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リングナイツ~転生せしジパングでの戦国ロボット奇譚~  作者: 鬼京雅
インペラトル総帥・武杉ケンゲンとの決戦編
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桃色の援軍

 暗闇に包まれる森のロアーシ広域演習場を蒼いリングナイツが闇を切り裂くように進んで行く。意識を取り戻したクリムゾンも雪牙の隣で併走していた。やはりこのクリムゾンウォーターの正体は紅水泉という事で雪牙は安堵していたと同時に、何故名前を変える必要があったのかを疑問に思っていた。

「この道を真っ直ぐ行けば民家の少ない街の外れに出るはずだ……そこでリングナイツを解除して……って何か匂うぞ?」

「あー、うんことおしっこ漏らしてた。ちょっとパンツ脱ぐわよ」

「待て! ここで脱いでも捨てる場所が無い! あそこの崖付近で捨てるんだ」

 こんな敵地の真っ只中で汚れたパンツを捨てられては敵わない雪牙は少し先の崖を見て言った。しばらく進み、二人は途中の崖の前でゆっくりと停止した。

「そろそろいいでしょ……」

「泉……いや、クリムゾン。大丈夫か?」

 フラッ……と倒れたクリムゾンは全身の力が抜け、炎姫を解除した。極度の疲労からクリムゾンは倒れたまま眠っていた。目元にしていた仮面は落ち、美しい素顔が露になっている。地面の土の上に倒れる赤い髪の少女を、雪牙は叩き起こす。

「起きろクリムゾン! まだここは敵地だ! せめてこの演習場だけは抜けないと数時間後の夜明けから演習が開始されるかもしれん……いや、今の場合は単純な捜索か。とにかく、暗いうちにこの場所から逃げないと不味いんだよ……って起きてくれーっ!」

 バシバシ! とクリムゾンの頬を叩くが、一向にクリムゾンは起きそうにない。せめて目の前の洞窟らしき場所に身を隠さないと思う雪牙は自身の体力の消耗も考えつつ思う。

「このままでは追撃部隊に捕まる……。武杉ケンゲン。まさかあれほどの凶悪な力を持っているとは……」

 指にあるシエルリングを眺めた。

 ヤヨイが言うにはシエルリングの七属性全てを開放しなければケンゲンには勝てないという。

 しかし、一人の人間が自然の七属性全てに適合するのは不可能である。

 ふと、月明かりに照らされていたクリムゾンの顔の影が濃くなる。

 そしてハッ! とした顔で突如起き上がった。

「……良い匂いがする……これは目玉焼きの匂いだわ。食べたい……! アタシ生きてる……ってのと、ここどこ?」

 好物である目玉焼きの匂いで目覚めたクリムゾンはキョロキョロと周囲を見つめた。そして洞窟の中に走り去る。

「チッ。あの女」

 急いで雪牙も後を追う。

 洞窟の奥は電灯の光が灯っており、その明かりが土を照らす。

「……また良い匂い。この目玉焼きはジパングの味付けだわ」

 目玉焼きの香りがクリムゾンの空腹中枢を刺激し、本能的にその匂いがする洞窟奥へと足を進ませた。途中、汚れた服を脱ぎ捨て下着姿になった。

「目玉焼きよ! 愛しの卵焼き!」

「待て! 敵の罠かも知れん……って人の話を……」

 雪牙の声も耳に入らずクリムゾンは進む。

 何故かそこには、皿に盛られた目玉焼きがありクリムゾンは何の躊躇も無くそれを手に取る。そして、その目玉焼きを飲むように食べた。全てをゴクリと飲み干し、満足気な顔をした。

「おい、大丈夫なのか?」

「いや~、やっぱ卵料理最高だわ! あれ? でも何でこんな洞窟にアタシの好物の卵料理が? まさか罠!?」

「固形の目玉焼きを飲むなんてどうかしてるわ。貴女は鶏?」

「誰っ!?」

 その言葉に、誰かが反応した。

 洞窟の奥から、ゆっくりとその声の主が近づいてきた。

『……』

 二人はどこかで聞いた声に安心感を覚えるが、敵の罠として身構える。

 その間、クリムゾンは汚れたパンツを脱ぎ捨てた。

 女性らしきシエルエットが壁に映り、男として気になる雪牙は現れた人間に問う。

「貴様は誰だっ!? どうやって俺の索敵レーダーから逃れて接近した……?」

 その人間はまだ十代半ばのピンクの髪にサイドポニーの少女だった。紺のユナイトファングの隊員の制服を身に纏う少女は微笑んだ。

「そりゃ、他の女にうつつを抜かしてれば索敵なんてできないんじゃない?」

「……レ、レーコ!」

 そこには桃色エンンジェル事、四之宮玲子が制服を圧迫する巨乳を揺らし颯爽と存在していた。




 ぬうっ、と洞窟の奥から雪牙とクリムゾンの前に現れたピンクの髪の少女は唐突に語り出す。どうやらインペラトルに支配されているユナイト・トウキョウに参戦するはずだったレーコもロアーシに向かっていた。すでにメカドクター猫神がこの周辺に簡易基地を設置し、ロアーシで活動出来る拠点を作り上げているらしい。自分の数日後に来たにも関わらず、すでに作戦準備に取り掛かる猫神の潜水艦の性能と判断力の速さに雪牙は関心する。

