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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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1012/2208

第849堀:わすれているもの

わすれているもの



Side:ユキ



カチ、コチ……。


そんな音が、さっきからずっと聞こえている。

別に大した音じゃない。

ただの時計が動く音だ。

しかし、こういう音が耳につくっていうのはけっこう珍しい。

まあ、それだけ静かってことだ。

でもこの音が寝るときに耳に付くと気になって仕方がないんだよな。


「……と、それだけ、行き詰まっているってことか」


これが集中できていない証拠だと気が付いて、席から立って背伸びをする。


「んー」


気が付けば、夜も既に11時を回っている。

珍しいもんだ。

俺がこの時間まで、仕事をしてるなんてのはな。

基本的に定時上がりなんだけどな。

まあ、今日は報告でシーサイフォ王城に行ってたし、そこら辺が原因か。

こういう外回りの仕事があるとどうしても時間がズレることが多い。

面倒極まりないな。

いや、この時間で済んでるのはエメラルド女王、そしてアクアマリン宰相がよく理解してくれたってことか。


本日、作戦海域に到着したとたん魔物と交戦。

これを被害を出すことなく撃退に成功したと伝えると大喜びだった。

散々煮え湯を飲まされてきたんだなーとわかる瞬間だった。

だが、根本的な解決にはまだなっておらず、魔物の魔力が枯渇していることと、どこからか流れてきた可能性があることを伝えた。

そのため、明日から海洋調査を行うことを説明して、本日の報告は終わった。


そう、終わったと思ったんだ。

だが……。


カサッ。


俺は机の上にある霧華の報告書を再び手にする。


「……この地域の外、大山脈から向こうの魔物の勢力図が変わっている……か」


霧華がもたらした、魔石の輸入元、グスド王国関連の情報。

そこからの輸入が途絶えたのが、今回の問題の始まりだ。

おそらく、この大山脈における魔物の勢力図の変容が原因と考えるのが、妥当なのか?

いや、別の可能性もあるような……。


「ユキ」

「旦那様」

「ん? セラリアとルルアか」


その声に視線を上げると、いつの間にかセラリアとルルアが部屋に入ってきていた。


「まったく。夜になっても執務室から出てこないって聞いたから来てみれば、あなたにしては珍しいわね。書類とそこまで格闘しているのは」

「なにか、大きな問題でもあったのでしょうか?」

「あー、いや、まだそれほど詳しいことが分かったわけじゃないんだけどな……。どうも、引っかかることがあってな。細かく言うと……」


今更嘘をついたり、ごまかす理由はないので、素直に事情を説明する。


「……大山脈に生息する魔物の分布が変わっている、と。それが今回のシーサイフォの海域に魔物が出現していることに関係しているのかもしれないって思ってるわけね」

「ああ。とはいえ、証拠はまだ不十分で、確定的な話ではないんだ。それも、何か見落としているようでな」

「何か、ですか」


ルルアが不思議そうに聞き返してきたので、俺は頷く。

そう、何か見落としている気がする。

俺がそんなことで悩んでいると、何か思いついたのか、ルルアが口を開く。


「ふむ。そうですね。では、これまで新大陸で行ってきたことを思い出してみるといいかと」

「思い出す?」

「あれですよ。紙に書きだして、これまでのおさらいをしてみるってことです。意外と見直しができて、思い出すかもしれませんよ。って、これも以前旦那様から教えてもらったことですが」

「そういえば、そんなこともあったな。でも、ルルアに言われて思い出したからルルアのお陰だ。ありがとう」

「いえ」

「とはいえ、新大陸に来てからの事なんてそんなにあったかしら?」

「まあ、忘れていることを思い出すっていうのが目的だからな。書いてみるとしよう。わざわざ保管資料をひっくり返して読み漁るのもな」

「あれは、多いから嫌よ」

「あはは、まあ、報告書は事細かに書かれていますからね」


そのための報告書なんだが、今までの軽い振り返りとして、何があったのかの概略を今後まとめる必要があるか?

