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リングナイツ~転生せしジパングでの戦国ロボット奇譚~  作者: 鬼京雅
インペラトル総帥・武杉ケンゲンとの決戦編
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蒼と赤

 怒りのようなオーラが赤髪を逆立てる武杉ケンゲンから沸き立ち、赤い光に包まれていく。

 それに呼応するように雪牙もオーラを全開にした。

 火・水・土・雷・風・木・金――。

 七色の属性が身に纏われ、猫神からもらった七属性全てを引き出すサポートリングにヒビが入る。

「行くぞ! 武杉ケンゲン!」

 グンッと地面を踏み込み、雪牙は玉座で悠然と構えているケンゲンに肉薄するが、

「我、思うは緑の安らぎ」

 ケンゲンが呪文を詠唱すると、右手に持ったホワイトブックが緑色に輝き、地面に落ちている小石に意思を与え、雪牙を襲わせた。シュパパパッ! と局地的な嵐のように、雪牙の装甲に傷をつける。

 パラッ、パラッと意思を失った小石が地面に落下すると、雪牙は両手である程度の小石を破壊していて無傷だった。

「中々の反応速度だな。泉よりは楽しめそうかの」

「楽しむ余裕なんかあるかよ!」

 そのままの勢いで雪牙は斬りかかった。チッとケンゲンの左肩のマントの生地が吹き飛んだ。だが、ケンゲンは顔色を変えず、

「我、大地の眠りを呼び覚ます」

 突如、グラグラグラッ! とインペラトル基地全体に地震が起きた。

「なっ、くそっ!」

 激しい揺れに雪牙は足をとられ、転びそうになった 瞬間、

「我、灼熱の線を放つ!」

 ホワイトブックが赤く輝き、ビーッ! と赤い光線が左腕を貫いた。

 そして、地震の揺れが収まり、左腕を押さえながら雪牙は立ち上がった。

「特殊な本だな……次の手が読めん」

「このホワイトブックは様々なリングナイツの能力を封じてある書物だ。そう簡単に攻略出来ると思うなよ」

 自信有りげに、ケンゲンは答えた。そしてケンゲンは、周囲の空気から小規模な竜巻を発生させた。

 ゴオオオオッ! と荒ぶるその竜巻は、雪牙の方へ進んだ。

「くっ、これは凄い竜巻だ……」

 バッ! と右のスペースに飛び、竜巻を回避したが、ドンッ! とホワイトブックによって生み出された風圧によって背中を叩かれ、竜巻に突っ込んだ。

「ぐああああっ!」

 激しい竜巻に巻き込まれた雪牙は宙を舞った。そして竜巻が消えると共に、ドサッ! と地面に落下した。

「フフッ、油断大敵だ」

 ボロボロになったカブトを脱ぎ捨て、雪牙は立ち上がる。

「流石はナルを簡単に葬っただけの事はあるな。貴様は本当に危険な存在だ……ジパングには行かせられないな」

 そう言うと、研ぎ澄まされた殺意を持って呪文を詠唱した。

「我、大地の眠りを呼び覚ます!」

 グラグラグラッ! とまたもや地面が振動した。

「その技はさっき見た!」

 バッ! と空中に飛び、天井の一部につかまった。フッとケンゲンは笑い、

「甘いな。我、抱擁するは鋼鉄の愛!」

 突如、生命を帯びている艦の鉄がグイッ、グイッと曲がり始め、雪牙の身体を拘束した。

「あああっ! くそっ、動けない!」

 鉄の圧迫で、ミシミシミシッ! と体が悲鳴を上げる。そんな姿の雪牙を見つめ、

「ハハハ ッ! 無様だな、会桑雪牙! レーコは頂くぞぇ」

 ケンゲンは悦に入った笑いをしながら、呪文を詠唱した。

「我、憤怒の魂を持って焼き払うは、悪なる者!」

 ホワイトブックから、怒りや憎しみなどの感情を纏った黒き火球が発生し、鉄に体を拘束される雪牙に迫った。

 ブオオオオオッ! 暗黒の炎は一瞬で雪牙を焼き尽くし、地面に落ちた装甲の一部が無残に燃えていた。

「さらばだ、会桑雪牙……」

 ケンゲンは鎮火して黒くなった地面を見つめ、玉座で微笑みレーコの顔を見ようとする。

