落とし穴158堀:クリスマスプレゼントは?
クリスマスプレゼントは?
Side:ユキ
今日は12月23日。もうクリスマスも目前。
普通なら、クリスマスに向けてワクワクしているところだが、俺はそうもいかなかった。
なぜなら……。
「クリスマスプレゼント……全然準備してない。どうしよう」
「どうしようっていっても、今から用意すればいいだけじゃないですか?」
「まあ、そうだな」
「そうですね」
相談したくて集まってもらった日本人たちなのだが、どうも反応が悪い。
まあ、タイゾウさんは戦時中の人だし、ソウタさんはもうお爺さんだし、そういうメインイベントにはあまり興味がないのかもしれない。
だが……。
「2人はともかく、タイキ君までがわからないとは思わなかったなー。それともプレゼントの準備は済ませているのか?」
「え? どういうことですか? だって今日はそのクリスマスプレゼントを買うために集まったんでしょう? なんでそんなに悩んでいるでいるんですか?」
「いやいや……。タイキ君。君は、アイリさん、ソエルにクリスマスプレゼントを渡すんだよな?」
「ええ。まあ、そうですけど」
「そして、皆揃ってのクリスマス会だ。つまり、子供たちに何かくれるんだろう? タイゾウさんも、ソウタさんも」
「まあ、そうですけど」
「そうだな。ユキ君の子供たちもプレゼントがないというのは悲しいだろう」
「確かにそうですね。まあ、日本でだったら、数が多いですからお菓子辺りが精一杯でしたが、今の収入ならみんなにちゃんとしたプレゼントを買ってあげられますね」
そう。
今の俺たちは全員が、お金がないという立場ではない。
みんなそれぞれ国のトップ、或いは重鎮として十分お金は稼いでいる。
プレゼントを買う予算が無いなどということはないのだ。
「それで、俺たちがまず考えなくてはいけないのは、子供たちに大量のプレゼントを銘銘が与えていいのかと。アイリさんやソエルも同じだ」
「あー……。そっか、ユキさんたちもアイリやソエルにプレゼント買いますよね」
「「もちろん」」
如何にも当然と、返事をするタイゾウさんとソウタさん。
ま、これが大人の対応だな。
「とはいえ、ここで問題があります。子供たちには、嫁さんたちももちろんプレゼントを買います。みなさんの奥様たちにも」
「なるほど。ユキ君の言いたいことが分かってきたぞ。私たちはその皆が持って来るプレゼントをかいくぐれるだけの一つを選ばないといけないわけだ」
「確かに、それを考えると面倒ですね。そして子供たちにむやみに沢山プレゼントを与えていいわけないですから……」
「そっかー。確かにそうですよね。山ほどのプレゼントをもらえるのが当たり前っていうのもアレですよね。というか、セラリアさんたちからも大量のプレゼントかー。それはそれで大変ですね。というか、ユキさんはその奥さんたち全員にプレゼントですよね? それもすごく大変だよな」
よく気が付いたな。
なんか知らんが、嫁さんが年々増えていくからな。
かといって、いまさらクリスマスを無しにするようなことはできない。
嫁さんや子供たちに悲しいクリスマスなど過ごしてほしくないからな。
「我々男たちだけなら、ただのゲーム大会で済むけどな」
「ですね。それだけで十分ですもん」
「楽しくやるという点で何も間違っていないからな」
「とはいえ、女性はそういう感性とは違いますからね」
むむむ。と全員で悩んでしまう。
これだけ色々条件を考えなくちゃいけないとなると面倒だよな。
「とりあえず、参考までに嫁さんの意見も聞くか」
俺がそう聞くと、全員が頷く。
とりあえず、嫁さん筆頭のセラリアに連絡を取ってみると……。
『クリスマスのプレゼント? 今更? まあ、あなたは忙しかったものね。とはいえ、子供たちは期待しているし、私たちだってそれなりに期待しているわよ? なによりお嫁さん新人もいるんだし』
いや、準備していなかった俺が悪いんだが。
……うっかり聞いたせいでなんか難易度が上がっている気がする。
『あ、タイキ、タイゾウ、ソウタは気にしなくていいわよ。子供たちはみんな、お菓子の詰め合わせでも喜ぶわ。あえて残る物にしたいなら、皆で出来るパーティーゲームでも買ってあげればいいわよ。私たちへのプレゼントはいらないわ。プレゼント交換用のやつを一つ持ってくればいいわよ。と、私も仕事だからじゃあね』
そう言って無情にも切られるコール。
「なんか、ユキさんだけ難易度が激高ですね。ま、こっちはプレゼントは簡単なものでいいって言われましたから。そうしましょう」
「そうだな。無理はしなくていいという心遣いだ。まあ、食材ぐらいは持っていくが、確かに過剰なプレゼントというのも問題だろう」
「パーティーゲームというとスィッ〇とかですかね? それともボードゲームですかね?」
「あー、どっちもで行きません? 俺がゲーム機で、タイゾウさんが将棋とかの頭を使うので、ソウタさんが人生ゲームとか」
「「そうしよう」」
こうして、タイキ君たちはあっさりプレゼントが決まったのだが、俺の悩みだけは何も解決してないので、引き続き相談に乗ってもらうことになったのだが……。
「いやー、流石に残り二日もない状態でゼロからオリジナルを用意するのは無理でしょう」
「だな。こればっかりはどうしようもないだろう」
「奥さんに素敵なプレゼントをしたいという気持ちは分かりますが。もう時間がですね……」
とはいえ、残り時間を増やす方法などありはしない。
こうして話している間にも、時間は刻一刻と過ぎて行く。
「はぁ。タイキ君もオリジナルはあきらめるって方向か?」
