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リングナイツ~転生せしジパングでの戦国ロボット奇譚~  作者: 鬼京雅
インペラトル総帥・武杉ケンゲンとの決戦編
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ジパングへ

 シュパァ! とリングチェンジしたレーコは武杉ケンゲンに宣戦布告をした。

「私は四ノ宮玲子! 武杉ケンゲン! 貴女を倒しに来た!」

 ビシッ! と決めたが、ケンゲンは特に反応する事も無く玉座に座りアクビをしてまた眠りそうになる。それを焦りながら、レーコが言う。

「ちょ、ちょっとアンタ聞いてるの?」

「レーコ、主は昨日から風呂に入っとらんだろ? 流石にちょっと臭いぞ。それにいい加減ジパングに到着するまでじっとしておれ」

「えっ……本当だ。でもここで食い止めなきゃジパングが……」

「ジパングよりも自分の匂いに注意しろ」

 レーコはあらためて自分の身体の匂いを嗅いだ。そしてケンゲンは、

「とりあえず、シャワーを浴びるがよい。戦うのは明日でもいいであろう。主の拳は鍛えれば余の右腕になれる。生き急ぐなよ」

 レーコは言われた通りシャワーを浴びて、少し休む事にした。ケンゲンの侍従の少女に案内され脱衣所で服を脱いでいると、

「全ての衣類はカゴに入れておいて下さい。全て洗濯しますので」

「ほーい」

 言われるまま、レーコはシャツと下着をカゴに入れ風呂場に入った。

 シャァァッー。

 熱いシャワーで身体の汗を流す。身体を洗おうとボディシャンプーをタオルに付けると、ガタッと突然脱衣所の扉が開いた。そこには一糸纏わぬ龍の尻尾が生えた赤髪少女、武杉ケンゲンの姿があった。

「ちょっと、何なのよ! 少しくらい隠したらどうなの? 自分の城だからって余裕ありすぎ!」

「自分の城で隠す必要なんてないであろうよ」

 そう言い、ケンゲンは中に入って来た。そして、レーコの身体を当たり前のように洗い始めた。

「天晴れじゃ! レーコの乳は凄い弾力だな。こんな途方も無い乳はロアーシ大陸にはおらんぞ」

「この大陸は寒くて必要な栄養素が足りてないのよ。ジパングの食料を得られればケンゲンの身体ももっと成長するでしょ。チョコを食いなさいチョコを」

「……そうだのぅ」

 ゴシゴシ、ゴシゴシ……とレーコの乳を洗いながらケンゲンは笑う。

 されるがままのレーコは鏡を見つめたまま、

「どうしても、このままジパングを支配しに行くのね?」

「そうだのぅ。いつまでも、この大地が凍結したロアーシにはいられんからな。陽のあたる場所で暮らす時が来たのだ」

「他人の生活を壊してでも?」

「そう、我はインペラトルの総大将故に部下共の面倒を見る義理も義務もある。領土を得るには和平は不要だ」

 言いつつ、ケンゲンは自分の身体を洗い始めた。

 そのタオルを奪うレーコはゴシゴシ、ゴシゴシとケンゲンの身体を洗い出す。

 すると、ケンゲンは自分の一族の過去と自分の話をしだした。



 武杉ケンゲン――。

 広大なロアーシ大陸を支配する武杉家の長女として生まれた。

 武杉家は別名龍一族とも言われ、特殊な戦闘能力を秘めた者が生まれる血筋でもあった。

 ケンゲンの父は生まれる前のケンゲンを男だと期待してたが女だった。

 しかし、龍の力を秘めて生まれたその女の赤子は途方も無い力で父を乗り越え、父の勢力を自分の絶対的な力で従えた。ケンゲンの心には女で何が悪いという反逆心もあったのかもしれない。その反逆劇の中、多数の男は死に絶え、生きる男は奴隷として従えるものとしたのである。

 龍の血を宿す者は世界を制す――。

 一族の中でも龍の血に目覚めた者は他の龍の血に目覚めた者を殺す羽目になる。

 王は二人いらないからであった。

 それ故、妹の泉はケンゲンと一緒にいるわけにはいかなかったのである。

「……この龍の力は自分でも抑えられない時がある。妹の泉にはこの力が完全に目覚めなくて良かったとも思う。人を殺さないと心が静まらない人生などは異常だ。この血筋は、余で終わらせようと思う」

