも平気な顔をしていますからねー。
「最後に、黄金族というのは?」
そんな種族、私はさっぱり聞いたことがありません。
一体どういう種族なのでしょうか~。全身金キラとかですかね~。
「これは妾も聞いたことすらないのう。ガウル、コーラルはどうじゃ?」
「私もこの種族は聞いたことがないですね」
「同じく聞いたことはない。グランドの爺はどうじゃ?」
「ワシは一度だけ会ったことがありますぞ。まあ、おおよそ宝石族や岩石族と同じような者じゃ。象徴となるモノが宝石か鉱石か黄金かってだけの話じゃよ」
なるほど、そうなると……どうなんでしょうか~。
黄金が取れる人族。
これもこれで問題になりそうですね~。
「とまあ、凡そ出尽くしたかと。冒険者ギルドが所持している情報はこのぐらいですね」
「ありがとうございます。あとは、イフ大陸の方の種族も聞いておかないといけないですね」
「じゃな。ま、あちらは人以外の扱いは悪いと聞いておるが、その中でも上下があるのは当然じゃろう。じゃが、それをこちらに持ち込んでもらっては困る。さもなくば妾たちを安易な労働力として連れ帰ろうとする馬鹿も出てくるじゃろう」
確かに、イフ大陸では人族以外の種族は人のなりそこないなどという偏見で奴隷などという位置づけがされています。
それに反発してできた亜人の村や、亜人だけで興した国ホワイトフォレストなどもありますが、それらも基本的に人族の数が多く無視されている状態です。
まあ、ユキ様が介入したこととロガリ大陸や新大陸との関係もあるので、イフ大陸でも大国上層部は亜人に対しての対応を徐々にではありますが変えてはいるようです。
ですが、一般人や今回来るであろう留学生たちにまでその認識を浸透させられるかはちょっと疑問ではありますね~。
「まあ、そこらへんは特にイフ大陸に対する第一の注意事項としておきましょう。で、それが守れないなら強制送還。加えてウィードからの……いえ、ロガリ大陸での奴隷の売買を禁止と」
「確かに、それが一番ですな。あとの問題は各種族の常識に関してですが……」
「そこは基本的には『ウィードの常識に合わせる』でいいと思うぞ。そもそもこのウィードに来るのならそこらへんはまず教育するだろう?」
そうロックギルド長が言います。
確かにウィードに入国する人たちにはウィードの常識をまず教えて、キチンとパンフレットも渡します。
貴族、平民の身分問わずに礼儀を共通として、無法を許さずと言っています。
まあ、あいさつは返すとか、お金は払う、チップいらない、トイレでちゃんと用を足すとか本当に普通のこと~。
あと、貴族については順番は守る、代理人はOKとかもあります~。
いまだに貴族だから優先しろっていうのがたまにいるんですよね~。
「問題はウィード外への外出だが……」
「それも留学生については原則禁止でよいじゃろう。ただし赴く先の国が認めた場合は除くと。そこまではウィードで決めることでもあるまい」
「あと奴隷の売買などについては、留学生制度とは別の話として詰めるってことですね」
「それが良いじゃろう。あとは、今あげたような『珍しい種族』が本当にいるのかと各国の要人から言われたりはしないのかのう? 知らぬ存ぜぬでこれは『ただの人』だから連れていくという馬鹿はおるぞ?」
どういうことでしょうか~?
私たちはグランドマスターが言っていることが理解できずに首をかしげていると……。
「あー、そういう可能性もありますね。そもそも宝石族なんて知らないし見たこともない、これはこういう装飾を付けただけの『ただの人』だと言い張って連れていきかねないということですね?」
「「「……」」」
ユキさんからとんでもない発言が出て私たちは絶句する。
「そうじゃ。ワシたちも見たことがない。見たことがあるといっても、ミヤビ女王やガウル族長、そしてコーラル殿だけじゃからな。その言に信ぴょう性がないと主張されればそれまでじゃ。それでもとなると『ウィードが無理に抑え込む』ということになるが……」
「それだとウィードの失点になるということですね」
「そうじゃ。揚げ足とりではあるが、誰も見たことがない、いや大国の要人が見たこともない種族をミヤビ女王たちがその種族であるといってもどこまで信用されるかが微妙じゃからな」
むう。
言っていることはわかりますが……、それが世の中なんでしょうね~。
実に腹立たしいです~。
「……むう。確かにグランドマスターの言う通りじゃな。となると、本物を連れてくる必要があるのう」
「そうですね。じゃ、とりあえず宝石族、岩石族、有翼族に関してはリリアーナ女王と連絡を取りましょう」
「それがよかろう。聖女の湖に関してはリテア聖国を通すことがおすすめじゃな。ワシから、いや冒険者ギルドの方からも協力の打診をしておこう。もちろんユキ殿はルルアちゃんを通じてアルシュテール様にもな」
「わかりました。では、さっそく……というには急ぎすぎなので、今日はどこに飲みに行くか決めましょうか」
「おう。そう来なくっちゃな。何を飲むか、食べるか」
「そうだなー。私、お肉がいいかなー」
「キナ。あんた露骨よ」
「いいじゃん」
今の今まであんな物凄い話をしてたのに、気が付けばアッという間に飲みの話に変わってますね~。
どうしようかと私たちが顔を見合わせていると……。
「ホービスたちも何か食べたいものとかあるか? キナたちとも仲良くなるための席でもあるしな。ちゃんと食べたいもののある場所じゃないと退屈するぞ」
そういわれてしまっては私たちも話に加わるしかありませんね~。
よほどのことがなければ食べれないものはないにしても、苦手なものが出てくるお店だとあれですからね~。
やっぱりそういう珍しい種族はめったにいかない土地に存在している。




