第1193堀:二回戦その2
二回戦その2
Side:スティーブ
「とりあえず落ち着いたみたいっすね」
『そうだべな。銃声が止んだべ』
『ま、音は遠いし、軽い警戒だけでいいだろう』
そんなことを話しながらおいらたちはサクサクと武器や道具を集めていくっす。
今回はそれなりに当たりで、3軒回っただけで大体の装備品や道具が集まったっす。
「道具の集まりはいいっすけど。今回はどう動くっすかね?」
『正直おらは、森とか歩いても目立つからなるべく建物の中を移動するしかないべ』
『身長2メートルあるからなー。小さくなってもらって』
おいらたちのチームの弱点は何と言っても体格っすね。
ミノちゃんは身長が高い。
逆においらは身長がミニマム。
ジョンは……横にでかい。なんでっすかね? 野菜ばっかり食ってるのに。
「ま、そこは仕方がないっす。種族的特徴っすからね」
『とはいえ、屋内は屋内でおらには狭くて十分動けないんだべー』
『代わりに遠くまで索敵できるってことだからそこはいいところの方を見るべきだろう?』
『確かにそうだべな』
「嘆いても体格は変わらないっすからね。逆においらは茂みとかに隠れたらほとんど発見できないっすし。アスリン姫たちもそれでさっきは勝ったっすからね」
『あれは凄かっただべ。体格の勝利だべな』
『偶然もあったとはいえ。それをしっかり活用して、作戦に組み込めるんだからちゃんとした実力だよなー。いやぁ、たくましくなったもんだ』
「『うんうん』」
ジョンの言う通り、アスリン姫たちが大将たちに勝てたのは偶然じゃないっす。
確かに偶然窪みに体を隠せたのは運っすけど、それを活用してちゃんと作戦を立てて実行して遂行するだけの実力があったからこそ勝てたっす。
それは今までちゃんと大将やおいらたちから学んで吸収して自分のものにしていた証拠っす。
とはいえ……。
『スティーブ並に小さくて、実力があるチームがいるっていうのはある意味脅威だけどな』
「確かにっす。的が小さいからそうそう当てらないっすからね』
『それは確かにあるべな。と、こっちにアサルトライフル発見。ついでにスコープもだべな』
『お、当たりだな』
「あんまり序盤で道具が集まりすぎるのもあれっすけどねー」
『だべなー。便利な道具が最初から集まるとその分手を出しやすくなるだべだからな。それで自分の位置がバレて途中退場ってやつだべな』
そうそう。序盤からいい武器が集まると、それでほかの敵対者をどんどん倒せるけど、終盤でもその調子でやっちゃって、自分の位置がバレてハイ終わりと排除されるってことが意外とよくあるっす。
まあ、欲を出しすぎたってやつっすね。
そんなことを考えていると……。
「おっ。おいらの方でさらにスコープ発見」
『なんかそろってきただべな。とはいえ、ないよりははるかにマシだべな』
『案外、そういう時って弾がないもんだけどな』
「武器だってまだそろってないっすよ。ハンドガンとショットガンじゃスコープとかいらねーっすし」
そう、今の所手に入れたスコープは死に道具っすね。
つまり使えない道具っす。
『お、こっちもアサルトライフル発見。そして隣の部屋にもアサルトが見えるな。スティーブこっちで確保しておくぞー』
「了解っす。これで弾もあればいいっすけど……」
おいらはそう言いながら次は二階の部屋を探索すると。
「お、アサルトライフル用の弾倉発見っす。4つあったっす」
『これで多少は撃てるな』
「とはいえ弾倉一つもフルオートで撃てばあっと言う間っすからね。一人当たり4つは欲しいっすね」
『とにかく、残りの家を探して合流だな』
ということで、おいらたちは特に身の危険を感じるようなこともなく武器や道具を集めて無事に合流を果たしたっす。
