風林火山の洞窟
風林火山の洞窟。
そこに雪牙とヤヨイは来ていた。
ロアーシ大陸のインペラトル基地の地下にあるその場所は、基地そのものが戦艦として飛び立った為に誰もが侵入できる場所に成り果てていた。
「ここが風林火山の洞窟……」
雪に隠れるその洞窟の前で二人を見つめる紫色のショートボブの少女がいた。
それはケンゲンに始末されたはずのナルだった。
生体兵器の細胞を無理矢理移植した事により、身体能力が向上し再生能力が多少身についていたらしく死亡する事がなかったようである。ある意味不死身ともいえる空気の読めない少女に雪牙は、
「お前も死にぞこないかナル」
「死ななければいつか勝てるわよ。空気が読めないアタシは無敵なのよ」
「戦いが好きなんだろ? 相手がいないなら一緒に戦おうぜ?」
「一緒に戦う?」
敵であるはずの男がよくわからない事を言う為、ナルは雪牙の話を聞く。
これから修行に向かうこの洞窟を敵から死守すればジパングに行く手段と再度ケンゲンと戦う権利を与える条件で一時的に同盟を結ぼうという話だった。その話はナルの興味を引いた。
「ムフフ。いいわよ。ここで互いにパワーアップするのね。ケンゲンの部下が現れればそこからリングナイツの装甲を剥ぎ取って新しい武器を生み出してやるわ」
生体兵器の細胞を自分にも移植し、ナルは機体を進化させる能力を得た事でダークグリードを生み出す事に成功した。そして、リングチェンジすれば自らの意思で可変型になる。基本は白兵のスピアー使いだが大砲でも、戦闘機にでも変形は可能であった。
「さて、ケンゲンの犬が現れたわ。早く洞窟に入りなさいな」
「頼んだぞナル」
遠くの方から赤いリングナイツの群れが迫って来ており、雪牙は風林火山の洞窟周囲を守らせる事で自分が修行に集中できる環境を作る事に成功した。雪牙とヤヨイはその薄気味悪い洞窟の奥に侵入して行く。
※
奥へ――奥へと進む雪牙とヤヨイは正面から流れてくる冷たい風に目を細めながら話す。
それは、二人の絆であるシエルリングの話であった。
「シエルリングは私が生まれて来た証を生み出す為のもの。貴方との絆でもある。勝機はそのリングにしかないわよ」
「あぁ。俺が七属性全てを使いこなしてケンゲンを倒す。どんなに身体が痛もうが俺は不死身だから関係無い」
「いい覚悟だわ。この風林火山の洞窟はケンゲンでさえ嫌う場所でもあるからね。この痛みを超えれば虹の加護が貴方を包むはずよ」
薄く微笑むヤヨイは自分の新兵器の話をする。
やけに饒舌なヤヨイに雪牙は一年以上前の光景を思い出していた。
「これは私の新型兵器よ。この推進と攻撃の両方に使えるクロスバーニアを使いこなせればサッチョウドは更に強くなる」
サッチョウドの新兵器大きな十字架のようなKBを扱うというヤヨイは立ち止まる。
ついに、最深部である扉の前に立ったのである。
「この風林火山の洞窟はロアーシの地獄監獄。罪人に地獄を味わあせて始末するものだけど、逆に取ればこの試練を越えればケンゲンを超える事も出来るはず」
ケンゲンですらこの内部に長時間いた事も無い為に雪牙はこれを乗り越えジパングへ向かった巨悪を倒そうと考えた。危険な事を承知しているヤヨイだったが、ここでケンゲンを倒さねばまだ見ぬ大陸さえもケンゲンの軍事支配国になる事は明白だからである。二人は、呪いの札のようなものが多数貼り付けられる扉を開き内部に入った。
『……!』
内部の異様な感覚を二人は一瞬にして肌で感じ取る。
この場所は時間の感覚が通常世界よりも遅く、気温は高く、空気は薄い。
人間的な感覚が全て薄れる風林火山の洞窟というのは、過酷さだけが支配する正に異空間そのものだった。
「ここで風林火山を得る。それが勝機に繋がるはずよ」
「風林火山か……それがあれば俺はケンゲンを倒せるのか。やってやるぜ」
崖の前に出ると、雪牙の前髪が多少切り裂かれた。あまりにも鋭利な風に二人は息を呑む。
「身を切り裂く風……風林火山の風の試練か」
「えぇ、先に進めば林に火に山の試練が待ってる。私はここで貴方のサポートをするわ。死ななければ助けにに行くわよ」
「俺は、不死身だぜ」
そして、雪牙は崖から飛び降り風が吹き荒れる奈落の底が見えない空洞の中へ飛び込んだ。
雪牙はリングアーマーを鋭利な風によって刻まれた。
かくして、各々の修行は始まりついにジパングにたどりついたインペラシップはその巨大な姿をジパングの人々に晒していた。これから、ジパングは龍一族の女との死闘を迎える事になった。




