第1002堀:各国の交易状況その2
各国の交易状況その2
Side:クリーナ
「コメット。タイゾウさんの功績を我が物のように謀ったことを謝ったうえで、さっさと座りなさい。邪魔です」
「ヒフィーさん、コメット殿がいたからこそ受け入れられた案です。ですので、間違いなくコメット殿の功績ですよ」
「ほーら! 私のこの頭脳のおかげなんだよ」
「ちっ。……そろそろ脳の腐敗が手遅れなほど進んでしまったんじゃないですか?」
「おお!? やるか?」
「やりますか? 浄化してあげますよ?」
いつもこの2人はほんとに仲良しだ。
こうやってなにかと喧嘩しているのもお互いを深く信頼しているからこそ。
しかし、私も負けてはいない。私だって頼もしい友達と夫のユキがいる。
つまり、無敵。
っと、それよりもこのまま2人がいつまでも遊んでいたら私の出番が回ってこない。
「……ユキ。私の報告。喋っていい?」
「そうだな。2人ともまだ騒ぐなら出て行ってくれ」
「「すみませんでした」」
すぐに謝るコメットとヒフィー。
このくだりは定番のネタになりつつある。
……2人は漫才師にでもなるんだろうか?
まあ、そこはいいとして。
「アグウストの方は、この前の貴族の反乱がようやく落ち着いてきたところで、交易の方はまだ手が回っていない」
「「「……???」」」
「ん。インパクトが薄かったのはわかる。ヒフィー神聖国に責任取らせろとか、私が正式にウィードへ嫁入りするからって、王の養子になることに文句言ってた貴族がいた」
「「「あー」」」
それでようやく思い出したらしい。
「というか、なんでヒフィーが覚えてないのさ? 結構詰め寄られたって聞いているけど?」
「あの連中は所詮表向きだけでしたからね。私の後ろにはエクス王国やウィードがすでにいました。国力についてもアグウスト程度の戦力であれば、タイゾウさんの兵器にコメットがいればどうとでもなったでしょう。というか、以前から回復魔術師を寄越せと脅してくる国は山ほどありましたからね」
「あー、あの手の連中の相手は慣れたものだったわけだ」
「ん。ヒフィーはそこまで気にしてはいなくても、公式に魔剣を使ったテロ組織が仕掛けたと結論付けられたことで迷惑をかけたというのはアグウストとしては謝罪がいる」
「まあ、そうだろうな。そして内輪揉めの処理もあって交易の方はあまり進んでないと」
「ん。まあ、ゼロではない。ローデイ王と一緒にラーメン産業を考えていてお店を何店舗か作っている」
「いやー、それは個人趣味じゃないか?」
「そうでもない。ローデイ王と共同で、ラーメンの麺に適した小麦粉の生産を開始している。ローデイ王は豚をつかって美味いスープの研究をしている」
「「「国家事業!?」」」
食べ物侮るべからず。
「ん。来年にはアグウストとローデイの合作となるラーメンが全世界を席巻する予定らしい。でも、キユとコヴィルのラーメンには届かないと思う」
「あいつらのラーメンってそこまで美味かったか?」
「何言ってるのよ。もう長いことずっと繁盛し続けているでしょう? というか、あのスープ作ったのあなたでしょうに」
「それだけは絶対にブレードのおっさんに言うなよ。俺に作れって付きまとってくるからな。っていうか、ラーメンで世界を席巻するとか、なに、大陸間交流でグルメ大会でもやるのか?」
「ん。それはいいかもしれない。大陸間交流用の大型ショッピングモールができたのだから、そこでのイベントは各国のグルメ大会」
これは美味しい話だ。
もちろんウィードの日本の料理が一番おいしいが、隠れた美味しい料理というのもこの世界には存在する。
それを持ち寄って楽しむ。
素晴らしい!
