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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第1113堀:拳で戦う者の特性

拳で戦う者の特性



Side:エノラ



「あれ? デリーユどうしたの?」


ようやくナイルアの部屋の片づけに終わりが見えはじめたところで休憩をもらった私が学府内を散歩していると、なぜかデリーユが学府を闊歩していた。


「おお、エノラか。よかった。ユキに頼まれて学府に来たんじゃが、さっぱり道がわからなくてのう。ワズフィのいるところに行きたいんじゃが……」

「ああ、なるほど。ここ迷路みたいだもんね」


私もうっかり間違った道を曲がれば完全に迷ってしまう自信がある。

それほどこの学府は入り組んでいる。

でも……。


「なんでデリーユがこんなところで迷っているの? ここに来たことってなかったっけ?」

「ないな。妾が行ったことがあるのは教室と教練場だけじゃった。わざわざ学生の個室にまで顔を出す用もなかったのでな」

「確かにそうね」


言われてみればデリーユがここの生徒に用事があることなんてまずないと思う。


「はぁ~、ユキに案内はいるかと問われ、うかつにもいらんと言ぅてしまったのが恥ずかしいわ」

「仕方ないわよ。まさか学校で迷子になるとか思わないもの」

「じゃよな? こんな風に建ててあるとは思いもせなんだ。いい加減コールで人を呼ぶか、壁を壊して進むか悩んどったところじゃったわ」

「前半が正解よ。壁なんて壊して進んだ日にはユキから怒られるわ」

「うむ。それはわかっておるが、いい加減イライラしてのう」

「気持ちはわかるけど絶対だめよ」


どこを曲がっても同じ道に見えるし、上がってたはずがいつの間にか下がっているし、なんかポープリの話を聞けばそういう方向感覚を狂わせる魔術的防衛も施しているっていうんだから物騒よね。

