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リングナイツ~転生せしジパングでの戦国ロボット奇譚~  作者: 鬼京雅
インペラトル総帥・武杉ケンゲンとの決戦編
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一幕~ロアーシ大陸~

 ロアーシ大陸――。

 ジパングの北にある極寒の凍てついた大陸である中央都市はインペラトルの牙城だった。

 発展した中央都市の周囲にはリングナイツの天敵である海水がある。普通ならば極寒の土地である為に氷ついているが、このロアーシの王である武杉ケンゲンという幼女は海水を温水にして対応していた。中央都市は富み、その他は貧困というわかりやすい図式がロアーシにはある。その状況を改善する為に、ケンゲンは生体兵器を獲得し暖かな気候があるジパングを領土としようと動いていた。

その極寒の大陸はリング実験の失敗によるシャインシュバルツの消滅の光の発生により十数キロに渡って発生し、クレーターが出来ていた。そこはすでにアイスバーンとなっているだけで新しく何かが建てられる事は無い。いや、それだけの国力がこのインペラトルには無かった。

 そして、インペラトルの基地の司令室には赤い制服を着たヤヨイが、雪と霧で視界が死んでいるメインモニターを眺めていた。各種モニターは基地全土を監視しており、侵入者は問答無用で始末される。それは武杉ケンゲンのロアーシを統治する恐怖政治と同じやり方であった。この大陸はケンゲンへの恐怖によって成り立つ世界であった。

「……敵は会桑雪牙。不死身の肉体を持った蒼い髪の男よ。彼の潜水艇のエンジンの熱からして、そろそろ到着するでしょう」

 すでに雪牙がこのロアーシに進入している事はバレている。

 乗ってきた潜水艇が発見され、そのエンジンの熱の残りからだいたいの到着予定時刻も想像されてしまっている。それに加え、リングの反応を消すミストジャマーの対策もされていた。

「リングの反応を消したくても、ミストジャマーの流れを変えてるから無理よ」

 基地の外周にある扇風機型の機械が作動する。地上から巨大な風を巻き上げるエアロタイフーンで風を送り、空中を進む雪牙のサツマはミストジャマーの霧に隠れる事も出来ずインペラトルのレーダーに察知された。空中からの攻撃に警戒していたヤヨイはすぐさま対応する。

「ビッグリングキャノン、スタンバイ」

 白い雪に包まれるインペラトル基地の一部がウイィィン……と動き出し、大型の大砲が獲物を狙いスタンバイする。長距離エネリギー砲であるビッグリングキャノンを撃ち、雪牙はそのエネルギーに呑まれた。




 しかし、空中を飛ぶのはリングの反応があるバルーンダミーであった。

 現在、本体の雪牙は地下をモグラのように進んでいた。

 地中の中ではリングの反応を消す事が出来るのである。

 ヤヨイが現地に派遣したインペラトルのスタッフは雪牙の死骸も何も無いという返答があった。

 過去の相棒時代の経験から口元を笑わせるヤヨイは、かつて自分が与えたリングナイツでこの基地に侵入を図っているなと感じた。

「地中潜行型リングナイツのコクラを使っているようね。会桑雪牙は地中から現れるわよ。この基地内部には簡単には侵入できないでしょうけど、各員警戒を怠らないように」

『了解』

 赤い制服に身を包むケンゲンの侍従の女達は冷たい声で反応した。

 そして、規律あるこの場に似合わぬ紫のあでやかな着物を着る異様に溢れるよだれを飲む少女は言う。

「ムフフ。なら私がそのモグラを始末しようかしら」

 紫のショートボブを揺らし、快楽戦闘者のナルは司令室を出る。

 その頃、インペラトルセントラルシティが見渡せる場所の地面がこんもり浮き上がった。そのまま地上に現れるモグラのようなリングナイツの少年は、リングチェンジを解除して蒼い髪をかきあげた。