「はいはーい! それなら各国の銘酒も集めるべきだと思いまーす!」
「ん。確かにその通り」
ミリーはお酒が好きだからだけど、お酒もグルメに含むべきという意見は当然だと思う。
「わかったわかった……。今度の大陸間交流はグルメ大会でいいとして、今は外交、交易の件だ。で、アグウストはまだそこまで活発でないっていうのはわかったが、このグルメ大会が解決案になりそうってことでいいか?」
「ん。今までのトラブルを解消したことを示すためにも、そういう大会があれば助かる」
「なるほどな。まあ、ショッピングモール構想はうまくいっているってことか。で、次はエクス王国なんだが……」
今度こそ、エクス王国出身のメンバーはここにはいないので、この場で報告を聞けない。
まぁ、エクス王国のノーブルは神でありこちら側なので何か問題があればすぐ連絡してくるはずだからそこまで心配しないで良いと思う。
そう思っていると……。
「あー、エクス王国は交易によってちゃんと利益も上がっているし万々歳みたいよ」
意外なことにドレッサが答えた。
和解したのは知っているが、それでも祖国を滅ぼされた相手なのだ。
その国のことをこうも気軽に話されるとちょっと驚く。
そのことはドレッサ本人も私たちの反応から気付いたようで……。
「……なによ。私がエクス王国の現状を知ってるのが可笑しいの? 祖国のこともちゃんと切り盛りしてくれているかってちゃんと情報は集めてるわよ」
「ま、そりゃそうだな。サクリの方からも毎月ちゃんと報告が届いているし問題ないだろう。というか、あいつもウィードに来ればいいのに」
「サクリは何ってったってノーブルの親友よ。それがやすやすとウィードに鞍替えするわけないじゃない」
サクリというのはエクス王国にいるダンジョンマスターの生き残りだ。
ユキたちとも和解して共同で魔力枯渇現象の調査をしていてくれている。
「別に鞍替えって話じゃない。そろそろ四肢欠損を治せって話だよ」
「あー、なぜかお神酒飲まないわよね。自分はふさわしくないって。それについてはノーブルからも何度も相談されてるわね」
「俺もだ。まあ、矜持があるんだろうが、スタシアみたいに勲章としてじゃなくて戒めだしな。そこらへんは妥協してほしいもんだ。実際行動範囲にも悪影響があるからな」
そうサクリは昔の戦争で四肢欠損していて、車いすの生活を余儀なくされている。
で、治療法があるのにしようとしない、ちょっと頑固者。
「ま、そこは追々だな。で、あとはイフ大陸で残っているのは……。ランサー魔術学府か」
そう言ってユキはポープリ学長に視線を向ける。
今回の会議にはポープリ学長にも出席してもらっている。
学長はコメットの弟子だし、ラビリスに服従を誓った。つまり身内。
「ああ、問題ないって胸を張って言いたいところだけど……そうではない。やはり私たちの大陸が一番魔力が減衰しているようで魔術技術が他の大陸より遅れている。カグラたち新大陸のハイデン魔術学院とは交流の話が纏まったが、まだ実際には動きだしてもいないからね」
「あー、そういう話もあったな。やっぱり差は激しいか?」
「うーん、差をどう比べるかによるね。成績上位者だけを見ればカグラたちとまではいかないけどそこまで劣っているとは思えない。だけど、成績が普通の子たちをハイデン魔術学院とくらべると……」
「ん。明らかに劣っている」
「ですわね。もともと、普段から魔術があまり使えないので、そもそも練習量の差が表れているのでしょう。私たちの大陸では魔力消費量が大きいですから」
サマンサの言う通り、私たちの大陸は魔力枯渇現象が顕著で、消費魔力がロガリ大陸の約20倍と、とんでもないことになっている。
そのおかげで、そもそも魔術師に成れない者も多い。
「ん。まて、でもランサー魔術学府の辺りは魔力濃度が多くて2倍ぐらいの倍率じゃなかったか? って、そうかそれでも2倍違うのか」
