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キョウト支部へ

 丸型のニホン大陸の西にあるキョウト支部へ向けて一機の旅客機が飛んで行く。

 一般の民間人に混じり機内にいる雪牙とレーコは機内食を食べながらキョウトまでのフライトを楽しんでいた。雪牙も半年前に完成したばかりの飛行機は始めて乗るが、レーコもまだ数度しか乗っていない為に果てしなく広がる大空の景色に興奮していた。パクパクとハンバーグを食べるレーコはゴクゴクと牛乳を飲み、気になる女について聞く。

「……で、そのヤヨイって女は一体どんな女なの? 女として付き合ったの?」

「付き合ってはいない。仲間としてロアーシの地で戦っただけだ。ユナイトファングが生体兵器プランをしている事を知ったからな」

「ユナイトが生体兵器を?」

 雪牙はロアーシの研究所でユナイトファングが生体兵器を開発しているであろう証拠を掴み、それでジパングに一年ぶりに帰還したと伝える。

「ロアーシにもあいリングが平然と使われていた。おそらく、ユナイトファング内でそんな事を出来るのは冥地功周めいちこうしゅうだけだろ。だから俺達で冥地の生体兵器の足がかりを掴んで計画を破壊する。そして、インペラトルの野望も阻む」

「そんなプランだったのね。キョウトにしか売ってないチロルチョコ買うついでに、生体兵器計画も潰してやろーじゃないの!」

 パクパクと機内食をすでに三食も食べているレーコは気合いを入れた。

 すると、外の景色に何かが通り過ぎ視線を外に向ける。

「……ぬ?」

 明らかにどこかの所属であろう黒いリングナイツが外の空を通り過ぎ、レーコは雪牙に緊急事態だと耳打ちする。

「……私達はあくまで民間人としてこの機体に乗っている。だが、相手が冥地ならバレても当然かもしれないわね」

「やってくれるな。ここは空だぞ……くっ!」

 突如、旅客機全体が地震があったように揺れた。

 機体の上部に何かが取り付いたらしく、機体全体が揺れ始めた。

 乗客は乱気流に巻き込まれたわけでもないこの状況にパニックになり始める。

「航空戦力か。この飛行機には一般人もいるんだ。俺達がやるしかないな」

「そうね。あの一機だけしかいないなら、一気に叩こうじゃないの」

 マンゴー味のチロルチョコを口に入れたレーコは動く。

 二人はユナイトのマークが描かれた手帳を見せ、機長室に向かうが混乱した乗客が邪魔でたどり着けない。その混乱を抑えられないシュチュワーデスの女の身体を支え、マイクを借りて雪牙は話す。

「私はユナイトファング会桑雪牙かいそうせつが大尉である! 全員足元にあるコンテナを開けてパラシュートをつけろ! そして、指示があるまでその場から動くな!」

 そして、二人は旅客機のコックピットに向かい機長に話す。旅客機はこのままキョウトに向かわせ、自分達が外の敵を叩くと伝えた。

 黒いリングナイツは相変わらず機体上部に取り付いたまま、機体の破壊工作を続けているらしく機体が揺れている。それに焦るレーコは、

「旅客機が飛ぶようなここまでの高高度の飛行は始めてよ……酸素も薄いし雲が視界を遮るし、風に流されたらアウトじゃないの?」

 喉の奥を潰すような唾を呑んで、この高度の戦闘をしなければいけない状態を覚悟した。

 そして、今まで疑問に思っていた事を聞く。

「シエルリングでは蒼天楼そうてんろうは生み出せないの?」

「やろうと思えば出来る。だが、それは俺の寿命を削る諸刃の剣だ」

 心臓に埋まるあいリングを覚醒させ、自身専用のリングナイツである蒼天楼を生み出すには代価として寿命を削られる。そのIリングの家康の呪いは信長のNリングや秀吉のHリングとの相性が悪かったのを一年前のソルトブレイクを通して知った。

