快楽との戦い
雪牙とレーコの二人は一軒のホテル内に入り、受付を済ませた。
そしてチェックインして、二階の部屋へ向かう。
部屋に入るなりレーコはシャワールームに入りシャワーを出す。
せっかちだなレーコは……と思う雪牙は自分の身体の異変を感じた。
(下半身がハイパー化してやがる……もう限界を超えるしかないようだな)
スッとパンツの前を除き込み左手を入れた。
(よし、これで頭は出た。後は映像で見たとおりにやれば問題無い)
時は来た……と仁王立ちで構える雪牙の目にこれからの戦の相手となる少女が現れる。
バスタオルを身体に巻きつけて現れるレーコの胸の谷間に見とれる雪牙は言われた。
水滴で濡れるレーコの白い肌は弾力があり魅力的で、張りのあるFカップの楽園に早く飛び込んでしまいたい境地にあるが、あくまで表面上は冷静さを失わずにいた。
お互いが初めてであるが故に、ここはロアーシ大陸で成長した自分を見せ付けねばという雪牙の欲があった。
「……ベッドにいてくれ」
スッと上着を脱ぎTシャツを脱ぐと、背後からレーコが抱きついて来た。
「!」
身体が硬直する雪牙は背中にあたる豊かな二つの乳に興奮する。
そして、脱いだTシャツを着せられた。
唖然とする雪牙は少し濡れた髪のサイドポニーをほどくレーコに言われる。
「シャワーは壊れたって事にして私が引きつけておくから、雪牙君フロントの中に入って中を調べて来てくれる?」
「へ?」
わけがわからない雪牙は、この場所に来た目的をこんな本気モード全開な気分を全て削がれ説明を受けた。雪牙の下半身のハイパー化は次第に収まって行く。
「キョウト支部のシーハー少佐はオネエなのよ。それが女を誘ってホテルにいるなんてありえない。帽子をかぶっていたけど、あの背丈からしてヤヨイである可能性があるわね」
「ヤヨイが……このホテルに?」
「おそらく、ユナイトの軍人を手篭めにしてこのニホンで活動しやすくしようって考えでしょうね」
このホテルに来た理由の全てを知る雪牙は遊びモードから戦闘モードへ意識が切り替わる。
レーコはフロントにシャワーの故障の連絡を入れ、手薄になるフトントの人間の目をかいくぐり雪牙はフロントに侵入してシーハーとヤヨイのいる部屋のキーを手に入れた。そしてその部屋を調べる為にドアの前に立ち左右を確認してキーを差込んだ――瞬間。
「きゃあああああああああっ!」
「!?」
雪牙は部屋の中で異常が発生したと思い飛び込む。
「――!」
水びたしになる部屋の中には一匹のゴキブリがいただけだった。
そしてシャワールームの方から物音がし、見てみると金髪の美少女が美しい肢体を水で濡らし現れた。 雪牙は非常事態だと思い飛び込んで来た弾みでヤヨイの裸をじっくりと見てしまう。病的に白いうなじに形の良い胸――それに下半身には密林無き無我の境地ともいえる楽園があった。
「Bカップ……ベジタリアンの……Bカップだ」
「私はベジタリアンだけどCカップよ。貴方のデータは間違ってるわ雪牙」
そう、ロアーシ時代の相棒に雪牙は言われた。
裸を隠そうともせず意地でもCカップを主張するヤヨイに雪牙は近くにあるバスタオルを渡す。すると、金髪ボウズ頭の大柄の男がバスタオルを胸まで隠すように身体に巻きつけ現れた。
「ドンマーイ! ゴキブリが出て叫んだらシャワーまで壊れてしまうとはね! このシーハーダマコクリン少佐も驚きだわ!」
部屋の中で叫んだのはシーハーというオネエの男であり、ヤヨイのシャワーの故障とオネエのゴキブリ騒動が同時に起こっただけだった。
そして、場の状況を仕切るように雪牙は言った。
「シーハー少佐はこのヤヨイと何をするつもりで?」
「モチロン、おとり捜査よ。留置所を脱走してユナイトの内部情報を探り、ここで諜報活動をしようとするこの女の身元を調べる為のね」
シーハーの獲物を捕らえた禿鷹のような瞳がヤヨイを見据えた。
「すでに三人もこの女に部下が殺されててね。私自身がおとり捜査で締め付けてやろうと思ったのヨーン」
「なるほど。この短期間で三人も。よく働くなヤヨイ」
「もうジパングを支配する計画は動いているのよ。せっかくこの支部の最強の存在にたどり着いたけど、流石に甘くなかったわね」
