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潮の闇

 ユナイトファングの寮の自室で雪牙は上半身裸のまま筋トレをしていた。

 雪牙は筋トレが趣味であり、通常時もかかとを微妙に浮かせたりして筋肉に刺激を与えている。

「76……77……78……」

 肉弾戦に異様に強い女教官の潮田しおたに憧れ、日々の任務でも活躍する為に鍛えている。

 エージェント時代に培ったナイフ、爆弾などの使用技術も全て潮田から叩き込まれた。

 肉体を鍛え汗を流し、シャワーを浴びて朝食を食べる。

 デザートにアロエヨーグルトを二つ食べた雪牙はユナイト研究所にいるメカドクター・猫神ねこがみの研究室まで呼ばれており向かう。

「……」

 研究室のインターホンを鳴らしても何の反応も無い為、雪牙は勝手に中へ入る。

 すると、床に寝転がり猫にまみれる一人の白髪の少女がいた。

「……」

 寝ている少女はイビキをかいており、起きている猫の群れが動くと白い肌が露になり全裸である事が伺える。その隙間の肌を見ようと目を動かしながら、雪牙は猫ごと白髪の少女を揺さぶった。

「ニャハハ……眠い……くないっ!」

 バッ! と飛び起きる猫神は全身に猫を纏わせたまま、あいリングの主力兵器であるトサの格納庫に雪牙を無理矢理連れて行き話し出す。格納庫は整然と量産型のリングアーマー・トサが戦国武将の甲冑のように鎮座していて不気味ささえ感じる。

「ナハハッ! ここにお主のトサを出してみぃ」

 そう言われ、格納庫のトサのハンガーラックに自分のトサをリングから閃光と共に出す。

 最近の戦闘でかなり痛んではいるが、多少の傷なら時間と共に修復する為に雪牙はトサを整備には出さずそのままにしていた。

「……戦闘があったら必ずトサを整備に出すのを忘れるニャ。メカニックにしかわからない故障箇所もあるんだから。リングナイツの連中は常に使い慣れたトサを使いたいようだけど、トサは量産機。戦闘が終わったらここで新しい戦場を待ってる奴等の事も考えーよ」

「……了解」

 雪牙はハンガーラックにかかる紺にカラーリングが統一されるユナイトファングの主力兵器トサの面々を見つめた。そして、猫神は雪牙に背を向けトサの装甲や武装のチェックに入る。無くした武装などは勝手に武器庫で拝借していたのでバレないかと緊張が走る。

「細かい箇所が修復出来ない状態まで破損してるわね。こりゃ、完全に整備した方がいいねぇ」

「やはりあの紅水泉こうすいいずみのNリングのパワーの凄さって事か……。あれがダイオクに大量にあればユナイトも危険だぞ」

「リングってのはジパングには元々ない代物。元々存在すれは国中の人々が持っているはずよ」

「じゃあ、誰かがリングを作り出したって事か?」

 その言葉に猫神の身体の猫が一匹落ちて背中が露になる。

「あのNリングは戦国武将・織田信長のリング。……まさか、使える人間がいるとは。ユナイトの教育とIリングの精神抑制でセーフティがあるがあるからリングは使えるというのに」

「それはどういう事だ?」

 聞いてはいけない事を聞いたと感じながらも雪牙は質問する。

 明らかに猫神の後姿はその質問に対して拒絶の姿勢を出していた。

 猫神にまとわりつく猫達は一斉に雪牙に振り向き、手を動かす猫神は言う。

「普通の人間じゃあの暴走リングを使えないという事よ」

 好奇心に駆られる科学者はNリングの炎姫と戦ったこのトサから新しいデータが出ないかとハンガーラックスキャンをかけて細部をコンピューターにチェックさせた。

微笑みながら振り返る猫神は憮然としている青髪の少年に言った。

「リングのパワーは何も軍事だけじゃない。ユナイトは自分の既得権益を守りたいが為に一般人に渡さないだけだーよ。反落が怖いからな。ダイオクのように」

「……さっきの質問に――!?」

 突如、猫神は猫の隙間に手を入れて全身をかきむしる。見てはいけない場所を何度か見て心の中でガッツポーズを取る雪牙は自分の両胸をつかんだ白髪の少女に更に見入る。

「かゆい! かゆい! ナハハハッ! ぷるふんぷるるんぷるるんニャ!」

 魔法の呪文のような言葉を言うが身体のかゆみは治まらない。

「猫はシラミがあるんだ。それにはこういった薬がきく」

 言いながら雪牙は猫神にはりつく猫をどかし横乳をさわる。

(こんな女がこのユナイトファングのナンバー3なんてな。性格は問題あるが、Cカップの乳は一級品だ)

 心の中では気持ちが緩んでいるが、現実は酷くマジメな顔で猫神とのトサ状態の話に戻し、話を終える。そして、猫神は整備が終わるトサを自身のIリングにシュパー! という閃光と共に収納している雪牙に呟いた。

「リングナイツはみんな家族がいない。だから淋しく、強いんだよ」

 リングナイツは基本的に戦災孤児や身寄りのいない天涯孤独な者が選抜されリングの適性を検査されリングナイツになる。孤独という絶対的な心の闇が多大なリングのパワーを引き出し、その人間を戦場の風林火山として活躍出来るというのがユナイトファング副司令である潮田海荷の持論であった。

 


 その時刻――。

 ユナイト本部の副長室では潮田海荷が一人のリングナイツを呼び出していた。

 その少女のリングナイツは戦場で臆し、部隊の一人がそれにより死亡した。

 ユナイトファングにおいて外部の敵以上に内部の人間の毒の粛清には厳しい。

 戦場において一人の人間が臆して仲間を死なせれば、その部隊は壊滅する可能性が高くなる。

 同時に、ダイオクにつけいる隙を生み出してしまう小さな穴になる。

 どんなに小さな穴でも肥大化すれば大きな綻びを生むために潮田の粛清は容赦が無かった。

「さぁ……潮を吹きなさい」

「……あっ!」

 長く美しい黒髪を耳にかける潮田はリングナイツの少女にキスをした。

 そして右手が少女の胸に触れ、左手は制服のズボンの中にスッ……と入っていく。

 吐息が漏れる少女は潮田の濃厚なキスと両手の動きで全身が快楽に溺れて立っていられなくなる――瞬間。

「ううっ……あああっ!」

 サアアアアッ……と少女をキスから吸い付くし Iリングのみ床に落ちて転がる。

 噂で伝わる潮田の処刑法は存在そのものを消す事から恐れられていた。

 ペロリと左手を舐める潮田は怪しく微笑んで床に落ちたリングを手に取った。



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