と、そんなことを考えつつ、新大陸での出来事をまとめてみる。


・新大陸への誘拐

・ハイデンとフィンダールの戦争を仲裁

・ハイデンの妙な動きのため、カグラの親の公爵と面会へ

・ハイデン王都へ殴り込み叡智の集をたたき出す。


「叡智の集。そういえばこいつらの残党はどうなったんだ?」

「その後の報告は聞いていないわね」

「おそらくまだ捕まってはいないのでは?」


そんな話を交えつつ、書き連ねていく。


・大陸間交流の準備イフ大陸、ロガリ大陸を駆けずり回る。

・魔術学院での各国会議のための駐留……。


「って、おい、そういえば、各国会議のために学院にとどまっていた件はどうなったんだ?」

「いや、私が知るわけないでしょう。その後色々あったからそのまま後回しになっているんじゃない?」

「そうですねー。この後は、ハイレ教の凶行もありましたし……」

「……そういえば、そんなこともあったな。とりあえずまとめてみるのが先か」


・魔術学院で怪談を追って、行方不明の生徒がいることが判明

・ハイレ教の凶行が明るみにでる。

・ハイレ教総本山へ殴り込み、狂信者たちの捕縛に成功及び、狂神アクエノキを捕縛……。


そこまで書いて自分の手が止まる。

……思い出した。


「あっ、忘れてたのはこいつだ」

「アクエノキ? 誰だっけ?」


セラリアはどうやら、アクエノキのことはすっかり記憶の遥か彼方に行っているようだな。

ま、俺も書き出すまで忘れていたわけだが。


「……セラリア、一応、神だった方ですよ」

「……ああ、そんなのいたわね。今までの中でも一番インパクトなかったわよね」


インパクトどころか、股間を蹴り上げられて悶絶していたしな。

神の威厳もくそもなかった。


「……この方は、その力をルナ様に剥奪されて、放逐されたはずでは?」


とりあえず、なんとかルルアが先を促してくれる。


「そうだ。このアクエノキは、新大陸に残る残党を集めて狩る餌として放逐した。それから、国境沿いの国に行ったという話を聞いている」

「国境沿い?」


その言葉でセラリアの視線が鋭くなり、ルルアも目を見開く。


「まさか、アクエノキが今回の問題に関わっているということでしょうか?」

「いや、その可能性は低いと思う。シーサイフォの問題は俺たちが新大陸にやってくる前からだからな。アクエノキが放逐されてから動いたにしては、時期が合わないが……」


以前も同じ話をした。

その時も同じように時系列的にも、国境沿いという場所的にもシーサイフォとの関連性が薄いので、除外していた。

だが……。


「……確かにそうだけど、以前からというのは考えられないかしら?」


そう、セラリアの言うように、俺たちが関わってから行動を起こしたのではなく、以前からシーサイフォに手を伸ばしていたとすれば話は変わる。


「以前から? まさかそんなことが……」

「ルルア、セラリアの言う通りその可能性は捨てきれない。元々、一応裏で暗躍していたんだし、ハイデンであれだけの勢力を誇っていたんだ。まずは怨敵のハイレ教会、ハイデン、フィンダールが目的だったとしても、それだけってことはないだろう」


というか、あのアクエノキはこの新大陸を統べる神になるとか、小さいことを言っていたからな。

その後の展開を考えていても何の不思議もない。

まあ、何度も言うが、志はあまりに小さいが……。


「確かに、あれだけ密かにいろいろと広範囲にことを運んできたんですから、そういうことを考えていても不思議ではないですね。私たちがいなければ、そもそもアクエノキの野望に気が付けたかどうか……」


ルルアの言う通り、俺たちがいたからこそ、こういう流れになってはいるが、それがなければアクエノキはどこまで勢力を伸ばしていただろうか?

