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一年後のユナイトファング

 ユナイトファング・セントラル支部。

 ジパングのチトセ地区にある紺色のタワーはユナイトファングを統括する城であり、最近はメカドクター猫神によりバリアシステムが設置されていて超距離キャノン砲などの対策もなされている難攻不落の要塞になっていた。

 現在、ユナイトファングはすでに南の大陸に進出している。

 ジパングの南にはニホンという丸型の大陸があり、東の端にトウキョウという都市。西の端にキョウトという都市があり、そこをユナイトファングは領土としていた。ニホン大陸はユナイトファング外部顧問・冥地功周めいちこうしゅうの統括する大陸になっている。

 そして、セントラル支部長室に雪牙とレーコはいた。

 一年前と同じくセントラル支部長には冥地功周の孫娘である冥地琴乃めいちことのが支部長として完全に君臨していた。ソルトブレイクと呼ばれたジパングでのユナイトとダイオクの決戦はすでに過去のものになっている。ニホンという新大陸との交流でジパングの人々の心も変化していた。

 それをレーコや琴乃から聞いて一日で一年不在だった雪牙はある程度理解した。

 そして、セントラル支部長の琴乃は言う。

「一年ぶりの帰還ですね会桑さん。どうでしたか? 自由を求めて旅立った新大陸は?」

「刺激的な日々だったよ。ジパングでの日々を忘れるほどにな」

 雪牙はジパングの北にあるロアーシ大陸のインペラトルという組織について語った。

 一年近くの調査で、インペラトルはリングによる力で生体兵器を作り出そうとしている証拠を掴んでいた。その結果の一つがロアーシ大陸の無数の穴が開いた地面だった。

 極寒の地であるロアーシの人々は軍事実験の犠牲になりつつ、インペラトルの成功と反映を願って生活していた。その非人道的な行為に雪牙はインペラトルは悪と認識し、その土地の金髪の少女であるヤヨイは家族をインペラトルに実験体として使われた恨みで雪牙と共にその野望を砕こうと潜入捜査を繰り広げていた。

 そして予想以上にインペラトルの実態は大きく、ジパングのユナイトの協力を仰ぐ為にミストジャマーの海を乗り越えヤヨイと共に戻ってきた。しかし、ヤヨイはインペラトルの追撃隊により海の藻屑と消えた。その一年あまりの間に北の新大陸で起きている話を聞いたレーコは頷き、琴乃は言う。

「……そうですか。北の新大陸ではそんな事が……」

「そうだ。おそらくその生体兵器でこのジパングにも手を出してくるだろう。インペラトルの生体兵器はまだ完成していない。だからロアーシに対しユナイトの総力を持って駆逐するしかないだろう。俺をこの世の自由を守る剣にしてくれ支部長」

 瞳を閉じる琴乃は北の新大陸についてジパングとニホンを統括するセントラル支部長として考える。雪牙とレーコはユナイトの頭の意見を待つ。

 迫り来る新たな脅威に対して、除隊した青い髪の少年の処遇を決めた琴乃はゆっくりと瞳を開き、宣言する。

「外異特務隊として、ユナイトの領土を守る遊撃隊として会桑雪牙を大尉として軍に復帰させ、その同部隊員に四之宮玲子少佐を任命します。ユナイトファング!」

『ユナイトファング!』

 敬礼をし、雪牙は遊撃隊として自由に飛びまわる外異特務隊隊長に就任しユナイトファングに復帰した。

 そしてユナイトファング・セントラル支部長である冥地琴乃はインペラトルという新たな脅威にセントラルは新大陸のニホンの左右の大都市、キョウトとトウキョウ支部に伝達をし警戒を促した。ジパングは一年ぶりの緊張状態に包まれていった。





 雪牙はメカドクター猫神の研究室に足を運んでいた。

 猫神はソルトブレイクでダイオク側についた件で三ヶ月間の謹慎処分を受けた後、ユナイトに復帰した。それからは今まで通りにリングに関する研究に没頭し、ユナイトファングの科学主任として活躍している。肩には相変わらず猫が乗っていた。虎柄の目つきの鋭い猫が――。

「ニャ? 久しぶりだのぅ雪牙。一年経ってたくましくなったようだのぅ」

 タブレットパソコンのモニターを眺めている猫神は相変わらず長く白い髪をだらりと垂らし、白い白衣を着ている。虎柄の猫を見た雪牙はイスに座る。

「……俺がロアーシで見たデータの全てを見てどう思う? 奴等は潮田以上の脅威に成り得るだろうか?」

「成るわね……潮田が起こしたソルトブレイク以上の騒乱にね。潮田は単独で行ったけど、北の新大陸のロアーシは組織的に生体兵器を開発してる以上、ジパングだけの問題じゃなくなる戦争になるわよん」

 猫神はタブレットパソコンの画面を見てそう言うと、肩の猫がデータ画面を閉じてシエルリングのアプリデータをタッチした。スッと雪牙が提出したシエルリングに関する語録が表示される。猫神はそれを見つめ、

