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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第989堀:わからないことは聞いてみよう

わからないことは聞いてみよう



Side:ユーピア



『……以上が、報告が遅れた理由でございます』

「まあ、事前に報告は明日になると聞いておったが……」


ワシはそう答え、しばし沈黙する。

昨日、ショーウが許諾を求めて来おった。


『陛下。何やら会食後、重大な話があり、朝方までかかるそうです。なので、本日の報告は明朝にしたいと思うのですが……』


という内容だったので、快諾し、朝をまって報告を聞いたわけだが……。


「……ショーウ。まず確認せねばならぬことがある」

『はい。何でしょうか?』

「たった一夜の徹夜明けで頭の中がハイになっておるとか、実は酒を飲んで酔っ払っておるという事ではなかろうな?」

『そのようなことはありません。というか、そもそも私はお酒は嗜みませんので』

「そうであったな……」


ということは、今朝受けた報告はショーウが夢想、妄想、幻聴の類ではないと。


「お主の言葉、信じたいのはやまやまじゃが……。大陸間交流同盟じゃったか? 参加している国が100を超え。国土の大きさは合わせると我がズラブルを遥かに超えておるか。うむ。そのような戯言、全く信じられん」

『はい。私も今のところ、ただ聞いただけですので何とも……』

「じゃが、そこはまだよい。ウィードほどの国なのじゃ。国土もワシには考えが及ばぬほど巨大であろうと、それはまぁ納得しよう。しかし、海の向こうにさらに大陸があり、そことゲートとやらでつながっているだと? 馬鹿も休み休み言え」


最後の部分、いっかなワシでも信じがたい、あからさまな嘘としか思えん。

遠くの場所に一瞬で移動できるゲートという大型の魔道具があり、それを使って交易をしているなどと。

そんな便利なものがあれば誰も苦労はせんわ!

と、叫びたくなるのをじっと我慢して淡々と続ける。


『馬鹿なと切り捨てられれば良かったのですが、同席するシーサイフォの女王、そしてハイデン国王、そしてハイレ教のエノル大司教も、皆否定しないのです……』

「……こちらをからかっているというには、いささか仰々しいな」

『はい。まあ、色々迷惑をかけられた意趣返しという可能性もあるかもしれませんが』

「そんな意味不明な嫌がらせをするぐらいじゃったら、端から交易なぞしないと言うたほうが早いのう」


その様なことであれば、わざわざショーウをシーサイフォ迄連れて行く意味がない。


『……とりあえず、引き続き各国への訪問と挨拶。そしてウィードの調査は継続いたします。ゲートの真偽もそれに合わせて』

「うむ。それしかあるまい。こっちもアスリンたちに話を聞いてみる。あの子たちならば下らぬ嘘はつくまいて。本当にそのような物があるのなら、そちらに合流してやるわ。ゲートなら一瞬なのじゃろう?」

『あはは。それはいいですね。まあ、こちらに来る際は、事前に一報をお願いします』

「うむ」



ということで、とんでも報告は終わり、一息ついて、混乱が収まってきて、やっと。


「……とは言うても、どの様にアスリンたちにゲートの話を切り出せばいいのかすらわからん」


先程までは単に「ゲートはあるのか?」と尋ねればよいと思うておったが、よぅよぅ考えれば、そんな眉唾物の話をアスリンたちに尋ねる、それは同時に護衛にも聞かれることになる。

アスリンがあると答えてくれればよいが、首などかしげたら詳しい説明をせねばならぬ。

遠方に一瞬で行ける道具なぞというありえん物の説明を、ワシがせねばならぬ。

それを聞いたアスリンたちや、護衛の者たちはどう思うか……。


「どう考えても、ついに頭がおかしくなったといわれかねんな」


今正に旧皇帝派どもと雌雄を決さんとしておる時に、国のトップの錯乱なんて噂が広まれば、国を揺るがしかねない。

……まさか、これが狙いか?


