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一幕~二つの新大陸~

 粒子のような炎がパチパチッ……と燃えるワッカナイの街を雪牙せつがは歩く。

 すでに街の住人は避難し、商業区域には存在しなかった。

 焼けた地面の上に数人の紺色の制服を着た少女が倒れていた。

 縦に突き刺さる一本の剣に左右から牙がクロスするユナイトファングのロゴマークが左の胸にある。

 これはこの島国ジパングを統括するユナイトファングの制服である。

「……全滅か」

 ワッカナイ支部より駆けつけたリングナイツは全員倒れていた。

 リングチェンジが解除され、倒れているユナイトの少女のIリングと自分のシエルリングを重ね合わせる。蒼い光が淡く発光し、雪牙は振り返る。

 赤いアイヅを装備する少女達が雪牙の様子を伺っていた。

 雪牙は北の新大陸からこのジパングまで来る時に一緒の船に乗っていた金髪のヤヨイという少女を思い出し言う。ヤヨイは新大陸で出会い、一年近く一緒に戦ってきた仲間だった。

「貴様等がヤヨイを海で落としたのか? お前達のおかげで俺の地中探索型兵装・コクラも海中の潮でダメになってしまったよ……インペラトル」

 最後のインペラトルという言葉を聞いて、少女達は笑う。

 その少女達は両肩のヒートバズーカを撃つ事で返答した。

 ズゴウンッ! という爆発が起き、両者は戦闘に入る。

 リングチェンジをしない雪牙は散会している少女の一人に目を付けた。

 エアブレード並みの高速で走る雪牙の足元に火柱が上がる。

 その隙をつくように一機のアイヅは迫る――。

 爆煙の中を雪牙は突き抜け、一機のアイヅの背後に回った。

「一つ――」

 ガバッ! とカブトを外し、手刀で少女の意識を飛ばした。

 そして、一気に次の敵に目を付ける。

 生身で雪牙はエアブレードも履いていないのに相手のスピードに対応している。

 その脅威に気づく敵の三人は固まって距離を取りつつヒートバズーカを撃ち出す。

 爆発の余波が身体のバランスを崩し、岩の破片が左頬を切り青い血が出た。

「やっぱリングチェンジしないとキツイか。借り物のトサが身体にフィットすればいいがな」

 距離を詰めながらヒートバズーカを撃つアイヅ達を青い瞳は見据え――。

 バッ! と陣笠を投げ捨て、青い髪の少年はリングチェンジした。

「リングチェンジ!」

 シュパアアッ! と蒼い炎が発し、ユナイトファングの紺色のトサのアーマーが身体に展開した。目元と口元をフェイスオープンし、シールドとソードを構えた。

『……!』

 そして、雪牙がインペラトルと呼んだ少女達は立ち止まり見つめる。

 ここに来てようやく敵の少女の一人が言葉を発した。

「貴方のコクラは使えないはずなのに何故、その機体が? ……それにエアブレードも無しでそんなスピードが使えるなんてありえない……」

「お前達が倒したユナイトの兵士とリングを合わせるリングトレードで交換したのさ。それと、俺のリングはヤヨイと海で離れる前にもらったシエルリング。自然の七属性を使えるシエルリングだ」

 雪牙のもつリングは火・水・風・木・金・土・雷の七属性を使えるシエルリングだった。しかし、雪牙はその力のうち風の属性しか使いこなせない。人間の特性に影響される力らしい。

 シエルリングはリングナイツにならなくても自然の力を使える。それにより雪牙はエアブレード無しでもアイヅ達の動きにも反応出来たのである。

 雪牙のCと刻まれるリングを指差す少女は言う。

「そのリングはロアーシ大陸を消滅させて得た力なの? そのリングの為にロアーシの人々は極寒の寒さに耐えてひもじい暮らしをしてるのよ」

 恨みを込める少女に雪牙は極寒の地である北のロアーシ大陸を思う。

 ロアーシはミストジャマーの電波障害の霧で見えないジパングの北にある新大陸である。この一年の間に南の丸型のニホン大陸は冥地めいち家首領である冥地功周めいちこうしゅうがジパングの文化とユナイトファングの軍管理制度を見せつけ、特に混乱なくニホン大陸はユナイトが支配していた。

