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リングナイツ~転生せしジパングでの戦国ロボット奇譚~  作者: 鬼京雅
インペラトル総帥・武杉ケンゲンとの決戦編
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二幕~相棒再び~

 武杉ケンゲンの指揮する生体機動戦艦・インペラシップはジパングへ向けて進撃を開始した。

 寒空のロアーシ大陸に残る雪牙はかつての相棒であるヤヨイと再会していた。

 互いにケンゲンから手傷を受ける男女は特別な遠慮も無く話す。

「……お互い、無様な格好だな」

「私の方が少しはマシよ」

「その減らず口があればまだ戦えそうだな」

「無理よ。ジパングに向かうケンゲンを止められる者はいないわ。あの化け物にジパングは支配され、全ては終わる。逆にもうロアーシの方が安心よ」

 全てを諦めたかのようなヤヨイは呟く。

 風がヤヨイの金髪を乱し、雪牙はうつむく目の前の女が儚く散る前の花に見えた。

 そして雪牙は指に光るリングを見つめ、

「シエルリングのパワーは奴を倒せる可能性がある。だからこそお前は俺にシエルリングを渡したんだろう? 龍一族は虹の光に滅ぼされる言い伝えがあるとか言ってやがったぜ?」

「それでも貴方は負けたでしょう? もう全ては終わりなのよ。私の身体も長くは持たない」

「長くは持たない? どういう事だ……」

「知っての通り私はケンゲンが生み出した無数にいる人間生体兵器の中の成功体。無数のクローンである私の目的はもう完全な生体兵器を手に入れた事により果たした。所詮クローンの寿命などは長くないのよ」

 そして、ヤヨイの話はケンゲンと決別した時の話になる――。





 インペラシップ内部。

 その司令塔である武杉ケンゲンの座る玉座の前にはヤヨイがいる。

 玉座の左右に侍従は立ち、外の吹雪の激しさよりもこの空間に漂う情熱の方が凄まじい事を侍従達は感じていた。今までケンゲンは侍従達とトランプをしていたのか片手にはトランプが数枚握られている。

 いや、その相手は先ほどまで敵として戦っていたレーコであった。レーコはケンゲンに気にいられジパングへ進撃最中のこのインペラシップにいた。まだ実の妹に破壊された艦内は再生中であり、その鼓動は床を伝わって全員にこの戦艦が生きている事を認識させる。スッ……と片手を挙げ、侍従達をこの室内から下がらせた。二人きりになる空間でケンゲンは傲慢な笑みを浮かべ、ヤヨイを見据える。

 ヤヨイは小さい小箱を片手にケンゲンの玉座に向かって歩く。そして多少の距離を置き、ヤヨイはその小箱を開きケンゲンに見せた。

「約束通り、不死身の力を与える雪牙の心臓にある家康のリングを持って来たわよ。これで私の願いを叶えてくれるのね?」

「よくやった。ここまで、生体兵器として余に使え、このインペラシップを生体機動戦艦として完成させた事を褒めて使わすぞヤヨイ」

「そう、ありがとう」

 薄くヤヨイは微笑む。

「褒美を使わすが、何がいいか?」

「褒美? それはインペラトルでの地位という事? それとも金塊的な……」

「どういう風に死にたいか、を聞いているのだ」

 そのケンゲンの嗤いにヤヨイは自分の今までの全てを見破られていると思った。

 事実、ヤヨイは裏でケンゲンを倒そうとしていた。

 雪牙を殺せるチャンスはあったが、あえて殺さなかった事がキッカケになりケンゲンには心の内を看破されていた。

「奴にシエルリングを与えたのはヤヨイだな? だが、所詮、龍の力に勝てる者はおらんのだ」

「過去の文献によれば、気高き龍は虹の光にその身を滅ぼすというらしいわよ」

「それは迷信だのぅ」

 ハハハッ! と恫喝するようにケンゲンは笑う。

「主には不死身を呑み込む力があったのに使わなかったか。まさか氷の人形が恋心か?」

「さぁ、どうかしら?」

「答えをはぐらかすとは、認めていると同じだぞヤヨイ」

 ヤヨイが渡した雪牙の心臓にあるリングを手で遊ばせるケンゲンは、

「余を殺すウイルスでもあるのだろう? このリングには。会桑のリングがそう簡単に手に入るはずが無いのは余にもわかっておるわ」

 ピン! と指を弾きリングをヤヨイの額に直撃させる。

「くっ!」

 全く今の動きに反応できないヤヨイは床に倒れながらもリングチェンジをした。

「ヤヨイ、貴様はもういらん。余にはレーコがおるからのぅ」

 そばのレーコはどうする事も出来ず、ヤヨイを見つめる。今更この女を助けるという個人的な感覚が湧かず、雪牙なら助けるだろうという葛藤の板挟みに合い動けない。

 ヒュン! と瞬時に動くケンゲンはヤヨイの背後をとり、

「マジック・トランプ」

 高速で舞うトランプの空間に閉じ込められ、そのトランプはヤヨイに牙をむいた。

「ああっ……!」

 ヤヨイの身体は、トランプで全身を刻まれ倒れた。

 片手で持ち上げられるヤヨイはケンゲンの無情な瞳を見た。

「会桑もこの地で始末しといてやろう。人形は雪の中で眠るがいい」

 司令室のガラス窓が開かれ、赤い閃光に撃たれたヤヨイは吹雪にまぎれて宙に消えた――。





 自分がケンゲンに倒された後、紅水泉が倒されヤヨイまでもが倒された事を知る雪牙はじっ……とヤヨイを見据えていた。レーコが人質に取られてはいるが、今は目の前の少女を救う方が先決であった。もうすぐ自分の寿命が尽きる事を悟るヤヨイは苦しげにもう一度ケンゲンに立ち向かおうとする蒼い髪の少年に言う。

「ケンゲンは龍一族の特別な存在。すでに勝てる相手でないのはわかってるはずよ。この地で生きていきのも悪くないはず」

「……それが本当に幸せなのか? もうすぐ死ぬ人間の弱気に付き合う事は出来んな」

 その言葉に、ヤヨイは抑えつけていた激情を露にした。

「私は……ただのクローン! この気持ちが人間のお前にわかるか!」

「んなもんわかるわけないだろ!」

 ガスッ! とヤヨイの胸ぐらをつかみ、

「クローンだから人間じゃないだって? なら今まで俺と過ごした一年近いインペラトルとの戦いの日々で周りの連中に言った言葉、感情はなんだ? クローンだとかクローンじゃないとかそんなものは関係無い! ヤヨイ! お前は人間なんだ!」

「――!」

 その言葉にヤヨイは全てを打ち砕かれ、雪牙の挑戦する意思に従おうと思った。

 かつて、たった一人でロアーシの地に現れ武杉ケンゲンの野望に気付きそれを打ち砕こうとした愛する少年に。

「……そこまで勝ちたいならケンゲンと私しか知らないあの洞窟に向かうしか無いわね。地獄だけど生き残れば短期間でのパワーアップは確実よ」

「よし、そこへ向かおう。ここからは時間との戦いだ。ジパングが支配される前に奴を越える力を得てやるぜ」

 再び相棒となった二人はとある洞窟へ向かって歩き出した。

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