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リングナイツ~転生せしジパングでの戦国ロボット奇譚~  作者: 鬼京雅
インペラトル総帥・武杉ケンゲンとの決戦編
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風林火山の力

 ジパングの大空を蒼と赤の閃光が駆ける――。

 雪牙とケンゲンの戦いの最中、乾燥した大地ではユナイトファングがインペラトルの軍隊の猛攻を防いでいた。武杉ケンゲンに敗北した川島東湖は気持ちを切り替え、ユナイトを指揮し愛する土地を守り抜く。猫神はロアーシ大陸から雪牙達を運んできた疲労を抱えながらも、ユナイト総司令・冥地琴乃と共にこの戦局をワッカナイ支部で見つめた。

 二刀流で攻める雪牙はケンゲンと今は互角に戦っていた。

 お互いにまだ様子見という状況に雪牙は相手の余裕さを恐ろしく感じた。

 シエルリングのパワーでインペラシップを航行停止させた精神的ショックは敵将にはまるで無く、ひたすらにこのジパングを支配する事しか考えていないらしい。赤い髪を揺らすケンゲンは雪牙に迫る。

「虹の力はどうした!? もう使えないのか会桑!」

「焦るんじゃないわよ」

 ズバババッ! とヤヨイは肩のマイクロミサイルを射出する。

 それをヘソから放たれる必殺の黒い光、ブラックシャインで蹴散らし爆炎を上げて視界を殺した。

 ケンゲンはサッチョウドのヤヨイに攻撃を邪魔された事に憤りつつ、ドラゴンソードで煙を払う。

 サッチョウドはトサの汎用生、チョウシュウの多武装、サツマの空戦能力がある。

 このヤヨイの機体はサッチョウドの加速性能と攻撃力を向上させるクロスバーニアという十字架を備えたサッチョウドKBクロスバーニア

 KBはガトリング・ビームキャノンを出せる汎用携行兵器して作られている。打つ時は変形し補助武装としては十分過ぎるほどの力を秘めていた。ひたすらに煙の奥からケンゲンに射撃を加え続けるヤヨイは暴走しそうなナルに言った。

「ナル、雪牙の風林火山には数秒のタメが必要。時間を稼ぐわよ」

「仕方ないわね……ぐはっ!」

 ズガガッ! とケンゲンの侍従達のリングンナイツ・イガがその二人に対し迫る。

 五十以上のイガを相手に、ヤヨイは雪牙の援護を諦め目の前の敵に集中した。



 

 ケンゲンを守護する増援にヤヨイとナルは邪魔され、雪牙は一人で戦う。

 肥大化させた両肩の蒼円輪でドラゴンソードを受け止め、それを爆発させた。

 それに驚くケンゲンは後退する。

 「蒼円輪の裏に爆薬を仕込ませておいたのさ。それで死んだと思わせた……が、お前は騙せなかったようだな」

 雪牙は明らかに異様なオーラを放つ武杉ケンゲンに不快感を感じた。

 そしてその魔王の如き少女は動く。

「余を驚かせた事は褒めて使わす。余のリングナイツ姿を見て生きてる物は数人しかおらんからな。まぁ、主はもう死ぬが」

「死ぬのは貴様だー」

 と、雪牙は口走りケンゲンの首に剣を振り抜いていた。

 相手の話す時の無駄な停止の瞬間の瞬きを狙い、攻撃を仕掛けたのである。

「どうした? 首を飛ばすんじゃないのか?」

「このオーラは……人間か?」

 剣を握ったままの雪牙はケンゲンの圧倒的なオーラの前に自らの刃が通らない事を悟る。

 そして、雪牙から離されるヤヨイの眉間にシワがより目が細まり、ケンゲンの口元は笑う。

「さらばじゃ、蒼い炎」

「シエルリング!」

 シュパー! と一時的にシエルリングが覚醒し、虹色のパワーが開放され危機を脱する。

 しかしそれは瞬時に消え、刃をぶつける雪牙の勢いが落ち出していた。

(ヤヨイ達は敵に襲われているのか……時間さえ稼げれば風林火山を開放できるんだが)

「どうした? どうした? 今の力を見せてみぃ!」

(出来たらそうしてるぜ……くそっ! 時間さえあれば!)

 インペラシップを攻撃した時にシエルフェニックスは途切れてしまい、再チャージに時間がかかるという事は力を得たばかりの雪牙は気付いていなかった。それは戦闘中でもある為に、力を溜める時間を稼ぐのは難しい話だった。

