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リングナイツ~転生せしジパングでの戦国ロボット奇譚~  作者: 鬼京雅
インペラトル総帥・武杉ケンゲンとの決戦編
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ケンゲンの嗤い

 キョロキョロと雪牙は周囲を見渡すが武杉ケンゲンは未だどこにいるかもわかならない。

 早く出会わなければ無駄な戦闘が増え、消耗が増すばかりである。

 ケンゲンに会えなければ、ヤヨイに出会い生体兵器の場所を聞きたいがそのヤヨイさえどこにいるかもわかならない。

(……時間が無い。せめてケンゲンかヤヨイに会わなければこの潜入作戦は失敗だ……!)

 キキィー! という金属が軋む音を立て、蒼天楼は突如止まる。周囲は相変わらずライトアップされておらず、夜の闇がただ広がっている。しかし、雪牙は蒼天楼の瞳を通して正面の闇を見据えた。

 雪牙はゆっくりと近づく一機の黒い機体を見た。金髪の長い髪が兜から流れ出る洗練された美しいフォルムの機体の中にある静観な顔つきをした少女。それはかつてのこのロアーシ時代の相棒――。

「ヤヨイ……やっと会えたな。本当のお前に」

「雪牙……お早い登場じゃない。わざわざソーローに乗って現れるなんてね」

「蒼天楼だ馬鹿者」

「アンタはソーローだし、機体の名前は蒼天楼。ソーローでいいじゃない」

 このままだとヤヨイのペースにはまると思った雪牙は苛立つ心を抑え一瞬間を置き、心を落ち着けて話出した。

「生体兵器はどうした? あれは人間に適合できる代物じゃないのはピーコが証明している」

「確かにケンゲンでも自分の身体に生体兵器の自己再生、自己進化能力は発動させられないわ。でも、生体兵器の使い道はこのロアーシ大陸を捨てる為にあるのよ」

「捨てる為……だと?」

 極寒の地であるロアーシを復興させる為に使おうとしているはずの生体兵器をロアーシを捨てる為に使うというヤヨイの話の意味がわからない。そして、年に似合わない妖艶な色香を漂わす金髪の少女は続ける。

「貴方は我々インペラトルの仲間になりなさい。そうすればケンゲンも貴方を殺しはしないでしょう」

「俺はケンゲンに殺されに来たんじゃない。殺しに来た。どれだけ強いかは知らんが、俺はケンゲンを倒す存在だ」

「シエルリングをまともに使いこなせない貴方が勝てる相手じゃないわよ」

 その言葉には黙らざるを得なかった。

 未だシエルリングの七属性である自然力全てを引き出せていない。

 炎と風の二属性しかまともに使う事は出来ず、激しい戦闘になればなるほど炎しか使えない自分がいるのを否定出来なかった。全てを見透かすような小麦色の瞳のヤヨイは言う。

「……最後の問いよ。仲間になるの? ならないの?」

「無理だ。俺はユナイトファングの会桑雪牙以上に、一個人としての会桑雪牙としてインペラトルを駆逐する。生体兵器はこの世に不必要なものだからな」

「まるで冥地のような台詞ね。あの老人はリングを否定していたけど」

 これ以上の会話は無用だと蒼天楼は雅神剣を大上段で構え、サッチョウドはビームソードを下段で構える。

 阿修羅のような蒼天楼と冷静な明王の如きサッチョウドは対峙する。

 カッ! と瞳に力が入る雪牙は動く。

「お前とて邪魔するなら排除させてもらう!」

「それはこっちのセリフだわ」

 紙一重で攻撃を受け流し続ける雪牙は高らかに叫んだ。

「シエルリングを使いこなせない貴方に勝てる道理は無いわよ」

 再三の蒼天楼の攻撃も決め手にはならず、二機は基地メインタワー付近まで接近してきていた。その周囲はライトアップされ、二つの機体は照らし出される。

 明るく照らされるメインタワー最上階には一人の幼女が居た。赤いマントを素肌に羽織り、赤い髪は長く腰まで流れている。その幼女、武杉ケンゲンは怜悧な瞳で両者の戦いを眺めていた。

(このプレッシャーは!)