「そうだよ。だから2倍も練習量が違うんだ。練度に差が出て当然だよ。まあ、その調整はこれからやっていくんだけどね。例えば、ハイデンの方にもう一つ学び舎を用意してもらうとかね」
「あー、土地の問題だからそっちで育ててみるってことか」
なるほど。
そうすればイフ大陸では魔術を発動できない人も魔術を使えるかもしれない。
「その通りさ。あとは逆にハイデンの学生にランサーで学んでもらってどんな影響が出るかとかだね。師匠もデータ取りたいって言ってたし」
「ああ、取りたい取りたい。私たちは単に消費魔力が違うなーぐらいしか思わないけど、学生たちならもっとほかの意見が出そうだしね」
それを言うなら私たちだってランサーの学生だ。といいたいけれど、私たちはもうユキの下で特別な訓練を受けているから参考にはならない。
「何かありそうってのはわかるが、だからといってすぐに行動を起こすのは無理だな。となるとさっきクリーナが言っていたグルメ大会で各国を招集して議題に挙げてみるか」
「ああ、そうしてもらえると助かるよ」
「おう。なら、あとはロガリ大陸の話を聞いてさっさと行動に移さないとな」
「……グルメも力を入れる。忘れないで」
「わかってるって。じゃ、次はロガリ大陸だけど……」
ユキはそう言ってまず視線を向けたのがルルアだ。
「はい。リテアから説明させてもらいます。とはいってもリテア聖国自体は特に外交、交易に関してのトラブルは……ありません」
「なんか妙な間がなかったか?」
ん。あった。
ほかのみんなもそう思ったようで、隠さずさっさと喋れという感じの視線が集まってしまい、ルルアもちょっと気まずかったようで口を割る。
「えーと、今のところトラブルはないのですが、旦那様覚えていますか? リテアの名前をかたって妙な貴族が同盟設立式会場に押し入ろうとした時のことを」
「あー、なんかあったな。ラビリスたちのチケットを奪おうとかしたアホがいたとか」
私もその話は聞いた。
自分の力じゃチケットを手に入れられなかったのに、入場管理の人に難癖をつけてラビリスたちも襲おうとしたアホがいると。
ウィードのダンジョンマスター(仮)でもあるラビリスを知らないとかアホの極みだ。
「はい。その連中の後始末があったのですが、その国が今度は交易で優遇しろとまた叫んでいるって感じですね」
「おう、バカの大本は大バカだったってことか」
「とはいえ、それはアルシュテール様が解決する事柄ですので……」
「まだ正式な救援要請は出ていないか」
「はい。ですからトラブルまではならないかと。それに、こういう要求はどこでもありますから」
ん。ルルアの言う通り、アグウストでもいまだにウィードになんか譲歩せず要求だけしろっていう馬鹿な連中もまだいるってイニス姫がぼやいてた。
まあ、そういう連中は基本的に中央から遠ざけられて政治に関与はできないらしいけど。
それでも力が落ちる様子がないから、どこからか援助があるんだろうって疑っていた。
……ん? これって新たなる火種?
でも、対処はまず大国が行うべきものだし、私たちが勝手にでしゃばることじゃない。
「そうか。ならアルシュテールから正式に話が来てからだな。で、あとはガルツの報告をって思ったけど」
ユキの視線の先には空席。
そこにはシェーラが座る予定だったが、ズラブル大帝国へ行っている。
「私でよければ話すわよ。ローエルから情報はもらっているし」
そういったのはセラリアだ。
確かにローエル将軍とは仲がいい。
正しい報告とは言えないだろうけど、ウィードとガルツは仲がいいので嘘情報をよこす理由もないだろう。
と、そんなことを考えているうちに話は進んでいくのだった。
イフ大陸も内部で色々問題は抱えつつもうまく回っているようです。
そして、残るはロガリ大陸。
今まで散々いろいろなトラブルがあってきたけど、あの国はぶじなんでしょうか?