「シエルフェニックスとやらにならなければ主は死ぬぞーーー!」

 瞬間、ピンク色の閃光がケンゲンを襲う。

 ケンゲンはドラゴンソードでそのサイドポニーの少女の拳を防いだ。

 新しい力を引き出そうとする雪牙の援護の為に、桃色エンジェルが颯爽と現れた。

「さーて、私の大活躍タイムの始まりよ」

「レーコ!」

「話は後。今は新しい力に集中しなさいな」

 雪牙の新しい力には時間がかかるという事を察するレーコはケンゲンに特攻する。

 しかし、面白いくらいレーコの拳は当たらない。

 すでにレーコの心の内を察するケンゲンは溜息をつき、

「レーコ。インペラシップに隠れていればいいものをわざわざ出てきたのは余に殺されたいという事じゃな」

「そうよ。貴女は好きだけど、このジパングの方がもっと好きなの」

「……そうか。答えが聞けてよかった」

 拳を繰り出したレーコより早くケンゲンの右手が動いた。

「ぐっ……!」

 無慈悲に腹部に刺さる剣に血を吐くレーコは笑う。

 ケンゲンは鼻から血を流していた。

「空気圧を拳にしたのか……カロリー流拳法と言ったか。全くもって天晴れな奴だ」

「そりゃそうよ。私はスーパーヒロインだからね」

 全てのカロリーを使い果たしたレーコの全身は胸を中心に萎んでいた。

 すでに戦う力を失うレーコは意識が飛びそうになりながら言う。

「カロリー使い果たして、スレンダーになっちゃったじゃない」

 細身の身体を見て、レーコは呟いた。

 そしてケンゲンは数日間愛した少女に別れを告げる。

「さらばじゃ、レーコ」

 ケンゲンの無情な拳が炸裂する。

 血が飛び、一体の死体が地面に落下する――はずだがそうはならなかった。

「……?」

 死んだはずのレーコはそこには存在しなかった。

 とほうも無いオーラを纏う雪牙に助けられていたのである。

 その圧倒的なオーラにインペラシップを破壊した時の力をケンゲンは感じたが、それとは多少違う感じがした。

「感謝するぞレーコ。これで風林火山は開放された」

「風林火山? それは何じゃ? まさかあの洞窟の……」

 その言葉を無視し、雪牙は地上に降下する。

 それにつられてケンゲンも降下した。

 雪牙はレーコを地面に寝かせ、赤い髪の龍のアーマーの少女へ向けて歩く。

 ドラゴンソードを構えるケンゲンはこれより無双される事を微塵にも思ってはいなかった。

 悠然とケンゲンが焼いた黒い大地を歩く雪牙は淡々と呟いた。

「風よ――」

 突如疾風が空間を満たし、見えざる風の刃がケンゲンを襲う。

 その危険性を察し、防御の動きに出る。

「ドラゴンミスト」

 ケンゲンの身体の周囲を保護するような霧がそれを防いだ。

「その程度か? そんなものでは――」

「疾きこと風の如く」

「? ――ぐはっ!」

 ケンゲンは生まれて初めて背中を攻撃された。

 それほどに雪牙のスピードは凄まじい早さだった。

「早いならこうするまで――」

 焦るケンゲンは周囲に乱撃を放った。

 しかし、その一つたりとも雪牙は当たらず空中で静かに瞳を閉じていた。

「徐かなること林の如し」

「このっ……!」

 完全に焦りを浮かべるケンゲンは雪牙を串刺しにしようと動いた。

 スッ……と瞳を開ける雪牙はマグマが胎動するような熱さを持って呟く。

「侵掠すること火の如く」

 かつて誰も傷をつける事が出来なかったケンゲンのリングアーマーの胸部分が崩壊した。

 それに激怒し、龍の血を燃やし出す。

「……消えろ」

 ケンゲンはジパングに一直線の黒い筋を生んだ一撃を繰り出した。

 この少女の必殺の一撃であるドラゴンサンクチュアリは空中の雪牙を完璧に捉えた。

 それを見ていたレーコは蒼い髪の少年を信じる。

「やっと消えたか。余の敵は存在しないのだよ」

 空間を満たしていた黒い煙が晴れると、ケンゲンの顔が歪んだ。

 蒼いリングナイツが平然と空中で立ち尽くしているのである。

「動かざること山の如し」

 風林火山を得た雪牙は、全てを超越するリングナイツになりつつあった。

 そしてケンゲンは圧倒的な雪牙の風林火山によりその王としてのプライドが、壊れるアーマーの破片のように飛び散っていった。無双する蒼い炎は完全なる勝利をユナイトファングに示しており、ケンゲンのドラゴンパワーが感染するインペラトルの兵の力が弱体化していた。

 ジパングの大地に倒れるケンゲンは、ゆっくりと立ち上がり目の前の少年を見据えた。

「この風林火山の力で十分お前は倒せるだろう。なぁケンゲン?」

「あの洞窟をクリアした程度で余に勝てるとでも思ったか。浅はかな奴よのぅ」

 もう勝てる要素の無いケンゲンは何故か余裕の顔であった。

 それは信玄のリングの能力がそうさせていた。

 このリングにはリングナイツを二体格納するスペックがあった。

 つまりは――。

「……では本気で行くか。クリムゾンファントム第二形態……クリムゾンファントムZの出番だ」

 ズゴゴゴ……! という地響きと共に、武杉ケンゲンはクリムゾンファントムの強化型であるクリムゾンファントムZにリングチェンジした。装甲はドラゴンの鱗に覆われ、赤黒いカラーに変化している。筋肉が肥大化するように機体そのものも大きくなっていて、その尻尾は凶器でしかない。

 邪龍そのものである凶悪な龍のリングナイツが出現し、そのドラゴンソードによる一振りはジパングの大地を完全に真っ二つにしてしまった。




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