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リングナイツ~転生せしジパングでの戦国ロボット奇譚~  作者: 鬼京雅
インペラトル総帥・武杉ケンゲンとの決戦編
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撤退

 インペラトルの基地内に一筋の黒い道筋が出来、工場ブロックが燃えている。

 サッチョウドのソルトフラッシュが生み出した悪魔の閃光は、基地の一部が爆発する事により闇夜を照らし出す明るい照明を生み出している。そしてその直撃を受ける二機のリングナイツは蒼い装甲と紅い装甲を傷つけながらも生存していた。

「流石に反応がいいなクリムゾン。だが、熱量が落ちているな」

「こっちはこの土地の寒さで熱が失われていっぱい、おっぱいなのよ! でも、終わらせるわ――」

 敵の生存を確認したヤヨイは口に入る髪を指で払い、血に染まる唾を吐く。

「? 雪牙はいるけどクリムゾンは一体、どこに……」

 周囲を確認するヤヨイだったが、どこにも炎姫の姿は見当たらない。すると、インペラトル基地を照らす月がやや暗くなった。頭上にトサカが主張した紅い悪魔の左手がまばゆく輝き、流れた――。

「! 上か!」

「――炎射波状烈羽!」

 炎のエネルギーを全開にした左手から、マグマが吹き出るような勢いの特大の炎射線がサッチョウドに注がれる。ザアアアンッ! と技の影響で溶けて歪んだ地面に着地し、距離を置いた。兜の奥で目を見開くクリムゾンは額に汗を溜めつつ、寒さのストレスで腹が痛いのか下腹をおさえる。炎姫の最大のエネルギーを放出した一撃に自信があったクリムゾンは炎姫を走らせた。

「クリムゾン? どこへ行く? その方向は――」

 叫ぶ雪牙の声も聞こえないのか、クリムゾンはこの場において進んではいけない方向に進んで行く。そのクリムゾンの瞳に、メインタワー最上階のインペラトル総帥・武杉ケンゲンが映る。

「……ケンゲン。同じ龍一族の末裔としてここで殺した方が世の為ね……!」

 しかし、雪牙はそれどころでは無かった。

 倒したはずのヤヨイがまだ生きているのである。

「クリムゾンっ! ヤヨイはまだ健在だっ!」

「何ですって!」

 炎姫を急停止させ、背後を振り返った。すると、ヤヨイはただれた皮膚と焼けた金髪に手を触れながらかすかに呼吸していた。まるで不死身としか言いようのないヤヨイに二人は戦慄する。そして、悪魔のような力を秘める幼女の声が空間に響く。

「それが人間生体兵器・ヤヨイの力だ。会桑と同じように心臓にリングを埋め込み不死身の兵士を作った唯一の成功作。寿命は短いが、よほどの事が無い限りは時間と共に全ての臓器は再生されるのだ。天晴れ、天晴れじゃのぅ」

『――!?』

 そのケンゲンの言葉で二人はヤヨイの真実を知る。

 ふと、クリムゾンは肩で息をする雪牙を心配をした。流石の雪牙もヤヨイが普通の人間ですらなかった事に焦り、不安、焦燥の表情が浮かび隠せないでいた。

 死神のように炎の中を立ち尽くす金髪の生体兵器は、少女の姿をやがて取り戻して行き白い素肌に戻る口元から呟く。

「私にはどんな技もきかん……」

「股間? なら股間から切り上げてあげるわよ!」

 クリムゾンは力を振り絞り、一瞬でヤヨイの足下に滑り込み鬼梗刃を股関に向けて叩き込む。

「!」

 しかし、軽々と飛び上がったヤヨイに軽々とかわされる。

 そして雪牙が前に立ちはだかり、敵の増援が来た事により撤退を始めようとした。

「きかん、だクリムゾン。敵も増援を出して来た。一時撤退だ」

 しかしクリムゾンは雪牙の言葉に応じない。

 いつの間にかヤヨイは再びリングチェンジし、メインタワーの前に浮かんでいた。

 ケンゲンの赤い瞳とクリムゾンの赤い瞳が合い――クリムゾンは叫ぶ。

「……ウルサイわよーーっ!」

 本能のまま、クリムゾンは炎姫を突っ込ませた。

 スウッ……とギリギリの所で、ヤヨイはその突きをかわす。

 雪牙の顔に、焦りが浮かび――。

「クリムゾン! 待て――」

 ズドン! と炎姫の鬼梗刃はメインタワーのガラスを貫いた。

 赤いマントを風に揺らすケンゲンは、人差し指で刃を受けつつ言う。

「余を楽しませるにはもう少し熱量が必要じゃ。紅水泉よ」

「そんな――がっは……!」

 素手で殴られ、兜を破壊されるクリムゾンは雪牙の方向に向けて吹き飛んだ。

 気絶するクリムゾンを抱きかかえ、雪牙は撤退する。

「……武杉ケンゲン! 次は倒すぞ!」

 すぐさま気持ちを切り替えて逃げる事を考えた。

 インペラトルの増援部隊は基地内に現れ出す。

 炎に包まれるメインタワー周囲の明かりが、逃げる蒼天楼を照らす。歯軋りする雪牙はケンゲンやヤヨイの事を思いつつ、撤退する。走り行く雪牙の背中を見つめるヤヨイは溜め息をついた。

 燃え上がるメインタワー周辺に、インペラトルの兵士の少女達が集まり始めた。そして、遅れて出撃したサツマも集まり始めるがケンゲンのいるメインタワーのガラスを破壊されているのを見た兵士達は一様に黙った。烏合の衆のような光景を見て口元を笑わせるヤヨイは、 

「各員メインタワーの消化作業と怪我人の保護を最優先で動きなさい! 逃走した会桑雪牙にクリムゾンウォーターは追撃し抹殺せよ! 世界を支配するインペラトルを敵に回した事をじっくりと思いしらせてやろうではないか諸君!」

『おおーーっ!』

 ヤヨイの命令に各員は答えた。そして、各々の作業に取りかかる。

 指のリングに力を込め、サッチョウドを解除した。

 ケンゲンの隣に立つヤヨイは消化活動が続くメインタワー周囲ではなく空を見ていた。

 先に大空を見上げるインペラトルの王・武杉ケンゲンは言う。

「革命の始まりだ」

 その赤い髪の幼女の頭上にある満月に怪しい雲がかかり、やがて冷たい風と共に晴れた。


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