迷子になって死んだ学生もいるんじゃないかって思うぐらい。

まあ、そういう迷宮みたいなのは重要な研究や資料が置いてある所だけらしいんだけど。


「で、ワズフィのところだっけ?」

「うむ。案内を頼めるか?」

「いいわよ」


ということで、私はデリーユの案内をしてくるとカグラたちに告げて、ウィードに与えられた研究室に向かう。


「ワズフィは昨日からコメット、エージル、ナールジアさんと一緒に研究三昧で部屋には戻ってないみたい」

「わかりやすい研究一筋じゃな。そういえば、昨日きたザーギスはどこにおる? 一緒に研究室か?」

「……えーと、ザーギスはナイルアのエンチャント装飾品を回収するついでに部屋の掃除を手伝ってもらっているわ」

「……なんじゃそれ?」

「ナイルアの部屋がごみ屋敷だったのよ。ほら」


私はそういって記録した写真をデリーユに見せる。


「おおう。これは凄まじいのう。さすがの妾もここまではよぅせん」

「デリーユのところも良くスナック菓子の殻とか落ちてるもんね」

「……それはそのうち纏めて片付けようと思っておるだけじゃ。というに、さっさとキルエやサーサリが始末していくだけであって」


この魔王様って片付けできないのよね。

いやぁ、意外というか、納得というか。

まあ、だからこそ仲良くできるんだと思うけど。

最初なんて『魔王』って紹介されて思わず身構えたぐらいだったし。

仕方ないわよね。何せご先祖様たちは大変な苦労をして『魔王』を倒すため戦っていたんだし、それがいきなり目の前に現れたら誰だって身構えるわよ。

でも、ここまで品のある貴婦人が何かの間違いだと思ったんだけど。やっぱり本当に魔王なのよね。

しかも、規格外の強さだし。


「そ、そんなことより、ワズフィの戦闘力を見てくれと言われたんじゃ」

「露骨に話をそらしたわね。ま、いいけど。それでワズフィの戦闘力? 別にレベルはそれほど高くなかったけど?」


強さなんてユキの管理下にあるこの学府にいる生き物すべてを把握済みのはず。

もちろん、ワズフィもそうなんだけど。しかも、なんでわざわざデリーユが出向いてまで見る必要があるのかと不思議に思うのは当然だ。

何せデリーユは戦闘能力に限ればウィードで最上位クラスの強さだから。

流石魔王様よね。納得だったわ。

それがなぜ、この『魔術学府』に通う学生相手にって思う。


「それがのう。ユキが昨日クリーナとサマンサにナイルア、ワズフィの戦闘能力に関して質問したんじゃ」

「ああ、そういえば2人ともこの学府出身だもんね」


今は出産前ってことでウィードでお留守番だけど、確かに話を聞くだけならいくらでもできるし、これから一緒に仕事をしていくんだから戦闘能力とかは事前に聞いておきたいわね。

ユキは特に事前の情報は集められるだけ集めるっていうのはいつものこと。


「それで、教育方針を見極めるためにきたってこと?」

「それもあるんじゃが、意外と強いらしい。まあ順位を見ればわかるんじゃが、当時のクリーナ、サマンサはナイルア、ワズフィに負けていたという事じゃからな」

「……言われてみればそうね。それだけあの二人は強いってわけね」


ああ、確かにその通りね。

指摘されて今更ながら気が付いたけど、確かに順位を見る限りクリーナ、サマンサよりも強かったということだ。

これはちゃんと知っておきたいっていうのはわかるわね。


「でも、それじゃ先にナイルアを見てもよかったんじゃない? 私はそっちを手伝っていたし。ワズフィは研究の手伝いだからすぐ抜けられるかわからないわよ?」

「かまわん。研究に没頭していようがまずは確認を優先してよいといわれておる。ちなみにナイルアは魔道具を使ってくる戦闘スタイルらしいから今は道具がそろわんじゃろうし、妾に効くかは微妙じゃな」

「確かに。普通の魔道具レベルの妨害では私たちに効かないものね」

「うむ。なによりワズフィを妾が評価するのには別の要因がある」

「その要因って?」


私がそう尋ねた途端、デリーユは即座にシュシュシュッと前に拳を連打で打ち出し、そのまま右ストレートを打ち放ったポーズで固まる。

ちなみにこの間一秒足らず。しかも今のは形だけの連打だけど、実際はもっと早いのよね。

やっぱり魔王だわ。

と、ちょっと改めて魔王のすごさに感心していると……。


「どうやら妾と同じで拳で戦うみたいでのう。大森林深部へのフィールドワークについていけるか確認して欲しいといわれたんじゃよ」

「へー。って、えっ、魔術師が拳!?」


え? 魔術師って魔術を飛ばして戦うものよね?

私が変じゃないわよね?

いや、私も一応精霊の巫女として長けた身体能力を活用して戦うから拳っていうのは意外と戦えるってことはわかるけど……。


「うむ。だから妾が来たわけじゃ。まあ、ほかの妻たちであっても格闘戦ができないわけじゃなかろうが、とはいえ専門ではないからのう。評価するには妾が最適だったということじゃ。そういえば、拳で思い出したがエノラも司教のわりには意外と使えたじゃろう?」

「ええ。私も時には拳で戦うわ。まあ、メイスとかの重量武器を使うことが多いけど」

「まあ、僧侶はそちらの武器が多いのう。しかし、なんでじゃろうな?」

「それは考えたことはないけど、確かに言われてみると刀剣類よりも殴打類が多いわね」


なんでだろうと思っていると気が付けば、研究室の前までやってきていた。


「ま、そこは後で調べるとして、ここがウィードの研究室兼部屋。私たちの部屋でもあり、いまコメットたちがワズフィと一緒に大森林の調査の準備をしているところよ」

「ほう、ここか。じゃ、遠慮なく」


そう言って、デリーユはドアを開けて堂々と入っていき、私もそれに続く。

その時中では……。


「じゃ、ワズフィは先ずルートを調べる方がいいってことだね?」

「はい。上空からの偵察はしっかりしているみたいですけど、じっさいに大森林の中を歩くとなると、結構草木が生い茂っているので進むことすら苦労します。だから、先ずはルートを決めて障害があればそこを迂回するか、または道を切り開くか考えないといけません」