「じゃ、道具を分けつつ、次の目的地を決めるっすかねー」
「そうだな」
「ま、幸いおらたちは次の縮小範囲の近くだべ。まず確認だ。おらたちがいるのは中央の町から西にずれたここだべ」
ミノちゃんの言う通り、おいらたちは中央の町から西に少しずれたところにポツポツと民家が立ち並んでいるその一つにいるっす。
そして、縮小範囲の近くというっすけど……。
「今はちょうど範囲のど真ん中だよな。で、周りは麦畑と草原ばかりと来たもんだ」
「索敵はしやすいだども、別の所が範囲になったら逆に狙い撃ちされるだべな」
「周りがただだだっ広いだけっすからね。遮蔽物もないっすから狙われて当然っすね」
そう、範囲的にはベストポジションではあるっすけど、地理的にはちょっとまずいっすよね。
「俺の意見としてはこっちの森を背にした家屋があるところに移動した方がいいと思うぞ?」
ジョンがモニターで指摘する場所は確かに家屋が2軒あって正面には草原と麦畑、後方には森が茂っているっす。
確かにここなら監視しやすく、離脱も森を背にできるっすね。
他に近くによさげな場所はないっすから……。
「おらは賛成だべな」
「おいらもっすね。でも、この場所が次の範囲縮小から外れたらよけいに移動した分損になるし、次の範囲が決まってから動かないっすか?」
「あー、その可能性も考えたが、とりあえず武器道具の回収にもなるからな。先に行って漁っといた方がいいと思うぞ? さっきも撃ちあいの音が聞こえたからな」
うーん。そういう考え方もあるっすねー。
「了解っす。移動時間が無駄になるかもとは言ったっすけど、その時は移動しなおせばいいだけっすからね。とりあえず武器道具の回収を優先するっすか」
移動の無駄よりも、物資不足で戦う術が限られる方がこのゲームルール上よろしくないっすからね。
これで負けるなら運がなかったってことっす。
「じゃ、さっそくと言いたいだべが、ルートはちょっと右に迂回したいだべ。畑に隆起があるからどっちかを通りたいだべ」
ミノちゃんは既に地図から視線を外して次の目標の建物がある方向を見ていて、言うように確かに正面方向は盛り上がっているっす。
丘っすね。そこをまっすぐ突っ切ると左右から狙われかねないわけっすか。
ミノちゃんが大きい分なおのことっすね。
「ミノちゃんの意見通りどっちかの脇を通る方がいいっすね。で、正直町がある東側より、建物が少ない西側がいいっすね」
「俺もその意見で賛成だ。撃たれても敵の位置は判明しやすいだろうさ」
「わかっただ。じゃ、ルートも決めたことだし行くべ」
ザッツザッツ……。
実際この移動をリアルでやるとよくわかるっすけど……。
「いやぁ、今回は特に思うっすけど、正直何もない草原とか麦畑の中でもそこを歩くって意外と重労働っすよね」
「だなー。植物が邪魔で仕方ない。おかげで速度が落ちる」
「とはいえ、ここまでしっかり生い茂っているとおらとしては身を隠しやすいべな」
確かにここまで生い茂っていると、身を隠すのには便利極まりないっす。
ゲームの中だったら匍匐前進するしかないけど、ここでなら身を隠すには一番ともいえるっす。
特に身長の低いおいらは。
でも、便利な面だけでもないっす。
「だが、ここまで動きが鈍いと狙撃されたらおしまいだな」
「そうっすね。逃げるのは難しいっす」
「移動速度がかなり落ちているだべだからなー」
そう、草や麦をかき分けて進むのは意外と時間が掛かるっす。
ゲームのキャラクターみたいにこんなところでも何も障害が無いかのようにスタスタ進めるというわけではないっすね。
身を隠せるいいところってだけじゃないっす。
「周囲はどうっすか? おいらには何もみえないっすけど?」
