第1175堀:仲良くなるには切っ掛けがいる
仲良くなるには切っ掛けがいる
Side:ユキ
とりあえず、ダファイオ王国での活動は上手くいった。
フィオラ姫も無事に連れて帰れたし、オレリアたちの初活動も多少躓きはあったけどまぁ順調に動き出した。
後はのんびりゆっくり慣れていってもらえばいいかと思っていたのだが……。
「というわけで、フィオラ姫の希望もあって、いままでやろうと思ってできてなかった『ウィード身内チームトーナメント交流会』を開催しましょう」
セラリアがそう宣言すると、意外なことに嫁さんたちはみんな賛成らしく……。
「ふむ。いい機会じゃ。ここまで仲間が増えたんじゃ。一度は拳をしっかり交わしておくのは必要じゃな」
「あはは、デリーユは物騒だなー。でも、ユキさんの奥さんとしてみんなの実力は確かめてみたいかも。だって勇者だし」
「ですが、3人1組ですか。それはなかなか悩みますね」
「回復役のルルアの取り合いになりそうよね」
「そうかしら? 回復する暇を与えるとも思えないけど」
「あー、確かに。私たちの場合全員ある程度手の内を知っていますからねー。普通真っ先に回復役は潰しにかかりますねー」
などとすでに誰とチームを組むかを考えるというか、ワイワイと相談し始まった。
ちなみにすでにチーム編成を終えてしまってたメンバーもいる。
「よーし、がんばるよー」
「頑張るのです!」
「はい。頑張りましょう!」
ちょっと意外なことにアスリン、フィーリアにヴィリアという変則3人組となっている。
いや、それはそれで別に珍しくもないんだが、てっきりいつものようにラビリスと組むと思っていたんだけどな。
「ふふっ。私は今回シェーラ、ドレッサとチームなの」
「はい。アスリンたちとは別のチームなのは少し寂しいですが、でも3人の成長を確かめるにはいい機会かと」
「そうね。ヴィリアも最近はいろいろ頑張っていると思うけど、ここが本番、見せ所よね」
なるほど、年長組で組んでいるということか。
しかし、それだとヒイロが一人溢れてしまってると思ったら……。
「スタお姉、ジェお姉がんばろー」
「ええ。頑張りましょう。ジェシカもよろしくお願いします」
「はい。スタシアも頑張っていきましょう」
なるほど、ヒイロの方はお姉さんたちと組んだわけだな。
見掛けとは違って、ヒイロはタワーシールドを持つパワータイプだしな。
などと、できて来る組み合わせを見ながら感心していたら、セラリアが腹に一物という感じでニヤッとしながらさらに話を続ける。
「ちなみに、このチームトーナメントは交流会の一部でしかないわよ。今更腕っぷしだけで一番を決めるなんてあれだし、学校には幸いなことにテストっていうのがあるんだから、そっちの方もチームごとに計測していきましょう」
「「「!?」」」
その言葉にざわつく驚くみんな。
確かにな。セラリアのことだから、てっきり腕っぷしだけかと思っていたが、それでは不公平なのはわかっていたようだ。
だからこそ知識も計測すれば多少は公平になるということか。
「なるほどなるほど。これは私たちは腕っぷし以外で頑張るべきだと思うんだ。エージル」
「そうだね。僕も同意。それであと一人は誰にする?」
「うーん。結局のところ総合勝負だからね。もう一人は戦闘が得意なのがいいかもね」
研究者チームはバランスも考えているようだ。
まあ、この2人が組めば戦闘以外は何のそのって感じだろう。
とはいえ、俺の方だが……。
「えーと、私がセラリア様に勝負を挑むという件はどうなったのでしょうか?」
「……ユキ。私、い、いつの間に奥さんたちに混ざって出るってことなんかになってるの?」
「いいじゃんナイルア。それに、えーとフィオラ姫だっけ? これでセラリア様以外ともバトルできて、誰がどのくらいなのか知ることができるんだし。いいことだらけじゃん。私も今度こそデリーユさんにリベンジする」
「なるほど。そういう風にとらえればいいのですね。確かに、テストにしても皆様の実力と自分の実力を把握するにはちょうどいいでしょう。うん、やる気が出てきましたよ。お二人ともよろしくお願いします」
