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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第1218堀:意味の分からない話

意味の分からない話



Side:ミコス



「この車をどうにか私に融通できないか?」


とさっきから何度も何度も同じことをミコスちゃんに言ってくる護衛としてハイデンから派遣された部隊の隊長。


「先ほどから何度も申し上げておりますが、この手の物資の交渉についてはキャリー姫様を通していただく必要があります。私に一切権限がありませんので」


と、ミコスちゃんはもう何回目になったかわからないくらい同じセリフを慇懃に繰り返している。

こっちは運転しているんだからホントやめて欲しい。


「そのような杓子定規なこと言っているのではないというのは分かっているだろう? あくまで君の個人的なコネで回してくれればいいのだ」

「そのようなコネはありません」


まあ、このミコスちゃんがユキ先生に欲しいっておねだりすればそりゃくれるだろうけど、こんなやつのためにそんなことをする理由なんかどこにもない。

というか、なんでミコスちゃんが運転をしながらこいつらの相手をすることになったかというと……。


『ミコス。予定通り、あなたの所に反国王派の息がかかったメンバーを集めます。色々要求をしてくるでしょうが、けして受けないように。その録画を元にあとで問い詰めます。まあ、露骨に命令などをしてくるとまでは思いませんがそのような時は叩き伏せても問題ありません。とはいえ、なるべく我慢してもらえると嬉しいです』


そう、キャリー姫様が考えた作戦なのだ。

さすがに表立って標榜する連中はなりを潜めたけど、いまだにハイデンでは『反国王派』が存在している。

狂神者とは全く別なんだけど、今のシステムと政策に反対って人たちの集まりだ。

特に小国に過ぎないウィードとの関係はもっと大国たるハイデン王国が優位であるべきと主張している馬鹿たち。

ウィードの力を知らない連中がそんなことを言っているんだよね。

そこで姫様はこうして車とかをしっかり見せつけることでちゃんと躾けて、それでもダメな馬鹿は後で首を切るために。


「ちっ、たかが男爵家の小娘のくせに生意気だぞ。この私の言うことを素直に聞いていればいいのだ。なんなら貸し出すという名目でそのまま私に渡せばいいだけだ」

「そのようなことはできません」


ホントこいつは何度同じことを言わせるんだろう?

いい加減イライラしてきてる。


「そもそも、この車だけもらっても動きませんよ。燃料はもちろん整備もしないとだめです。それらの環境をそろえて初めて運用できるんです」

「それらの設備も全部一緒に持ってくればいいだけだろう。それか、その程度作ればいいのだろう」


本当にこいつはアホか。


「このような大きな車を整備する道具が小さいとお思いで? 持ち運ぶなんてとても大変です。またそちらで作れるのなら独自で開発すればいいだけでしょう」


そう、ユキ先生は車というものを知って独自に開発することは一切否定していない。

それどころか、見本や参考として種々の資料はすでにキャリー姫を経由してハイデンに伝わっている。

それなのにいまだにできてないというのは……。


「それができれば苦労はしない。だからこそ、実物がいるのだ。それでハイデン内で大きな発言権が得られるのだ」


もう何を言っているのかミコスちゃんさっぱりわからなくなってきた。

そりゃ車をハイデン内部で独自に生産することに成功すれば、確かにハイデン内部での発言権は大きくなるだろうけど……。


「自身で生産できなければ意味がないでしょう」

「なに、一度完成品さえ手に入れれば模倣は簡単だ。なにせウィードとかいう小国ですらそれができているのだからな。だからこれをよこせと言っている」


あまりのお花畑な発言に目が点になる。

完成品さえ手に入れれば簡単に作れるってどういう頭してるんだろう?

ちゃんと作るのに必要な資料は全て渡しているんだし、それがあってもできていない


「それに私にとってメリットが一切ありません。なによりそんなことをすれば私だけでなくあなたの首も飛びます」

「だから『黙って』協力しろと言っている。そしてメリットはお前たちジャーナ家の昇進と安泰だ。どことも知れぬ小国のしかもあのようになよっとした男の側室など嫌だろう?」


ビキィ。


ハイデン内部の権力争いはいくらでも勝手にやってくれて結構なんだけど、ユキ先生を馬鹿にするようなことだけは決して許されない。

これは私たち妻の絶対のルールだ。

子供たちがユキ先生に愛着をもってバカァとかいうのと絶対に違う、明らかに貶めるような言葉。

そんな悪意に富んだ言葉など一切認めるわけにはいかない。

なので、ここは時間を無駄にしてもキチンと教育する必要があると思ったから、バスを急停車させる。


「うおっ!?」


私を説得しようとして背後に立っていたその間抜け男はバランスを崩して床に倒れこむ。


「くっ、一体何を……」

「それはこっちのセリフです。人の夫を馬鹿にして、ちゃんと覚悟はありますか? そして、ウィードの立場を知った上でのその暴言はハイデンの立場を貶めるものです」


と言いながら私は片手で馬鹿男の首根っこを掴んで持ち上げた。

とは言っても、さすがに身長は私の方が小さいのでまあ、跪いたような形にしかならなかったけど、それでもその男は首を掴んでいる私の腕を振りほどけない。


「がっ、き、きさま……なに、を」

「何度も言わせないでください。私は側室とは言え『ウィードの王配ユキ様の妻』です。ですので国の繁栄に尽くすのは当たり前のこと。そして今回の件、キャリー姫様に頼まれて母国のためにと受け入れましたが、ウィードを貶め、ハイデンを衰退させるような輩をユキ様の護衛として受け入れることはできません」