「……」

 突然、ケンゲンから心の内を語られ黙るレーコはケンゲンの身体を洗う手を止めた。そして、ケンゲンと自分にシャワーをかけ泡を流した。

『……』

 二人は無言のまま、湯船に浸かった。

「会ってまだ一日ほどだけど、敵の貴女と裸の付き合いをして思った事は、私は貴女が好きよ。ただ、私は私の故郷であるジパングを壊すのは許さない」

「そう、それでいい。大事なものは命を賭けて守らないとのぅ」

 笑うケンゲンはレーコの頭に手を置く。

「負けないわよ。私も、ユナイトファングも、雪牙君もね」

「天晴れ! 天晴れ! レーコは骨のあるいい女だな」

「変な女ね……うわっ」

 ビュッ! とケンゲンは湯船の中で両手にお湯をため、飛ばした。

 そしてレーコの胸を揉んだ。

「あははっ! くすぐったい!」

「Fカップからさらに大きくなるように揉んであげるから覚悟するのじゃ。これに耐えられなければ余には勝てんぞ?」

「あははっ! わかったから勘弁してー!」

 敵同士である二人の女は風呂の中で、いちゃいちゃと互いの胸を触りあっていた。

 ジパングまでの空の旅の途中で、レーコはケンゲンにジパングの武道や好物のチョコレートを教える。 二人は次第に仲良くなり、絆のようなものが生まれていた。

 スロースピードで進んでいたインペラシップは三日がかりで南のジパングが見える場所まで到達した。

 その暖かい大地を司令室のガラス窓から見据えるケンゲンは、

「チョコレートは美味いのぅ。これは寒い地では重宝するな。でかしたぞレーコ」

「寒くても暑くてもチョコは美味いのよ」

「確かにそうかもしれん。美味い……」

 ケンゲンの口の中を支配する甘いチョコレートは、その思考を冷静にさせた。

 隣にいる女は、自分よりも一人の男を見ている事を短い日々の中で感じていた。

 そしてチョコレートをゴクリ……と胃に流し込み言う。

「余はレーコを愛しておる。故に会桑を愛する主の考えは読める。互いに辛い立場よのぅ」

 その冷ややかな笑みにレーコは息を呑んだ。

 ジパングでのインペラトルとの決戦はもうすぐである――。





 巨大な滝が流れている。

 その滝壺の人一人分の岩場に、ボクサーパンツ一枚の姿で雪牙はいた。

 風林火山の洞窟での修行を終えた雪牙はロアーシ大陸の南端の森の中にいる。

 全身が傷だらけであるが瞳の輝きは前よりも強く、自分に自身を持った蒼い髪の少年はたくましさを増していた。

 スッと上方より流れる滝を見つめ、バッ! と飛び上がった。

「はあっ!」

 ズブアッ! 雪牙のアッパーの風圧で、流れる滝が一瞬途切れた。

 キラキラキラッ……と飛び散った水滴が太陽の光に反射し、輝いた。

 それを一つ、一つ拳でとらえる。

 ドドドドドッ! と輝く水滴が全て消えると、

「うおおっ!」

 再び滝壺に向かって流れ落ちる滝に飲み込まれた。

 ザッバーン! 滝壺の底まで沈み、スイスイ泳ぎ浮上した。

 また小さな岩場に立ち、張り付いた前髪をかきあげた。

「……はああっ!」

 ズブアッ! と雪牙のアッパーが滝を吹き飛ばし、途切れた。

 飛び散る水滴を残らず拳で落とす。

 ザアアアーッ! と間髪入れず、上方からは流れる滝が雪牙を襲う。

 落下する空中でバランスを取りつつ、

「ずえあっ!」

 もう一度滝を上方に吹き飛ばし、流れを止めた。

 そして飛び散る水滴を拳で弾き落とす。

 ザッパーッ! と雪牙は滝壺に落下した。

「ぶばあっ! 能力を使わないフィジカルチェックはここまでで十分だろう」

 水の中から浮かび上がって来た雪牙は日も暮れてきた為、生身の自分の力がどこまであるかのチェックを終えた。そしてサンダルを履いて青いバケツを持ち、ヤヨイとナルのいる小屋に戻った。

 パチッパチッパチッ。

 古い小屋の中から、魚の焼けたいい匂いがする。

 小屋の真ん中の囲炉裏でヤヨイとナルは魚を焼きつつ、雑談をしていた。

 雪牙は自分の髪を乾かしていた。

「そろそろ焼きあがるわ……って、ナル。まだいただきますしてないわよ」

「アタシは空気読めないから」

 やれやれと思いつつ、パワーアップした二人と食事になる。

『いあただきます』

 じゅわぁと魚の油が溢れ出し、一匹の串を取り食べる。

「自然の力は偉大だな。この三日で、だいぶ基礎体力が上がった気がする。やってやるぜ」

 少し太くなった二の腕を見つつ、雪牙はつぶやいた。

 全ての魚を食べ終わると、囲炉裏の火を消し眠りについた。

 そこに肩に黒猫を乗せる猫神が現れ、ジパングでの決戦の役者は揃った。

 ロアーシの山奥は、満天の星が輝いていた。





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