「ザンネーン! 最強は支部長の冥地功周。私は最強ではないわよ」
そう言うシーハーにヤヨイは答えた。
「あの老人はもう長く無いでしょう? もうインペラトルはあの老人を必要としてないわ」
そして、静寂が流れ三人は床に溜まる水に波紋を揺らす。
『……』
誰かが動いた瞬間、この均衡は一気に崩れるだろう。
その騒ぎを聞きつけ、バスタオル姿のレーコも駆けつけた。
「ちょ……何なのこの状況は……あぁ!」
床の水でコケたレーコはバスタオルが外れ、だるんとした巨乳が露になり水滴を弾くように揺れる。その光景を頭のHDに永久録画する雪牙はすぐにレーコにバスタオルを巻きつけながら生乳をドサクサに紛れて揉む。
シーハーは女に興味が無い為に呆れ、ヤヨイは素直な言葉が漏れた。
「化け物め……」
レーコの爆乳を拝んでしまったヤヨイは全身から怒りを発するように呟いた。
地球の重力に逆らう事も出来ない自分との差を大きく感じ、ヤヨイはユナイトファングの三人に囲まれた状況を笑う。
「まさか、私がこうもハメられているとはね。雪牙、貴方案外ツラの皮が厚いわね。ポーカーフェースなのかしら?」
「確かに俺の皮は……くっ!」
左手のシエルリングを構え、ヤヨイはリングチェンジをした。
対抗するように雪牙もリングチェンジをする。
するとシュワアアアアアアアッ! と白い煙が上がり空間がホワイトアウトした。
『……』
その場の全員は視界を失う。
ハイパー化したオーラのせいで、蒸気が立って見失ってしまったのである。
やがて蒸気は晴れ、ヤヨイの存在は消えていた。
ズリ下がるバスタオルを抑えながらレーコは雪牙の甘い判断に問い詰める。
「何でいきなりハイパー化したのよ!」
「いや、元々はレーコが俺をハイパー化させたんじゃないか……というか、あのサッチョウドをこの狭い室内で押さえ込むにはハイパー化しないと被害が大きく出るだろ」
「元相棒だか何だか知らないけど、あの女が絡むと判断が鈍ってるわよ?」
「だから――」
と痴話喧嘩をする二人を見るシーハーは二人の顔をそのままくっつけた。
『……!』
思いがけずキスをしてしまう二人は言葉に詰まり、無言になる。
「ドンマーイ! とは言えないけど仕方ないわね。任務ではないにしろ、貴方達は外異である以上独自の行動をするのは当然の事」
シーハーはウインクをしながら雪牙をフォローした。
そして、今までのおとり捜査の事を話し出す。
シーハーはヤヨイに乗せられたフリをして、ロアーシ大陸やインペラトルという組織について調べようとしていた。死んだ部下の仇というのもあったが、突如乱入してきた雪牙とレーコのせいでおじゃんになったのである。
二人はこの件について謝罪した。
顔こそ笑ってはいるが、瞳は決して笑わないシーハーに二人はこのオネエに不快感を感じた。
そして、雪牙はヤヨイがシーハーに投与して操ろうとしていた薬のケースを見つめる。
「ヤヨイの奴、こんな美人局みたいな事をしてたのか……」
「おそらく、ヤル前に幻覚作用の強い薬を飲ませてヤったように見せかけてるだけでしょうね。私の部下はそれに引っかかったみたい」
シーハーの言葉を聞き、次こそはヤヨイを捕らえようと決意を固める雪牙はホテルの人間に状況を説明しこの場所を後にした。
このホテルの室内をもう一度調べるというシーハーと別れホテル街を抜ける二人は一時間ほど前まで楽しかった時間があった事すら忘れ道を歩く。頭の中のヤヨイがかつてのヤヨイではない事を改めて知る雪牙は、隣を歩く女がいない事に気付く。
「……?」
すると、レーコは道の真ん中で立ち止まっていた。
そして、自分の唇に手を当ておもむろに言う。
「あのキスはノーカンね。ちゃんとしてないのはカウント無しよ」
「あぁ、当然だ」
答える雪牙は、自分を見るレーコの冷静な瞳と目が合う。
ゆっくりと近づくレーコは雪牙の前に立ち、瞳をそらさず言った。
「雪牙君……私としたかった?」
「……当然だ。俺は初めてはレーコと決めているからな」
「じゃあ、任務が終わったらしようね」
「――!」
雪牙の身体に稲妻が走り、レーコは甘い香りを漂わせ道を先に歩いて行く。
その背中を見つめる雪牙はこの任務を早くケリをつけようと奮闘した。