と、きっぱりと告げる。

当たり前だ。

先ほどの発言を聞いてこいつにまともに護衛ができると思う馬鹿はいないだろう。

ちなみに、ようやく状況の把握ができらしく、後部座席にいた兵士たちも皆立ち上がっている。


「ま、まてっ! 無礼は許さんぞ!」


と、一人の男がそう言って剣に手をかける。

その動きに倣って、3分の1ほどが同じ行動をとる。

でも、残りの兵士は困惑してる。

護衛対象の一人である私に剣を向けるなんて本末転倒だと思っているんでしょうねー。

何よりこの護衛の件、姫様からではなく正式に国王の名の下で命令が出ています。

普通に考えれば、どっちが悪いかなんて一目瞭然。


「無礼はそちらです。小国とはいえ他国の王族を貶めた上に国王の名の下に出された命令に反して護衛対象に危害を加えようとするとは。護衛以前の問題です」


私はせめてこれでおとなしくなってくれればと祈るような気持ちでそう言い切って、馬鹿を手放して運転席に再びついたのだけど……。


「き、貴様! 子爵家嫡男でありこの騎士隊の隊長である私に向かって!」


あぁ、馬鹿はやはり馬鹿だったようで、そのままスラリと剣を抜き放つ。

まあ、これで堂々と『対処』ができるのでなにより。

ちゃーんと録画もされていることだし、さっさとやってしまおう。


「護衛対象に対して剣を抜く。もう護衛ですらありませんね。そしてなにより国際問題です」

「うるさい! たかが木っ端男爵家の小娘が! たかが小国に嫁いだだけで粋がるな!」


と喚きながら剣を突いてきたんですけど、あらあら、この程度でよく騎士隊の隊長とか……。

私は比較対象にセラリアとか、ジェシカを持ち出すことすら憚られるようなゴミだなと思いつつ、そのまま剣先を指でつまんでその突きを止める。


「なっ!?」


ま、ただレベル差にものを言わせて止めただけですが、この男にとっては屈辱でしょうね。


「はぁー、この程度でウィードを馬鹿にするのはやめた方がいいでしょう。なにせ私のような小娘風情にあしらわれるんですから。そして、バイデに到着次第あなたは国家反逆罪として逮捕されます」

「ふざけるな!」

「もうあなたと問答する気はありません。すでに随分遅れが出ていますので」


と告げた私は鎧の腹部にスッと拳を添え、ムと気合を込める。

そうしてデリーユさん直伝『浸透発勁』をその馬鹿に叩き込んで意識を刈り取る。

なにせうっかり殴り飛ばして車内を壊しちゃったら意味がないからねー。


「さ、他にも寝かせて欲しい人がいたら遠慮なく言ってください。時間も押していますからね……。おや、リクエストもないようですので、では皆さんお行儀よく座ってくださいね」


ミコスちゃんがそう笑顔でいうと、剣に手をかけていた馬鹿どもも大人しく座る。

とはいえ、お前らも全員バイデで返品だ。

ま、隊長がいなくなった騎士隊とか使えないし。

とはいえ、さっき困惑していた騎士たちはとりあえず部署替えを姫様に提案しておこう。

あ、それとバイデに回収頼まないとねー。

いやー、姫様の思惑通りだったとはいえ、さすがにここまで馬鹿なのが送り込まれてくるとは思わなかったよ。

てか、何でこんな考えの奴が今までやってこれたのかホント不思議だよ。

こいつら叩くと絶対余罪がボロボロ出てくるって確信がある。

このミコスちゃんにすらあんな脅しをかけてくるんだもん。

元の爵位が下とは言え、王命をガン無視してあそこまで言ってくるんだし、平民とかに対してはもっとあれに決まっている。

なんてことを考えつつ、姫様とバイデのユキ先生に連絡を入れておく。


「こちらかわいいミコスちゃんでーす。姫様の予想通り脅しをかけてきた上にウィードに対しての暴言侮辱があったので送り返します」

『はぁー……。まったく、一体何を考えているのか』

『何も考えてないというか、根拠のない自信があるんでしょう。とりあえず、了解した。準備をしておく』

『その際、証拠も一緒にお願いします』

「了解です」


こうしてゴブリン村に向けて出発する前にまず騎士隊一つが送り返されることが決定となった。


これ、最後まで護衛の人たち残ってるのかな?

正直心配だよねー。

まあ、メインの案内の人はさすがに御三家たる『カミシロ家のご令嬢』であるカグラの方に乗っているからきっと大丈夫だと信じたい。

でも、最悪ハイデンからの案内なしでゴブリン村に行くって可能性もあるのかな?


とりあえず、空だけは抜けるように晴れているのが幸いかな?




どこにでもいるこういうタイプ。

自分の都合のいいように世の中まわっているって感じ。

聞いているこっちは理解できないが、その人の中ではそれが当たり前となっている。


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