「あれ? な、なんか私の話無視されないかな? ねえ、私の扱いぞんざいじゃない?」
「あー、とりあえずナイルア。頑張れ。みんなが仲良くなるいい機会だ」
俺にはそうとしかいえない。
ナイルアは本来、ウィードに研究者の卵として来ているはずなのだが、ずっとワズフィとデリーユの訓練に付き合っているという意味不明の状態だ。
まあ、確かに基礎力を付けるというのは間違いじゃないから、そこらへんは何ともいえないんだけどな。
とまあ、新人同士で組むのはウィードのメンバーの実力を知る上ではいい組み合わせだろう。
「そうだよ。これを機会に私以外にも友達つくろう。ね、ナイルア。せっかくここはいい環境なんだから」
「そうですね。私も右も左もわからない状態です。ですので一緒に頑張っていきましょう。よろしくお願いいたします」
「ううっ。なんか私の『引き込り』っていうのが強制排除されつつあって、キャラ崩壊を……」
「ま、余裕はあるから問題ないな。そもそも俺たちとかかわった時点で容姿も整えたんだから遊ぶぐらいはしろ、学生」
そう、出会った頃はピンク髪の貞○だったのが、今では普通に淫乱ピンクという定型文が似合う女に……さすがにそこまではなってないが、まぁ、スタイルもそれなりにいいし、恐らくはいずれ慣れるだろう。
「……なんだろう、あの視線。エロ親父の視線とは違うけど、うぅっ、哀れみを感じてひどく腹立たしい」
「いやぁ、ユキ様がなにもあなたをエロい視線で見る必要なんてないじゃん。だいたい、周りの人に勝てると思ってる?」
「あはは……。私、これからあの皆様の中で妻となるわけで……、これはつらいですね」
「……ワズフィ。と、とりあえず、私が言い出しておいてなんだけど、こ、この話はやめよう。お、お姫様が巻き込まれてる。ともかく、今日はなんとか生き残ることに全力を尽くす」
まぁ、ワズフィの言う通り、スタイルのいい嫁さんは沢山いるからなー。
はぁ~。まぁ、そんなことを自分で言ってておかしいってのは分かるが、それを周りは受け入れているので今更いうのもな。
だが、フィオラ姫はちゃんと大事にしますんでそこは問題ない。
ナイルアはまあ、頑張って生きのびてくれ。まぁ、殺されはしないだろうがそれなりに痛い目にはあうだろう。
さて、こっちの新人はいいとして……。
「……私たちは何故にこのようなところでこのような試練を課されることに」
「ちょっと流石に、無理があるような」
「あははー。でも、こういうの好きですよー」
オレリア、ヤユイは真っ青になって完全にガクブルだが、おや、ホービスはなんか楽しんでいるな。
あくまで交流を深めるためのものだからな。ホービスの姿勢が正しい。
とはいえ、オレリア、ヤユイの不安もよくわかる。
そもそもあまりに実力が違いすぎて楽しめるかは疑問だから……。
「はいはーい。3人の手助けとして私がいるから大丈夫よー」
「私もいるから安心しなさい」
「リリシュ様にハイレン様が手助けですか?」
オレリアたちがそれはもう不思議そうに確認をしてくる。
確かにこと戦闘においてこの二人が手伝いに来たところで足手まといにしかならないもんな。
「ああ、まあその2人は回復役だ。戦闘の方は霧華に頼んである」
「はい。流石にこのメンバー相手でオレリア様たちに実際の戦闘は難しいので、私たち3人が代行することになりました。多少なりとも一緒に仕事をしているので、そういった意味でもよいかと」
「なるほど。それなら安心です。知識面はともかく、戦闘なんてできませんから」
「まったくできないってことはないですけど、流石に奥様達に勝てる気はしません」
「そこはどうしてもですね。とはいえやるからには負けませんよー」
つまり、オレリアたちの戦闘に関してはリリーシュ、ハイレン、霧華が代行するということだ。
俺は棄権でいいかなと思ったんだが、セラリアがそれじゃトーナメントの時つまらないでしょ?
