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リングナイツ~転生せしジパングでの戦国ロボット奇譚~  作者: 鬼京雅
インペラトル総帥・武杉ケンゲンとの決戦編
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捕食者・ダークグリード

「ふぅ……」

 カブトを外す雪牙は流れる汗をぬぐっていた。

 猫神の秘密基地で回復した体力も底をつきつつある。

 霞む目を凝らし、赤色のサツマがいないか深い森の中を注視する。

 炎射弾を放つクリムゾンは、また林の影から現れる苛立つ。

「……もう一時間近く立つわよ……二分おきに三機ずつ現れやがってーっ!」

「また中途半端に三機だ! レーコ、一度基地に撤退するか?」

「無理だわ。私達はどうやら敵の鳥籠の中にいるようよ。今撤退したら完全に基地がバレるわ」

「それどころじゃないだろう!?」

「まだ見つかるわけには行かないわ。敵の頭も現れていないし、まだ危機的状況ではないわよ。落ち着いて雪牙君」

 白い息を吐き、敵のサツマを倒す雪牙は言う。

「……敵の頭は相当キレる奴みたいだな。俺達は敵の術中にはまっている。ミストジャマーもやけに濃い。このままじゃ疲弊した所をやられるだけだ」

 その間、クリムゾンは残る二機を破壊していた。爆発の灯りが炎姫の顔を照らす。すぐさま移動し、炎姫は岩場の影に身を隠す。雪牙は意識を周囲に集中し索敵をする。後ろで二人を見つめるレーコは二人の疲労感を肌で感じた。

(……一時間近く数分おきに三機ずつ敵が現れる。敵が一斉に仕掛けてこない以上、こっちも残りのパワーを気にしないとならない。この持久戦はキツイわね……。相手をじわじわといたぶるような戦略……これが武杉ケンゲンの作戦……?)

 この作戦の指揮者を頭に思い浮かべていると、森の奥からぬうっと次の三機が現れた。

「もう五十以上の敵を倒してるわ。そろそろケンゲンが来るんじゃないのクリムゾン?」

「そう……ね。そろそろ敵の指揮者も現れそうだわ」

「だといいわ。長期戦は苦手よ!」

 レーコは一発の直撃を受けるが、歯を食い縛りながら拳で二機を仕留めた。残る一機は後退しながらライフルを放ち続ける。それを追う炎姫は間合いをつめる。

「待てクリムゾンっ!」

「何っ!?」

 雪牙の突然の叫びにクリムゾンは炎姫を停止させた。すると、目前のサツマは周囲にいつの間にか現れるハエのような小型の機械虫に囲まれ――。

「なっ!」

 という雪牙の叫びと共に捕食された。

 そして、その機体はやがて姿を大きく変えて行く。

 内部の人間が息絶えた機械の残骸に、紫のリングナイツが近づく。

 その周囲に飛ぶハエに似たナエと、野獣のようなリングナイツの紫のカラーにその場の全員は一人の少女を思い浮かべる。

 元ユナイトファングの戦闘快楽少女。

 空気を読まないノットエアーリーディングの鳴沢無読であるナル。

 その少女は機械を捕食しながら話し出す。

「ムフフ。残念だったわねぇ雪牙ぁ。アタシはヤヨイの細胞を自分で移植して再生能力を得たのよ。だから簡単には死なない身体になったの……そしてリングナイツも専用機を生み出せたわ。私の愛機はダークグリードよ」

 このダークグリードはナエを使い敵の機体にウイルスを仕込み停止させ、それをナルが喰いパワーアップする。そして自由に新しい武器を生み出す力さえ生み出していた。正しく戦闘狂の生み出す機体である――。

「さーて、このダークグリードの力を試させてもらうわよ。まずは誰を……」

「アタシはパス。だいぶ身体が暖まって来たから炎の充電といくわ。じゃあね」

 そのままクリムゾンは空を飛行し消えて行った。

「ちょ! クリムゾン!」

「待てレーコ。俺達はあいつとは一時的に共闘しただけだ。今はケンゲン戦に影響しそうな敵を倒すのが先」

 言いつつ、雪牙は雅神剣を抜く。それに頷くレーコもファイティングポーズを取る。

 自分の周囲にナエを展開させズズズ……と長いスピアーを生み出すナルは、

「あの戦闘バカ女が消えたのは残念だけど、ケンゲンの近くにいればまた会えるでしょう。まずはアンタ達を殺す」

『……』

 ダークグリードから伝わってくる威圧感が、雪牙とレーコの肌に鳥肌を立てる。

 そして、レーコの拳が開戦の合図になった。

「はああああああっ――」

 ズゴン! と凄まじい拳の一撃が地面を破壊し、土煙が上がる。瞬時にナルはナエを放った。互いに互いを見えない状況の中、ナエは獲物を求め飛ぶ。巻き上がる土煙の中を、一機の蒼いリングナイツが一直線に駆け抜ける。