「……なわけないのう。そのような下らぬ策を弄するより、ワシの首を刈り取ったほうが楽で確実じゃ」


それが易々とできるだけの力をウィードは備えておる。


「……よし。無為に考えるのはもうやめじゃ。素直にこっそり聞けばいいだけの話じゃ」


そう、なにも堂々と聞く必要なぞない。

アスリンたちなれば、ワシが多少おかしなことを言うたとて、バカにして笑い飛ばしたり、誰かに言いふらしたりすまい。

そのような信用ができるくらいの親交はあるつもりじゃ。

その期待、裏切られたとしても、ただ単にワシの見る目がなかったということじゃ。


「そうと決まらば、さっそく聞きに行くか。もうすぐお昼の時間でもあるしな」


最近ではアスリンたちと昼食をとるのが当たり前で、いつもお昼休みというのをとって休憩をしておる。

ワシらは朝と夜の2食が普通じゃったので、初めて聞いたときは驚いたものじゃ。

まあ、そんな余裕があるというも、ウィードの豊かさの証拠なのじゃろう。

そう思うて、昼食に同席させてもらったのじゃが、意外と得るものも大きいと感じた。


席を同じゅうして食べるということは、単にそこで共に食事を体に取り入れるだけではないと知った。


「うむ。今日も邪魔させてもらうぞ」

「あ、ユーピア皇帝ちゃん。まってたよー」


ワシがそういいながら部屋に入ると、かわいらしいエプロンを付けたアスリンが出迎えてくれる。

いつのまにか忘れておった、誰かと一緒に食事をするという喜び。

ワシは職業柄、どうしても一人での食事が多い。

そして、誰かと食事の席を共にするのは政治的な駆け引きのため、食事を楽しむ余裕もない。

じゃがここでは……。


「もうすぐできるから、席に座ってまっててなのです」

「いや、ワシも配膳を手伝おう。ご随伴にあずからせてもらうのじゃからな」

「じゃ、ヒイロたちと一緒に準備する」


フィーリア、ヒイロと同じように、自ら自分たちの食事の準備をして、自分の分を持ってくる。

いや、本当に懐かしい。

いつの間にか斯様なこと皇帝のやることではないと、遠ざけられておったからな。

そして何より、このお昼がいいことなのは……。


「おおっ。今日はカレーじゃな!」

「あら、ユーピア皇帝ちゃんじゃない。やっぱり来たわね」

「カレーにしてて正解ですね。さ、パンもご飯もありますよ」

「わかっておるではないか!」


そう! おいしいごはんじゃ!

いや、我がズラブルにも数多の美味い料理はある。

だが、悔しいことにウィードには全く及ばぬ!

余裕がある国とはここまでの開きがあるのかと絶句しつつも、カレーを食いつくした日のことを思い出す。

そして今日も、ウィードの美味しいものランキングNO1に輝くカレーがワシを待っている。

そしてなんと、それを好きなだけ食べられる。

これに勝る幸福があるだろうか?

と、思っていると……。


「あ、ユーピア皇帝……ちゃん。今日はエビフライやとんかつ、ハンバーグのトッピングでどうですか?」

「私は揚げ茄子、チーズがオススメよ」

「な、に……トッピングじゃと!?」


ワシはあまりに矮小な器の持ち主じゃったようじゃ、カレーという至高の食に満足し、その先の可能性を微塵も考えておらんかった。

そうか、これが、これこそが豊かになるということか。

確かに暫定2位のエビフライやハンバーグもおいしい。

じゃが、それを一緒にしてしまおうなどという発想は全くなかった。

つまりそれは……。


「無敵なのです!」

「さいきょーだよー」

「その通りじゃ!」


無敵で最強の料理がここに生まれたのじゃ!

何という贅沢の極み。

美味しいもの同士なら一緒にしてもいいではないか!

なんとも簡単なことじゃ。

なれど、そのなんと難しきことか。

戦力を内に集めれば、外がおろそかになる。


「はいはい。うれしいのはいいけど、温かいうちに食べるわよ」

「そうですよ」

「「「はーい」」」


ラビリスとシェーラに促されワシもやっと席に戻ると、いつのまにかデリーユ殿はすでに万全の準備を整えていたようで山盛りのカレーを前に席についていた。


「お、ユーピア皇帝殿も決まったか」

「うむ。待たせたようで申し訳ない」

「かまわぬよ。食事はおいしく楽しくするものじゃ」

「そうじゃな。そんな当たり前を最近はすっかり忘れておったよ」


と、そんな雑談をしているうちに、アスリンたちも思い思いのカレーをトッピングして席につく。

そして、一緒に。


「「「いただきます」」」


さあ、食べようではないか!