「まあ、確かにね。獣道を使うわけにもいかないからね」

「ええ。獣道はほかの生き物。大森林では魔物が使っている道ですから、魔物と鉢合わせる可能性が高いです。魔物退治ならともかく、今回は調査ですから……」

「僕たちが魔物を殺しちゃ意味がないね。だからそういったことも考慮した道を進むほうが安全か。でもさ、道を切り開いたらそれはそれで物音を立てて、魔物たちを警戒させないかい?」

「そこを探るためのルート決定というわけです。一度行って確認して、必要ならどうするべきか考えられますから」

「おー、悠長な話だね。ま、こういう研究って地道にやるのが大事ってことか」

「そうだね。じゃ、どこからどう大森林を回っていくかを決めようか」


そんな感じで、頭を寄せ合って地図を見つめて真剣に大樹海の魔物の調査について考えているみたい。

おかげで、私たちの存在には全く気が付いてないみたい。

下手に声をかけると驚かせちゃいそうね。

どうしたものかと思っているすきに……。


「コメット、エージル来たぞ」

「ん? ああ、デリーユじゃないか。それにエノラも」

「あれっ、どうしたの? ナイルアの所の掃除おわったの? というかデリーユはウィードだったよね?」

「あれ? 連絡行ってないの?」

「やっほー。エノラじゃん。で、そっちのすごい美少女ってだれ?」


ユキが連絡してないなんて珍しい。

そして、ワズフィは相変わらずどんな相手に対しても物怖じしないわね。

魔王様に対してもこれだし。


「うむ。妾はエノラに案内してもらったんじゃよ。そこなワズフィに用があってな」

「え? 私に?」

「どういうこと?」

「あれっ、魔物の調査ってデリーユ興味あったっけ? 資料見る?」


全員首をかしげながらも、エージルは適当に来た理由に見当をつけて資料を差し出す。


「いや、妾は研究の手伝いに来たわけではない。ワズフィが大森林の探索についていけるか、ついていけないかを判断し、訓練するためにやってきたのじゃ」

「「ああ」」

「どういうこと?」


コメットとエージルはここ迄聞けばもう納得してるけど。デリーユのことを知らないワズフィは首を傾げたままだ。


「ワズフィ。あなたが弱いと大樹海に連れていくわけにはいかない。そういうこと」

「え? 私が弱い?」

「そ。それを確かめるために、このデリーユと模擬戦をしなさいってこと」

「そこの彼女と? え、これでも私学府第2位で強いよ?」

「おお、聞いてるぞ。妾と同じ拳を使うようじゃな。だからこそ、一度戦い方を見ておいた方がいいじゃろう。弱い強いはそれで自ずと見えてこよう」


デリーユは勝負というより、動きを見たいだけという。

一方で、『強い弱い』に反応しているし、ワズフィは負けず嫌いってことかしら?


「そうか。うん。それなら私もみんなの動きは見ておきたいし、必要だね。じゃ、さっそくやる?」

「うむ、そうじゃな。コメット、エージルも研究ばかりで腕がなまってないか確かめるぞ」

「「うげっ!?」」


そりゃ仕方ないわよね。

デリーユ相手に戦うとか、魔術師タイプのコメット、エージルにとっては天敵だし。


「ついでじゃ。ナイルアとエノラたちも含め全員参加じゃ」

「うげっ」


うわぁ、こっちまで飛び火した。



拳で戦う連中は基本的にバトルジャンキーであるのは少年漫画での常識である。


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― 新着の感想 ―
[一言] おいおいおい 死んだわインドア
[気になる点] 獣道の話題の所にて魔物退治名となっていますおそらく魔物退治目的書きたかったのでは?
[一言] なんか昔のRPGで神官は戒律で刃物を持つことを禁じられてるとかそんな設定があったような? あとは拳に「治癒魔法を纏わせて殴れば証拠が残らない!」とかぶっ飛んだセリフ吐いたプリーストが居た記…
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