 しかし、まだ北のロアーシ大陸は多少距離もある事から国交は無い。

 ソードを突き出し動き出す雪牙は言う。

「ロアーシが消えた恨みをジパングに与えるなよ? あれは昔ワッカナイであったリング合成実験のリングオーバー事件の大型版だ」

「元を辿ればリングのパワーの使用はジパングよ。本質からして貴様等は戦国好きの血に飢えた野獣なの」

 そう言うロアーシ大陸の少女に対し雪牙は言う。

「どんな受け入れがたい辛い事があっても、それを事実として受け入れ乗り越えなければ人は変わらないぜ」

 左に流れ一気に右に動いた雪牙のいた場所にヒートバズーカが直撃する。

 炎の熱を浴びつつ、アサルトアンカーを放ち一門のバズーカをへし折った。体勢を崩しながら地面に残る一門で射撃したアイヅの背中を雪牙はソードで突き刺していた。

「二つ――」

 そこを狙っていた赤いアイヅのヒートバズーカがシールドに直撃する。

 ボフッ! とシールドが破壊され、左腕がアンカーで絡めとられた。

「くっ!」

「――こいつで終わりよ!」

 一気に雪牙を引き寄せた少女はバズーカの両門を相手の顔面へと向けオーラを溜める。

 すでにこの態勢から逃れる事は出来ない。

「――!」

 歯を食いしばる雪牙の目の瞳孔が開き――ズゴウンッ! とカブトが爆発する。

 カンッ! と紺色の鉄の破片が地面に転がった。

 爆発の余波で切れたアンカーを切り捨て、少女は呟く。

「……死んだか」

「俺は不死身だ」

 いつの間にかカブトを外し、盾にしていた雪牙は右手を突き出し言った。

 そして太腿のダガーパックから一本のダガーを取り出す。

「三つ――」

 装甲の隙間にダガーを突き刺し、倒した。

 そして残るインペラトルの最後の一機に目を向けた。

「ヤヨイはどうした?」

「あの女は消えたわよ。貴方のような生身でも使える便利なリングが無いんじゃ海の藻屑になったんじゃない?」

「そうか――」

 情報は何も無いと見て雪牙は動く。

 このインペラトルの人間をジパングの内部で生かしておくわけにはいかない――。

「!?」

 瞬間、目の前の赤いアイヅは背後から放たれたメガライフルに撃ち抜かれ爆発した。

「……桃色のトサ。やってくれる」

 舌打ちをする雪牙は最後の敵を倒すユナイトの軍人に微笑む。

 エアブレードを鳴らし、桃色のカスタム・トサが現れた。

 その機体を見て雪牙はリングチェンジを解除した。

 そこにいるのは、ちょいプニのかつての黒主部隊のスーパーヒロイン――。

「久しぶりだな。レーコ」

「おっす! 久しぶりね雪牙君」

 久しぶりの再開に二人は互いの成長を感じた。

 そして、やけに仰々しい格好にレーコは突っ込む。

「何その格好? 昔のジパングにはそういう格好があったみたいだけど、それじゃオシッコとかしづらいじゃん。インポだからチンポださないの?」

「俺はインポじゃない! 第一にオシッコの問題じゃなく、外の世界だとこの姿じゃないとジパングから来たと信用されないんだ。家康が活躍してた戦国時代には国交があったらしくその名残らしいがな」

 相変わらずチョットずれているレーコの雰囲気に安心した。

 目視でもわかるがだるんとしたFカップは健在で、ユナイトの制服の胸元がカットされて胸が楽になるよう特殊加工されている特別製を着ている。やはりチョコ好きは改善されず、日々体重計と戦っているようだ。そのサイドポニーの少女の横でいつも笑っていた金髪の男の姿を思い出し言う。

「リーダーの生存確認はまだ……か?」

「えぇ。どこに行ったかも不明だし、死体が無いし生死の確認も取りようが無いわ。生きてたとしても何をしてんでしょうね、あの人は」

 寂し気な表情をレーコは見せる。

 男子の数が意図的に目減りされていないとは言え、すぐに生まれた子供が成長するわけではない為、十年以上は現在と同じ女社会のハーレム世界は続く。

 そして雪牙は久しぶりの再開に喜びながら思う。

(俺はインポではない。この戦いが終わればお前の身体でそれを証明してやるぞ。俺の映像知識をなめるなよ)

 ロアーシ大陸で見たアダルト知識を頭で再生する雪牙はレーコの身体の新しいデータを脳内で再生しつつ、行方不明の相棒である金髪の美少女ヤヨイの安否を心配した。



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