スプーンを手に取り、いざ、カレーとハンバーグを同時に口へと慎重に運ぶ。


「ふぉぉぉ!」


思わず叫んでしまうほど美味かった。

これが真の料理ということか。

確かに、一つ一つはそれぞれ、完成した料理であった。

されど、それを合わせることによって完全無敵となるのじゃ!

そんな感じで、当初はひたすら食事に没頭しておったが、後半ともならば満たされ、あたりを見渡す余裕も出てくる。


「今日の出来はよかったねー」

「寝かせていた甲斐があったのです」

「寝かせてあるとおいしいよねー。でも、出来立ての方がいいって人もいるけど」

「それは人それぞれよね。野菜の食感が残っているのが出来立てのいいところよね」

「でも、それは味が染みていないってことでもありますけどね」


アスリンたちは今日のカレーの出来栄えについて話しおうているようじゃな。

カレーというのは、作り食すタイミングで味も変わるのか。

うむ。今度はさらにそういうのを聞いてから楽しむとしよう。


と、そこまで来てショーウの話を思い出した。

いや、忘れておったのではない。

覚えてはおったが、それは食事前に話すようなことではない。

故に、今の今まで話さなんだだけじゃ。


「興味深い話じゃな。そういえば、ショーウも空母でカレーが出たといっておったのう。船のカレーはまた、一味違うのか?」


しかしワシは皇帝まで上り詰めたユーピア。

闇雲に猪突猛進して尋ねたりはせぬ。

ちゃんと手順を踏んで、いかにも流れで話した雰囲気へともっていく。

それができねば、あとでこっそり尋ねることとしよう。


「そうじゃな。船でのカレーは海の幸が多いのう。周りは一面海じゃからな。材料には事欠かんようじゃ」

「ほう。海の幸のカレーか。それはうまそうじゃな。しかし、我がズラブルではなかなか食べる機会はなさそうじゃな」


残念じゃ。

さすがに海の幸は帝都まで運んでいる間に腐ってしまうからのう。


「え? できるよ」

「え?」


そう思って残念そうにしておったら、アスリンがその程度のことなぞあたかも簡単に出来ると言わんばかりに応えてくる。


「冷凍して持ってくればいいのです」


おぉ、なるほど。

そういう手もあるか。

しかしな、流石にそういう魔術師の力を借りねばならぬ輸送は結構費用が掛かるから、ちと難しいのう。


「えー、冷凍ってあまりおいしくないから直接行けばいいと思う」

「ヒイロ。ユーピア皇帝ちゃんはそう簡単に海のある場所に行けないんですよ」


うむうむ。ヴィリアの言う通り、ワシは海の幸が食べたいからといってそう簡単に帝都を離れるわけにはいかぬ。

あの、車というのを使ってもさすがに数日かかるようじゃしな。


「あら別に、オーレリア港ならゲートを使って一瞬でいけるからいいんじゃないかしら?」

「ラビリス。一応オーレリア港はズラブル大帝国にとっては外国ですから、時間は別にして、皇帝陛下ともなればそうそう簡単には行けないですよ」

「むう。つい忘れがちじゃが、確かにオーレリア港はウィード領じゃったな」


うむうむ。

左様か、残念じゃ。ゲートとやらを使えばオーレリア港には一瞬で行けるのか……、じゃが確かにあそこはウィードの……。


「……ん? ちょっと待ってくれ。今ゲートとか言わなかったかのう?」

「うにゅ? 言ったよ。あれ? ゲートってしらなかった?」

「おかしいのです。確か、ショーウ姉様にはちゃんと説明したって、兄様が言っていたのです」

「まだ伝わってないんじゃない?」


……そうか、どうやらゲートとやらは実際にあるようじゃのう。

というか、ワシも既に知っていることとして話しておるな。

ふむ、ショーウがワシと連絡を取ったのじゃし、アスリンたちも当然ユキ殿たちと話をしておろうのう。


「って、本当にあるのか!」


そんなことに納得している場合ではない。今の話じゃと、何とこの帝都にもあるということじゃ。まずはそのゲートとやらを確認せねば!



そう、わからなければ聞けばいいのです!

たまにとんでもない事実も出てきますが、まあそれはそれでよし!


とはいえ突拍子もないことを聞くときは状況を考えましょう。


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― 新着の感想 ―
[一言] 素直に聞くのが一番だよね 大人になるとどうしても汚い諸々がこびりついて素直に聞けなくなるw
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