カグラたちがバイデの戦いを切り抜けて生きていたかどうかも怪しいし、ハイデンとフィンダールは大戦乱になっていた可能性もある。

それか意外とアクエノキがあっさり天下を取っていたのかもしれない。

と、そんなことはどうでもいいか。

アクエノキの野望は既に潰えているのは間違いないからな。

俺たちと出会ったのが運の尽きというやつだ。


「……そうね。私たちはあっさり倒してしまったから、拍子抜けしておざなりになってたけど、下部組織はまだ残っているのよね。それと合流した可能性は十分にあるわね」

「そうだな。さっき話した叡智の集の残党と協力している可能性もあるな」

「そういえば、そのあたりの情報はないのでしょうか? 霧華さん、何か聞いていませんか?」


そうルルアが虚空に向かって問いかけると、スッと暗闇の中から霧華が現れる。


「申し訳ありません。新大陸において、私たちアンデッドの動きは著しく制限されていますので……。しかしながら、鳥の魔物や、ハイデン、フィンダール、ハイレ教の協力で奴の動きは捉えています」

「もったいぶらなくていいわ。アクエノキは大山脈で何をしているのかしら?」


セラリアの言葉に霧華はすぐに口を開く。


「残念ながら、目標にここ数か月特にこれと言った動きはありません。鍛えなおすつもりなのか、ひたすら剣術の練習をしてはいるようですが……。これを動きといっていいのかは……」

「訓練……ねぇ」

「意外と真面目なのでしょうか?」

「今更地道だな。それとも本人はそう簡単には仲間と接触しないって言ってたからな。その意思表示ってことか?」


それならご立派なことだ。

俺たちにひたすら無駄な時間を使わせているんだからな。

本当に、俺の足を引っ張る能力だけは一流だよ。


「ま、今のところ動きがないのは分かったが、以前の動きが今回のことに何か関係している可能性もある。霧華はそっちの方を探ってくれ、主にハイレ教会の総本山と叡智の集に関してだな。こっちも王や大司教の方から当たってみる」

「はっ。お任せください」

「そっちも忙しいのにすまないな」

「いえ。こういう仕事こそ私たちの本分ですから」


霧華はそう言うと、再びスッと暗闇の中に消える。

……スキルとかを使って姿を消しているんだろうが、本当に忍者みたいだよなー。

と、俺がそんなことを考えていると、セラリアがおもむろに口を開く。


「で、大山脈と海、そしてアクエノキ。本当につながっていると思う?」

「……私は何とも言えません」

「まあ、どうかはこれからわかることだ。繋がっていなくても、忘れていた目障りな連中を始末できるんだから、これはこれでいいだろう」

「それもそうね。面倒ごとが二つになったと考えるよりはマシね」

「ですね。一つ一つ問題を解決していきましょう。いつものように着実に、確実にです」


ルルアがそう言うのに、俺たちは頷く。

そうだ。俺たちはそうするしかない。

確実に、一つ一つ情報を集めて確実に片づけてゆく。


「さて、となると、明日はカグラたちに叡智の集のことを聞かないといけないか」

「それに、ハイデン王との謁見も必要になるわね」

「エノル大司教からもお話を聞く必要がありますね」


と、そんな感じで、具体的な行動方針が示されていくのであった。


アクエノキが裏で手を引いているかもしれない……か。

待てよ、アクエノキっていうのはルナが言い出したことだっけか?

本来の名前は……なんだったけ?


「なあ、セラリア、ルルア。アクエノキの本名覚えているか?」

「は? アクエノキじゃないの?」

「えーと、えーと……待ってください。今思い出しますから……」


俺たちが本当に忘れているのはアクエノキの名前だったのかもしれないな。



みんな思い出したかな?

この大陸におけるユキたちの敵を!


その名もアクエノキ!!……の残党。


えーと、アクエノキの本名ってなんだっけ?

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