「シエルリング。七属性の自然力。リングチェンジしたナイツの力に自分の体内にある自然力を追加出来る。雪牙は風の属性を使えるからエアブレード無しでの走行が出来る……凄いリングね。ヤヨイって女がどこでこれを見つけたのかを知りたいのぅ」

 雪牙が手書きで描いた金髪の細身の美少女ヤヨイの画像を眺めながら、やけに上手いヤヨイの顔にイラストの才能があるなと感じた。

 そして、二人はユナイトファングの最新の軍事の話になる。

 この一年で変化した機体や進化した機体について雪牙は聞いた。

「レーコはまだカスタム・トサを使っていたが、あまり機体は進化していないのか?」

「トサも完全な空戦使用に向けて開発を行ってるわ。量産型にしなきゃならないから時間はかかるけど、今は全機のトサに空中で方向転換するスラスターとパラシュートシステムは搭載済みよ」

「スラスターにパラシュートか……それなら空中から奇襲が仕掛けられるな。本格的な航空戦力機体はあるのか?」

「今ある航空戦力のナイツは空戦使用のサツマよ。それを作る為にトサをベースにして実験したトサ・エアマスターがあるけどピーキーで扱いにはレーコでも苦戦したからのぅ」

 サツマはパイロットや予算の問題であまり配備されていない。

 セントラルの空戦部隊も決して多くない為に簡単に譲渡するわけにはいかなかった。

 雪牙はシエルリングの風の補正があるからトサ・エアマスターでいいと言う。

 空戦使用はナイツ達も練度が上がっている者でないと扱えない。

 そして、新しいシエルリングをヤヨイから得た雪牙のロアーシ時代に使っていたコクラついて猫神は話を聞いた。コクラはロアーシからジパングにたどり着く前に海の潮で使用不可になっている。

「コクラは機体データも無いから修復には時間がかかるわ。地中潜行型のコクラ……モグラみたいな機体だけど敵地調査には適した機体ね。誰が開発したのかしら?」

「ロアーシ時代の相棒のヤヨイだ。ヤヨイは戦闘からメカニックまで万能に動ける奴なんだ」

「ナハハッ! その相棒を失ったのは痛いわね。レーコはメカニックにはなれないからのぅ」

 タブレットパソコンを机の上に置く猫神は冥地功周めいちこうしゅうの話をする。

 冥地が南のニホン大陸に飛び出し、ユナイトの勢力を広げつつ貿易をしているからユナイトがここまで早くニホンに浸透し発展した。

「このジパングの文化を他の世界に受け入れられるようにその国に合わせて伝えているわ。あの死に損ないの老人も中々やるわね」

「……冥地の奴がそこまでやれば、ニホンのキョウトにあるユナイトは奴の自由な城だろうな。奴が何も考えてないとは思えない」

 その雪牙の言う通りニホンの関西と呼ばれる地区は冥地の意思が通る自由な城になっている。表向きはユナイトファングの一支部として機能しているが、実際は軍の業務よりも世界との貿易を中心に冥地家の利益拡大を計っていた。

 関東地区のトウキョウも冥地家が担当しているが、中々現役から引退しない冥地の完全な支持派では無い為に多くの交流は無かった。

 そして、このジパングに最近流れついた異人の女はいないかと調べてもらう。

 しかし、猫神はそういう人間は流れついていないと答えた。

 世界が拡がってわかった事だが、潮田が発見した異世界の書だと異世界の外人達はアルファベットの名前だが、この世界だと漢字でありジパング人に似た種族が多く明らかな外人はいないらしい。その猫神の言葉に雪牙は頷く。

「確かにそうだな。ロアーシで出会ったヤヨイもあまり外国の女のような感覚は無かった」

 そして、二人は猫神の机の上にある写真に写る金髪の男を見据えた。

 その金髪の男は自由を追い求めNリングを使い自らの機体を生み出した黒主京星――。

「あの男とはこの一年ロアーシのどこの街でも会った記憶は無い。潮田の戦いの後にあったはずの死体が無いだけで、生きていると期待しててもしょうがないぞ?」

「そう……ね。もう、一年も経ってるからね」

 その虚ろな猫神の瞳を見て、まだ時間がかかりそうだなと雪牙は思う。

 瞬間、セントラル全体に警戒警報が鳴る――。

 すぐさま猫神はタブレットパソコンをタッチし、敵がどこに現れたか検索する。

「ナハハッ! セントラルの目の前に現れたのぅ。敵はクリムゾンウォーター。紅い炎の悪魔よ」

「クリムゾンウォーター? そいつの目的は何だ?」

「当人に聞いてみなさいな」

「迎撃に出る」

 雪牙は走って猫神の研究所を出て行く。

 最近、このセントラル周囲やジパング内でクリムゾンウォーターの暗躍が目立っていた。

 クリムゾンは炎を扱うリングナイツで、常にフェイスクローズした状態で顔はわからずユナイトは神出鬼没な敵に手をこまねいていた。

 そして、セントラルに新たなる敵の襲撃を知る雪牙はユナイトファングの一員としての任務として迎撃に出た。その口元は笑っている。



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