 だからロアーシではヤヨイに渡されたIリングをし、今はシエルリングをしている。

「まぁ、俺は不死身だから問題ないがな」

 そして、雪牙はレーコのFカップの胸を見てから二の腕をつまみつつ言う。

「高高度といえど、スラスターを上手く吹かせてバランスを取って攻撃するだけだ。エアブレードでもバランスは取れるはずだ。太ってなければな」

「大丈夫! 毎日猫神に体重チェックされてから」

「そうか。なら、新型のサツマの性能を見せてもらうぞ」

「モチのロンよ! それに、空を飛ぶってのは案外難しいもんよ。重力があるし」

 言いながらレーコは胸を揺らす。

「腹……じゃなく胸の重みも影響してるかな?」

「言うようになったわね。雪牙君。キョウトについたら許さないわよん♪」

 鼻をつまんだレーコはリングチェンジして機長に作戦を伝え、二人のリングナイツは旅客機の後部ハッチから大空の海へ飛び出した。





 雪牙の蒼いトサ・エアマスターとレーコの桃色のサツマが果てしない大空を飛行する。

 トサ・エアマスターは背面に大きな飛行ユニットであるウイングがあり、それがデッドウェイトにもなっていた。

 サツマはバックパックと各ポイントにある機体制御エアーで飛べる為に、小回りも効いてトサを操る感覚と似ている。その二機は旅客機の上部に取り付く黒いリングナイツを確認し、自分達も旅客機の上部に取り付いた。

『……』

 その襲撃者は左右の肩に大型のブースターとマイクロミサイル。

 腰には二門のブラスターカノンがあり、右手にはビームソードを携えている。

 臍に当たる部分は潮田海荷のチョウシュウのような広範囲オーラキャノンを搭載している事が伺えた。

 そのフェイスクローズして顔が見えない真っ黒な機体を見て雪牙は言う。

「この黒いリングナイツ……リーダーの夜天光やてんこうを思い出させるな」

「違うわよ。リーダーの夜天光には冷たさの中に暖かさがある。あいつには冷たさしかない」

 確かにな……と雪牙は頷く。そして、レーコはその外見について言及した。

「それに、この敵やけにサツマに似てない? ブースターとかがついていて違うけどトサとサツマが掛け合わされたような機体……」

「サッチョウド」

 トサの汎用性、チョウシュウの多武装、サツマの空戦装備を搭載した次世代の機体だった。これを使いこなすには相当な技量があるという事だった。

「この旅客機を落とそうと思ってたら、結構簡単に出てきたわね。貴方達でこのサッチョウドの性能を試させてもらうわ。完熟飛行はこれからなのよ」

 クリムゾンと同じくフェイスクローズしていて顔は伺えないが体型と声色で判断する。

(女……か? いや、敵の作戦かもしれん。女であるかは関係無いぞ雪牙)

 そう自分に言い聞かせた。

 そしてレーコは自分の推測を言う。

「雪牙君、敵は女ね。Bカップぐらいの胸が――」

「Cカップよ」

「でもその感じはB……」

「ギリギリCだから。体調が良ければCだから」

 Bカップに納得いかないのか、サッチョウドの少女は間髪入れずに答え続けた。

 そんなやりとりをしてるより、自分が直接触れてパイサーチをすればわかる事だと思う雪牙は、

「……お前はこんな場所で俺達を試してどうすつもりだ? 機体のチェック以外の目的があるはずだ」

「軍人なら戦えばいいでしょう。戦っている間に色々な事がわかってくるわよ。知りたい事に気が付いた時には全てが遅いでしょうけどね」

「生体兵器の事か?」

 その言葉を吐いて動きが止まる謎の女の正体を雪牙はわかってしまった。

 間違いなく、この一年ぶりに訪れるジパングに向けて一緒に旅して来たロシア時代の仲間であるヤヨイだった。研究員に実験台にされていた所を助け生体兵器実験を阻止する為にここまで一緒にやってきた仲間が何故、こういう姿で対峙しているのか――?

「ヤヨイ……一体どういう――」

「……」

 フェイスクローズをする少女は答えない。

 互いはスラスターを吹かして動き出す。

(ヤヨイ……いや、あいつなら俺に攻撃をするはずがない。仲間だからな)

 しかし、雪牙の思いも虚しくサッチョウドの腰にあるブラスターカノンが放たれた。


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