 ケンゲンの冷たい蛇のような瞳は絡み付くように雪牙に注がれていた。視線が合う雪牙は、その不快な殺気に吐き気がする。

(一時撤退だな……確かに奴に勝てる気がしない)

 か弱い幼女の容姿には似合わず、生身でも全てのリングナイツを上回る殺気に雪牙はそう判断した。ヤヨイの言う通り、シエルリングの力を全て引き出さなければまともに戦える相手ではなさそうだ。それほどにこの離れた距離からでも武杉ケンゲンの底知れぬパワーに戦慄する。完全に動きが止まる雪牙に、ヤヨイの刃が迫っていた――。

「ここで心が折れていたら、リングチェンジしたケンゲンと戦うなんて到底無理」

「んな事はまだわかんないわよ――」

 ズバババッ! と紅い炎が発し、完全に顔をフェイスクローズするクリムゾンウォーターの炎姫が現れた。

 その紅い悪鬼のようなフォルムに、メインタワーで見物するケンゲンは口元を歪ませる。

 そのクリムゾンはパシュ! パシュ! とやや左腕を下げ気味で炎射弾を放つ。その弾は地面のコンクリートを破壊し、爆炎を上げる。そんなことはまるで気にせず、数度刻まれたサッチョウドはビームソードで煙を切り裂き間合いを詰めて来る。

「ボサッとしてんな雪牙! リングチェンジしたケンゲンはもっともっと強いわよ!」

「……わ、わかってる」

 そのクリムゾンの言葉により、折れかかる雪牙の心は安定し止まる身体が動き出す。

 ギインッ! ギインッ! と幾度となく蒼天楼とサッチョウドの剣が激突する。その剣でサッチョウドの動きを止め、クリムゾンは左腕にある炎の弾丸の炎射弾を放つ。

「隙あり」

 腹部に蹴りをくらうヤヨイは後方にふっ飛び、地面を転がる。

 二機の鬼神のような連撃がヤヨイの黒い機体を捉える。

「やけに息が合ってるじゃない。妬けるわね」

 ブラスターカノンやマイクロミサイルでも全ての攻撃をさばききれず勢いで負け、ヤヨイはダメージを受け機体を後退させる。すでに、戦局はヤヨイの勝てる状況ではなくなりつつある。

「今度はそっちが防戦一方ね! アタシの炎姫のパワーをなめんじゃないわよ! とっととケンゲンでも呼びなさいな!」

 ブウウンッ! とライフルのように放っていた左腕は炎射刃という炎の剣になった。二刀流に出てサッチョウドの黒い装甲を刻む。先程放った炎射弾は地面の下の配管を破壊していたらしくボボボッ! と爆炎と煙が上がっていた。それがブラインドになり、ヤヨイは雪牙を見失う。

「子供騙しなど――」

 肩のマイクロミサイルを放ち、煙の中を行く弾が蒼天楼に当たる。それで雪牙の居場所をつかんだヤヨイは、

「中途半端な攻撃だわ……見つけた!」

「こちらがな」

 ザンッ! と華麗に雅神剣が一閃し、サッチョウドを切り裂いた。同時にボンッ! と小規模の爆発音がありヤヨイは微笑むが、ヤヨイが蒼天楼だと思っていたのは肩口の円月輪である蒼炎輪だった。

「とどめだ――」

 剣の切っ先をヤヨイの心臓に向けた雪牙は覚悟を決め一気に動いた。

 その瞳に、黒い光が映る。

 血まみれの人形になるヤヨイは、サッチョウドの元になる機体の必殺攻撃を呟く。

「ソルト……フラッシュ……」

 呆気に取られる雪牙とクリムゾンは黒い光に呑み込まれた。

 その光景にメインタワーで眺めるケンゲンはガラス越しに嗤った。




 

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