と言うので、こういうことになったんだが、あとは『作戦』が上手くいくかどうかになる。
とはいえ、作戦無視常習犯のリリーシュ、ハイレンがメンバーだって時点で敗北は決まっている気はするが。
霧華がどれだけフォローできるかだな。
「あ、あのでも、私たちはなにより戦闘はズブの素人ですし、そもそも作戦なんて立てられないのですが」
「大丈夫よー。別に一から十まで完璧に組み上げることなんてないんだからー」
「そうね。相手をみて誰から倒そうとか、攻撃重視とか守り重視でっていう指示だけでもいいのよ」
「あ、なるほど。そういう風な感じなんですね」
「ええ。というより、こちらのお二人は所詮細かい作戦なんて聞く耳持ちませんから、おおざっぱな方針くらいしか意味がありません」
「だから、ある程度の方針がいいってことですねー。参考になりますー」
「あれ? ハイレンちゃん。私たち霧華ちゃんに馬鹿っていわれてないかしら?」
「え? そうなんですか?」
うん、あの二人にはこれ以上直接関わらず、というか、もう放っておいた方がいいだろう。
霧華には迷惑をかけるが、とは言えあの二人に声をかけない方が厄介なので仕方がない。
俺の方は今回のイベントで仕事が増えたからな。
「じゃ、あなたはみんなが平等になるようなテストの用意とチーム戦のルールを決めてね」
「おいおい、完全に思い付きだな」
「こういうのもたまにはやらないとね。ユキの負担軽減はあるけど、こうしてウィード全体じゃなくてあくまで家族で楽しむこともしないとだめでしょう?」
「確かにな」
まぁ、今までのイベントってついでが多かったからな。
家族、身内のためだけのイベントっていうのも必要だろう。
なにより、セラリアが言う通り新人も入ってきているんだ。
今がいい機会だというのは間違いないんだ。
「そもそも、私やデリーユは最近内勤が多くて退屈しているし、体を思いっきり動かしたいのよ」
「それはいいが、リーア、ジェシカ、クリーナ、サマンサは流石に戦闘のトーナメントは参加できないのは分かっているのか?」
さっきリーアは楽しそうにチーム組もうって話をしていたりし、いつの間にかちゃんとチームに入っているジェシカもいたが、いずれも本体は妊娠中だ。
ドッペルだから大丈夫っていうのは……。
「そこはちゃんと配慮するわよ。まあ、そもそもどういうルールにするのかはあなた次第だけど」
「おい、そっちもかよ。まあ、わかった。今後のいい指針にもなるだろうしな、やってみる」
「ええ、お願い。その内容次第でまた編成も変わってくるでしょうからね」
しかし、嫁さん全員の力を図るための項目って何が必要なんだ?
うーん、よく考えてみるか。
とりあえず、思いつくのは真っ先にトーナメントって言ってたから『戦闘に関すること』が第一。
だが、これも『指揮』と『実戦』とか、分解する必要があるよな。
それと次は『知識』。学力とも言っていいが、これは魔法技術とかそういうのもあるからそこもわけないとな。
あとは、女性だからってわけでもないが例えば『料理』というのも一つのスキルだしな。
うーん、ソウタさん、タイゾウさんとかにも話を聞くべきだな。
というか、あれだな。こういうのは人材評価みたいなところがあるから、知り合いの各国の評価基準を聞いてみるっていうのも手だな。
よし、まずは情報収集からだな。
明日までにぱぱっと聞いてその日のうちにまとめてしまおう。
仲良くなるには苦楽を共にすること。
そして相手を知ることが大事。
ということでチームバトルじゃい!




