冥地功周VSユナイト・キョウト2
キョウト全土を震撼させる大地震をくらっても平然と周囲を見渡すシーハーは言う。
「だいぶ被害が出てるわ。戦局は中盤戦ね」
地震の震動で地盤沈下し、部隊を崩されたシーハーは機体が無事な者と損傷し動けない者を分け、ナイツ部隊とゲリラ部隊に分ける。
キョウト全体を揺らした冥地の一撃は震度7の激震だった。現場の各部隊は地割れや陥没に呑み込まれ半数が壊滅する。冥地に従う戦う意思のある全て兵を目一杯出している冥地家に比べて戦力的にはまだユナイトに分があるが、往々たる自然の力の恐怖を体感したキョウトの軍人達の少女の心は折れかかっている。これからの戦闘は一人の人間の器が試される正念場であった。
ゲリラ部隊は森の中を静かに獲物に接近する蛇のように進んで行く。
通信が取れる近くの部隊の生存を確認し、連絡の取れない部隊のある程度の生存を考えると、まだ冥地家を制圧できる戦力はあるがもうこれ以上のこういう自然現象的な攻撃をされると、兵の心が折れてしまう。
リングによる戦争に慣れてきていても、所詮は未知の代物という概念は変わらない為に常に何が起こるかわからないという疑念は消える事はない。加えて、地中からは冥地家の新型であるコクラがモグラのようにユナイトのトサの足元を狙い蹂躙していた。冥地はロアーシ時代に使っていた雪牙のコクラと同じものを製造させていたのである。
そしてシーハーは自分の部隊の精神状態に一抹の不安感を抱く。
「少佐。我々の部隊は残り七機のトサが動けますが各員共に疲弊の色が濃いです。近隣のヤコタ部隊はすでに残り三機ですが更に進軍し、突破口を開いてくれるもよう。それを拡大してくれとのヤコタ大尉からの伝達です」
「そう。流石はブリッツガールのヤコタ。気組みが違うわね。今プラント内部に侵入しないと、もう次は無いわよ。キョウト支部といえども、相手よりは物量が多いだけで実戦経験は少ないから長い戦争は出来ない。アタシ達も切り込むわよ」
「了解。それと連絡はしてますが会桑、四之宮両名からの返信はありません。才能溢れるあの二人も冥地の老獪さを突破出来なかったようですね」
「才能だけで動いているやつは怖くない。才能に努力は必要無いからね。だがあの戦国歴の化け物は……」
軽口に多少の重みが加わり、瞳が禿鷹のように暗くなる。
「冥地は信長や秀吉が死に、家康がジパングの実権を握りだした三十を過ぎて事業をお越し、四十過ぎて会社を軌道に乗せ、五十を過ぎてジパングの文化を世界に浸透させた遅咲きよん。環境に恵まれない才能が咲いたというのは必ず疑念がある。疑念は才能を更に引き延ばす要。このままじゃ、私達も何となく全滅だわよ。全員、死んだつもりで進みなさい! シーハー隊突貫よ!」
シーハーの叫びで一気に霧の中を七機のトサが駆ける。
その最中、激戦が起こる平和の森の冥地家近くの池の中から雪牙達が這い上がっていた。満身創痍の雪牙は霧の多い森の中で火線がいくつも走るのを見る。地下道を逃げている途中にピーコからすでにユナイトと冥地家の戦争が始まっていると聞いていた為、敵に見つかる前にどこかの部隊への合流を果たさなくてはならないと思っていると、目の前の霧の中から紺色の巨大な何かが現れた。
「――トサ? レーコっ!」
突如、目の前に現れた紺色のトサのライフルの銃口が向いた。まだ状況を把握できていない雪牙はトサ・エアマスターにすぐにチェンジする事が出来ない。傍観するレーコを促すように雪牙は言う。
「死にたいのか! 走れ!」
「いや、あのカラーリングを見て御覧なさい」
「? あの機体色は――!」
紺色のカラーリングはユナイトファングのカラー。
七機の紺色のトサが悠然と現れる。
そして、大空を蹂躙するが如く舞うピンク色のデコレーションされた背部に大出力のスラスターを搭載したトサ・イッコーブリリアントが現れる。同時に、地中からモグラのような緑色の機体が現れ背後からユナイトを攻撃しようとする。
先ほどからこのコクラに散々な目に合わされていた為、シーハーは対策が出来ていた。すぐに友軍を散開させ絨毯爆撃を行い、周辺に潜む冥地家のモグラのような新型のコクラを屠る。シーハー率いる突入部隊が冥地家地下アジトまで進行してきていた。華麗な絨毯爆撃に雪牙は青い瞳を輝かせ全ての技術を神経の中枢に叩き込み吸収するように見入る。
(……?)
すると、敵を始末したトサ・イッコーブリリアントは地上に降り立った。
カブトを後ろに跳ね上げ、金の坊主頭をかくシーハーは目を丸くして言う。
「あーらこんな所まで配達なのピーコちゃん? それにアタシのペットも生きていたわね」
誰がペットだと思いつつ、二人は顔を歪める。
自分と同じパーソナルカラーを持つシーハーにレーコはうぅ……とヘコむ。
二人は予備の銃と隊員服を渡され、装備を整える。
ピーコは短い金髪が濡れる小さい顔を上げ、シーハーを見据える。
その瞳にシーハーは懐かしさを覚える。
(……この女の感覚。誰かに似てる……誰? あちゅいっ!)
その森の一帯に炎が走る。その炎に導かれるように赤い悪鬼のような機体が現れた。
「炎姫? 良い事の後には悪い事って奴か。レーコにシーハー、奴はお前に任せるぞ」
「は? そんなの無理よ……ってもう居ないわ! どんだけ~!」
「どんだけ~! は奴に勝ってから言いなさいな。あのクリムゾンは強いわよ」
雪牙は霧の奥に消え、シーハーはレーコと共に残された。
レーコは腰のポーチからチロルチョコでカロリーを補充する。
チッと舌打ちした後に陽炎のように揺れる炎姫にトサ・イッコーブリリアントは突撃した。




