第1165堀:久々の集まり
久々の集まり
Side:ニーナ
「あー、久々のウィードだ」
私はそんなことを呟きつつ、商業区を歩ている。
今の今まで私は、イフ大陸での情報収集をしていた。
イフ大陸の管理を任されているノーブル、そしてサクリに協力してイフ大陸のバランスを保っている。
まぁあの2人ともユキの部下のような感じだからしょうがないが、何より私たちのホームは……。
カランカラン……。
そんな音を立てつつ、ラッツから任されているぬいぐるみ専門店へと帰る。
そう、こここそが私たちの家だ。
『聖剣使い』たる私たちがおもちゃ屋さんなんて笑える。本当にいい時代になったと思う。
と、そんなことを考えていると……。
「いらっしゃいませー。って、なんだニーナですか」
「なんだよレイラ、その反応」
「な~に、お客さんだと思ったからです。ほら」
レイラはそう言って手元にあるクマさんを見せてくれる。
「そっか。ケガ人がいたんだね」
「ええ。この通り完治しました。それでこの子の家族が迎えに来る予定なんです」
そのクマのぬいぐるみには仰々しく包帯がまかれている。
私たちのぬいぐるみ屋はぬいぐるみを売るだけじゃなく、ぬいぐるみの治療も請け負っている。
だって大事な友達を治してほしいって子たちがいるからね。
「それでニーナが戻ったのはあの連絡をもらってですか?」
「そうだよ。おかげで久々にこっちに戻れた。ま、現場はノーブルの部下に任せているから大丈夫」
「今はジルバ帝国でしたっけ?」
「ああ。あの辺りはジルバ皇帝が野心的なこともあって煽ってたから小国の動きも活発なんだよ。ほら、魔剣の粗悪コピーを集めて反乱しかけてたところがあっただろう?」
「あったわね。ユキさんたちがあっという間に制圧したけど」
「あぁ、ユキたちが到着してすぐにね。それまでは迂闊に損害を広げないようにって包囲してただけ。ま、下手に激突してたらジルバ軍が負けたとは思わないけど、被害もそれなりにでたわね」
「で、その話が広まって、ますます小国たちがジルバに対して反旗を翻そうとしてるってことですか」
「ジルバが少しでも被害を与えられた、手こずったって結果があればそう思うだろうね。だからこそユキたちはあっという間に終わらせた」
そう、諸外国に対して、歯向かうならあっという間に叩き潰すと言うことを示した。
魔剣を持っていようが関係ないと。
「そんな見せしめをされてもまだ動きがあるということですか?」
「いや、一応の監視の強化。だって一回あったら次がないか心配するだろう。粗悪品の魔剣を送り出した側としては色々な意味で」
「確かに。ま、ノーブルも自分が作り出したもので人々によけいな被害が出るのは問題だと思ったわけですね」
「そう。で、元々粗悪品の回収任務のついでにって話だ。とりあえず、長期調査から戻ってきてクタクタだよ。さっさと話を終えてゆっくり温泉でもつかりに行きたいね。奥いいかい?」
「ええ。まだ到着しているのはディフェスぐらいですから。ま、話し相手にでもなってください」
「わかったよ。レイラは閉店まで?」
「はい」
「何かあったら呼んでくれ。手伝うよ」
「その時は呼びますよ」
ということで、私はお店の奥、リビングに入ると……。
「ん? ニーナか。お帰り」
「ただいま」
当のディフェスは椅子に座ってのんびりとお茶を飲みながら雑誌を読んでいる。
「いつ戻ってきた?」
「昨日だな。私の担当はベータンだったからな」
「ベータンって、ユキのというかウィード領だろ。何か問題でもあった?」
「いや、ベータンはいつもの通りだな。ノーブル殿は表向き大陸間交流の出入口として知られているベータンに何か仕掛ける輩がいるのではということで私を回しているだけだ」
「ふうん。ま、恨みを集めそうだな。ベータンは。と、お茶もらうよ」
「ああ」
一応ディフェスに確認してからお茶をコップに注いで席に付く。
うん、この緑茶の香りがいい。少し冷めてはいるが、このぐらいは私にはいい。
「ふう。美味しい。で、何読んでるの?」
「これか? これはほれ」
ディフェスはそう言って雑誌を私の前に置く。
「月刊ウィード? ああ、噂のウィード情報誌ね」
この一年ほど出版されている雑誌とかいうものだ。
それまでは文字だけで書かれてる新聞だけだったのが、一気にフルカラーの写真まで使ってウィードの最近の出来事だとか人気のお店を紹介するなどをしている変な本だ。
まあ、ユキの指示でミコスがやっていることだし、変なのはいつものことでもある。
とりあえずその雑誌を確認してみる。
表紙は……なんでかある意味普通の服を着たリリーシュ様がトップを飾っている。
えーと、リリシュ司祭様の今月のコーディネイト?
「……え? 司祭って着飾っていいの? 普通、シスター服というか教会指定の服じゃない?」
「まあ、よその宗教のことだしな。スィーア教会じゃこういうことをすると怒ると思うが」
「あっちはお堅いからな。まぁ、確かにこういう宗教もありなのかもね」
ルールに縛られてオシャレができないっていうのは確かにおかしい。
リリーシュ様のコメントにそう書いてある。
おしゃれをすることは別に悪いことではない。人生を楽しむための方法の一つである。
駄目なのは衣服にかまけて堕落すること。
ちゃんと節度を持ってオシャレを楽しみましょう。
「なるほど。言っていることは確かに正しい」
「あぁ、正しいが、後ろでルルアが大荷物抱えているのはどうかと思うけどな」
「あ、ほんとだ」
おや、ホントに写真の隅に大荷物を抱えてワタワタしているルルアが映っている。
本当に面倒見がいいというか、むしろ逆らえない感じか。
こりゃユキに言った方がいいのか?