「……よくトウキョウ奪還作戦を抜けられたな」

川島東湖かわしまとうこ少佐がトウキョウの奪還はトウキョウ支部の人間がやるとうるさくてね。そのおかげで猫神の潜水艦に乗艦できてロアーシまでたどりつけたけど」

「川島東湖……」

 その川島東湖とはトウキョウ支部のエリート軍人で、潮田海荷のような戦闘スキルやカリスマ性はあるがシーハー・ダマコクリンのような周囲に溶け込む寛容性は無く、任務完遂一辺倒でどこか孤立しがちな女だった。

「ジパングの増援とキョウトの戦闘を経験した軍勢がいればトウキョウは奪還できるだろうが、援軍の一人を追い返すとはな」

 横目で新しい目玉焼きを焼き始めるクリムゾンを見ながら雪牙は思う。

「まー、あの人は足並みを揃えない独立部隊が嫌いらしいからしょうがないけどね」

「独立部隊の意味もわからんのか川島め……。それより、俺の単機突入作戦は猫神が簡易基地を作る為の時間稼ぎか?」

「そうみたいね」

「ナハハ……」

 と雪牙は猫神の真似をしながら渇いた笑いをする。

 そして洞窟の奥で火にあたる三人は猫神の簡易基地に向かう算段を立てつつ雑談をする。

 じっとクリムゾンを見据えるレーコは言う。

「クリムゾンウォーター。貴女、武杉ケンゲンとどういう関係なの?」

「ん? アタシはただ強い奴と戦いたいだけよ」

「その染めていない赤い髪はケンゲンと同じよね」

 刺すようなレーコの瞳にクリムゾンは答える。

「アタシの事を勝手に調べるのは結構。だけど、アタシの好物を知っていたという事はこの短時間でアタシの情報を調べた……もしくはもう出回ってるわけ?」

「個人的に調べただけよ。貴女の情報はユナイト上層部にしか出回らない。もし貴女がケンゲンとの強い関係があった場合、貴女を紅水泉ではなく仮面騎士クリムゾンウォーターという悪として抹殺できるからね」

「そう、ならいいわ。とりあえず休める場所まで移動したいわね。ジャグジーがある場所がいいわ」

「簡単に信用していいの? 私はユナイトファングよ?」

「今はケンゲンを止めるのが最優先。アタシがケンゲンとどーのこーの言ってる余裕はアンタ達には無いわよ。生体兵器の使い方次第で、ジパングもユナイトも全てはケンゲンの奴隷になるんだから」

「ふーん。意外と冷静なのねクリムゾン」

「今はお互い誰かを信じて生き残る術を探すしかないからってだけよ。余裕があったら戦っているでしょうね。それより、代えのパンツある? でもアンタちょいプニだから借りてもガバガバかも」

「何ですってーーーっ!」

 やれやれと思いながら雪牙は戦う女二人をどうにかなだめた。

 そして、真っ暗闇の森の中を駆けてメカドクター猫神のいる簡易基地へ向かう。

 すると、闇夜の上空に三機の赤いリングナイツが飛翔していた。

「クリムゾン、そいつは任せた」

 雪牙は目の前の二機を倒し、残りの一機のサツマをクリムゾンの方に蹴った。

「ラストっ!」

 炎射弾が最後の一体のサツマに直撃し、爆炎を上げた。すかさずレーコはクリムゾンに指示を出した。

「基地は近いわ。猫神はレーダーでリングナイツを全て警戒している。ここからは解除して行きましょう」

 三人は地面に着地し、深い森の中を進んで行く。

(もう、朝か)

 歩く雪牙は昇る朝陽のまぶしさに目を奪われた。レーコは地面の土を素手で掘り起こし、金属制の扉の一部を露出させた。ポケットから出した鍵を鍵穴に差し込み回すと、ゴゴゴ……! と扉はスライドし、地下に続く階段が現れた。その階段をゆっくりと三人は降りて行く。疲労困憊の雪牙はやっとこの寒いロアーシの空気の冷たさを思い出した。





 メカドクター猫神の簡易型秘密基地。

 インペラトル基地の演習場の一角の地下にあるそれは、猫神の造った秘密基地だった。

 すでにパソコンのモニターが壁一面に整然と並び、足下に様々なカップ麺の容器が転がる室内で畳に横になるクリムゾンは鎮静剤を打たれ、眠っていた。この状況を生み出した髪の白い肩に猫を乗せた少女は微笑む。