「ですねぇ。俺も今日まですっかり忘れていましたし。とはいえ、こういうのって結局気持ちでしょう? 忙しかったのはセラリアさんたちだって知っていますし、頑張って選んだなら喜んでくれますよ」
「ああ、その通りだ。私たちも協力するから、まずは商業区の方に行ってみようじゃないか」
「ですね。その場に行ってみれば、何かいい物があるかもしれないですよ?」
「……そうですね。行ってみますか」
ここでいくら考えても前に進まないので、当初の予定通りに俺たちはクリスマスプレゼント選びのため商業区へと繰り出したのだが……。
「……まずいな。どのプレゼントでもだめに思えてきた」
人がプレゼントを買っているのを見てしまったら、同じものを選ぶのは俺がその人の真似、パクリをしているようにしか考えられなくなっていた。
「ちょっと落ち着きましょう。そんなことを言い出すと、同じものを買っている人は気持ちがこもってないとかそういう話になりますよ。ほら、俺も、なんかよさそうなアクセサリーを見繕っただけだし。簡単な物でもいいんですよ」
そう言って、タイキ君は選んだアクセサリーを見せてくれる。
うん。綺麗なものだ。確かに値段は大したことはないが、職人が真面目に作った一点ものだ。
そういう意味では、いい選択だ。
それを見て、俺もアクセサリーか? と一度は思ったが……。
「20人以上に合ったアクセサリーを見つけ出せる自信はないな。なるべく金額に差を付けたくないし……」
「あー、それはそうですね」
「アクセサリーはピンキリだからな。値段の違いというのは女性は結構気にするものだし」
「そうですねー。プレゼントの額に差がついてしまうなら、控えた方がいいでしょう」
俺の意見に賛同してくれるみんな。
そう、プレゼントにおいて、金額がばれることは色々まずい。
しかもプレゼントする相手が複数の場合、値段の違いというのは、色々な問題を抱える。
俺の場合は、下手をすると嫁さんのなかで誰を一番大事にしているかという意思表示にとられかねない。
そんなことになったら、ウィードは内部から割れてしまいかない。
「そうなると、値段がほぼ同じで、みんなの不満が出ないものか……」
「難易度がどんどん上がっていますよねー」
「こうして考えると意外と難しいな」
「ですねぇ。送る相手が数十人もいるなんてこと、考えたこともなかったですし」
あー、去年も同じことで悩んだのだが、あの時は何とかなったんだ。
なんか名案よ閃いてくれー!
俺がそう天に願った時……。
「ん? ユキたちじゃない。何しているのかしら?」
と声を掛けられ振り返ってみると、そこには……。
「あ、ニーナ。なんでここに?」
そこには聖剣使いのニーナが立っていた。
手には買い物帰りなのか袋を抱えて。
「何でって、私たちがお店出しているのは知っているでしょう? ああ、店長はラッツだけど」
「お店? ああ、そういえば、おもちゃ屋だったか?」
そういえば、ラッツが個人的におもちゃ屋を経営するとかいっていて、その手伝いを聖剣使いたちにさせているとか聞いたことがあった。
もともと孤児だったりした聖剣使いたちは、どうも子供たちの遊具を作るのに意外な才能を持っているそうだ。
いや、意外でもないのか?
そんなことを考えていると、タイキ君が
「あ! いいこと思いつきましたよ! ニーナ、お店にぬいぐるみとかおいてるか?」
「え? そりゃ、おもちゃ屋といっても、実質ぬいぐるみ屋みたいなもんだし、置いてるわよ」
「それって、みんな手作りの一点ものだよな?」
「手作りだけど、別に一点ものってわけじゃないわ。これでも多少は人気店だからね。売れているぬいぐるみは沢山作るのよ。もちろん一点ものもあるけど」
「ということは大量にあるってことだよな?」
「まあ、そう簡単に売り切れになるような量じゃないけど? いったいなんなの?」
ここまでタイキ君が質問しているのを聞いて、その意図に気が付かないわけがない。
世にはあまり出回っていなくて、そこまで値段に上下もない。
種類も沢山あって、みんなが選べる。
そして何より、手作りの一品。
「ニーナ。ぬいぐるみをクリスマスプレゼントにしたいんだ。量はあるんだな?」
「は? クリスマスプレゼント? ああ、そういうことね。貴方がまだ用意していないなんて珍しいわね」
「仕事が忙しかったんだよ」
「ま、話は分かったわ。奥さんや子供たちの分って考えると、ギリギリな気がするけど、今も作っているし確認してみましょう」
というところで、お店の方に顔をだしてみると……。
「お。ユキじゃないか。どうしたんだい? こんなところに」
「いや、俺はクリスマスプレゼント選びだよ。そっちこそなんでここにいるんだ。コメット?」
何故かコメットがお店番をしていた。
それもぬいぐるみをもって。
「ああ、なるほど。私は見ての通り、ぬいぐるみ作りさ。ニーナたちに呼ばれてね。ま、ぬいぐるみつくりは得意だから、ちっとも苦じゃないけどね」
「あのー、コメットさん。手伝ってくれるのはいいんだけど。魔物のぬいぐるみはどうかと思うわ」
「あれ? ダメ?」
こうして、珍しいぬいぐるみも含めて数をそろえた俺は、無事にクリスマスプレゼントを確保できたうえに、ラッツのお店の売れ行きや、コメットの器用さも確認できて、色々な意味でありがたいクリスマスとなった。
「で、ユキさん。来年のクリスマスはどうするんですか?」
「そうだね。もう私たちのぬいぐるみ作戦は使えなさそうだし」
「いや、それはまた来年考える」
クリスマスプレゼントって悩むよね。
正直雪だるまの意見としては、プレゼントする相手を直接すれていって選ばせるのが一番いい手と思うんだけど。
それはダメだっていう人もいるよねー。
面倒だ。