と、そんなことを考えていた丁度その時、ふいに後ろから声がかかる。
「よぉ。2人とも久しぶり」
「お久しぶりです」
その声に振り返るとそこには、キシュアとスィーアが立っている。
さすがはラッツで、幸いこの店というかこの家は私たちが生活もできるようにと整えてくれていて、このリビングもなんと13人どころか20人は楽に座れる広さなので、2人やってきてもが座るところに困ることはない。
で、その2人だけどそのまま机ではなくソファーの方に腰を掛ける。
「ああ、久しぶり」
「久しぶり。元気そうでなにより」
「ま、やってることはただの調査監視だしな。問題はないさ」
「私もです。平和なのはいいことですね」
どうやらキシュアにスィーアの方も問題はないようだ。
まあ、2人とも地元で調査しているしね。
「というか、私の方はローデイだろう? ことある毎にブレードのおっさんが王位につかないかとか言ってくるのだけは……」
「相変わらず豪快な人だなぁ。なんでユキはブレード陛下にキシュアのことを教えたのか」
「ま、ユキのことだから、何かしら意味はあるだろう。キシュアがローデイの調査をしっかりやれるように。スィーアもそうだろう?」
私がそう確認するとスィーアも苦笑いをしながら。
「あはは。まあ、教会側には快く協力していただいています。ですが王家側からは接触がありませんね」
「エナーリアの方はちょっと宗教と国の対立が酷いからな。まぁ、裏ではちゃんと調整しているって話しだが、表しか知らない連中は下手にスィーアのことを聞いたら暴走しかねないか」
「そうですね。だからこそ私は紹介されていないのでしょう。と、そこはいいとして今日の集まりはミコスでしたっけ?」
「ああ、ミコスからのお願いだな。多分雑誌関係のことじゃないか?」
「雑誌?」
キシュアが首をかしげているので、私が持っていた雑誌を手渡す。
「ああ、これか。なんだ、私たちを集めて何を取材するんだ?」
「そうですね。このぬいぐるみ屋の紹介とかでは?」
「ありえるわね。ウィードのお店紹介だし」
「うぉっ。って、クロウディアにカーヤかよ」
今度はクロウディアとカーヤが来た。
なんか一気に集まってきてるな。
いや、ゲートを通じて来るんだからどこからだって大体同じか。
任務でゲートが使えないような遠方に行ってない限り。
とりあえず、2人に挨拶をしておく。
「やあ、2人も元気そうだね」
「はい。問題なく仕事をしています。ニーナ」
「そうね。私たちは亜人だし、そっち方面の調査なのよね」
「ま、同じ亜人を疑うようなことは少ないか。とはいえ、過激派もいるだろう?」
「ええ、ホワイトフォレストに隠れ住むのを嫌う人は確かにいますね」
「そっちが私の管轄ね。幻術が使えるから人の街に行くとかそういうのは得意なのよ。その上、最近はウィードのおかげで亜人の扱いがよくはなってきたからね。ま、そのおかげでベータンの近くにある亜人の村を中心に勢力ができつつあるわね」
なるほど、これで過激派の亜人も減ってきているか。
これは本当に大仕事はなさそうだな。
「まあ、久々に全員集まるんだ。ミコスの取材が終わったらしばらくはウィードでのんびりしてもいいだろう。ノーブル殿には私から話しておく」
「お。ディフェスさすがー。リーダーだな」
「そうね。流石リーダーだわ」
「キシュアにカーヤは分かりすぎです。まったく」
「それで後は、ネフェリとフィオに……アルフィンですね」
「「「……」」」
ネフェリとフィオは大丈夫。妹のフィオがアンデッドになってしまっただけど、最近じゃ感情を取り戻してきたっていうし、ネフェリも別に問題はない。ただのシスコンなだけ。
問題は、そう、恐るべき最大の問題はお菓子大好きアルフィンだ。
これはウィードに来てから発覚したことなんだが、単にお菓子大好きってだけならともかく、私たちにも死ぬ程食べさせるんだ。
全く予想だにしなかったんだが、せっかくの甘い物を食べてもうダメなどと思ったのはアレが初めてだった。
それどころかケーキを見てしばらくの間吐き気が出てくるとか。
「いや、最近はほら、ウィードでお菓子屋開いて、なんか『ドラゴンの給仕』を雇って落ちついていると聞くぞ」
「うん。それは私も聞いているけど、全く意味不明。とはいえ、ドラゴンが給仕って話も嘘だとは思わないけど」
一応ユキの方からダファイオ王国の問題で出てきた竜人族のコーラルがウィードで生活しているとは聞いているけど、なんでその『ドラゴン』がさらには『給仕』なんかをと思ってしまう。
「相変わらず。ユキたちはやることがぶっ飛んでるよな」
「想像できないわよねー」
「そこは否定できませんね」
「はい。否定できません」
キシュアとカーヤの話に真面目なスィーアとクロウディアもうなずくしかない。
私もそうだ。
と、そんな風に雑談していると、またしてもリビングに人が入ってくる。
ネフェリ、フィオが来たのかと思っていると。
「やあ、みんな元気そうでなによりだよ」
「よ」
「ど、どもー」
そこにはなぜかレイラ、アルフィン、ネフェリにフィオを抱えたコメットさんたちまでがたたずんでいた。
やばい。嵌められた。
久々の聖剣使いの皆様。
みんな覚えているかな?
雪だるまはキャラクター紹介作っててよかったと思っているよ。
みんなありがとう。
そしてレベル1を昨日更新していません。
理由は仕事がめっちゃ忙しくて、流石にこっちが精いっぱいだった。
来週には復帰します。たぶん。