「ナハハッ! よくぞ生きていたわね雪牙。貴方のおかげで敵にバレずにこの基地も完成したわよ」

「すぐ近くまで敵は迫ってるからバレるのもそう遠くないだろう。で、クリムゾンの方は大丈夫なのか?」

 相変わらず何をするかわからない猫神を怪しむ雪牙に答える。

「栄養剤と嘘をついて鎮静剤を打ったけどすぐに起きるわ。この女はどうにも戦闘や食欲などの感情が強すぎて睡眠も長くとれないようね。性格というよりもそういう遺伝子なのかもしれないわ」

「泉が何故、クリムゾンと名を変えているのかわからないが、それはこれからわかる事だろう。今は仲間であればそれでいいさ」

 ピーッ! とレーコが沸かしていたお湯がわき、カップ麺の容器に夢はお湯を注ぐ。

 寝顔だけは落ち着いているクリムゾンの横で三人はカップ麺を食べ話す。

 猫神は愛猫に麺を食べさせつつ、

「……んで、雪牙はヤヨイには会えたのかえ?」

「会えたな。そして、シエルリングの力全てを解放しないと勝てないと言われたよ」

「自然の七属性全ての開放……それは一人の人間が出来る事じゃないわねぇ。天変地異の全てを一人の人間で操るのは途方も無い生命力が必要。雪牙の不死身の力を利用してシエルリングを使えば何とかなるかもしれないけど……」

「いくら不死身でもそれは厳しいって事ね」

 と、レーコが答えた。

 不死身を生み出す心臓にある家康のリングのパワーを感じながら雪牙は言う。

「ここは一応インペラトルの基地の一部である演習場の一角。いくらミストジャマーの霧でレーダーが乱されていても、あまりここに長居は出来ないだろう」

「ナハッ! だからレーコには勝手に助けに行くなと伝えたんだけど」

 肩にいる猫を撫でながら猫神はあくびをした。

 スープを飲み干すレーコは、

「助けに行くのはあたりまえでしょ。インペラトルは武杉ケンゲンの絶対的な力でなりたつ組織。ケンゲンさえ始末すればこの戦いは終わるんだから、この戦いは短期決戦で終わらせるのが一番よ」

「そうね。アタシがケンゲンを始末すれば全て解決よ」

 突如目覚めたクリムゾンはレーコの最後に食べようと残していたチャーシューを口に入れ、

「とりあえず戦っていくわよ。猫神も炎姫のデータ欲しいんでしょ? 奴等にバレるまではこの秘密基地を拠点に戦うのが一番でしょうね」

 そのクリムゾンに雪牙は言う。

「このインペラトルの陰謀が混沌とした場所で戦うなんて、根性あるな。お前が仲間でいてくれて良かったよ」

「混沌としているからこそ、アタシの生きる場所がある。闇の隙間からケンゲンの全てを切り裂いてやるわ」

 鼻を膨らませニカッという笑みを見せるクリムゾンに全員は微笑む。

 すると、周辺の地図が映し出されたモニターには緑色の点が現れ、少しずつ増えていった。

 その点はこの秘密基地に向かって進んでいた。





 ドウンッ! ドウンッ! と白い雪が積もるインペラトル演習場の一角にある猫神の地下秘密基地の出入口付近で爆発が起こっている。その振動を毛布を身体にかけて眠っている雪牙は振動を感じながらも無視していた。今の揺れで床に散乱するカップ麺の容器が頭にぶつかりレーコは目を覚ました。

 寝ぼけ眼をこすりながら、壁一面のモニターを見る。そこには相変わらずこの基地周辺にインペラトルの赤いリングナイツがウロウロとしていた。敵は雪牙達を誘い出すかのように現れてはバズーカやライフルを放ち、何処かへ消えて行く。まだ寝ているクリムゾンを横目で見る雪牙は猫神に言う。

「あれから一日立つが、相変わらず度々周辺を攻撃して去るだけか?」

「そうだわねぇ。奴等も敵があまり遠くに逃げていないのを知っているのかもね……街にいればすぐに報告されるだろうし」

「確かにロアーシにケンゲンに逆らう勢力はまともに存在しない。そろそろこっちも反撃に出るしかないな」

「シエルリングの力が全て使えないと勝てないんでしょ?」

「今の俺は蒼天楼を召還出来る。そこから炎のオーラを上げて一点突破でケンゲンを倒してやるさ――!」

 グオオオンッ! と突如、激しい揺れが秘密基地を襲った。どうやら、基地の真上に敵のリングナイツが攻撃を仕掛けて来たようである。猫神の見つめるモニターには、三つの緑の点が基地の上から動かずに点滅している。

「ナハハッ! どうやらここを出るしかないみたい。敵はこの真上に三体」

「よし、出撃するぞ!」

 気合を入れる雪牙は叫んだ。



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