身長が低いから草が邪魔で何も見えないんすよねー。
「こっちは敵の気配はないな」
「こっちもだべ。というかおらはずっと腰を曲げて進んでいるからちょっと辛いだべな」
あー、ミノちゃんは身長が高いからさっきからずっと腰を曲げて移動してるっすからねー。
「ま、とりあえず危険はなさそうで何よりっすよ。それにもう少しの辛抱っす。ミノちゃん頑張るっすよ」
「了解だべ」
「こりゃ、俺たちには草原とか畑の移動は不利だな。この先の移動はこの辺りも考える必要がありそうだな」
なんてことを話しているうちになんとか畑を抜け、道路にでたっす。
「こっちの方が歩きやすいっすけど……」
「身を隠す場所がないから駄目すぎだな」
「あ、2人ともあれ」
ミノちゃんが目敏く何かを見つけたようで、指さす方を見てみると……。
「お、車っすね」
「使えるやつか?」
「時間はあるから見てみるべ」
「そうっすね。足があるのはいいことっすから」
「特に俺たちの場合はなー」
「遮蔽物にもなるだべよ」
そう、今の状況を考えるとおいらたちとしては移動に乗り物がある方がありがたいっす。
ということでトラップが無いか警戒しつつもさっそく車に近寄って確認をしてみると……。
「お、鍵がついているな」
「エンジンかかるっすか?」
「ちょっと待ってな……」
ジョンはそう言ってキーを回すと……。
ドルン……。
エンジンがかかる。
「おー生きてるだべな」
「よし、さっそく移動するか。スティーブは助手席、ミノちゃんは後ろな」
「「了解」」
そうして無事車を手に入れたおいらたちは目的地である2軒の家の近くまであっという間にたどり着いたっすけど……。
「2人とも、周囲を一周する。警戒しといてくれよ」
「まかせるっす」
「まかせとけだべ」
車に乗っているから近づいたことはエンジン音でばれるっすからね。
ということで、2軒並ぶ家の周りを走らせて、家を索敵したっすけど……。
「ドアや窓は閉じているだべな」
「そうっすね。人影も見当たらないっす」
「じゃ、いる確率は低いか。ぜんぜん撃ってこないしな」
「わからないっすよ? 止めた途端撃ってくるかも」
「それなら、射線が少ない位置に止めるべきだべな」
「となると、草原側の家だな」
ジョンはそう言って、草原側の家の窓が少ない側へと車をゆっくり近づける。
万一敵が撃ってくるなら場所は限られるから絶好のチャンスってやつっす。
おいらたちは身を隠して射撃に備えて、ジョンはいつでも加速できるようにしているっす。
完全停止してから狙われるとどうしても発進までに時間が掛かるっすからねー。
だけど、その用心は取り越し苦労だったようで、敵からの発砲はなし。
「敵はいなかったみたいっすね」
「いいことだべ。もうすぐMAPの縮小も決まるしさっさと回収するべよ」
「そうだな」
「よし、じゃ早速回収っす。ジョンは車が監視できるこの家を。おいらとミノちゃんは奥の家に行くっすよ」
「「了解」」
さてさて、おいらたちはこのままここを拠点でやっていければうれしいっすけど。
こういう時に限ってなかなかうまくいかないもんっすよねー。
なんて悲観的に考えながら家に入ると。
「うっそ」
「うわー。どうすっべ」
『どうした? 何かあったのか?』
「あー、いや、あまりに運が良すぎってやつっすね」
「んだ。スナイパーライフルが出たべよ」
『おー、狙い撃ちができるな。道具はある意味揃ったか。と、こっちもスナイパーライフル用のサプレッサーがあったぞ』
あー、なんかこれって完全にフラグっすね。
さてさて、このまま勝ちを狙えるっすかねー?
現実でやってみると意外と草原とか麦畑は非情にやり辛かったりします。
PUBGはTPSだからこそ便利だったというわけですね。