「ナエ共よ! あの蒼い奴に絡まれろ!」

 命令を受けたナエの群れは雪牙に特攻する――。

「桃色ファンタジー!」

 瞬間、ズババババッ! とナルの背後に躍り出たレーコの乱打が炸裂する。更に加速しナエの群れを突破する雪牙はダークグリードにとどめを刺そうと剣を突き出す。

「きゃあああっ!」

 と、レーコの悲鳴が上がり雪牙の動きが止まる。

 禍々しいスピアーに腹部を刺されるレーコにナルは微笑む。

「……土煙でブラインドしてからの背後からの不意打ち。考えはいいけど、こっちのナエは防御にも使えるのよぉ」

 必殺のレーコの一撃は全てナルの背後を飛んでいたナエに防がれていた。二十いるナエの半数を失って多少のダメージを受けるが、ダークグリードは平然としている。

「――許さん!」

 すでに動き出す雪牙は剣をナルの眉間に突き刺していた。

 呆気に取られるナルは笑う。

「ムフフ。アンタが一瞬動きを止めた時にナエが取り付いていたのよ。だからマヒでもう動けないわ」

「……迂闊」

「アンタは後。まずはこの女を喰おうかしら」

 闇に染まるナルの瞳がモズの早贄のようになるレーコを見据え、地面に落下する雪牙は痺れる身体を動かそうと必死になる。ナルの左手にナエが集結し、大きな獣の口のような形状であるグリードファングに変化した。それを見た雪牙はシエルリングにオーラを込める。

(か……風よ!)

 ブオオオッ! とシエルリングの自然力である風が発生しダークグリードの動きを止めた。そしてもう一つ使える属性である炎を生み出し、無防備な自分の身体を焼く。そのダメージで再生する身体はマヒの効果も無効化した。

「今助けるぞレーコ!」

 上空に巻き起こる積乱雲の中を突き抜ける風のように雪牙は飛ぶ。

「コイツ!」

 すでにレーコのカブトを食べていたグリードファングではない右手のスピアーで攻撃するが軽く弾かれ、ダークグリードは後方に下がる。すると、腹部を抑えるレーコが雪牙の隣に浮かぶ。

「レーコ地上にいろ。その深手では奴には勝てない」

「そんな隙をくれる相手かしら?」

 敵の絆のようなものを感じたナルは左手のダークファングをガシガシ! と噛み合わせ、その絆も何もかも喰ってやるという獰猛さを見せた。そしてスーッと地上に降下し、雪牙達もつられるように降下した。湧き上がるオーラを自分の左手に集中させるナルは言う。

「武杉ケンゲンのパワーは異常よ。おそらくこの世のリングナイツ全てを相手にしても勝てないほどのパワーを秘めてるわ。だからアタシは他人のパワーを吸収する能力を得た。このパワーアップ方法ならいずれケンゲンに勝てるでしょうからねぇ」

 重いナルの言葉と共に、左手のダークファングから新しい武器が生み出される新たに作られた巨大な斧がナルの手に握られ、軽々しく降り下ろされる。神の鉄槌のごときその一撃は、地面を大きく抉り取り森の一部を破壊した。激しい土煙が上がり、周囲の視界がブラックアウトする。同じ手を使うかと思う雪牙は左目を明けつつ思う。

(何て一撃……パワーアップしすぎだろ。こいつはここで倒さないと厄介な相手になる……レーコは……!)

 すると、ダークグリードはレーコの背後から巨大な斧を降り下ろす瞬間だった。

「レ――」

 その攻撃に気がつかないレーコは、周囲に目を凝らし状況確認をしていた。接近する斧を見る雪牙はもう避けきれない事を悟り、何かを覚悟するようまばたきをした。

「ぐぎゃあああああ!」

 亡者のような甲高い声を上げるナルは左手を抑え絶叫する。

 ダークグリードの力と生体兵器の細胞を取り込んだ力を使いこなせないナルの身体は限界を超えていた。グリードのウェポン化の暴走を引き起こし、自身の生命の危機に陥っている。

「積乱雲が出てる以上、天候が悪くなるわ。早く倒して一度身を潜めましょう」

「そうだな。俺の技で倒す……」

 上空を見上げる雪牙はシエルリングにオーラを注ぐ。

 虹色に輝く光に見とれるナーコは天空と共鳴するようなリングの波動を感じる。

 もがき苦しむナルは左手のダークファングからオーラを射出し、周囲の地形を破壊しまくった。その攻撃に身動きもしない雪牙は風を発生させ炎を生み出す。そして積乱雲を眺め飛んだ――。

「風と炎――そして雷だーーーっ!」

 上空の積乱雲を利用し、自然力三つを叩き込んだ。

 肉が焦げる臭気が雪牙の鼻腔を刺激し、黒コゲのナルは倒れる。

「よし、行きましょう」

「……あぁ。早くその腹部も治療しなきゃいけない」

 二人は急いで猫神の隠し基地に戻った。


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