「到着か……ひどい吹雪だ」

 顔にかかる白い雪が雪牙の肌と気持ちを引き締める。

 軍事都市であるインペラトルセントラルシティに雪牙はたどり着いた。





 インペラトル第一工業ブロック。

 その薄暗い工業ブロックには雪牙が息を殺して壁によりかかっていた。

 基地内部には内部のセキュリティシステムの一部を一時的に解除し、侵入した。

 深夜の工業ブロックは赤い非常灯がついて、たまにケンゲンの侍従である警備員の巡回の明かりがあるだけである。険しい顔をし、周囲を警戒する雪牙は吐き出す息を殺して通路を進んだ。一人の警備員が通りすぎた後を行き、偽造したIDカードで奥の区画に入る。

(警戒警報は鳴らない? ……でもこの区画に侵入した以上はバレてるだろうな。急がないとならん)

 そう思う雪牙は区画内を駆け、奥にあるエレベーターの目の前に立つ。

 階数を押すタッチパネルにIDカードをかざすがエラーになる。

「駄目か……やはりこのエレベーターは昔、ヤヨイの言ってた通りケンゲンのいるメイン区画に繋がっている。やっぱ、あの作戦で行くしかない……来たか」

 遠くから警備員が駆けてくる足音を聞き、踵を返し右奥の区画にあるダストシューターに向かった。壁にあるダストシュターの蓋を両手で開き、底の見えない暗闇の穴を見た。背中のリュックを下ろし、数個の手榴弾を取り出す。素早く手榴弾をダストシュター内に投げ込んだ。ズゴンッ! ズゴンッ! ズゴンッ! と複数回爆発音がし、目の前にダストシュター内から爆発で起きた煙が溢れ出てきた。手で煙を払い、リュックを後方に投げた。すると、転がるリュックの前に数人の警備員が現れた。

「貴様っ! そこで何をしてる!?」

「ん? ただ武杉ケンゲンを倒しに来ただけだ」

 言うなり、雪牙はダストシュター内に飛び込んだ。それに追いすがる警備員は床に置かれるリュックから漏れる光に気を取られた――刹那。

 ズゴンッ! と大きな爆発がした。ダストシュターに突入し、破壊した横の壁を抜けると、神殿のような造りの地下空間に出てきていた。空気はしん、と冷たく澄んでいて人間の毛穴を刺激する。引き込まれるようにその奥にあるリングパワーが流れ込む赤い宝石の物体を見据えた。

「これはこの基地の動力部……マザーリングか」

 インペラトル基地の動力部であるマザーケイジの神殿へ着いた雪牙は目の前で神秘的なマザーリングの紅の輝きを見た。その小さく澄んだ結晶は様々な角度から雪牙の顔を写し出し、鏡のように雪牙の顔が反射する。これは一年前にヤヨイと共に破壊するはずだった代物である。この極寒のロアーシを司る基地はケンゲンの侍従数十人によるリングオーラをこのマザーリングに送る事で安定した電力を供給し基地の安定を図っていた。

 一年以上前の事を思い出し大きく息を吐き、マザーリングを睨みながら呟いた。

「……このリングを破壊すればインペラトルの基地の活動の大半は停止するだろう。だが、このマザーリングを破壊するには並大抵の爆発じゃ壊れないだろうな。やれるだけやってみるか」

 腰のポーチを取り、マザーリングの前に投げた。そして、リングチェンジし両手にドリル形の武器を装備するコクラになる。少し距離を取りドリルの先端をマザーリングの前に転がるポーチに向け、

「このコクラの最強の一撃でどうなるか……くらえ!」

 叫びと同時にコクラの両手のドリルが一つの大きなドリルに変化し、凄まじいオーラと共にドリルクラッシャーが放たれた。瞬間、マザーリングが微かな赤い発光をし、雪牙の身体はマザーリングに吸い込まれるようにグンッ! と引き寄せられた。

「なっ! なんで引き寄せられ……ぬおおおっ――」

 何故自分の身体が思い通り動かないかを疑問に思うまま、雪牙はマザーリングに激突した。そして、マザーリングは激しい爆発音と共に爆破された。




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