 が、ゴスッ! と背中に激痛が走り、吹っ飛んだ。

 ズザァ! と地面を転がり、壁に激突した。レーコの瞳は雪牙に釘付けになっている。

「……貴様、生きていたとは……」

「ふうっ。ギリギリだったぜ」

 パンツ一枚姿で雪牙は立っていた。全身には、火傷の跡が多く、痛々しい。

 あの瞬間。ケンゲンが暗黒の炎を放ち、まず拘束していた鉄が燃えて拘束が解けた。その一瞬をつき、リングナイツを解除しアーマーを脱ぎ捨て脱出した。何十にも張り巡らされた鉄の拘束具は、逆に雪牙を攻撃に転じるきっかけを作ってしまった。

「ぐあっ……」

 再度リングチェンジし雪牙はホワイトブックを持つケンゲンの左腕を踏みつつ、

「終わりだ!」

 と剣を構えた瞬間――カァァァッ! とケンゲンの右手にある信玄のリングが、物凄い殺意を持って輝き始めた。赤い輝きが一つの太い光になり、ぬうっと赤いリングナイツが具現化した。

 全身を赤で身を固めた、赤い龍のようなリングナイツが生まれた。

 全身をドラゴンの鱗で覆われる硬質な装甲と、尻から生える鋭い尻尾。そして右手にある冥府魔道さえ切り裂くような龍の大剣ドラゴンソード。体中から世界そのものを否定するかのようなオーラを発している。

 悪意の象徴であるかのような存在。

 そう、それこそが武杉ケンゲンのリングナイツ――。

「クリムゾンファントム……」

 レーコはユナイトファングの授業中にジパングの過去の歴史の中で聞いた事のある名を呟いた。

 それは伝説の龍一族の幻のリングナイツであるクリムゾンファントム。

 そして、先ほど敗北した圧倒的なパワーを秘めたリングナイツ。

 カブトを後ろに跳ね上げるケンゲンは長い髪をかきあげ、レーコの方に振り返った。

「よく見ておけレーコ。あの男は余の力で死ぬのだ。不死身の呪いなど、この余の前では無意味よ」

 ケンゲンは両手を広げ闇夜に浮かぶ、三日月すら凌駕する存在感で言った。

 



 ザッとケンゲンは一歩前に進み、一本の赤い日本刀を取り出し、地面に突き立てた。

 それに雪牙とレーコはただ見つめるしかない。

 次元が違い過ぎる――。

 目の前の幼女のリングナイツのオーラは相対する者に戦意を失わせ、動きと思考を止めてしまうには十分過ぎるほどの総量だった。その幼女、武杉ケンゲンは言う。

「ジパングへ向かう狼煙だ。褒美を受け取れ不死身の少年よ」

 雪牙の足下に赤いの五芒星が現れ、天空へ一直線に伸びた。

「!? ぬああっ――!?」

「所詮そのシエルリングのパワーはまがいもの。自らが引き出した虹の力でない以上は恐れるに足りん。龍が虹に召されるという過去の迷信は余が払うのだ」

「ぐおおおおっ! ケンゲンーーー!」

 もがく雪牙の身体は地面から伸びた五芒星に押し上げられ、宙で散った。

 そして、五芒星の光が消え、天を切り裂く赤い光と共に雪牙は消滅した。

 それを見届けたケンゲンは口元を歪ませる。

 焦るレーコはケンゲンに駆け寄り言う。

「雪牙君はどうなったの?」

「どうやら余の呪縛から脱してこの基地の外に落ちたようだ。運のいい奴よ」

「生きてるのね……なら問題ないわ」

 そのレーコの安堵する顔にケンゲンは嫉妬するように憎しみの感情が芽生えた。

「では、次にあの小僧を倒せばレーコは余のものとなる。でなければこの世を破壊するぞレーコ?」

「いいわよ。雪牙君は負けないから」

 真っ直ぐな瞳でレーコは言った。

 ケンゲンは生まれて始めて嫉妬という感情を覚えた。

 その炎は雪牙を焼き尽くす炎である事は言うまでも無い――。

「――武杉ケンゲン! アンタを倒しに来たわよ!」

「今更現れて何が出来る? 龍一族の中途半端な血筋を受け継ぐ哀れな妹よ」

 高らかな叫びと共に、紅水泉であるクリムゾンウォーターの炎姫が現れた。

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